674 / 681
20章 魔法少女と空
644話 魔導神は王国復興へ
しおりを挟む目が覚めると見知らぬ天井が目に飛び込んできた。というか最近は知った天井を見ることがなかった気もする。
「おはようございます、空。」
「ん、夢か。」
横を向くと、変人が映っていた。知らない天井よりも奇怪な存在だ。
「現実です。」
「現実かぁ……」
仰向けになりながら頭に手を置いた。
いやまぁ、別にいいけど。
布団をどかして、よっこらせっと立ち上がる。
「うぇぶしっ。」
残った布団を上から被せた。どうせクンクンするから時間稼ぎだ。
「……お腹すいた。」
くるくると鳴くお腹の音に耳を傾けながら、食材のない私はどうしようかと頭を捻る。
何もしないってのも息が詰まるし、ちょっと外行ってみようかな。
部屋を出て、小さめのこの家から出た。もっと大きく作ってくれてもいいんじゃないかな。ルーアも配慮が足りないな。
「起きたか。」
「……ルーア?」
玄関前で薄暗い空を見上げていると、ちょっと際どい服を着た少女がいた。
「なにかの?そんなにジロジロ見て。」
「いや、服エロいなぁって。よくよく考えてみたら。」
「よくよく考えるでない!気色悪いのぅ……」
ぶるるっと震えたように体を抱いた。それに加えて「これはミュール殿の趣味であっての」と視線を彷徨わせていた。
地味に気に入ってるくせに。
私の神眼にはばっちりと映っている。
「起き抜けで悪いがの、主にはついて来て欲しいところがある。」
「デート?」
「そんなわけがなかろう。」
こっち、とだけ言って、引っ張るでもなく歩いて私を案内する。
「まぁ、私のいなくなった後、色々してくれてありがと。」
その背中に感謝の言葉を投げかけた。ルーアはそれに反応し、ヤバいやつを見る目をして振り返った。
「……主、頭打ったのか?」
頭を2度、指でトントンした。握り拳を振りかぶるのをもう片方の腕で防いだ。
「私1人じゃ、神を殺せてもこの世界を守ることなんてさ、できないから。」
「それを言うなら我も同じになるの。」
「どういうこと?」
「我も、この世界を守れても神を殺すなんて不可能だっと言っておる。」
「じゃあ、ルーアも私にありがとうだ。」
「そういうことになるの。」
「なら口に出そうよ。私も出したでしょ。ありがとう、って。本当に感謝してる。私の守りたいものを守ってくれて、本当に。」
「……随分と丸くなったの。」
ルーアは私のいい子っぷりに心打たれたようだ。
あれ?それにしては表情が硬い。
「感謝しておる。我も、龍神様の守ろうとしたこの世界を、居場所を、好いておる。」
「60点。」
「配点を教えてもらえんか。」
軽口を交わし合いながら、いつの間にか並んで語り合う。
「でもま、及第点かな。」
「変革の神からのありがたい言葉じゃの?」
「それ煽ってるぅ?」
「さあの。」
いつの間にかルーアの口元は柔らかく弧を描いていた。これも、私の守りたかった景色なのだろう。
「それでこれ、どこ行ってるの?」
「とある人物の下だ。」
「誰?」
「国王。」
「こくおう?」
「そう言っておるだろう。」
私の表情に、ピシリとヒビが入った。
記憶をどこかへ追いやるため、私達は無理矢理話を続けた。
私の強引テクでルーアから、四神の話を聞き出しまくった頃には、目的の場所についてしまっていた。
「ここ?」
今朝の私の寝床より少し大きめといったサイズの、一軒家だった。
「我にとって王だの国民だのは知ったことではない。」
そもそも我、龍。そう言って普通にノックした。
私も神なんだけどさ。
「あ、間違えました。」
ルーアの開けた扉を、私は拳で封鎖した。
んんんんん?ん?
私は再度、頭の中で今見た光景を思い出す。
国王の正面に、神龍のリュウムが座って話していた。なにあれ、いつの間に?
奥に無心(という名の殺気)を持つオリーヴさんが見えた。国王って、結婚して子供までいなかったっけ。
いや……側室って線も?
「物凄く失礼なこと思っておらんか?」
ルーアは私の腕をポンポンと払い、再び戸を開けた。
「龍神様、魔導神様。お戻りになったのか。」
紫髪の龍が口を開いた。かたん、とソーサーにカップを置く音だけが響く。
「我の代わりに大使となってくれたこと、感謝しておるぞ。」
「ありがたき幸せ。」
リュウムは凛とした姿勢のまま胸の辺りに手を置いた。血気盛んな四族龍とは思えない振る舞いだ。
「早よ来んか。」
玄関を潜ったと思えば、首だけこっちに回して指図する。
「まぁ……うん、国王も元気そうで。」
「ソラもソラだな。神になったと聞き多少の憂慮はあったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。」
「それ、どういうこと。」
王にしては無邪気な笑みを携えて、目を細めた私の視線を躱していく。
「で、この状況何。」
「こちらから説明しよう。」
国王はルーアを一目見て、挙手した。
「では、任せるとするかの。」
「紅茶でございます。」
ルーアはリュウムの横に着席すると、しれっと用意された紅茶に口をつける。
「私は立ってろと。」
仕方なく、そのまま話を聞くことにした。
かくかくしかじか。
「つまり、これは龍と人との共存を示す一環というわけだ。」
「私が神界にいる間になにやってんの。」
話を聞かされ、知らぬ間に国が変わっていたこと知った。色々世界、変わりすぎだ。
簡単に説明するとこうだ。
この危機を乗り越えるのに国の力じゃ足りない。だから龍という格上の力を盾に、士気を上げながらこの空間に逃げて来た。そのため、王国は龍王国と名を変えた。
神龍として、人の世界でいう大使のような役回りでリュウムを差し出し、共存を目指すため手を取り合っているという面目を作っている。とのこと。
それを淡々と話されて、今こうしてなんとか整理できた。
「国王も国王で、色々やってくれてたってことにしとくか。」
驚きは全てその答えに捨てて、ルーアに視線をやる。ここに来た目的は、こんなことのためじゃないだろう。
「リュウムよ、他の3人は知らんかの?」
「無視すんなよ。」
「気のせいじゃないかのぅ。」
わざとらしい演技を交えて、ルーアは自分の質問を貫いた。
「偵察に行ったのかと。」
「そうか。奴らもなかなか自覚が出て来たじゃないか。」
そう言って、あの時命令が聞かれずにやいやい言っていたルーアは賢しらに振る舞う。
「で、なんのために連れて来たの?」
「我に聞くな。用があるのはそこの王だけなのだからな。」
「そうなの?」
「その通りだ。」
国王は頷いた。
なら言えや。
と心のツッコミを炸裂させていると、国王は居住まいを正した。紅茶も手から離し、真剣な面持ちを向けてくる。
「此度は、ある願いがあって呼び立てたのだ。疲れているだろうが、頼まれてくれるか?」
「できることだけね。」
「協力、感謝する。」
国王は深々と、座ったまま頭を下げる。ゆっくりと頭を上げると、再度口を開いた。
「これは我々の問題だ。できうる限りは我々王国の力で解決したいと望んでいる。神の力に、頼り切りというのも面目が立たぬだろう。」
「だから、できることをやるって言ってるでしょ。私だって、この国の国民の1人なんだから。」
「……そうか、そうだったな。ソラは神である前に、この国の民だ。失礼を言ったな。」
国王は含み笑いをした。
「早速だが働いてもらうことにしよう。」
「え。」
私の朝ごはんはブラックホールに吸われて消えた。
———————————————————————
あれ、アーレどこ行った?
そう思った方もいるでしょう。私も思いました。というか、最近忙しすぎて記憶がみっちみちで死んでます。過労死しそう(?)
ですがあの子は旅に出ているのです。そう、どこか遠くへ。
まぁそんなわけもなくただ単に忘れていただけなので、「実は裏から色々してました」っていう設定で今度出します。
自分のキャラを忘れてすみませんでした。矛盾があっても、キャラは責めないで下さいね。私はならいくらでも見下していいので。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる