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5章:5歳になったらしい

35話:思い出された記憶

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「お招きいただきありがとうございます。伯爵家峰川紗英みねかわさえと申します。よろしくお願い致しますわ。」

「ええ。こちらこそお出で下さりありがとうございますわ。ぜひ楽しんで行ってくださいませ。」

同じ言葉を繰り返す貴族達との挨拶を何とかこなしていく。

言葉遣いは礼儀作法の先生に教わった。

でも、好意的に挨拶を返しているみたいで嬉しいんだけど・・・どこか怖がっていてあまり目も合わせてくれない。

それは少し悲しかったりもする。

私はお父様とお母様のいるところに目を向ける。

人だかりができていて姿そのものは見ることは出来ないけれど何となくオーラが私とは違うキラキラオーラが見えるっ!

そんな皆のお父様やお母様に向ける目は憧れだったりして奇妙な目を向けることは無い。

それだけは救いだ。

でも、確かにいつもなら奇行に走りそうになるお父様も今はビシッとしっかりしていてかっこいい。

お母様も病弱とは思えさせないほど凛々しい。

そんな二人にさすがに私みたいな視線を浴びさせることはないと思う。

私が産まれる前も2人の評判はとても良かったみたいだし。

ぼっーとそんなことを考えていると後ろに人の気配を感じて振り向いた。

私の後ろに立っていたのは私と同じ歳くらいの将来美男美女になりそうな男の子と女の子だった。

女の子の方は胸少し上までのストレート黒髪をハーフアップにして赤い小さな薔薇の髪飾りをつけ薄紫色の綺麗なドレスを着ている。

女の子の目は綺麗な桃色の目をしている。

けれどその目はタレ目の私とは正反対で吊り上がり強気なイメージを与える。

男の子は女の子と同じ黒髪でストレートの髪型で白のワイシャツにネクタイをつけて長ズボンをはいている。

男の子の目は薔薇色の瞳をしている。

「お初にお目にかかります璃杏様。私は星舞公爵家ほしまこうしゃくけ長女星舞華美ほしまはなほと申します。以後お見知りおきを。そして、同じ公爵家として仲良くしてくださると嬉しいですわ。」

流石『凛とした花の公爵家』と言われる星舞公爵家。

礼の仕方がとても滑らかでそれでいて綺麗だった。

ニコっと見た目の印象とは異なる人懐こい笑みを華美様は浮かべた。

その表情に私は安心して自然に頬が緩んだ。

「こちらこそ。私のパーティーにお出で下さりありがとうございますわ。それと、凛とした花の公爵家と言われている星舞様とお近付きになりたいですわ。」

私もカチカチになりながらも挨拶を交わした。

「それは嬉しいわ!そうそう、そして私の隣にいるのが」

華美様はとても嬉しそうな顔をした後隣に立っている男の子を指し示した。

男の子は少し前に出て挨拶をした。

「お初にお目にかかります璃杏様。パーティーにお招きいただきありがとうございます。僕は星舞公爵家長男星舞雪都ほしまゆきとと申します。以後お見知りおきを。」

優しい笑みを浮かべ優雅に礼をする雪都様。

その姿はまさに紳士!!

それに、さっきから感じる女の子達の熱い視線が雪都様に集まっている。

それと共に私には嫉妬的視線を感じる。

その視線はまるで[化け物が近づいてるんじゃないわよ!]と言っているみたいだった。

あんまり視線と注目を浴びたくなかったので「では、パーティーをお楽しみください。」と言って立ち去った。

少し休もうと思ってベランダに出た。

私は誰にも見つからないように隅の方でふぅと力を抜く。

「何とか全員に挨拶終わった~。」

柱を背に私は座り込む。

そして少し考え込む。

私には挨拶回りをしていて引っかかるものを覚えた。

まず、1人目はこの国の第二王子 星宮礼央ほしみやれお王子。

礼央王子は少しくせっ毛な金髪に水色の瞳をした美形。

笑顔を貼り付けてある事が分かりやすかった。

どこか裏表のありそうな王子だった。

そんな王子の特徴を私は見たことがあることに王子と挨拶をした後に思って思い返してみた。

そして、1度夢で見たことがあるということに気づいた。

2人目は王族騎士団長の三男 空橋真陽琉そらはしまひる様。

真陽琉様は少し長めの濃い藍色の髪に紺碧色の瞳をした可愛らしい顔をした美形。

この時私は騎士団には男の娘しか居ないのかと思ってしまった。

真陽琉様は人懐っこい笑みを浮かべていた。

王子とは正反対で裏表のなさそうな人だった。

3人目は侯爵家の長男 月影彼凪翔つきかげかなと様。

彼凪翔様は綺麗な漆黒の黒髪ショートで漆黒の瞳を持った人形のように綺麗な男の子。

でも、本当に人形みたいに表情が出にくく何を思っているのかは分かりにくい。

性格は裏表なさそうだけれどとてもミステリアスな感じの子だった。

4人目は星舞華美ほしまはなほ様。

5人目は星舞雪都ほしまゆきと様。

2人は噂によると血の繋がりのない兄弟らしいけれどとても仲がいいそう。

華美様は見た目と反してとても人懐っこく明るい子であるのだけれど結構お転婆らしい。

雪都様は義理の弟でお転婆の姉の世話を焼いているそう。

そして、最後は1年前に会った立花湖乃美たちばなこのみちゃん。

茶髪に綺麗な黄緑色の目をした可愛らしい女の子。

湖乃美ちゃんはとても明るくそして我慢強い女の子。

私の髪を綺麗だと言ってくれた優しい子だ。

彼女のことはとても引っかかっていた。

私はそんな6人をどこかで見たことがある気がする。

初めて会ったはずなのにずっと前から知っている・・・・・・そんな感じが。

どこであったんだっけ?

ぼっーとそんなことを考えているとズキッと頭に痛みが走った。

「っ!!」

しかもすごく痛い。

頭が割れそうだ。

変な汗もでてきた。

頭が痛すぎて私は体育座りしていて顔をうずくめ頭を両手で抑える。

あまりの痛さに目を瞑ると私の頭の中に映像が流れた。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

「はあー今日も学校終わったー!」

制服のままベッドにダイブしてゴロゴロする『私』。

「あ!そうだ!宿題学校で終わらせたしゲームやろー!」

そんなことを言いながらベッドから起き上がりゲームカセットやゲーム機が入っている棚に『私』は歩いていった。

「えっと・・・あ、これこれ。これまだ終わらせてないんだよね。」

そう言いながら『私』が取り出したカセットは綺麗な絵が書かれたゲームのカセットだった。

その表面には『恋は泡のように』と書かれていた。

「これ、ストーリーがとてもとてもいいんだよねー。」

そんな独り言を呟きながら私はカセットをゲーム機にセットしてゲームを始める。

ゲーム機から音楽が流れる。

そして『私』はゲームのスタート画面を押してゲームを始める。

「一応誰出るか確認しよー。すぐ誰が誰だか分からなくなるんだよね。認知症かな?」

そんな独り言を呟きながら私は登場人物の画面を開く。

「ふむふむこの人が─────────。」

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

映像が終わったのと同時に頭の痛みが引いていく。

完全に頭の痛みが引き私は顔を上げる。

空には青空が広がっていて綺麗だ。

そんな綺麗な空とは裏腹に私の心は完全に土砂降りが降っていた。

今すぐにでも現実逃避をしたい。

いや、お願いだからさせて欲しい。

私は今絶対死んだ目をしていることだろう。

私は気づいてしまった。

引っかかってい人物のことと自分の正体のことまでも・・・。

そう・・・・・・ここは・・・私の大好きな乙女ゲームでもあり死ぬ前に買っていた限定グッズはそのゲームだった。

私は・・・私は・・・・・「『恋は泡のように』の世界に転生してしまったあああ!!!しかも、親友令嬢にっ!!!」

私はまた頭を抱えながら叫んだ。

今の叫びは結構な範囲で響いた気がする。

その後うずくまっている私を見つけてうるさく騒いでいるお父様にお母様が蹴りを入れたりそれを見て皆が唖然としていたのはまた別の話。
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