79 / 106
番外小話
チャイを囲んで
しおりを挟む
時系列的には本編の真っ最中。優がまだ古川家に匿われている頃のエピソードで、まだ総一郎パパの生存は知りません。
そんな時期の、優と蘇芳の会話です。
******************
夏が終わり、朝晩は空気が涼しく感じられるようになってきた。
夜にのんびり読書を楽しんでいたけれど、何となく口さみしくなって優はキッチンに降りてきた。さすがに食べる気はないけれど、何か飲みたい。
「ミルクティにしようかな。夜だけどミルクいっぱいいれてカフェオレもいいかも。でもコーヒーは眠れなくなっちゃうかなあ」
時間は夜の10時、みんなそれぞれ自室に戻って過ごしている時間だ。そのはず。
なのにキッチンから灯りが洩れている。
「あれ? 蘇芳さん」
そこにいたのはきれいなプラチナブロンドの人。お風呂上りなのか、髪が少しだけうねっている。紺のパジャマ姿は優はあまり見たことがない。
「やあ、優ちゃん」
そう言って微笑む人の手にはマグカップ。棚から取り出したばかりのようでまだ未使用だ。
「何か飲むんですか? 私も何か淹れようと思ってたから一緒に淹れますよ」
「ありがとう、助かるよ。何飲むの?」
「うーん、まだ迷ってます。紅茶かコーヒーかハーブティーか」
「はは、幅広いな」
「ええと……蘇芳さんは何飲みますか?」
「紅茶でも飲もうかと思って来たんだよ。でも淹れてくれるなら何でもいいよ」
「じゃあ紅茶にしましょっか。そうだなあ――チャイとか好きですか?」
「ああ、いいね。好きだよ、あれ。でも大変じゃない?」
「そんなことないですよ、それに私も飲みたくなってきましたから。ちょっと待っててくださいね」
言いながら片手鍋を取り出した。
水とスパイスを鍋に入れてじっくり煮出す。いったん火を止めて茶葉を入れ、2分ほど蒸らすといい感じに色が出てきて、スパイスと紅茶の香りにうっとりする。最後に砂糖と牛乳を入れて沸騰直前まで温めれば出来上がり。蘇芳のカップと自分のカップに注ぎ分け、ダイニングテーブルに座ってテレビを見ている蘇芳のところへ持っていった。
テーブルに置いたカップから湯気とスパイスの香りがふわりと広がる。
優も蘇芳の向かいに腰かけて、熱々のカップからチャイをずず、とすすった。
「うん、美味しい」
「よかったです」
「スパイスがすごくいい香りだね。何を使ってるの?」
「シナモンとカルダモンとクローブですね。この3つが基本らしいですよ」
「よく知ってるねえ」
「最近レシピ探すのにハマってて、動画とかもつい料理関係のばっかり見ちゃうんですよね」
「料理、上手だもんね。ひょっとして将来はシェフを目指すとか?」
「お料理好きですけど、そこまでじゃないかな。生半可な覚悟で出来る仕事じゃないって思います。体力的にもねえ」
以前見たテレビで食堂経営者のものすごく多忙な一日を密着取材していた。個人経営だったのももちろんだが、料理人という仕事がいかに体力勝負であるか、大変な仕事であるかは理解したつもりだ。
「うん、大変な仕事だよね」
そう言って蘇芳もずず、とチャイをすする。蘇芳も大変さのベクトルは違うかもしれないが相当大変な仕事をしているのにな、と優は思う。仕事の具体的な内容はわからないけれど、毎日大変なんだろうな、ということはわかる。
蘇芳は26歳。普通なら巨大企業グループの会長なんてやっている年齢ではない。だというのに昴グループは企業ごとに多少の浮き沈みはあっても全体として上り調子だと聞いている。一体学生時代にどんな勉強や経験をしたらこんな規格外の人間になれるんだろうか。
「蘇芳さんだって大変なお仕事じゃないですか。大学で勉強しただけじゃ出来ないですよね――そういえば蘇芳さんは何学科?」
「僕? 僕は経営学科だよ。大学に進学した段階でもう隠れ会長職だったからね、ちゃんと勉強しなきゃと思って」
「うわー……実践しながら勉強してたんですね」
「まあ、そういうことだね。とはいっても学生の間会社の方は代理の人に任せてたけどね」
(絶対謙遜だ。代理に任せていたって言っても、最終決定は蘇芳さんがしていた筈だよね)
ははは、と若干乾いた笑い声をこぼしてしまった。が、それを見ていた蘇芳がハッとしてカップをテーブルに置いた。
「――そっか、優ちゃん普通に学校行ってれば来年受験なんだね」
「え……」
「進路とか考えてる?」
「ぼんやり、くらいですけど。興味持てるのがやっぱりお料理とかなんですよね」
でもやっぱり料理人はハードルが高い。第一、今は蘇芳たちに匿ってもらっている身の上だ。高校を卒業して大学へ進学、なんて夢のまた夢、そんな日が来るかどうかすらわからない。それに総一郎亡き今では学費の問題もあるし、現実的には少々ハードルの高い話だ。
けれど、未来の夢を語るのは決して悪いことじゃないと優は思っている。いつも押し隠している不透明な未来への不安にまっすぐ向き合うには、将来の目標を持つのが一番だと思っているから。
「私、この家で暮らすようになって思ったんです。お料理自体は不特定多数の人に食べてもらうんじゃなくて、自分の大事な人に喜んでもらえれば満足だって。京子さんのお手伝いしてるの、だからすごく楽しいの」
「それはよかった」
「京子さんに献立の立て方とかも教わって――それもすごく勉強になるし。だから」
ちらっとキッチンに視線を向ける。
「栄養士さんとか目指してもいいのかな、とか」
「へえ、いいじゃないか。なるほど、料理に関わる仕事ってそういう道もあるわけだね」
「まあ、今の状態じゃ夢のまた夢ですけどね。でも進学のための勉強は続けようかな」
そうして手の中のマグカップをゆっくりと回して、底にたまってしまったスパイスを軽く撹拌してから飲み干した。スパイスの香りと砂糖の甘さ、ミルクのコクが口の中に広がって、ほんの少しだけ落ち込んだ気持ちを落ち着けてくれる。飲み干して顔を上げるとこちらを見ている蘇芳と目が合った。
「きっとそんなに遠い未来の話じゃないと僕は思うよ」
「だと……いいなあ」
「優ちゃんが頑張りたいなら僕たちも精一杯バックアップするよ。お金も心配しないでいいから」
「あっいえ、お金は――さすがに」
「気になるなら卒業してからゆっくり返してくれればいいよ。返さなくても気にしないけどね」
「そこはかっちりケジメつけますから!」
「ふふ、うちの子に学費出すのは当たり前だと思うんだけどねえ」
優はびっくりして蘇芳を見た。うちの子――つまり家族だなんて言ってくれるとは思っていなかったからだ。嬉しいようなこそばゆいような気持ちがじんわりと胸に広がる。自分にもしお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかなと思ったら、恩人という高い位置にいた蘇芳が少し身近に感じられる気がした。
「それでもです。今だってお世話になりすぎてる自覚ありますから、その分も含めてちゃんとしたいんです」
「真面目だよね。まあ優ちゃんらしいけど。僕としては京子さんを手伝って家事をしてくれているので充分だと思ってるけど」
そんな優にもう一度笑いかけて、蘇芳は席を立って自分と優のマグカップを取った。
「ご馳走様。美味しかったよ」
「あ、私が洗います」
「いいからいいから。たまにはやらせてよ」
「えっ――じゃあお願いします。私、拭いて片付けますね」
「なんだ、結局手伝ってくれるんだ。じゃ、一緒にやろうか」
「はぁい」
キッチンへと消えていく二人。
誰もいなくなったテーブルのあたりには、まだほのかにスパイスとミルクの残り香が残っていた。
そんな時期の、優と蘇芳の会話です。
******************
夏が終わり、朝晩は空気が涼しく感じられるようになってきた。
夜にのんびり読書を楽しんでいたけれど、何となく口さみしくなって優はキッチンに降りてきた。さすがに食べる気はないけれど、何か飲みたい。
「ミルクティにしようかな。夜だけどミルクいっぱいいれてカフェオレもいいかも。でもコーヒーは眠れなくなっちゃうかなあ」
時間は夜の10時、みんなそれぞれ自室に戻って過ごしている時間だ。そのはず。
なのにキッチンから灯りが洩れている。
「あれ? 蘇芳さん」
そこにいたのはきれいなプラチナブロンドの人。お風呂上りなのか、髪が少しだけうねっている。紺のパジャマ姿は優はあまり見たことがない。
「やあ、優ちゃん」
そう言って微笑む人の手にはマグカップ。棚から取り出したばかりのようでまだ未使用だ。
「何か飲むんですか? 私も何か淹れようと思ってたから一緒に淹れますよ」
「ありがとう、助かるよ。何飲むの?」
「うーん、まだ迷ってます。紅茶かコーヒーかハーブティーか」
「はは、幅広いな」
「ええと……蘇芳さんは何飲みますか?」
「紅茶でも飲もうかと思って来たんだよ。でも淹れてくれるなら何でもいいよ」
「じゃあ紅茶にしましょっか。そうだなあ――チャイとか好きですか?」
「ああ、いいね。好きだよ、あれ。でも大変じゃない?」
「そんなことないですよ、それに私も飲みたくなってきましたから。ちょっと待っててくださいね」
言いながら片手鍋を取り出した。
水とスパイスを鍋に入れてじっくり煮出す。いったん火を止めて茶葉を入れ、2分ほど蒸らすといい感じに色が出てきて、スパイスと紅茶の香りにうっとりする。最後に砂糖と牛乳を入れて沸騰直前まで温めれば出来上がり。蘇芳のカップと自分のカップに注ぎ分け、ダイニングテーブルに座ってテレビを見ている蘇芳のところへ持っていった。
テーブルに置いたカップから湯気とスパイスの香りがふわりと広がる。
優も蘇芳の向かいに腰かけて、熱々のカップからチャイをずず、とすすった。
「うん、美味しい」
「よかったです」
「スパイスがすごくいい香りだね。何を使ってるの?」
「シナモンとカルダモンとクローブですね。この3つが基本らしいですよ」
「よく知ってるねえ」
「最近レシピ探すのにハマってて、動画とかもつい料理関係のばっかり見ちゃうんですよね」
「料理、上手だもんね。ひょっとして将来はシェフを目指すとか?」
「お料理好きですけど、そこまでじゃないかな。生半可な覚悟で出来る仕事じゃないって思います。体力的にもねえ」
以前見たテレビで食堂経営者のものすごく多忙な一日を密着取材していた。個人経営だったのももちろんだが、料理人という仕事がいかに体力勝負であるか、大変な仕事であるかは理解したつもりだ。
「うん、大変な仕事だよね」
そう言って蘇芳もずず、とチャイをすする。蘇芳も大変さのベクトルは違うかもしれないが相当大変な仕事をしているのにな、と優は思う。仕事の具体的な内容はわからないけれど、毎日大変なんだろうな、ということはわかる。
蘇芳は26歳。普通なら巨大企業グループの会長なんてやっている年齢ではない。だというのに昴グループは企業ごとに多少の浮き沈みはあっても全体として上り調子だと聞いている。一体学生時代にどんな勉強や経験をしたらこんな規格外の人間になれるんだろうか。
「蘇芳さんだって大変なお仕事じゃないですか。大学で勉強しただけじゃ出来ないですよね――そういえば蘇芳さんは何学科?」
「僕? 僕は経営学科だよ。大学に進学した段階でもう隠れ会長職だったからね、ちゃんと勉強しなきゃと思って」
「うわー……実践しながら勉強してたんですね」
「まあ、そういうことだね。とはいっても学生の間会社の方は代理の人に任せてたけどね」
(絶対謙遜だ。代理に任せていたって言っても、最終決定は蘇芳さんがしていた筈だよね)
ははは、と若干乾いた笑い声をこぼしてしまった。が、それを見ていた蘇芳がハッとしてカップをテーブルに置いた。
「――そっか、優ちゃん普通に学校行ってれば来年受験なんだね」
「え……」
「進路とか考えてる?」
「ぼんやり、くらいですけど。興味持てるのがやっぱりお料理とかなんですよね」
でもやっぱり料理人はハードルが高い。第一、今は蘇芳たちに匿ってもらっている身の上だ。高校を卒業して大学へ進学、なんて夢のまた夢、そんな日が来るかどうかすらわからない。それに総一郎亡き今では学費の問題もあるし、現実的には少々ハードルの高い話だ。
けれど、未来の夢を語るのは決して悪いことじゃないと優は思っている。いつも押し隠している不透明な未来への不安にまっすぐ向き合うには、将来の目標を持つのが一番だと思っているから。
「私、この家で暮らすようになって思ったんです。お料理自体は不特定多数の人に食べてもらうんじゃなくて、自分の大事な人に喜んでもらえれば満足だって。京子さんのお手伝いしてるの、だからすごく楽しいの」
「それはよかった」
「京子さんに献立の立て方とかも教わって――それもすごく勉強になるし。だから」
ちらっとキッチンに視線を向ける。
「栄養士さんとか目指してもいいのかな、とか」
「へえ、いいじゃないか。なるほど、料理に関わる仕事ってそういう道もあるわけだね」
「まあ、今の状態じゃ夢のまた夢ですけどね。でも進学のための勉強は続けようかな」
そうして手の中のマグカップをゆっくりと回して、底にたまってしまったスパイスを軽く撹拌してから飲み干した。スパイスの香りと砂糖の甘さ、ミルクのコクが口の中に広がって、ほんの少しだけ落ち込んだ気持ちを落ち着けてくれる。飲み干して顔を上げるとこちらを見ている蘇芳と目が合った。
「きっとそんなに遠い未来の話じゃないと僕は思うよ」
「だと……いいなあ」
「優ちゃんが頑張りたいなら僕たちも精一杯バックアップするよ。お金も心配しないでいいから」
「あっいえ、お金は――さすがに」
「気になるなら卒業してからゆっくり返してくれればいいよ。返さなくても気にしないけどね」
「そこはかっちりケジメつけますから!」
「ふふ、うちの子に学費出すのは当たり前だと思うんだけどねえ」
優はびっくりして蘇芳を見た。うちの子――つまり家族だなんて言ってくれるとは思っていなかったからだ。嬉しいようなこそばゆいような気持ちがじんわりと胸に広がる。自分にもしお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかなと思ったら、恩人という高い位置にいた蘇芳が少し身近に感じられる気がした。
「それでもです。今だってお世話になりすぎてる自覚ありますから、その分も含めてちゃんとしたいんです」
「真面目だよね。まあ優ちゃんらしいけど。僕としては京子さんを手伝って家事をしてくれているので充分だと思ってるけど」
そんな優にもう一度笑いかけて、蘇芳は席を立って自分と優のマグカップを取った。
「ご馳走様。美味しかったよ」
「あ、私が洗います」
「いいからいいから。たまにはやらせてよ」
「えっ――じゃあお願いします。私、拭いて片付けますね」
「なんだ、結局手伝ってくれるんだ。じゃ、一緒にやろうか」
「はぁい」
キッチンへと消えていく二人。
誰もいなくなったテーブルのあたりには、まだほのかにスパイスとミルクの残り香が残っていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる