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8章:学園に入学したらしい

76話:悩みは睡魔を追い出す

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窓を開けた寮の部屋の中に、夜の暗闇の中で鳴く虫の声が静かに響く。

そして、私は1人布団の中で眠れずにいた。

その理由は、保健室で雪都様に治療された時のことを思い出していたからだ。

寝るまでずっと、

(なんで雪都様を見たり・触れたり・触れられたりすると緊張したりドキドキしたり頬が熱くなるんだろう?)

と考えていたら今まで雪都様との思い出が走馬灯のように駆け巡ってきて恥ずかしくなって今に至った。

1回心臓病かなー?とか思ったけど、そしたら前から倒れてるよなー。とか思いなおしてそのまま謎が残ったままなのだ。

うむむむむ~この感情は一体なんなんだ!!

それに眠れないよおおおおお~!

ゴロゴロと寝返りを打つ。

寮のベッドは貴族が使う部屋なので部屋自体が大きいけれどやっぱり自宅のベッドの方がふかふかしていて気持ちがいい~。

あ、侍女や侍従はつけていいけれど1人につき1人までとなっているため、私は専属侍女の陽夏凛さんについて来てもらった。

主人と侍女・侍従の人達の部屋は隣同士にあり侍女・侍従の部屋は、主人の部屋より少し素朴に作られている。

そんなことを考えていたけど眠気が一切来ない!

どこ行った!?私の眠気どこいった!?

これじゃあ明日の授業が眠くなってしまう!!

よし、わかった。

一旦、目をつぶって・・・・・・羊を数えよう!

えっとー・・・草原に低めの柵を設置して~よし!

羊が1ぴ・・・あれ?羊ってどんな動物だっけ???

柵を飛び越える以前の問題だった!

た、確か・・・紙を食べるんだよね。

それで、渦巻き型の角があって、目がつぶらで、鼻が長めで、耳も長かったはず!

・・・あ、あれ?なんか違う気がする。

こんなんだっけ?あれれ~???

はっ!!どうしよう!寝れてない!!

少し寝れていないことに衝撃を受けつつ、喉が渇いてきたので、備え付けられている水道で水を飲むことにした。

「・・・・・・ふぅ~。」

私は窓に行き空を見上げる。

今日の月は三日月で周りには空いっぱいにキラキラと星が輝いていて綺麗だ。

「こんな時間に空を見上げてどうしたの?璃杏ちゃん。」

女の子の声がして振り返る。

紅葉くれは!なんでいるの!?」

後ろを振り返れば、白い髪をハーフアップにしてルビーのような綺麗な赤い瞳をした紅葉がいた。

紅葉は私の成長に合わせて背を変えてくれている。

だから、15・6歳の美少女に成り果てている。

ひとつ不満なのは、何故かいつも私より高いということ!

「璃杏ちゃんの入学した学校はどんな場所なのか気になって来ただけよ。それで、今は璃杏ちゃんの様子を見に来たのよ。」

「そっか~私のために来てくれたの??」

ちょっと意地悪して自意識過剰なことを聞いた。

「ち、違うわよ!つ、ついでよ!つ・い・で!」

顔を真っ赤にして反論する紅葉。

うんうん。可愛いな~。

「そ、そんなことより。璃杏ちゃんはこんな時間に寝ないでどうしたのよ?いつもなら寝てるじゃない。」

少し顔が赤いまま聞いてくる紅葉。

「え?えっとー・・・その・・・い、色々考えてて・・・あはは~。」

誤魔化し笑いでなんとかその場をしのごうと試してみる。

「・・・・・・ふーん。色々考えててって・・・もしかして、雪都くんのこととか?」

ニヤッと意地悪く笑う紅葉。

紅葉の言った名前がやけにはっきり聞こえてまた頬が熱くなる。

「うぅぅぅ・・・・・・な、なんか、この頃自分の感情がよく分かんなくて・・・それで、その、雪都様を見たり、触れたり、触れられたりすると緊張したりドキドキしたり頬が熱くなるんだ。それで、なんでこうなるのか分からなくて考えてて・・・それで目が冴えちゃった。」

うんうんと頷きながら聞いてくれる紅葉。

「それで、寝ないと明日の授業眠くなって大変なことになると思ったから目を瞑って羊を数えようとしたの・・・それで、大草原と柵を設置したまでは良かったんだけど・・・羊がどんな形してたか忘れちゃって考えてたら凄いことになって、より一層目が冴えて今に至る。」

うんうんと頷きながら聞いていた紅葉が途中からえっ!?という顔をしてこっちを凝視してきた。

???なんだ?

「ま、まあ、最初の方は璃杏ちゃんは乙女だなーって思いながら聞いてたけど、途中からなんなの!?羊数えるのは分かるけど羊の形忘れるってあの、あの絵に簡単に描ますNO.1っぽい羊を忘れたの!?ぇぇええ!!・・・ねえ、璃杏ちゃんは羊はどんな動物だと思うのかしら?」

呆れた表情をした紅葉の質問に私は答える。

「えっと・・・紙食べて、角が渦巻き型で、目がつぶらで、鼻が少し長くて、耳も長い。」

私がそう答えると、紅葉は目を見開いて口をあんぐり開けた。

「え・・・きもっ。」

そして、一言そう言った。

「た、確かに気持ちが悪いかもだけど・・・こんな感じじゃなかったけ?」

首を傾げて紅葉に聞く。

「違うわよ!角が渦巻き型なのは合ってるけど・・・はあ。いいわ。最初に言ってたことのアドバイスをしてあげるわ。」

少し疲れた顔をしてから笑顔に変わった紅葉。

なんか、ごめん。

少し罪悪感に押されつつ紅葉の次の言葉を待った。

「その感情は今の璃杏ちゃんには気付きにくいかもしれないけど、きっと心の中は分かっているはずよ。まあ、悩んで悩んで辿り着くといいわ。気付くのか気付かされるのかは分からないけどね。さ、そろそろ寝なさい。」

そう言ってから私の背中を押す紅葉。

私は仕方なくベッドに潜り込み目を瞑る。

「私が子守唄を歌ってあげるわ。」

私はこくりと頷く。

私の耳に紅葉の綺麗な歌声が届く。

紅葉の言ったことはあまり良く分からないところが多かったけれど、それでも、私の心を少し軽くしたのは事実だった。

そのあと、私は眠気に襲われ眠りについた。
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