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8章:学園に入学したらしい

115話:言えない気持ち

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いつも通りに人気のない道を歩いていると、誰かが木にもたれかかっているのが見えた。

珍しいな~と楽観的に考えながら進んで行くと同時にはっきりと姿が見えた。

その姿はまさに今まで避けていた雪都様だった。

私は言葉を失って立ち尽くした。

雪都様も気づいたらしくこっちを向いた。

必然的に目が合う。

「璃杏様。お会いできて良かったです。」

雪都様は私を見た瞬間にっこりと真っ黒い笑みを浮かべて言った。

頬が引きつるのがわかる。

「ゆ、雪都様・・・な、なんでここにいるんですか?」

この道はひとりで帰る時に通る道で、華美様や湖乃美ちゃん達と帰る時はみんなが通る道で帰ってたから知らないはず・・・。

「湖乃美さんから聞いたんです。 この道を通る璃杏様をよく見かけていたと。」

雪都様はそう言いながらこっちに近づいてくる。

こ、湖乃美ちゃん!?まさか見られてるなんてぇぇえ!!

そしてなんで雪都様は近づいてくるの!?

頭の中が混乱してどうすればいいのか分からないし、それに、今近づいてこられたら非常に困る。

私は後ろの方に後ずさり、そのまま後ろを向いて走り出す。

こうして会えたことも話しかけてくれたのもすっごく嬉しいけど、でも、恥ずかしいし、絶対噛みまくるしよろしくないことがたくさん起こる気がするし!

そんなことになったら嫌だあああ!!!

そんなことを思いながら全力疾走する。

が、たいして体力があるわけじゃない私と剣術や体術などをやっている雪都様とでは捕まらないはずがなく・・・・・・走り出した数メートルであっけなく掴まった。

そして、腕を掴まれたと同時に後ろ側に引っ張られた。

その反動で雪都様の胸の中へ収まる。

腕を掴んでいない反対側の手をお腹の方に回し完全に逃げないように固定する。

今までにないくらい体が熱くなる。

「なぜ避けるんですか?もしかして、璃杏様が嫌がることを僕は何かしましたか?」

耳元で雪都様の悲しそうな声が聞こえた。

その声を聞いて罪悪感が生まれる。

「あ、あの、その、すみません。雪都様は何もしてません。あの、だから、離してもらっても・・・。」

恐る恐る肩の方を見る。

薔薇色の瞳と目が合う。

自分でも目が見開くのがわかる。

時が一瞬止まったかと思った。

「嫌です。理由を言うまでは離しません。」

少し口を尖らせて拗ねる雪都様。

不覚にも可愛いと思ったと同時にどうしようかと困惑する。

この気持ちは言えないし言ったとして嫌われたら嫌だ。

で、でもでもこのまま離されなくてもとても困る。

うぅぅどうしようううう!!!!

なんていえばいいの!?わかんないよおおお!!!

「あ、えっとー・・・そのー・・・。」

視線をさまよわせて言い淀んでいると、お腹に回っていた手が離れ掴んでいた手も離された。

「すみません。困らせるつもりはなかったんです。ですが、璃杏様に避けられるのは辛いです。これ以上璃杏様を困らせたくはないので先に失礼します。」

本当に辛そうな声が後ろから聞こえて立ち去る靴音が聞こえる。

ふとこのままでいいのかと自分が自分に問う声が聞こえた。

このままでいたら確かに私のこの気持ちも伝えずにすむ・・・だけど、何となくこのままでいたら何かが壊れる予感がした。

私は後ろを振り向き数メートル先にいる雪都様の方へ走った。
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