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6章:8歳になったらしい

62話:棺の中の美結さん

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紅葉について行き数分後に目的の場所へたどり着いた。

そこは、紅葉を追いかけた時に紅葉が居た丘の上だった。

「ここはね、結恵ちゃんと精霊王様の憩いの場で二人のお気に入りの場所だったの。」

懐かしむような顔をして丘の下を見る紅葉。

私もつられて下を見る。

「わあ・・・すごい。」

景色を見た瞬間、感嘆の声が漏れる。

見た目はそれほど高くないけれど坂道の上にあるのか街全体を見渡すことが出来る。

街の中にいた時はあまり分からなかったけれど、上から見るとところどころ違うところがあったり森や川が綺麗な澄んだ色をして街の景色をより一層幻想的に仕上げていた。

「お気に召したようで良かったわ。それでこっちに行くと石碑と精霊王様がいるわ。」

嬉しそうに笑ったあと右の方へ体を向け歩き出す。

数歩歩いた先に、石碑と透明で豪華な棺があった。

石碑には読めないけれどもうこんなことが起こらないようにという祈りが書かれているような気がした。

私は手を合わせて亡くなった精霊とこの先の未来こんなことが起きないように祈った。

数秒間手を合わせて隣にある棺に移動する。

何故か手を合わせたことに紅葉は首をかしげていたけど・・・よくよく考えたらこの世界に手を合わせて祈るってことがなかった。

うん、まあ、しょうがないよね。

うんうん。え、だ、大丈夫だよね???

一人不安に駆られつつ棺の中を覗く。

「!!!・・・き、綺麗な人。」

考えていた不安をも吹き飛ばす美人すぎる美人が棺の中で眠っていた。

綺麗な長い金髪に雪のように白い肌。

唇はぷるぷるの艶々で薄桃色をしている。

目鼻立ちもすごく整っていて前世で言う人形のような感じ。

ぜ、絶対前世にこんな人いたらすれ違った人達男だろうが女だろうが関係なく振り向くタイプの人だ。

アニメの主人公とかもしくはサブキャラにいそう!

今世には目がいつか失明するんじゃないかレベルの輝かしい美形が居すぎるけど、これ程美人を私は見た事がない!!

・・・・・・でも、周りに纏ってる黒いのがなんか・・・気分が悪くなりそうな程の恨みと強力な粘着テープ並の執着心を感じる。

うぅぅ・・・気分が悪い・・・美結さん辛くないのかな。

いや、こんな・・・こんな気持ち悪い黒いのまとわり付いてたら辛いはずだよ!!!

あれ?でも、紅葉は黒いものがまとわり付いてるなんて言ってなかっような?

「ふふっ。精霊王様は精霊界で最も美しい精霊として名の上がるほど有名な精霊でもあるのよ・・・また、一緒に話したいわ。でも、本当に綺麗よね。」

悲しそうな表情をした後うっとりしながら話す紅葉。

「うん!分かる!!やっぱり有名だったりしたんだね~・・・・・・あ、あのさ、紅葉。聞きたいことがあるんだけど。その、み、美結さんにまとわり付いてる黒いのって何か知ってる?そもそも・・・あのー・・・えっと、見えてるのかなーって言うことを聞きたくてですね。」

紅葉の言葉に激しく同意しながら言葉を濁しつつ紅葉に聞く。

私の言葉に目を見開く紅葉。

「まとわり付いている黒いもの?・・・・・・い、いいえ。見えないわ。璃杏ちゃんには見えるの?」

その言葉に今度は私が驚く。

紅葉には見えていない?

もしかしてとは思ったけれどまさか本当に見えていないとは・・・。

私の言葉に考え込む紅葉。

「・・・・・・・・・もしかして、それって狗社隼真の呪いかもしれないわ。どんな感じがするか教えて貰ってもいいかしら?」

げぇぇ!!そっか、そうだった!狗社隼真って美結さんを気に入ってて一目惚れしたんだった!!

それで契約していたことに嫉妬して呪いをかけたんだよね。

私は頷いて感じたままを話した。

話している途中少し気分が悪くなりつつあったけれど、なんとか話した。

「はあ、聞く度に呪いの確信が得られるわね。大丈夫?璃杏ちゃん顔色悪いわよ!?」

ため息をついて疲れた顔をする紅葉。

その後私の顔を見て慌てる。

「大丈夫。あまりにも黒いものが気持ち悪すぎて・・・でも、平気だよ!」

笑って紅葉を安心させる。

少しジト目をして私を見てきたけど何かを諦めたらしい紅葉はそろそろ私のいる世界に帰った方がいいということで帰ることにした。

帰り際、棺を人撫でして美結さんの幸せを祈った。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

扉まで歩いている途中私はずっと気になっていたことを聞いた。

「そういえば、結恵さんが来たって紅葉よく言ってるよね?どうやって来てるの?天界と精霊で繋がってるとか?」

そう、私はずっと、ずぅぅぅ─────────っと気になっていたのだ。

紅葉は時々結恵さんが来たとか手伝ってくれたって言ってたから、あれ?結恵さんって女神様だよね?え?どうやって来てるの?という疑問がふつふつと湧いてきて聞くタイミングもわからないまま何年か時が過ぎていった。

だけどやっと、やっと聞けた!!

これで謎が解決するぞぉぉ!!!

少しワクワクしながら紅葉の言葉を待つ。

「え?今日璃杏ちゃんが来た扉からよ?それに、いつも璃杏ちゃんのそばに居るじゃない。姿違うけど。」

「・・・・・・・・・・・・え?」

なんか別ルートで来てるのかなーってファンタジーな事を考えていたのだけれど・・・よく分からない回答が返ってきた。

私の来た扉から来たってことは何となく分かった。

でも、私のそばに居るって何!?どゆこと!?

え?え?えええぇぇぇぇ?????

(え?もしかして・・・璃杏ちゃん知らないの!?てっきり知ってるのかと思って言ったけど・・・あの様子だと理解してないし誰かも知らないようね。はあ。悲しいとか嬉しいとか感情にそれなりに敏感なのに何故か、鈍いところがあるのよねー。)

隣で思いっきりため息をついた紅葉。

「ほあ!?え?ど、どどど、どうしたの!?気分悪いの?そして、さっきの意味ってどういうこと!?」

どこか気分が悪いのかと思って紅葉を見てみるけど至って健康そうだ。

良かったー。

「そのままの意味よ。ほら、ついたからさっさと行きなさい。」

そう言って私の背中を押す紅葉。

私は押されるがままに扉に移動する。

あ、そうだ!紅葉にお礼を言わないと!!

首だけ紅葉の方に向けて私は口を開く。

「紅葉、色々と教えてくれてありがとう!!」

にっと笑って言う。

「べ、別にお礼を言われるほどではないわよ。じゃ、じゃあまたね。璃杏ちゃん。」

「うん!またね。紅葉。」

手を振ってそのまま紅葉と別れた。

情報を結構もらってしまった。

その代償なのか結恵さんと精霊界のことについて謎が深まってしまった。

私は少しガッカリしながらお屋敷へ戻って行った。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

璃杏と別れたあと紅葉は丘の方へ行き美結の元へ行く。

棺を撫でながら紅葉は璃杏について考える。

「黒いものがまとわりついている、ね。何となくうっすら感じたりはしたけれど璃杏ちゃんの言うような黒いものは見えない・・・璃杏ちゃんの魔力がだんだん強くなってきているってことかしら。」

それは美結が助かるかもしれない良いことなのかもしれない。

だけど、魔力が強いものは稀だ。

もしかしたら、あいつに狗社隼真に目をつけられる可能性が大きい。

「璃杏ちゃんが危険だわ。」

ぽつりそう呟いた紅葉の言葉は誰に聞かれることも無く消えていった。

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