上 下
69 / 123
7章:12歳になったらしい

68話:礼央王子の悩み

しおりを挟む
私が頷いたことに満足そうな顔をしながら手を離し真剣な顔をして小声で礼央様は聞いてきた。

「華美をどうやったらあんな風に笑顔にできるんですか?」

「・・・・・・・・・・・・ん??」

私は自分の耳を疑った。

あの、腹黒で作り笑いしかしない礼央様がどうやって笑顔にできるかなんて聞いてくるなんてぇぇぇぇ!!!!!

ていうか、なんで私ぃぃぃぃ!?!?

「華美が私に見せてくれる笑顔はどうも上っ面な笑みでしかないのですよ。」

寂しそうにそう言う礼央様。

でも・・・礼央様も大して変わらないと思うのですけど!!!

「でも、君が話しかけたりプレゼントを渡した時は本当に嬉しそうな笑みを浮かべていたんです。何故ですか?私がどんなにプレゼントや愛を囁いたとしても作り笑いや冗談だと言ってくるんです。」

眉を下げて本当に寂しそうに言う礼央様。

それだけ華美様のことが好きなんだと伝わった。

「え、えっと、その、礼央様が華美様の本当の笑顔を見たいと言うのは分かりました。でも、その、礼央様は、もう少しですね。華美様のことを理解した方がいいかと思います。だ、だから、話し合ったりして相手のことを理解した方がいいと思います。だ、だからですね。」

俯いていた顔を上げる。

「2人は話し合うべきだと思います。単純なことでいいんです。礼央様は華美様のことを華美様は礼央様のことを。好きなものは何かとか単純なことでいいんです。少しずつ相手のことを知ったらいいと思います。そしたら、相手も自然に笑顔になることが出来るかと思います。で、でも、礼央様の華美様を大事に思う姿は素敵だと思います。だからこそ私の友人を傷つけないでください。」

礼央様の目を見てしっかり答える。

王族相手にこんなこと言っていいことではないけどやっぱり、華美様には幸せになってもらいたいし、礼央様にもしっかり華美様を幸せにして欲しい。

それに、華美様はプレゼントばかりもらっていて申し訳ないと言っていた。

礼央様は少し目を見開くと微笑んだ。

「そうですね。君の言う通り私は私のことしか頭になかった。しっかり相手のことも考えないとですね。華美のことをもっと知っていくためには話すことが必要ですね。ありがとうございます。それと、私は華美のことを傷つけたりはしません。」

嬉しそうにそう言った。

良かった。

もしかしたら不満がられるかもしれないと思っていたけれど、意見をしっかり受け取ってもらえてわたしも嬉しい。

「どういたしまして。華美様を幸せにしてください。」

ぺこりとお辞儀をして私はその場を立ち去った。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

会場の中には数々の料理が並んでいる。

お肉や魚料理にスイーツやフルーツの盛り合わせなどが沢山あって華やかだ。

わああ!どれも美味しそー!!

私はフルーツを食べるためフルーツの盛り合わせになっている場所に来た。

お皿を取ってフルーツを盛り付けていく。

りんごにオレンジにぶどうに桃にオフランスみたいな名前のやつにと色々乗せていったらそれなりの山になった。

私はそれを持ちながら隅の方へ行った。

フォークを持ちりんごを刺す。

ひと口かぶりつく。

シャリッとした食感に口の中に広がるりんごの蜜の甘さ。

「ん~~~!!美味しい~!」

私は次々とフルーツを食べていく。

どのフルーツもみずみずしくて甘くて美味しい!

「ふはっ!ふふふふっ。」

フルーツを黙々と食べていると近くで笑い声がした。

声のした方を向くと口元を抑えて笑っている雪都様がいた。

「!!?え、あ、雪都様??どうされたんですか?」

私は驚いて目が見開いた。

「いえっ。ふふっ。本当に美味しそうに召し上がるなっと思いまして。」

未だに笑い続ける雪都様。

「えー。それって褒めてますか?でも、なんで笑うんですかー!」

雪都様をジト目で見つつフルーツを食べていく。

フルーツを食べ終えたところで雪都様の笑いも収まったらしい。

「すみません。あの、そろそろダンスが始まるので迎えに来ました。」

そう言って私に手を差し出す雪都様。

私はその行動に頭の上にはてなマークが広がる。

握手でもしたいんだろうか??

でも握手なら手のひら横にするよね。

「踊る場所までお皿を置きに行きつつエスコートします。」

おおー、紳士だ!

そんなことを思いつつ私は雪都様の手のひらに自分の手を重ねる。

「えっと、じゃあ、よろしくお願いします。」

「はい。では行きましょうか。」

そう言って私達は踊る場所まで歩き出した。

その姿を睨んでいる人がいるとは知らずに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!

つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが! 第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。    *** 黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

処理中です...