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19章 魔法少女と創滅神
611話 魔法少女は牢屋行き
しおりを挟む拝啓。お義父さん、お義母さん。
私はどうやら、神名詐称、並びに殺神容疑で逮捕されたようです。
これから、刑務所ライフをエンジョイしたいと思います。
敬具。
脳内で手紙を認める私。どこでって?
首を回す。
黴臭い牢屋ん中だよ。
出オチ感が否めないのは許してほしい。私だって好きで牢屋に入ってるわけじゃない。
「どうしよう。」
服装はそのまま。魔法少女一転、務所少女になることだけは避けられた。
うーん、どうしよう。というかどうしてこうなった。
あたり一面に広がる鉄檻。触れてみても、硬くて開けられたもんじゃない。魔法少女フルパワーでも難しい。
「これも神の産物かな。」
今の所できることはない。この独房の壁に、ちょこんと背をつけて座る。ため息が漏れる。
ほんと、なんでこうなったんだろう。
少し遡る。事が起きたのは、あの船から降りてすぐのことだった。
下船準備を済ませたところで、2人で部屋から出た。チップで鍵を閉め、外へ出た。
「あれか、『銘盤』って。」
遠くに見えるそれを見遣る。朝はそこそこに眩しかった外も、今は少し薄暗い。
朝と夜はあるけど、ちょっと全体を通して明るい感じかな。満月が2個くらい浮かんでるくらいの光量だ。
浮かんでいる島は『神盤』の盤島と特に変わり映えのない島。少し大きいかな、という感じ。それがそこらに、ポツポツと。
「じゃあこれからは、私はセレストってことで。」
「分かってるよセレスト。ほら、背筋伸ばす。」
トンと背中を叩かれる。別にそこはいいでしょと思うが、いう通りにしておこう。
この世界、どういう構造なんだろうね。改めて見ると不思議。
島の中にいると普通に地面に立っているようで何も思わないけど、ここからだと神秘だ。
なんて考えながらぼーっとしていると、いつの間にやら盤の中に入っていた。
そういえば、島の周囲には壁があったけど……あれってどうやって突破してるんだろう。
不思議だらけだ。
チップを返し、船から降りる。
他の神もゾロゾロと降りてきており、こんなに神いたんなと思った。
私が部屋に引きこもってただけなんだけど。
「げっ。」
「どうしたんだい?」
「ほらあそこ、ラグダス。」
視線ではなく指を差して、明後日の方向を見ながら呟いた。視線で気づかれても面倒なので、ここは対策する。
「関わっても碌な事なさそう。」
「『銘盤』で指折りの神だからね。絶対、関わらないほうがいいさ。」
あたしも見るで満足さ、と破顔した。この桃髪は本当に笑顔が似合う。
私は全く笑えないけど。
『神盤』の時とは反対方向へ行く。『審判神』の検問を通って結界を出る。その様子は、下界のそれとは全く違う。
「あれ……なんの集団?」
外に出れば、そこは大通り。正面から、5人……じゃなくて5神くらいが歩いてくる。真ん中に1人、その後ろを2、2で侍ってる感じ。
「ユユ、分かる……?……ユユ?」
ユユの目が開かれていた。驚愕と恐怖が綯交ぜになった顔。それは、相当やばいということを示唆していた。
「『痕跡神』アウラだ……あれはダメだ。隠れよう、早く逃げよう……!」
「ちょっと、説明してくれないと分かんないって!それに、変な動きしたら逆に……っ!」
掴んだ腕を振り払うように、横へダッシュした。すると、ユユの眼前に神が現れた。
この神って……さっき侍ってた神?
『痕跡神』とやらに目を向けると、4神に減っていた。
ユユはジリジリと戻ってきて、私の耳元に口を近づけた。
「アウラは……ありとあらゆる痕跡を暴く神だ……行動も、能力も、傷も、何もかも。」
「『刻狂神』よりも?」
「同じくらい……だけど、立場が違うんだ。」
アウラはゆっくりと近づいてくる。逃げられないと確信しているように、感情なく。
どうしよう……これ、バレてるよね……
疑問ではなく、もはや確信。どうにもできない。
今ある情報は名前と外見くらいだ。『痕跡神』アウラ。中肉中背?黒の目隠しをして、淡い灰色の髪を伸ばしている。天女のような衣を羽織り、やってくる。
「貴方でしょうか。」
透き通った声が響く。
「………………」
目隠しをしているのなら、と淡い期待を抱いて黙る。
「あくまでもシラを切るつもりですか。」
機械のように淡々とした声音。私が見えているように、真っ直ぐこちらを見据える。
「『天啓神』より授かった任を受けた『刈命神』が、消息を断ちました。乗船していた者は全て検問させていただきます。」
逃げ場を失った。他の神々はその言葉に従い、何も不満に思うこともなくアウラの検問を受けてゆく。
「よろしいですか。」
警備の神の少し奥。人形のように佇む神に尋ねた。『審判神』に許可を求めた。
「許可します。」
「ありがとうございます。では始めましょう。」
アウラは1神1神丁寧に確認を始めた。一体何をしているのか、全く分からない。私はユユの腕を掴むしかできなかった。
やばいやばいやばいやばい!逃げられないし、相手できる気もしない……!
こっちに来るなという願いは案の定叶わず、アウラはこちらに歩みを進めている。
「…………そのステッキを貸してもらっても。」
「…………はい。」
どうしようもなく、私は腕を掴む手を開いてステッキを腰から引き抜いた。その拍子にユユを遠くに突き離し、共犯を避けた。
「貴方から『刈命神』の生命力を感じます。」
「っ!」
その言葉を聞いた瞬間身じろいだ。しかし、その四方を神に囲まれていた。
「『断罪神』の元へ連行します。」
現行犯だった。
「言い訳は聞きません。痕跡が残っていますから。……神をあまり舐めないでください。」
冷え切った言葉を浴びせられ、冷水を浴びたように背筋が凍りついた。4神に体の自由を奪われ、歩くことを強要された。
抵抗しなかっただけ頭良かったってことでいいよね。あんなの、やり合ったって勝てそうにもない。
反撃されて死ぬのがオチだ。
ユユはどうなったか。最後にそれだけが気がかりで、横を向いた。
私は目を剥いた。
ラグダスの目が、口が、弧を描いていた。
「少しここで待っていなさい。」
連れてこられた先は牢屋だった。現在地はいまいち分からないけど、それに準じる何かに収容された。ステッキも奪われ、八方塞がり。
こうして現在に至るってわけ。
「ほんと、どうしよう。」
呑気な風を出してはいるけど、実際はもっと危険な状況だ。
『断罪神』に断罪されるって、殺されるって意味と同義だよね。
嫌だー!まだ絶対死にたくない!いやずっと死にたくない!
心の中は平静のへの字もなく、命乞いでもしようかと神に祈る。
そんなことしたとて、そもそも私を殺す存在が神なんだから意味ない。
「……………あの時、ラグダス笑ってたよね。絶対。」
あれは見間違いなんかじゃなかった。確信をもって言える。
「さてはグルだな……分かったところで何もないけどさ。」
硬い石で作られた周囲。殴ってもびくともしない。
ステッキがあれば、何かいい道具で破壊できたかもなのに。アウラめ……
決して表には出さず、心で文句を吐きまくる。口に出して聞かれでもしたら、刑期が伸びそう……というより即死になりそう。
もう1度、何ができまいかと牢の中を見回す。
やはりこの中じゃ、何かしようにも障害が多すぎる。
結局は、アクションがあるまで待つしかないのだ。
———————————————————————
アウラ。名前だけは最近聞いたことありますね。……パクリじゃないです、ほんと。
こんなキャラ、一応前々から考えてたんですよ。いつか空さんを刑務所にぶち込んで、脱出劇させようかなと。そういう時に、看守役にでもどうかな、とこのキャラ考えてたんですよ!
たまたま名前が一致しただけで!キャラは違いますし!3文字なんて普通に被りますし!
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