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9章:ルーシャの憂鬱
Ⅲ
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ルーシャはいつの間にか眠っていた。
顔を横向きにして寝たルーシャの目には涙の跡が残っている。
ルーシャの眠る布団のシーツは握りしめた部分にシワが寄っていた。
外はすっかり暗くなり、夜空には星が瞬いている。
暗闇に浮かぶ、まん丸の黄色い月。
静かに、優しく、月夜がルーシャを照らしだす。
─────月夜が照らすルーシャの部屋の床にキラキラと光が集まりだす。
─────光はひとつの塊になりゆっくりと人の形を成していく。
─────月夜に照らされたその姿は、とても美しい誰もが見惚れるであろう女性の姿だった。
─────この国の者たちなら誰もが知っている女性・・・いや、女神様。
───しかし、その姿は幽霊のようにうすく、透けている。
─────フローリアがルーシャのベッドの横に立つ。
─────フローリアの表情はとても悔しそうな、哀れんでいるような顔をしている。
─────フローリアは躊躇うようにルーシャに手を伸ばす。
─────そっとフローリアはルーシャの髪を撫でると、目を閉じなにかを囁いた。
─────とても小さなけれど心からの言葉は空気に溶けて消えていった。
─────ルーシャから離れたフローリアの姿はそのまま光の粒となって消えていった。
─────その瞬間、部屋の中に優しい風が吹き込んだ。
フローリアが消えたあと、ルーシャはゆっくりと目を開けた。
体を起こして、数秒ぼーっとしたあと、フローリアに撫でられたであろう髪に触れる。
(今のは・・・・・・一体。)
ルーシャはベッドから降りてベランダに出る。
そのまま柵に身を預けて、ルーシャは夜空を見上げる。
小さかったけれど、直ぐに消えてしまったけれど、確実にルーシャの耳に届いた言葉。
ルーシャはひとつ息を吐き出した。
馬車の時よりは重くは無いため息。
「・・・・・・この、不安感が拭えたわけではありませんが・・・少し、心が軽くなった気がしますわ。」
ルーシャは両手を合わせて目を瞑って祈り捧げる。
ルーシャは誰が自分の髪を撫でたのか、なんとなく分かった。
(フローリア様。ありがとうございますわ。未来を変えるために何をすればいいのか私はまだ分かっていませんが、今からすべきことは分かりましたわ。)
ルーシャは心の中でフローリアに向けて言葉を送った。
ルーシャはゆっくりと目を開けて、部屋の扉へと向かう。
扉を開ける瞬間、フローリアが言った言葉をルーシャは反芻する。
『ルーシャ、ごめんなさい。助けてあげられなくて。けれど、いつでも見守っているわ。あなたの幸せを願って・・・。』
バタンッ
扉が閉まりルーシャは部屋を出て行った。
顔を横向きにして寝たルーシャの目には涙の跡が残っている。
ルーシャの眠る布団のシーツは握りしめた部分にシワが寄っていた。
外はすっかり暗くなり、夜空には星が瞬いている。
暗闇に浮かぶ、まん丸の黄色い月。
静かに、優しく、月夜がルーシャを照らしだす。
─────月夜が照らすルーシャの部屋の床にキラキラと光が集まりだす。
─────光はひとつの塊になりゆっくりと人の形を成していく。
─────月夜に照らされたその姿は、とても美しい誰もが見惚れるであろう女性の姿だった。
─────この国の者たちなら誰もが知っている女性・・・いや、女神様。
───しかし、その姿は幽霊のようにうすく、透けている。
─────フローリアがルーシャのベッドの横に立つ。
─────フローリアの表情はとても悔しそうな、哀れんでいるような顔をしている。
─────フローリアは躊躇うようにルーシャに手を伸ばす。
─────そっとフローリアはルーシャの髪を撫でると、目を閉じなにかを囁いた。
─────とても小さなけれど心からの言葉は空気に溶けて消えていった。
─────ルーシャから離れたフローリアの姿はそのまま光の粒となって消えていった。
─────その瞬間、部屋の中に優しい風が吹き込んだ。
フローリアが消えたあと、ルーシャはゆっくりと目を開けた。
体を起こして、数秒ぼーっとしたあと、フローリアに撫でられたであろう髪に触れる。
(今のは・・・・・・一体。)
ルーシャはベッドから降りてベランダに出る。
そのまま柵に身を預けて、ルーシャは夜空を見上げる。
小さかったけれど、直ぐに消えてしまったけれど、確実にルーシャの耳に届いた言葉。
ルーシャはひとつ息を吐き出した。
馬車の時よりは重くは無いため息。
「・・・・・・この、不安感が拭えたわけではありませんが・・・少し、心が軽くなった気がしますわ。」
ルーシャは両手を合わせて目を瞑って祈り捧げる。
ルーシャは誰が自分の髪を撫でたのか、なんとなく分かった。
(フローリア様。ありがとうございますわ。未来を変えるために何をすればいいのか私はまだ分かっていませんが、今からすべきことは分かりましたわ。)
ルーシャは心の中でフローリアに向けて言葉を送った。
ルーシャはゆっくりと目を開けて、部屋の扉へと向かう。
扉を開ける瞬間、フローリアが言った言葉をルーシャは反芻する。
『ルーシャ、ごめんなさい。助けてあげられなくて。けれど、いつでも見守っているわ。あなたの幸せを願って・・・。』
バタンッ
扉が閉まりルーシャは部屋を出て行った。
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