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7章:12歳になったらしい

66話:不思議なお店

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お店の中に入ると見た目よりも広い空間が広がっていた。

お客さんもそこそこ居てそれなりに賑わっている。

店内を見渡してみるとほとんどが宝石が乗っている小物ばかりだった。

でも、値段を見ると庶民でも買えるような値段の安さだった。

雪都様も値段や店内を見渡して目を見開いている。

「こういったお店があるのですね。」

感心したような声で呟いていた。

宝石などを売っているところは大体貴族が住んでいるところに多かったり庶民では手につけられないほどの値段のものも多い。

けれど、ここは種類があり安値でお買い得商品ばかりだ。

少し怪しくもなってくるのだけれど、この時代偽物の商品なんかは作れない時代だったりする。

例えしようとしても材料などがなくそれに、偽物があったとしても世に売り出る前に本物か偽物か一応鑑定する人が国の門の前にいるのでそういった偽装も何も出来ないのでここにあるのは偽物ではない可能性が高い。

ここの店の人はある意味大冒険をしてるだな~凄いな~!

「ふふっ・・・璃杏様見ませんか?」

ぼっーと店内を見ていたら雪都様に声をかけられた。

はっ!そうだ!!ここ入口だから入ってきた人の迷惑になってしまう!!!

「ありがとうございます。ぜひ!!見て回りましょう!」

私は嬉嬉として店内を見て回る。

やっぱり気軽に着けれそうな物ばかりだ。

髪飾りコーナーでいいものは無いかと探しているとふと、ひとつの髪飾りに目が止まった。

金のダイヤの縁の真ん中にアクアマリンの宝石が飾られ水色のリボンがつけられた物だった。

それにアクアマリンの石言葉は確か・・・。

「確か・・・幸福に満ちる。」

私はこれだ!と思った。

シンプルかつ可愛らしくて、華美様にこれから先の幸せな未来を祈るのにいいものだと思った。

「決まりましたか?」

「はい!」

雪都様がそう聞いてきたので返事をした。

「では会計に行きましょうか。」

そう言って歩き出した雪都様と共に歩きだそうとした時だった。

「そこのお嬢さん。いいものに目をつけたね。」

声をかけられ振り向くと、20歳くらいの美形の男の人がいた。

男の人の容姿は長髪の漆黒の髪を低い位置で一つに束ねて優しそうな水色の瞳をした人だった。

「は、はい・・・ど、どど、ど、ちら様、ですか?」

知らない人に声をかけられてしまい頭の中がテンパる私。

でも、まず第一段階の答え方は成功だ。

どもったけど・・・気にしない、気にしない。

「突然声を掛けてしまい申し訳ありません。私はここのオーナをしております。黒川と言います。」

お、オーナーだとっ!?わ、わたしに何の用だ!?

「え、えっとー・・・なぜ・・・声を、かけたのです?」

身を引きながら答える私に気にせず笑顔で答えるオーナーの黒川さん。

笑顔なのに作ってる感じがする。

こういう人って結構怖いんだよね。

「いえ、ただ、その宝石にはいい意味が込められているのでおめが高いと思いまして・・・それに」

そういうと私の背に合わせて屈みこみ小さな声で言った。

「貴女のフードから見える忌々しくも綺麗な髪に目を奪われてしまってね。」

口は笑っているのに凍えるようなその顔に私の体は強ばる。

黒川さんの手がフードまで手が伸びる。

私は抵抗出来ず目をぎゅっと瞑る。

グイッ

誰かに腕を引っ張られた。

「お話中のところ失礼します。時間が余りないのでそこまでにして頂いてもよろしいですか?」

頭の上から雪都様の声が聞こえた。

「そうですか。時間が無いのなら仕方がありませんね。では、またのお越しを心よりお待ちしております。」

優しく笑う黒川さん。

さっきの凍えるような表情は無い。

「大丈夫ですか?」

手を離してから小さな声で聞く雪都様。

「はい。すいません。ありがとうございます。」

後ろを振り返り謝罪とお礼を言う。

「では、行きましょうか。」

そう言って歩き出す雪都様。

「はい。」

私も雪都様について今度こそ歩き出した。

「やっと、やっと見つけた・・・月鍵結恵の子孫。」

黒川さんが睨みつけながらそういった事に気づかなかった。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

無事プレゼントを買い終えて時間が有り余るほどではないけれど少し余った。

なので、湖乃美ちゃんが魔力検査の時に教えてくれた街が見渡せる丘に行こうということで今現在雪都様と向かっている。

いやー、いま思うと雪都様には助けられっぱなしだったなー・・・・・・あ、何もお礼ができていない!!!

お礼もしないとかただの失礼な奴じゃないか!

ぎええええどうしようぅぅぅぅ!!

せ、切腹とかした方がいいのかな!?

それか、なにかそれ相応の対価をぉぉぉぉ!!!

対価ってなんじゃああああ!!!!

「たしか、こっちでしたよね。」

そんな事を考えているなんて露知らず雪都様はどんどん進んでいく。

10分ほど歩き丘についた。

夕方になりかけているのでオレンジ色と青色のグラデーションが綺麗だ。

街の灯りも所々ついていて暖かい。

ごちゃごちゃ考えていたことも吹き飛ぶくらいに綺麗だ。

「わあー!きれーい!!」

「ええ。そうですね。」

2人でその光景に見入る。

ごちゃごちゃ色々と考えていたけれどしっかりお礼を言おうと決めた。

「あ、あの!雪都様。」

私は雪都様の方を向き呼びかける。

「なんでしょうか?」

そう言って私の方を向く。

空とマッチしていてとても綺麗だ。

美形はどんな所にいても輝くんだと理解しました。

美形は奥深い。

って、そんなこと考える場合じゃなかった!!

「あ、あの、今日は本当にありがとうございました!!助けて頂いたり、迷惑かけたりしてすみませんでした!」

ガバッとお辞儀をして謝る。

困惑しているのがよく分かる。

それともう一つ言うことがあった。

私は礼をしていた体制を戻し雪都様を見る。

「雪都様。あの、その、こんなこと言うのはおかしいんですけど、今日は楽しかったです。」

私は精一杯笑いかける。

雪都様一瞬固まったあとふわっと笑った。

「いえ、こちらこそありがとうございます。僕も楽しかったです。それに、少しでも役に立てたのなら嬉しいです。」

そう言って一歩私に近づく。

「あの、フードを取ってもいいでしょうか?」

困った顔をしてそう聞いてきた。

私は周りを見渡し誰もいないことを確認する。

「は、はい。」

私は頷く。

雪都様はまた私に近づきフードを取った。

銀色の髪が露わになる。

雪都様は華美様のプレゼントを買った袋の中を漁りひとつの箱を出した。

その紐を解き蓋を開ける。

そこには大小の丸い形をした中に桜の花びらと背景が綺麗な青色のグラデーションになっている髪留めがあった。

雪都様はそれを取り出すと私の横髪につけた。

雪都様はそれを付けると満足そうに離れた。

私は困惑する。

なぜ、雪都様は髪留めを私につけたのか。

そもそもなぜ、買っていたのか。

「え、あの、え?」

「今日のお礼です。受け取って下さいませんか?」

首をこてんっと傾げる雪都様。

少々意地悪げな表情をしておる。

流石に着けられてしまった物というか貰ったものを私は返せる度胸はない。

なのでここは有難く受け取っておこう。

「あ、ありがとうございます・・・で、でも、私はお礼できてないんですけど。なにか、欲しい物とかないですか?」

恐る恐る聞く。

ここで無理難題とか言われたらどうしよう。

いや、雪都様はそんな事しない。絶対に。

雪都様は数秒考えてから私に視線を移した。

目が合う。

私は雪都様の口が開くのを待つ。

何を言われるんだろうか。

「欲しいものは無いのですが、では・・・・・・華美姉様の婚約パーティの最初踊りの相手をして頂けないでしょうか?」

その言葉に口をポカーンと開け呆ける。

「そ、そんなことでいいんですか!?」

雪都様はくすくす笑ってはいと答えた。

「そ、そうですか。では、精一杯頑張って踊りますね!!」

ぐっと親指を立ててやる気を見せる。

その後時間も迫ってきたので二人で丘をおり、馬車との待ち合わせ場所まで来た。

数分後に馬車が来てそのまま月鍵家につき雪都様と別れた。

「どうでしたか?雪都様とのお出かけは。」

にやにやしながら聞いてくる空桜さん。

「楽しかったよ?」

「・・・・・・それだけですか?」

え?という顔をする空桜さん。

「え?うん。」

訳が分からず私はキョトンとする。

「もっとこう緊張したとか一緒にいて居心地よかったとかないんですか!?」

緊張したり、居心地よかったり??

「確かに店員さんと話す時は緊張したよ。居心地は・・・普通?」

首をかしげながら答える。

「店のことを聞いてるんじゃないんですよ・・・はあ、これは前途多難ですね。雪都様・・・頑張ってください。」

ぼそっとなにか呟いていけど小さかったので上手く聞き取れなかった。

屋敷についた時お母様と双美さんと陽夏凛さんに空桜さんと同じ質問されお父様にはお嫁に行くにはまだ早いとぎゅうぎゅうに抱きしめられ大変だった。

でも、なんだかんだ言ってこの家は好きだし屋敷にいる人たちも好き。

どっちかと言うとお屋敷の方が居心地がいいと思った私だった。
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