上 下
649 / 681
19章 魔法少女と創滅神

619話 魔法少女は早くも再会

しおりを挟む

 ユユとの休憩も終わり、程なくしてのこと。
 バレないようにこっそり探し回っていても、それは砂漠の中で一粒の砂を探すような行為だ。
 馬鹿馬鹿しいにも程がある。

「ほんとに何かない?役立つ情報。」
「『天啓神』なんて、『銘盤』の神でもそうそう出会える神じゃないんだ。そう簡単に見つからないさ。」
「にしたって、普通に探して見つかる場所に道があったら、誰でも行くでしょ。」
「それはそうだけど……」
うむうむと悩んでいると、ふとある言葉を思い出した。

 確かアウラはこう言ってた。『『天啓神』より授かった任を受けた『刈命神』が、消息を断ちました。乗船していた者は全て検問させていただきます』と。

 『天啓神』から任を授かったというアウラなら、居場所を知っているのではないだろうか。

 いやいやいやいや。あの神が教えてくれるわけがない。『天啓神』ってのはラスボスへの片道切符みたいな存在だ。(勝手にそう思ってるだけだけど)
 そんな相手のことを簡単に教えるわけがない。

「なら、手を組んでそうなラグダスは?」
「ん?」
「いや、『天啓神』と繋がってそうじゃん。」
「確かに……可能性はないとは限らない。」
「なら会いに行ってみようよ。もしかしたら、まだ簀巻きかもしれない。」
思い立ったが吉日というように、私達はつい先ほどまで死にかけていた場所に舞い戻ることにした。

 まぁ死にかけてる時点で吉日どころか人生最底辺レベルだけど。


 てなわけで戻ってきたコロッセオもどき。
 こそこそっと中を覗く。

「もっと詰めてくれないかい。」
「こっちもきついの。」
ぎゅうぎゅう詰めで隙間から覗く。何か影が見える。2つ、神の気配もある。

「簀巻き神いる?」
「『刻狂神』ね。」
「まぁ、神っぽいとこ見たことないし。」
印象で名前を決めるのは覚えやすくていい。名前も一緒にくくりつければ思い出せるし、一石二鳥。

 最初は怖かったけどもはや簀巻きされてるだけの神だし。……あれ、あのイケオジ帰ったから今の簀巻き野郎は簀巻かれてないってことじゃ?

 嫌な考えはよそう。人生ポジティブが1番。レッツポジティブシンキング。

「あれ、あそこにいるのってシャープじゃない?」
まだいたんだ、と予想外の状況に少し警戒を強める。

 ということは、反応の正体はシャープと簀巻き神ってことね。

「私から離れないで。」
「……うん。」
重力世界ではなく、空間を張った。隔離空間。私達の周りだけ、私の絶対領域となっている。

 神の世界での理の力ってめちゃくちゃ強化されてるから、便利だよね。
 それが神によらないものだから、さらにここでは効力を発揮する。

 一歩、進入した。

「どこのネズミかと思えば、君たちか。」
中央から声が届く。私でもユユの声でもない女のような声。

「いやはや、犯罪者は現場に戻ってくるとよく言うがよもや本当に戻るとはな。」
「……まさか、そんなののために待ってたの?」
「たわけ。そんなことあると思うか?」
シャープはすでに平静を取り戻しており、余裕を持って会話に乗ってくれる。

「そこの簀巻きに用か?」
「そう、そこの神もどきに用。」
視線をそちらに向ける。面白いくらい激怒している。悔しいというか、絶対ぶっ殺すというオーラを感じる。

「よもやそこの男は協力者をも手をかけようとした。豪胆だ豪胆だ!だからついでに、断罪しておいた。」
それを聞いて安心した。襲われる心配はなさそうだ。

 というか、確かシャープも『天啓神』から私のことを聞いたとか言ってたよね。

 私の記憶力が正確であれば、だ。

「ついでに聞きたいんだけど。」
「ついでなら聞かないが。」
「なら聞きたいんだけど。」
視線をシャープに戻す。まだ席に着いている。

「『天啓神』の居場所、知ってたりしない?行きたいんだけど困ってるんだよ。」
「殺神に破壊行為、逃走、侮辱……罪状をあげればキリのない君が、私に教えろと?はっはっはっ。強かなのは認めてやろうが、私は断罪の神。罪を斬っても、加担はしない。」
「なら私を断罪しないのはどうなのかな。」
分かっていながら聞く。「性格の悪い奴め」という視線の矢が上から降ってくるが、外面の盾でそれを防ぐ。

 神は性格がないわけじゃない。ただ役職に引っ張られるだけでね。
 メトローンが遊戯に堕ち、死ぬのを抵抗しなかったように。だから、教えてくれるかもしれない。

 そんな一縷の望みを託し、返答を待つ。

「分かってるでしょ、創滅神のしようとしていること。」
「何のことか分からないな。」
しらばっくれようとしているのか、はたまたただのおふざけなのか判断しづらい。

「今下界ではすっごい戦闘が起こってる。創滅神が送り込んだ使徒やら教徒やらが暴れて、対処が遅れてたら大陸が滅んでたレベルのね。」
「それはそれは。」
「創滅神はこの世界を滅ぼそうとしている。」
言い切った。特に驚きもない表情でそれを飲み込み、ふっと息を吐いた。

「神の流れで下界で変化が起きているのは知っていた。創滅神様が何かに執着しているのも知っていた。それは、君だろう。」
どっかの神はいないものとし、シャープは肩肘をついて呟いた。

「だから、君を排除したかったが……見ての通り無理だった。」
「私が……?執着?」
「なんだ。君は気づいていないのかね。」
ニヤリと笑った。やはりダグラスはガン無視。というか、さっきから奥で叫んでる。

「君は創滅神様のお気に入り……いや、殺すべき生命体だ。」
「だから、何言って……」
「本当に気づいていないのか。」
笑いもだんだんと薄くなり、呆れかえって肩をすくめた。

 というか、なんでこんな話に……?
 『天啓神』の居場所聞きたいんだけど……

 なんて思っていても、全く教えてくれそうにもない。

「君は仕組まれているんだ。興味本位でこの世に連れられ、そして恐怖し葬ろうとした。身で持って体感した。君はとてつもない何かを有しているな。」
ここまできて悟った。

 話の復帰無理だこれ。

 仕方なく向こうの話に合わせる。
 まとめれば、創滅神は私に固執して殺そうとしていると。世界の滅亡はそれに関連すると。

「いやいや、そんな……」
嫌な予感を感じて、謙虚風を装う。

「言葉にはできないが、必ずあるさ。君には、唯ならぬ力が。それも、圧倒的にご都合的なもの。」
「なんか、ふわっとしてない?」
「仕方あるまい。実際ふわっとしている。」
にわかにカンッ!と音が鳴る。シャープが木の小槌で音を響かせていた。

「どうやら創滅神様は待ちきれぬ様子だ。」
私から視線を逸らしたシャープの目の先は、断罪される際立っていた舞台上の中央に定まっていた。

「『天啓神』からのお告げだ。君はそこを通りたまえ。」
視線の先。光に塗れた空間、その中に闇の階段が現れた。その奥から気配が降りてくる。

 あれ……見たことあるような?
 神、じゃない。ってことは、使徒?

 神は神っぽい雰囲気を持っている。特殊能力からか、はたまた生成する生命力からか。
 でも、あれはまさしく人形のような身体をしている。

「『核盤』へようこそ。」
「……あの時の。」
「ええ、お世話になりましたね。」
私の口は開いたまま閉ざされない。目の前にいたのは、過去から戻る際に対応された女性だった。

「ソラ……知ってるのかい。」
「使徒だよ。」
「使徒…………?」
困惑の中に、若干のわくわくが見えた。見なかったことにした。

「では、ご案内しましょう。」
綺麗にターンし、光の中へ入って行った。どうすればいいか分からず、首を振る。シャープは恭しく頭を下げていた。ユユは……

「言い忘れておりましたが、そこにいる一般神は同行不可ですのでご注意を。」
「ダメなの?」
創滅神は極度の潔癖症なのかもしれない。そう思っていると、「あ゛?」という視線が私を確実に射抜いてきた。怖い。泣きたい。

「あたしはここで待ってるさ。ソラ、最後にひとつ。」
おもむろに私に接近すると、軽く抱擁される。

「あたしは情報屋だ。あんまり役に立った気はしないけど……あたしは、情報屋だ。」
「……はいはい。」
守ればいいんでしょ、と心の中で呟いた。

 置いていくのは心配だけどね。流石に、殺されはしないでしょ。

 最後の別れを済ませ、私は急足で光へ突き進んだ。

———————————————————————

 えー、今話、本来なら存在しなかった話です。じゃあなぜあるかと言いますと、ハンバーグのつなぎ的な感じです。

 どうやって『核盤』に行こうか。そう思った時、2つの選択肢が浮かびました。

『このままダラダラ続けて確実に道を掴む』
『折角神とかいうトンデモ存在いるんだから頼っちゃう』

 この2択です。

 つまり、これは後者。前者を選んだ場合、もう体力がミジンコ並みに衰えてきている私にはキツイ展開となります。
 そのために、こんな無理矢理展開になっております。

 今話を一言でまとめますと、空さんが『核盤』へといくためのお別れ回って感じです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...