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19章 魔法少女と創滅神
621話 結局神は神だってことだ
しおりを挟む創滅神の求むところは1つ。
魔法少女の滅殺?世界の崩壊?自由な創滅?
何でもない。ただ、小さな子供のように『楽しみ』を得たいだけだ。
創滅神は、何かを創り破壊することにのみ快感を覚える。
アヌズレリアル、創世の神。彼女の持つ盃には、残り僅かな酒が踊っていた。
「予定変更だ。もう少し苦悩している様を見ていたかったが、もういい。連れてこい、ここに。」
跪くリンズベルにそう命令を下す。
観戦して酒を飲むより、直接対決の方が断然面白い。絶望で焚き付けて、葬り去る。そして世界を壊して、新たなる世界を創る。つまらなくなったおもちゃで、最後まで遊びきってやるだけマシだと思った方がいい。
別世界の創世の神ともなると、飽きてそのまま世界を捨てて別世界を生み出すこともある。
不要な世界から生命力だけ吸い続け、地獄のような世界を創り出す神もいる。まだ、処分しようというだけ聡い。
「人は何故こうも器に固執するのか。我には全く分からんな!」
「何故でしょうね。」
リンズベルも同調する。
人は『心』という不安定で不可思議な存在に縋りたがる。
本来は器に本能を注ぐことによって生命は成り立つが、本能に『心』という蛇足がついてしまった。
それは繁栄を得ると同時に、生命体としての劣化を意味した。
無駄な争いに情の絡み合い。本物の強者が立つことさえできず、法という秩序は生物としての本能を型に押し固めてしまっている。
なのに、人はそれを普通と言い器を大切にする。
「あの少女に触れれば、我も何か変革が起きるやもしれん。」
視線で示した。連れてこい、と。リンズベルは徐に立ち上がると、深々と礼をしてその場を立ち去る。
破壊された世界は生命力となり還元され、新たな世界でまた生まれ落ちる。
何故人々はそれを納得したがらないのか。
創滅神は考える。
世界のあり方。そこに住まう人々。
やはり、分からない。心は魂と同義だ。『死』と魂が滅ぶことは別物。心にこだわる人間どもの都合に良いように設定しているはずなのに、破壊を拒む。変化を拒む。
「結局神は神でしかないな。」
結論は理解できぬで片付いた。結局のところ、種族も立場も思考も違う。分かり合えるわけなどない。
神は人語を解するだけで、理解し合うことはできない。神は神、人は人。喋るだけの、互いが互いに化け物と同類。
盃に残った酒と共にこの疑問を飲み干した。
—————————
魔法少女が姿を現す少し前。
断罪場で、シャープは不機嫌な視線を下にぶつける。そこには『刻狂神』ダグラスこと、無能簀巻き神がいた。
「何故私を睨む?」
「それは私が聞きたいことですよ。……何故私を助けないのです?」
「もう、ひとりで逃げられるだろう?」
「この縄、厄介なことに外れないのですよ。」
モゾモゾと動くが、顔しか出ていないので毛虫が移動しているようにしか見えない。
「プフッ。」
「何、笑ってるのです?」
「いやなに。面白くてな。っ……!」
鼻で笑い、手で覆って隠す。「失敬」とでも謝り、余計に彼の気を荒立たせる。
「面白いな。何か芸でもやってくれないか。」
「貴方がミスをしたおかげで私はこうなっているのですよ?どうにかしろ。」
爽やかさはどこにもない。口上だけの丁寧語すらハゲ、もはや毛虫というより芋虫だ。
見ようによっては芋虫から毛虫、とも言えるが。
「プフッ。」
なんて思っていると、やはりまた笑いが込み上げてくる。いつも冷静で他人を馬鹿にすることを得意とした見た目だけの男が、今は地に這いつくばっている。おもしろくないわけがない。
「殺す。今決めましたよ。絶対殺す。」
ギギギと本当に神を殺すような視線を向けてくる。殺せるもんなら殺してみてほしい、という言葉はなんとか飲み込んで我慢した。
が、どうやらその言葉は吐き出すべきものらしく、身体が誤嚥として処理してしまった。
ゲホゲホッと咳き込んだ。
「ははっ、殺せるものならぜひやってほしい……」
腕で咳を押さえながら、微笑する。
その言葉から、ラグダスは堰を切ったように殺意と殺気をたぎらせた。魔法少女の理を振り切らんばかりの生命力をその身に宿したところで……
「殺神はれっきとした犯罪、ということは理解しているな?」
木槌の音が響いた。
「ラグダス、君の罪状を告げよう。一生そのまま這いずり回っておくといい。」
「………………ッ!」
「これ以上断罪されたくなければ、そのまま寝ていろ。」
不遜な態度で机に肘をついた。そこで顔がニヤついているのに気づくと、やれやれと嘆息をつく。
やはり神は神だ。そう気付く。
断罪に喜びを感じてしまった。いや、それが普通なのだ。『断罪神』なのだから、断罪を悦ぶ。
「いや、これが私だ。何も変わる必要はない。」
神であることを受け入れ、頷く。
以上が魔法少女の訪れる前の出来事だった。
———————————————————————
前回と同じか、それ以上にワクチンにやられました。これから某ウイルスワクチンにヤられることを、殺ると呼びましょう。
私、無事コロりました。薬がお供です!薬を片手に死にながら執筆した今話。2日間で2000字しか書けないとか終わってますね。
めっちゃ休んでしまい申し訳ないです……次回からはいつも通りに戻します。
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