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19章 魔法少女と創滅神

618話 魔法少女はゲームエンド

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「じゃあ次は、左腕。」
自らの腕を引きちぎり、ポイっと捨てた。あまりの躊躇のなさに引くが、まぁこれは見慣れた。

 次は私の番。今回はちょっと運が良かったかも。

 『遊戯神』メトローンとの遊戯の最中、慣れない痛みと闘いながらそう思う。

「…………どういうことだ?」
「私の左腕、もうないから。」
遊戯の力が働かないことに疑問符を打たれたが、私は瞬速スイングで答えを打ち返してやった。

 今から、このターンで決着をつける。ミスったらもうおしまいだ。

 こんなふうに言っているが、まぁなんとなく成功するだろという軽い気持ちが心にある。
 そんな気持ちじゃ通用しないのは分かるけど、どうしても余裕な気持ちが生まれてしまう。

 解決策が見つかった途端楽になることよね。
 心の重荷がスッと下りたみたいに。

「このゲーム、クソゲーだったよ。」
「何をもう終わったように。今から始まりじゃないか。」
「神って全然神のこと分かってないよね。いや、見逃してるって感じか。灯台下暗し的な。」
ゆっくり歩いて行く。現在は4ターン目。左肩、右膝、脇腹、腹を負傷している。左腕はどうともない。

 武器を出すだけならアクション扱いにならないんだよね、多分。ラノス出した時も攻撃できたし。

 私はを発動しながら、空中浮遊する盾を取り出した。
 そしてそこに座る。

「どうした?怖気付いてしまったか?それはそれで、楽しめる。」
「だから、ちょっとは待ってって。」
相手は同じ傷を負っているのにピンピンしている。どんな体してるんだ、と心から思う。

 でもまぁ、ルールが適当で助かった。

 次に取り出したのは普段使い道のない刀。鞘から抜けば、それっぽい形の刀が出てくる。

「ルールを確認するけどさ、どちらかが倒れたら勝負つくんだよね。」
「そうだけど、時間稼ぎでもする気なのか?」
「いーや、ただ単に確認したかっただけ。」
刀を握る手に力を込める。それと同時に、体にも力を入れる。

「……自殺する気か?」
正気を失った奴でも見るような視線を突き刺された。

 絶対痛い……さっきまで自信あったのにいざやろうとすると怖い。怖すぎる……

 それでも力は緩めない。

 やろうとしていること。もう分かるだろうけど、両足の切断だ。
 腕を振り下ろし、自らの両足に狙いを定めて……

「………………………ッ!」
声にならない声と共に、ボト、ボト、と2度落下音が響く。尋常じゃない痛さと、強烈な痺れのような衝撃が駆け巡り、流れ出る血液を薄い涙越しに見る。

「ソラ!何してるの、そんなことしたら……」
「分かっ、てる……」
唇を噛み締め、鉄の味を感じながら痛みに堪える。

 まじで痛い……過去一かも……腕、消滅させられた時よりよっぽど痛い。

 じんじんと熱を持ったように痛む足の断面。
 しかし、その攻撃はなんであろうとあの神に、メトローンに反映される。

 このゲームは恐ろしく平等だ。向こうにないダメージを、自らを傷つけることで跳ね返す。ターン制で、1回しかアクションは起こせない。
 平等だからこそ、そのルールのもとで私は勝つことができない。

「強行理論。」
使ったスキル名を祈るように呟いた。結局誰にでもなく祈るしか方法はない。

 神にだけは一生祈らないけど。

 メトローンの足は膝下あたりからざっくりと切り落とされた。自重に耐えられず、メトローンの体はなす術もなく地面に打ち付けられた。

「君は死にたいのか?」
「死にたいわけない、じゃん。」
「矛盾している。」
地面に倒れながらメトローンは言う。

「……つまらない。折角死なないようにしてやっているのに。このターンで終わりにして……」
言葉の途中で口を閉じた。閉口した。

 なんでって……?ほら、まわり。

 空間に亀裂が入り始めている。『遊戯神』の世界が崩壊を始めていた。
 私の策がはまったようだった。

 それを確実なものにするように私の全ての傷が癒えて行く。癒えるという表現というよりもなくなってるって印象が強い。

「…………もう2度とやりたくない。」
元に戻った世界で、このクソゲーとおさらばする一言を放つ。私の全身の傷は、何もなかったかのように消え失せた。

「神のルールはもっと厳格にすべきだったね。」
「…………図ったのか?」
「自滅でしょ、これ。」
盾に乗ったまま答える。後ろのユユは泣きそうな声で、こっちに近寄り、およおよ涙を流して背中に顔を埋めてくる。

 …………なんか締まらない。

 重たい空気、ボロッボロなメトローン。この状況でピーピー泣く少女の声が混ざり合い、混沌とした空気が完成していた。

「めちゃくちゃクソゲーだったよ、『遊戯神』。」
両足がなく物理的に立てないメトローンに言い捨てる。

「どうやった?」
「だから言ったじゃん。ルールがガバガバだって。」
そう言って、抱きつくユユを引き剥がして盾から飛び退く。

「確認したよね?倒れたら勝敗がつくのかって。そしたらつくって言った。だから私の理論を強行させてもらったよ。」
「倒れたら……そうか、僕は今、倒れているな。」
「納得するのそれ。」
遊戯の神として勝手にルール改変されたことについて何も思ってなさそうだ。神の思うことは全く理解できない。

「じゃあさよなら。厄介だったしクソだったし、もう2度と会いたくない。」
「そうか。僕も君のようなクソみたいなプレイヤーとは2度と遊びたくないな。」
「利害は一致したってことね。」
重力世界を展開した。悔しがりも、生きたがりもしないその姿は、永遠の命を持つ神だからこそと思えた。

 シャープは生きようとしたけど、メトローンはしないんだ。

 なんの違いかは前例も少ないし分からない。

 転がる上半身に向かって強烈なGを加えた。ゴキブリじゃなくてグラビティの方なのは言うまでもない。

「……ほんといちいち疲れる。」
はぁ~っと、婚期が100年くらい遠のきそうなでかいため息が自然に漏れ出た。

『私のおかげだね』
『立案はみんなでしょ?』
『はっはっはっ!我の忍耐力が火を吹いたおかげだな!』

 ちょっと静かにしようか?

『『『あ、ハイ』』』
『怒られてる~!』

 残った魔力の粒子を眺めて、それを足で踏みつけた。もちろん実体はないので触れることはできない。憂さ晴らしだ。

「……あぁ、こいつも一応『銘盤』の神か。」
ドロップしたのは、私の胸についているのと同じエンブレム。それを拾う。

「ユユ、プレゼント。」
「そんなっ、そんなプレゼント……いらないよ……」
「そろそろ泣き止もうよ。」
しれっと胸にエンブレムをつけながら、背中をポンポンする。神を慰める人間、これいかに。

「ちょっと休憩したら、今度こそ『天啓神』の居場所探すよ。」
「うん……」
「ほら、私元気。体どこも傷ないよ。」
「うん……」
「ほらほら、情報屋でしょ?この休憩時間も有効に使わなくちゃ。なにか情報ない?」
「……うん。」
「いや泣き止もうよ。」
慰めモードの私も流石に冷めてきた。というか最後、ちょっと言い淀んでなかった?情報ないの?

「ごめん。ちょっと、色々ありすぎちゃって。」
涙を拭ったユユは、泣き疲れたのか座り込んでしまった。

「泣き止みついでに、情報教えて欲しいんだけど……」
「それはちょっと遠慮したいかな。」
「情報屋のプライドは……?」
そんなものは涙と共に流れていったというように、自信満々にダンマリを決め込んだユユだった。

———————————————————————

 おもいっきりとうこうわすれてましたね。 
 ま、まぁ、それは置いといて、近況ノートに書いた通りに何か話しましょうか。

 1番最初にハマったアニメ、とか?
 まぁポケモン……そんな話じゃないですよね。はい、知ってます。
 魔法陣グ○グルというアニメですかね。
 家族が見ているのを横目で見ていたことをきっかけに見始め、「主、これもどうかね」という悪魔の誘いに警戒もなしに踏み込んだ結果こうなりました。

 それからアニメ沼にハマり、ある年の冬、ア○プラさんと契約して初めて見たアニメはというと……

 まぁ残りは次回ということで。
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