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心の扉を開けたなら~蘇芳と一平
エピローグ・初めてのおうち
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「え! ここが蘇芳のにーちゃんの家?!」
玄関に入った一平が目を丸くして立ち尽くしている。それはそうだ、たった今到着した蘇芳の家――古川家は玄関ホールがお貴族様の屋敷のように広いのだから。蘇芳にとっては無駄に広い家なのだが、亡くなった父が大切に守ってきた屋敷なのだから大事に思っている。
今日からしばらく一平は古川家に泊まる。家族全部――両親と妹を亡くし、施設に引き取られた一平だったが、蘇芳が彼を引き取りたいと申し出たのだ。蘇芳はまだ高校生、小学生の子どもを引き取れるような年齢ではないのだが、いろいろと手を回してごり押ししてしまった。蘇芳と一平の関係性が一平の精神の安定にいい影響があることは、施設にいる間に照明されているが、やはりそういった手続きとかは四角四面なものだ。
そしてごり押しのかわりに出された条件が、しばらく古川家に泊まりに行くこと。要はお試し期間である。
一平はそのために今日、初めて古川家を訪れたのだ。
「ようこそ一平。ここを気に入ってくれると嬉しいな」
蘇芳が一平の頭をわしゃっと撫でたが、一平はただただ古川家のたたずまいに圧倒されて呆然としている。
「いや、思ってたよりずっとすごい……」
「まあ、驚くよな。とはいえここに住んでるのは僕と執事の駿河だけなんだ。あとは通いの家政婦さんで京子さん。そこに一平が加わるわけだ」
「え、こんな大きな家なのに?」
「時々京子さん以外の家政婦さんも来るけどね、基本的には」
蘇芳の父が生きていた頃は人を招いて食事、ということもあったが、今はそれどころではない。父が亡くなったことで高校生という若さで昴グループの会長を継いでしまい、自分自身が必死に会長職を勉強しているところだ。おまけに年齢のこともあり、しばらくは表に出ないことに決めているので、客を呼ぶこともそうそうないだろう。
なので家のことは京子と駿河で充分すぎるのだ。ハウスクリーニングを呼ぶこともあるが、基本的にはこのメンツで暮らしている。
そう話しながら階段を上がり、二階の東側の部屋へ向かった。大きな窓から庭がよく見える景色のいい部屋で、日当たりもいい。
「ここは?」
「ここが一平の部屋だよ。どう?」
「え! こんな広い部屋! いいの?」
「もちろん。眺めもいいし、僕の部屋の向かいだからここにしてみたよ。でも他の部屋がよかったら言っていいぞ」
「ううん、うれしい! ありがとう、蘇芳のにーちゃん」
これから1週間ほど一平はここで暮らすことになる。その後施設で面談を経て許可が出れば正式にこの家の子になるわけだ。珍しそうにあちこちを見て回る一平を眺めて、蘇芳はその日が待ち遠しいと思った。
その日の夕食は一平が好きだと言っていたオムライスになった。コーンやプチトマトで色鮮やかなサラダやポタージュスープ、デザートにケーキまで出てきた。
「おいしい?」
「うん! すごくおいしい!」
夢中になって食べ進める一平はすごくキラキラした笑顔を見せている。蘇芳もそれを見てつい笑顔になってしまった。
大きなケーキも平らげて、満足そうにお茶を飲む一平に蘇芳が声を掛けた。
「なあ一平」
「ん~?」
「今回は1週間だけのお泊まりになるけど、いずれはここで一平と一緒に暮らしたいと思ってるんだ。ただ、施設とかのオッケーをもらわないとだめでさ」
「うん、施設長の先生がそう言ってたよ」
「そうなんだよ。一平と僕たちが仲良く暮らしていけそうだって、施設の人たちにわかってもらわないといけないわけ。じゃあさ、ずっと仲良くやっていけるためにはどうしたらいいと思う?」
「そりゃあ――俺がいい子にしてるってこと?」
「そうだな、でもそれ以上に大事なのは、僕も一平もお互い何でも思ったことを伝え合うってことじゃないかと思うんだ」
「伝え合う……」
「うん。これが嫌だなって思ったことをちゃんと教えて欲しい。これが好きだなってこともちゃんと教えて欲しい。僕もそうするし、一平が悪いことをしたら叱るし、いいことをしたら褒めるよ。だから一平もそうしてほしい」
「うーん、むずかしいけどわかった。たぶん」
「はは、お互い手探りだけど仲良く暮らせるようにがんばろう、ってことだよ」
「そっか」
「うちは僕が家主でまだ学生だけど、駿河も京子さんもいる。ちょっと変わってる家族だけど、みんな一平と家族になって仲良くやっていきたいと思ってるよ」
駿河がにこやかに何度も頷いている。それを見て一平も「うん!」と大きく頷いた。
夜は一緒に風呂に入った。背中を洗ったりシャンプーをしたりすると「蘇芳のにーちゃん、思ったより上手だな」と一平からお墨付きをもらったりした。湯船に浸かりながら手で水鉄砲を作るのは一平が蘇芳に教えてくれたけれど、蘇芳は上手に水を飛ばせなくて一平に励まされた。
一平は終始楽しそうではしゃいでいた。風呂から上がって体をふかふかのタオルで拭き、着替えて髪を乾かし終わる頃には眠そうに目をこすっている。
「一平、疲れただろ。もう部屋に戻って寝ようか」
「うん……」
蘇芳に連れられて部屋に戻り、ベッドに横になるなりすぐ静かな寝息が聞こえてきた。
「やっぱり緊張してたかな。疲れたよな、ゆっくりおやすみ」
蘇芳はそう言って照明を消し、一平の部屋を後にした。
そうして蘇芳が学校の課題を終わらせ、そろそろ寝ようかと思っていた矢先のことだ。
蘇芳はふと気配に気がついた。扉の外に誰かいる。誰なのかは能力を使わなくても何となく察することができたので、蘇芳は静かに扉へ向かった。キィ、と小さな音を立てて扉を開く。
「どうした、目が覚めちゃった?」
「――」
無言でうつむき、ちょっともじもじしている一平がパジャマ姿で立っている。蘇芳はしゃがんで一平と視線を合わせた。
「ほら、ちゃんと教えてくれないとわからないよ?」
「その……俺……よく考えてみたら家でひとりで寝たことなくて」
「ああ、そうか。なるほど」
言われてみればそうだ。一平は元々4人家族でアパートに住んでいた。個室があったとは思えない。そして入院中は個室だったのでひとりだったが、おそらくそれはそういうものと受け止めていたのだろう。看護師や医者もいて夜中も廊下には誰かしらの気配があっただろう。そしてその後入った施設では子供同士で同室だったはずだ。寝静まった家でひとりの部屋、というのが初めてだと言いたいのだろう。
おまけに初めて連れてこられた家だ、そこは配慮すべきだった。
「一平、今日は一緒に寝るか?」
蘇芳の言葉に一平がぱあっと笑顔を見せた。
「うん!」
「よし、こっちにおいで――体が冷えてるじゃないか、ずいぶん扉の外にいたの?」
「そんな長いことじゃないよ」
つまり少しの間とはいえ扉の前で立っていたんだな、と肩をすくめながら一平と一緒に蘇芳のベッドに入った。蘇芳はダブルベッドをひとりで使っているので、ふたりで寝ても余裕だ。羽布団にくるまって嬉しそうな一平が、横になり肩肘をついて自分を見下ろしている蘇芳を見上げる。
「ごめん、わがまま言って」
「わがままなもんか。ちゃんと思ったこと教えてくれたんだもんな、偉いよ」
「えへへ」
一平が布団から顔だけ出して、目を細めてちょっと照れながら笑う。その顔がかわいくて、ふわふわの髪を蘇芳がくしゃっと撫でた。
そして二言三言交わす内に一平のまぶたが閉じてくる。やがて聞こえてきた静かな寝息を聞きながら、蘇芳は暖かなものが胸の内に広がるのを覚えた。
「おやすみ、一平」
一平の肩に布団を引っ張り上げ、ランプシェードの明かりを落として、夜は更けていく。
あとはただふたりの寝息が聞こえるばかり。
============
蘇芳と一平の出会いから一緒に暮らすようになるまでのエピソードでした。
ここまでこんな重たい話におつきあいいただき、ありがとうございます。でもまだこの続きを書きたいので、また完結設定はしないままにしておきます。
またそのうち投稿します。さすがにここまで酷い話はないと思いますので…その時はよろしくお願いいたします。
玄関に入った一平が目を丸くして立ち尽くしている。それはそうだ、たった今到着した蘇芳の家――古川家は玄関ホールがお貴族様の屋敷のように広いのだから。蘇芳にとっては無駄に広い家なのだが、亡くなった父が大切に守ってきた屋敷なのだから大事に思っている。
今日からしばらく一平は古川家に泊まる。家族全部――両親と妹を亡くし、施設に引き取られた一平だったが、蘇芳が彼を引き取りたいと申し出たのだ。蘇芳はまだ高校生、小学生の子どもを引き取れるような年齢ではないのだが、いろいろと手を回してごり押ししてしまった。蘇芳と一平の関係性が一平の精神の安定にいい影響があることは、施設にいる間に照明されているが、やはりそういった手続きとかは四角四面なものだ。
そしてごり押しのかわりに出された条件が、しばらく古川家に泊まりに行くこと。要はお試し期間である。
一平はそのために今日、初めて古川家を訪れたのだ。
「ようこそ一平。ここを気に入ってくれると嬉しいな」
蘇芳が一平の頭をわしゃっと撫でたが、一平はただただ古川家のたたずまいに圧倒されて呆然としている。
「いや、思ってたよりずっとすごい……」
「まあ、驚くよな。とはいえここに住んでるのは僕と執事の駿河だけなんだ。あとは通いの家政婦さんで京子さん。そこに一平が加わるわけだ」
「え、こんな大きな家なのに?」
「時々京子さん以外の家政婦さんも来るけどね、基本的には」
蘇芳の父が生きていた頃は人を招いて食事、ということもあったが、今はそれどころではない。父が亡くなったことで高校生という若さで昴グループの会長を継いでしまい、自分自身が必死に会長職を勉強しているところだ。おまけに年齢のこともあり、しばらくは表に出ないことに決めているので、客を呼ぶこともそうそうないだろう。
なので家のことは京子と駿河で充分すぎるのだ。ハウスクリーニングを呼ぶこともあるが、基本的にはこのメンツで暮らしている。
そう話しながら階段を上がり、二階の東側の部屋へ向かった。大きな窓から庭がよく見える景色のいい部屋で、日当たりもいい。
「ここは?」
「ここが一平の部屋だよ。どう?」
「え! こんな広い部屋! いいの?」
「もちろん。眺めもいいし、僕の部屋の向かいだからここにしてみたよ。でも他の部屋がよかったら言っていいぞ」
「ううん、うれしい! ありがとう、蘇芳のにーちゃん」
これから1週間ほど一平はここで暮らすことになる。その後施設で面談を経て許可が出れば正式にこの家の子になるわけだ。珍しそうにあちこちを見て回る一平を眺めて、蘇芳はその日が待ち遠しいと思った。
その日の夕食は一平が好きだと言っていたオムライスになった。コーンやプチトマトで色鮮やかなサラダやポタージュスープ、デザートにケーキまで出てきた。
「おいしい?」
「うん! すごくおいしい!」
夢中になって食べ進める一平はすごくキラキラした笑顔を見せている。蘇芳もそれを見てつい笑顔になってしまった。
大きなケーキも平らげて、満足そうにお茶を飲む一平に蘇芳が声を掛けた。
「なあ一平」
「ん~?」
「今回は1週間だけのお泊まりになるけど、いずれはここで一平と一緒に暮らしたいと思ってるんだ。ただ、施設とかのオッケーをもらわないとだめでさ」
「うん、施設長の先生がそう言ってたよ」
「そうなんだよ。一平と僕たちが仲良く暮らしていけそうだって、施設の人たちにわかってもらわないといけないわけ。じゃあさ、ずっと仲良くやっていけるためにはどうしたらいいと思う?」
「そりゃあ――俺がいい子にしてるってこと?」
「そうだな、でもそれ以上に大事なのは、僕も一平もお互い何でも思ったことを伝え合うってことじゃないかと思うんだ」
「伝え合う……」
「うん。これが嫌だなって思ったことをちゃんと教えて欲しい。これが好きだなってこともちゃんと教えて欲しい。僕もそうするし、一平が悪いことをしたら叱るし、いいことをしたら褒めるよ。だから一平もそうしてほしい」
「うーん、むずかしいけどわかった。たぶん」
「はは、お互い手探りだけど仲良く暮らせるようにがんばろう、ってことだよ」
「そっか」
「うちは僕が家主でまだ学生だけど、駿河も京子さんもいる。ちょっと変わってる家族だけど、みんな一平と家族になって仲良くやっていきたいと思ってるよ」
駿河がにこやかに何度も頷いている。それを見て一平も「うん!」と大きく頷いた。
夜は一緒に風呂に入った。背中を洗ったりシャンプーをしたりすると「蘇芳のにーちゃん、思ったより上手だな」と一平からお墨付きをもらったりした。湯船に浸かりながら手で水鉄砲を作るのは一平が蘇芳に教えてくれたけれど、蘇芳は上手に水を飛ばせなくて一平に励まされた。
一平は終始楽しそうではしゃいでいた。風呂から上がって体をふかふかのタオルで拭き、着替えて髪を乾かし終わる頃には眠そうに目をこすっている。
「一平、疲れただろ。もう部屋に戻って寝ようか」
「うん……」
蘇芳に連れられて部屋に戻り、ベッドに横になるなりすぐ静かな寝息が聞こえてきた。
「やっぱり緊張してたかな。疲れたよな、ゆっくりおやすみ」
蘇芳はそう言って照明を消し、一平の部屋を後にした。
そうして蘇芳が学校の課題を終わらせ、そろそろ寝ようかと思っていた矢先のことだ。
蘇芳はふと気配に気がついた。扉の外に誰かいる。誰なのかは能力を使わなくても何となく察することができたので、蘇芳は静かに扉へ向かった。キィ、と小さな音を立てて扉を開く。
「どうした、目が覚めちゃった?」
「――」
無言でうつむき、ちょっともじもじしている一平がパジャマ姿で立っている。蘇芳はしゃがんで一平と視線を合わせた。
「ほら、ちゃんと教えてくれないとわからないよ?」
「その……俺……よく考えてみたら家でひとりで寝たことなくて」
「ああ、そうか。なるほど」
言われてみればそうだ。一平は元々4人家族でアパートに住んでいた。個室があったとは思えない。そして入院中は個室だったのでひとりだったが、おそらくそれはそういうものと受け止めていたのだろう。看護師や医者もいて夜中も廊下には誰かしらの気配があっただろう。そしてその後入った施設では子供同士で同室だったはずだ。寝静まった家でひとりの部屋、というのが初めてだと言いたいのだろう。
おまけに初めて連れてこられた家だ、そこは配慮すべきだった。
「一平、今日は一緒に寝るか?」
蘇芳の言葉に一平がぱあっと笑顔を見せた。
「うん!」
「よし、こっちにおいで――体が冷えてるじゃないか、ずいぶん扉の外にいたの?」
「そんな長いことじゃないよ」
つまり少しの間とはいえ扉の前で立っていたんだな、と肩をすくめながら一平と一緒に蘇芳のベッドに入った。蘇芳はダブルベッドをひとりで使っているので、ふたりで寝ても余裕だ。羽布団にくるまって嬉しそうな一平が、横になり肩肘をついて自分を見下ろしている蘇芳を見上げる。
「ごめん、わがまま言って」
「わがままなもんか。ちゃんと思ったこと教えてくれたんだもんな、偉いよ」
「えへへ」
一平が布団から顔だけ出して、目を細めてちょっと照れながら笑う。その顔がかわいくて、ふわふわの髪を蘇芳がくしゃっと撫でた。
そして二言三言交わす内に一平のまぶたが閉じてくる。やがて聞こえてきた静かな寝息を聞きながら、蘇芳は暖かなものが胸の内に広がるのを覚えた。
「おやすみ、一平」
一平の肩に布団を引っ張り上げ、ランプシェードの明かりを落として、夜は更けていく。
あとはただふたりの寝息が聞こえるばかり。
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蘇芳と一平の出会いから一緒に暮らすようになるまでのエピソードでした。
ここまでこんな重たい話におつきあいいただき、ありがとうございます。でもまだこの続きを書きたいので、また完結設定はしないままにしておきます。
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