652 / 681
19章 魔法少女と創滅神
622話 魔法少女は萎縮する
しおりを挟む闇の世界からこんにちは。こちら魔法少女です。
重力に負けないスピードで遙か上空へ飛ばされている私。人間をボールみたいにぶん投げてくれたこの使徒は、悠々と並走……並翔している。
「滑稽でしたよ、辿り着けもしない場所を懸命に探す姿は。創滅神様も、大層お喜びの様子で盃を傾けておりました。」
「神って酒呑むんだ。」
「必要はありませんが。嗜むことはしますよ。」
淡々と、そういう適当なことは返してくれる。どうやら、無駄話は時間稼ぎにすら入らないらしい。
……私も私でなんでこの状況に慣れてるんだろうね!うん!私も分からない!
自分のことは自分が1番よく分かるという言い訳をする人がいるだろうが、そんなことを言う人間は大抵私のような分からない人間だ。
聡い人間というのは、自分や他人を鵜呑みにせず人の評価を自分に取り入れるという行為をするのだ。
『つまり何が言いたいか分からない』
『分からな~い』
どうやら私達には難しい話だったみたいだね。
と言っているが、私達はニアリーイコール私。私も理解できていない。
「……私はどのくらい飛んでればいいの?」
「止まればそれが到着の合図です。しっかり、調節して投げましたから。」
「……おぅふ。」
「気色悪い……」
私はしれっと視線を逸らした。そんな、心の底から漏れたような言葉をかけてほしくはなかった。
こんな態度、創滅神に殺されちゃうよ!
半ば自暴自棄が混ざりながら、そう叫んだ。もちろん心で。
「創滅神様の御前では、極力失礼のないよう振る舞っていますので。」
「うん。創滅神の話する時だけちょっと丁寧になるの傷つく。」
心の声を読まれてる件についてはこの際無視する。
「私は、この名も、身体も、思考も、何もかも全てが創滅神様の御心のままにあります故。貴方のような方と会話しているだけマシと思ってほしいですね。」
氷のように冷たく言われてしまった。時々アイスピックのように鋭く、普段は氷塊のように冷たく固い。この悲しみはどこへ。
あとどれだけこの精神攻撃を喰らえばいいんだろう。
約1時間という、何もしないには長い時間が過ぎた。それは、言葉責めから解放される瞬間でもあった。
「到着ですね。」
なんの目標もないというのに、すげなく言ってみせた。
うぉっ……体重っ……いや私の体重か。
ずっと無重力化、それも逆側に力を加え続けられていたせいかめちゃくちゃ私の体重が重く感じる。
説明するのは難しいけど、失速に伴って体にかかる圧がなくなり、とうとう背中を強打した。
「…………ったぁ。」
普通に強打していた。痛い。目を開けると、そこは変わらずの光なき暗闇。
でも使徒さんの姿が目に映ってるってことは、光はあるはずで……
もういいや。考えるだけ無駄だし。
「ようこそ。この先が正真正銘の『核盤』。創滅神様がお待ちになられております。」
「自ら殺されに行けって?そのつもりだけど。」
「逆を言えば、こちらは殺神者を招き入れているということですから、変わらないかと。」
綺麗なターン。ピシッと決まり、私をおいて歩いて行く。
この使徒、私を案内する気が微塵もない!
地面も何もない闇から背中を離し、座った状態で軽くジト目をぶつけておく。
これが精一杯の仕返しだ。
あれは、使うわけにはいかないし。
唯一の対抗策は、まだまだ胸の奥に秘めておく。唯一なんだから、そりゃそうだ。
不満たらたらのままでは仕方がないので、ついて行くことにした。
「なぁにこれぇ。」
縮こまって首をキョロキョロと動かす。私の網膜はどうやら麻痺ってるらしい。
「本物ですよ。」
「私の網膜、バグってなかったのかこれ。」
何度も目を擦り、半信半疑で現実を受け止める。
左右をご覧ください。
ズラーっと人間の形をしたナニかが並んでる。
身長?でいいのかな。それぞれ違うし、顔も違う。性別も違う。でも生きてはいない。確実に。だって、呼吸もなければ目に光もない。
「これ、なに。」
「稼働不可能な人形です。」
「それ、説明になってない。」
「我々使徒と少し似た存在でしょうか。貴方が下界で戦闘した使徒もどきの、更に劣化版といったもの。」
「えぇ……」
ちょっと何言ってるか分かんない、といつもなら言うはずだ。そんなこと言う元気もないくらいには、ビビっている。
これ、アニメ的な展開だと急に全部動き出して襲ってくるのがセオリーだよね。
いや、現実にセオリーとかないか。
しかし、現実といえどこの世界は他者が管理している世界。セオリーが通用している可能性がある。
「稼働不可能と言いましたよ。」
「敵の言葉を信用しろと?」
「そうは言っていませんが。」
「結局そういうことじゃん。」
警戒心野良猫並になった私は、ガルルと使徒に言葉で噛み付く。
何か怖さを紛らわすこと……この道に愛着でも持たせようかな。
なら名前を作らないとね。
名前……名前…………
使徒ロードでいっか。
そんな適当な命名に1ミリも愛着など湧かないのは知っていたことだ。じゃあ何故やったかと聞かれても、私は答えに窮するだろう。
「ねぇ……『核盤』にはこの人形しかないの?」
長く流れた沈黙を、その言葉で拓いた。少し間をおいて、答えが返ってくる。
「基本は。」
「使徒もいるって聞いたんだけど。」
「使徒は何か目的がない場合には稼働しません。どうやら、ウィリーは貴方に殺されてしまったようですが。」
軽く殺意が混じっているように思えるのは気のせいだ。気のせいということにしておこう。
「それは仕方ないじゃん。私も、殺されかけたんだし。」
「使徒とは創滅神様の御創りになられた至高の存在です。いい気はしません。」
「じゃあどうすればいい気になるの?」
「話の方向性を間違えてますが。」
淡々と答えていたから気にせずにプライバシーも引き摺り出そうとしたが、ばちばちなセキュリティが貼られている。
会話してるようでしてない。というかしてる気分にならない。
目の前の、言葉を解するだけの異次元の存在に少しばかりの恐怖を抱いてしまう。
結局のところ、神は神、人は人。
根源的なものを追い求める神。
表面的なものを守り通そうとする人。
どちらが正しいかなんて私ごときに分かろうはずもない。
先へ先へと歩く彼女は既に口を噤んでしまった。質問をやめれば即座に口を閉ざす機械っぷり。
使徒って心はあるのかな。創滅神に対して無礼を働けばキレるし。
いや、あれは過剰な忠誠心か。
つまり神版百合乃。
『私。ふざけすぎ』
『もうすぐボス戦なんだよ?』
『ふっ。神との一騎打ちがボス戦、か。なかなか面しr』
『しゅーちゅー!』
一部変なのが混ざっていたのを除いて、私達は私に説教をしてきた。
分かってるよ。これが2度はないラストチャンスってことも、全てがかかった戦いってことも。
下界を思い出す。
百合乃に死なないでと泣かれた。記憶に刻まれた本気の叫び。本気の否定。
ラビアには幸せを託された。渡された青色の羽は、想いの赤に塗り替えられて緋色に見えた。
他にも、四神やロアやネル、街のみんなに王都のみんな。見てきた景色全てがこの双肩にのしかかっている。
私は頬を叩いた。鼓舞するために。
今回ばかりは自分の細胞なんてどうでもいい。
「ここです。」
にわかに使徒さんの声が聞こえた。自主性のない彼女が声をあげたということは、だ。
「創滅神様がお待ちです。」
世界を変革する一歩が踏み出されようとしていた。
———————————————————————
あの、はい。めっちゃ寝落ちしました。すみません。投稿時間ずれました……
めちゃくちゃお休みしたので、前回のきっかけアニメの続きでもお話します?クッソつまんないですけど。
この○ばですよこ○すば。私が千年かけても追いつけなさそうな名作ですね。大体の作品そうですけど。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
ピンクの髪のオバサン異世界に行く
拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。
このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~
アオイソラ
ファンタジー
おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)
ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!
転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!
プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。
「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」
えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ!
「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」
顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。
「助けてくれ…」
おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!
一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。
イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!
北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚!
※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️
「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる