上 下
90 / 123
8章:学園に入学したらしい

89話:湖乃美が見たもの

しおりを挟む
【湖乃美side】

私がはじめて黒川先生を見たのは璃杏様と職員室に行った時でした。

その時の黒川先生は噂通りの優しい笑みを浮かべていました。

女性の先生方はよく黒川先生に話しかけていました。

とても優しそうな人気の先生という印象を受けました。

百織先生に用事を済ませてから璃杏様と職員室を出る時でした。

不意に視線を感じて後ろを振り返ると視線を感じたところに黒川先生がいました。

その時の黒川先生を私は忘れられません。

あの時・・・黒川先生は・・・璃杏様を殺すような目で睨んでいたんです。

それに、睨んだ黒川先生の周りから濃いモヤが溢れ出したんです。

私は怖くてすぐに視線を逸らしてそのまま璃杏様と職員室を出ました。

あの時の黒川先生は・・・・・・悪魔のようでした。

人を殺すことを恐れない・・・そんな雰囲気がありました。

そして、この森には黒川先生の周りにあったモヤと同じような感じがするんです。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

湖乃美は話終えたあと、深く息を吐いた。

真陽琉はその話を聞き考え込んでしまう。

真陽琉の中では黒川先生は優しく冷静な先生だという印象がある。

そんな表情をする先生とは思えない。

けれど・・・湖乃美が嘘をついているとは思えない。

そんな2つの思いが真陽琉にあった。

「・・・・・・・・・僕は、黒川先生がそんな人とは思えない・・・でも、僕は・・・貴女を、湖乃美を信じたい。」

真陽琉は湖乃美の瞳を真っ直ぐに見つめた。

湖乃美は少し目を見開いたあと微笑んだ。

「ありがとうございます。真陽琉様。」

その微笑みに真陽琉は見惚れるもすぐに我に返る。

「あ、えっと、ど、どういたしまして?あの、そろそろ集合場所に行こう?」

ひと通り見回ったため真陽琉はそう湖乃美に言った。

「ふふっ。はい。璃杏様と華美様と礼央様にも話してみようと思います。」

可愛らしく微笑んだあと強い眼差しでそう言う湖乃美。

「うん。いいと思う。それで、雪都様を助ける方法を見つけ出そう!」

「はい!」

2人は最初に集まった場所へ歩き出した。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

湖乃美と真陽琉が目的地に到着すると華美と礼央もその場所にいた。

2人も一通り見回ったらしい。

「なにか収穫はありましたか?」

そうにこやかに聞く礼央。

「はい!ありました。」

湖乃美は礼央の質問に笑顔で答える。

「あとは、璃杏様が来ればいいのですけれど。」

華美は璃杏が走っていった方を見つめる。

璃杏が戻ってくる気配はない。

「多分、一人で行動しているのでその分長引いてるんじゃないかな?と思います。」

真陽琉は華美の見つめている方向を見つめながら言う。

「そうですわね!」

湖乃美達はそのまま璃杏が来るのを待ち続けた。

30分が経過した頃。

「・・・・・・遅い・・・ですわね?どうしたのかしら?」

心配そうな不安そうな顔をする華美。

そんな華美を安心させるように手を握る礼央。

「大丈夫ですよ。」

そう微笑みながら華美に言う。

「にしては遅すぎませんか?」

心配そうな顔をする真陽琉。

「・・・・・・・・・・・・」

湖乃美は黙ったまま璃杏が走って行った森を見つめる。

「やっぱり・・・あの!もしかしたら、璃杏様に何かあったかもしれません!!この道を沿って黒いモヤが濃くなっているんです!」

不意に顔を華美達の方に向けて言い放った湖乃美。

その言葉に3人は目を見開く。

「もしかしてその先に、璃杏様がいるの?」

驚いた声音で聞く真陽琉。

「璃杏様がいるかは分かりません。ですが、このモヤは殺意や憎しみからできた・・・モヤです。黒川先生と同じです。」

その言葉に華美と礼央は驚く。

「黒川先生が・・・なにかしたのですか?」

「やっぱり!あの教師は裏があったんですわ!!!でも、その・・・殺意や憎しみって誰に対してですの?もしかして・・・雪都?」

不安そうに聞く華美。

「いえ・・・多分・・・・・・・・・・・・璃杏様だと・・・思います。」

絞り出すような声でそう告げた湖乃美。

「そ、それなら!早く璃杏様を助けないと行けないですわ!!!!」

そう言って走り出そうとする華美を礼央が止めた。

「待ってください!闇雲に走っては意味がありません!時間の無駄になります!!なので、湖乃美さん・・・黒いモヤが濃くなっている所を教えてくれないかな?」

そう言って礼央はニヤリと笑った。

「は、はい!もちろんです!」

少しその笑みに引きつった顔をしつつも真剣な顔で返事をした湖乃美。

「こちらから向こうへ線のように濃くつながっています。急ぎましょう!」

湖乃美のその言葉と同時に4人は走り出した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の茶番に巻き込まれました。

あみにあ
恋愛
一生懸命勉強してようやく手に入れた学園の合格通知。 それは平民である私が貴族と同じ学園へ通える権利。 合格通知を高々に掲げ、両親と共に飛び跳ねて喜んだ。 やったぁ!これで両親に恩返しできる! そう信じて疑わなかった。 けれどその夜、不思議な夢を見た。 別の私が別の世界で暮らしている不思議な夢。 だけどそれは酷くリアルでどこか懐かしかった。 窓から差し込む光に目を覚まし、おもむろにテーブルへ向かうと、私は引き出しを開けた。 切った封蝋を開きカードを取り出した刹那、鈍器で殴られたような強い衝撃が走った。 壮大な記憶が頭の中で巡り、私は膝をつくと、大きく目を見開いた。 嘘でしょ…。 思い出したその記憶は前世の者。 この世界が前世でプレイした乙女ゲームの世界だと気が付いたのだ。 そんな令嬢の学園生活をお楽しみください―――――。 短編:10話完結(毎日更新21時) 【2021年8月13日 21:00 本編完結+おまけ1話】

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~

ミズメ
恋愛
【2023.5.31書籍発売】 転生先は、乙女ゲームの悪役令嬢でした——。 侯爵令嬢のベラトリクスは、わがまま放題、傍若無人な少女だった。 婚約者である第1王子が他の令嬢と親しげにしていることに激高して暴れた所、割った花瓶で足を滑らせて頭を打ち、意識を失ってしまった。 目を覚ましたベラトリクスの中には前世の記憶が混在していて--。 卒業パーティーでの婚約破棄&王都追放&実家の取り潰しという定番3点セットを回避するため、社交界から逃げた悪役令嬢は、王都の下町で、メンチカツに出会ったのだった。 ○『モブなのに巻き込まれています』のスピンオフ作品ですが、単独でも読んでいただけます。 ○転生悪役令嬢が婚約解消と断罪回避のために奮闘?しながら、下町食堂の美味しいものに夢中になったり、逆に婚約者に興味を持たれたりしてしまうお話。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...