スノードロップの約束

海亜

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9章:ルーシャの憂鬱

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「ではまた、会える日を楽しみにしている。今度は是非、友人たちを紹介したいと思う。」

「ええ。わたくしも楽しみにしていますわ。では、ソルト殿下ごきげんよう。」

ニコッと爽やかに微笑んだソルトに対して、ルーシャは引き攣った笑顔を向けて即座に別れの挨拶をした。

ルーシャの心境は穏やかに話すような気持ちでは無い。

むしろソルトが発したというワードがさらに落ち込み気味のルーシャの心を追撃した。

気持ちはフラフラと歩きながら(実際は公爵令嬢らしく背筋を伸ばした綺麗な歩き方)ルーシャはそのまま馬車に乗り込んだ。

そんなルーシャの心境を知らないソルトは、にこやかにルーシャの後ろ姿を見送った。

❀.*・゚✧̣̥̇ ❀.*・゚✧̣̥̇ ❀.*・゚✧̣̥̇ ❀.*・゚✧̣̥̇

馬車が動き出した瞬間、ルーシャは大きなため息を吐いた。

そのため息は、とても重かった。

わたくし・・・・・・この先、生きていけるかしら・・・前より不安な要素が増えた気がしますわ。)

ルーシャは俯きまたひとつ沈んだため息を吐いた。

1度落ち込んだ思考はそのまま、真っ直ぐに闇へと堕ちていく。

深い深い闇へとルーシャの思考は落ちていき、悪い方悪い方へと考えが向いていく。

(このまま、私は死ぬのかしら・・・首を斬られて・・・喜ぶ者たちの顔を見ながら死んでいくのかしら。)

ふふっと自嘲するような笑い声をルーシャは漏らした。

(意外と、首を斬られたあとでも少し意識はあるんですのよ。)

ルーシャは窓に頭を預けて流れる景色を眺めた。

変わらない街並み。

変わらない歴史。

変わらない人々。

(ああ・・・なんて、つまらない人生なんでしょう。)

流れる景色を見つめるルーシャの瞳は、暗く鈍い光を宿している。

変わって欲しい未来を掴めるのか。

幸せになりたい。幸せになりたいと願いながら、また自分は死んでいくのか。

選択肢があるようで無いこの人生を何度繰り返したらいいのか・・・。

ルーシャの心は思考は深く深くとても深く闇に静かに堕ちていく。

変わっているようでいて変わらない。

(私を・・・期待させないで。あいつが、剣術が得意だなんて今回はじめて知りましたわ・・・・・・そう、はじめて。なぜ今頃こんな情報が出てくるんですの?)

空がオレンジと藍色のグラデーションを描く。

ルーシャは自分の心境みたいと思ったが、直ぐに違うとかき消した。

(私の心はこんなに綺麗ではありませんわ。暗く、暗く、誰も・・・私のことなんて、見てくれませんわ。)

そう考えてルーシャはゆっくりと目を閉じた。

『ルーシャ様!!』

ふと、ルーシャの脳裏に自分の名を呼ぶ少女の声が聞こえ、目を開けた。

実際に聞こえたのではなく、自分の記憶が呼び起こしていることを数秒後にルーシャは理解した。

昨日会ったばかりの侍女見習い兼ルーシャの専属 リア・クリセント。

明るくて、自分のために作ってくれたガーベラの花。

ルーシャはそっと紙のガーベラが入ったポケットを優しく撫でる。

そしてまたルーシャは自嘲気味に笑った。

(ああ・・・今の私はあの子に顔を合わせることなんて出来ませんわ。頑張ろうと決めましたのに・・・頑張ったはずですのに、こんな、暗い気持ちのままあの子にあったらきっと・・・私は・・・また・・・・・・。)

────────────心無いことを言って傷つけてしまう。

サクラ・フェンリルのように。

「はあ。」

ルーシャはまたひとつ重いため息をついて、目を閉じた。


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