上 下
76 / 123
8章:学園に入学したらしい

75話:優しい人 = 危険人物

しおりを挟む
雪都様に連行されながら保健室についた。

保健室は白が基調とされているけれど、貴族が多く通うためか豪華な施しが所々されていた。

部屋をぐるっと見渡す。

先生らしき人は誰もいなかった。

「いませんね。」

雪都様も部屋を見渡してそう呟いた。

と言うことは・・・。

保健室の先生不在

手当できる人がいない

帰れる!!

雪都様の言うことは正しい。

だけど・・・だけどぉぉお心配かけたくないんだよ~。

きっと、赤くなってる程度だし。

何すればいいのか分からないけれど・・・。

な、なんとかなると思われる。

雪都様は保健室の中を見渡す時手を離したから逃げれる!!!

「い、いないなら仕方ありませんね!!帰りましょう!そうしましょう。それがいいでしょう。」

私はくるっと踵を返す。

走り出そうと一歩踏み出した。

が、その1歩は腕を後ろに引かれたことで3歩くらい戻された。

腕を引かれたことで保健室の中に入ってしまった。

バタンッ

後ろから私の腕を掴んでいない方の手で雪都様が保健室の扉を閉めた。

なんてことだ!!!これじゃあ逃げれない!

「璃杏様。どこへ行く気ですか?」

いつもの落ち着いた声が聞こえる。

私は小さく息を吐く。

私はゆっくり振り返り雪都様を見る。

「雪都様。保健室の先生がいなければ手当ができません。なので、今日のところは引き上げるとして・・・そのー・・・また、明日?にでも、よ、よろしいのではないのかと・・・オモイマス。」

なんとかそれなりの言い訳的なものをしたけれど雪都様からの視線がっ!!視線が冷たい!!!

ひえぇぇええ誰ですかー!?この方誰ですかー!?

「璃杏様。それは安心してください。僕も手当はできますので椅子に座ってください。」

ニコッと笑った顔はとても綺麗で怖かった。

「・・・・・・・・・ハイ。」

視線が痛かったので素直に従い治療するための椅子に座る。

座り心地は抜群だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・あの、璃杏様。おでこから手を離してください。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

私は雪都様からそーっと視線をずらす。

「・・・・・・・・・璃杏様?」

雪都様から低めの声が発せられた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワカリマシタ。」

迷ったけれど、視線と声が怖すぎて私はずっとおでこを抑えていた手を離した。

前髪がパラパラと落ちてくる。

雪都様は私の前髪を持ち上げておでこを見る。

・・・な、なんか、緊張する。

「・・・・・・やはり赤くなってますね。冷やしましょうか。」

そう言って保健室にある水が凍る魔法道具の中から凍った水を取り出した。

その後に棚から防水加工のされた布を取り出して布に凍った水を包む。

その布を私のおでこに優しく当てた。

「少し冷やしていてください。」

ニコッと微笑んで言った雪都様。

さっきの怖さはなくいつもの優しい微笑みだった。

心の中で安堵しつつ布を抑える役目を交代する。

「え、えっと、ありがとうございます!それから、すみません。迷惑をかけてしまって。」

私は雪都様にお礼を言ったあと謝った。

ここまでしてもらって逆に罪悪感がする。

「璃杏様。気にしないでください。僕がやりたくてやった事なので。璃杏様が迷惑だと思っていたのなら僕の方こそすみません。」

そう言って申し訳なさそうな顔をする雪都様。

その顔にますます罪悪感が湧いてくる。

「な、何故雪都様が謝るんですか!?それに、雪都様が私に謝る必要はありません!!それと迷惑だなんて思っていません!!・・・心配なんてかけたくなかったんです。雪都様が私を心配する必要はありません!!!」

私は俯き気味に叫んだ。

雪都様が心配した方がいいのは湖乃美ちゃんとか舞璃花様とか華美様とかそういった方々なのだよ!!

私の事を心配してくれたり関わってくれるのは嬉しいけれど、周りにとっては釣り合わないも同然で・・・だから、私を心配する必要ない。

「・・・・・・僕が誰を心配しようと僕の勝手です。ですが、その心配で迷惑をかけて嫌われてしまうのは嫌です。それが璃杏様ならもっと嫌です。」

雪都様の言葉に驚いて顔を上げる。

雪都様と視線が合う。

何故かそのバラ色の瞳から視線を逸らすことが出来なかった。

そして、頭のなかは混乱に陥っていた。

・・・・・・どういうことなんだろうか?

なんで、私に嫌われるのが嫌なんだろう??

私は何か声に出そうとしても言葉が出ずに口をパクパクさせてしまう。

「あの────」

ガチャ

いざ声に出そうとした瞬間、保健室の扉が開いた。

「あら?ごめんなさいね~校内を見回っていて留守にしてたわ。」

保健室に入ってきたのは保健室の先生だった。

色っぽい雰囲気と見た目をしたお姉さんだ。

「いえ。大丈夫です。璃杏様が木におでこをぶつけてしまい手当をしたのですが、一応確認をお願いします。」

先生に報告をしてくれた雪都様。

「そうなのね~。教えてくれてありがとう。ちょっと見せてくれる?」

私に近づきおでこを冷やしていた布を取る。

「・・・・・・うん。少し赤くなってるだけのようね。一応確認をするけれど、吐き気や頭痛はないかしら?」

私の目線に合わせて聞く先生。

「は、はい。あ、あ、ありません。」

私は質問に噛みつつ答える。

たとえ先生でも話すの苦手だな。うぅぅ。

「そう。なら良かったわ。すぐ冷やしてくれたみたいだから赤みも引いているし様子を見てもし、頭痛や吐き気がしたら言ってね。」

「は、はいっ。」

ニコッと笑った先生に返事をして立ち上がる。

「えっと、ありがとうございます。」

お礼を言ってペコリと頭を下げる。

なぜか先生は少しだけ目を見開いたあと微笑んだ。

「いいえ。どういたしまして。」

私はもう一度頭を下げてから保健室を出た。

雪都様も私の後に続いてでてきた。

寮まで向かう間の道では特に会話はなく、そのまま寮に着いた。

「それではまた明日。璃杏様。お気をつけて。」

少しクスッと笑いつつ優しく微笑みそういった雪都様。

「は、はいっ!ありがとうございました。また明日。」

ガバッとお辞儀をして私はそのまま寮の建物の中へと入っていった。

私の心臓はさっきから変だ。

雪都様を見たり一緒にいると鼓動が早くなる。

それに、頬が熱くなる。

本当になんなんだこれ。

不思議な感情に首をかしげながら私は自分の部屋へと戻って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

私は脇役でしょう?

Snowdrop
恋愛
ある日、御洛 都は前世の記憶を思い出した。 そして気付く。 今世の自分、御洛 都が前世でみた乙女ゲームに出てくる『ヒロインの友達キャラ』 だということに。 だが待って欲しい。 このキャラ、高確率で死にますよ? 自殺か刺殺か交通事故死ですよ? そんなの回避させていただきます! ゲームでは貧乏くじを引くことになる都だが、そもそも攻略対象に興味はないしスルーだ!と決心するものの、結局スルーとは程遠く...

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

最強目指す脳筋令嬢は婚約破棄されたい

寿司
恋愛
 とある帰り道、交通事故で死んでしまった四宮雪路(しのみやゆきじ)は婚約破棄されて成敗される乙女ゲームの悪役令嬢、ユノ=ルーンベルグとして転生してしまう。でも、ま! いっか! 地球にはもう私と互角に渡り合える生物はいなかったし、この剣と魔法の世界でも私は最強目指して突き進む! 聖女? 婚約者? そんなものは後後! 聖女としては落ちこぼれで馬鹿にされがちだが、規格外過ぎる最強主人公が、乙女ゲームの攻略対象たちを巻き込みながら好き勝手大暴れする物語です。残念なイケメンと残念な美少女しかいません。乙女ゲームなのにカッコいいイケメンとラブラブイチャイチャみたいな要素は少ないですが、恋愛要素はあります。  小説家になろう様にも東山春雨名義で同小説を投稿しています。 ◇◇微妙にタイトル変更しました。また、書き進めている内に恋愛要素が強くなったのでジャンルをファンタジーから恋愛に変更しました。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...