上 下
641 / 681
19章 魔法少女と創滅神

611話 魔法少女は牢屋行き

しおりを挟む

 拝啓。お義父さん、お義母さん。

 私はどうやら、神名詐称、並びに殺神容疑で逮捕されたようです。
 これから、刑務所ライフをエンジョイしたいと思います。

 敬具。

 脳内で手紙をしたためる私。どこでって?

 首を回す。

 黴臭い牢屋ん中だよ。

 出オチ感が否めないのは許してほしい。私だって好きで牢屋に入ってるわけじゃない。

「どうしよう。」
服装はそのまま。魔法少女一転、務所少女になることだけは避けられた。

 うーん、どうしよう。というかどうしてこうなった。

 あたり一面に広がる鉄檻。触れてみても、硬くて開けられたもんじゃない。魔法少女フルパワーでも難しい。

「これも神の産物かな。」
今の所できることはない。この独房の壁に、ちょこんと背をつけて座る。ため息が漏れる。

 ほんと、なんでこうなったんだろう。


 少し遡る。事が起きたのは、あの船から降りてすぐのことだった。

 下船準備を済ませたところで、2人で部屋から出た。チップで鍵を閉め、外へ出た。

「あれか、『銘盤』って。」
遠くに見えるそれを見遣る。朝はそこそこに眩しかった外も、今は少し薄暗い。

 朝と夜はあるけど、ちょっと全体を通して明るい感じかな。満月が2個くらい浮かんでるくらいの光量だ。

 浮かんでいる島は『神盤』の盤島と特に変わり映えのない島。少し大きいかな、という感じ。それがそこらに、ポツポツと。

「じゃあこれからは、私はセレストってことで。」
「分かってるよセレスト。ほら、背筋伸ばす。」
トンと背中を叩かれる。別にそこはいいでしょと思うが、いう通りにしておこう。

 この世界、どういう構造なんだろうね。改めて見ると不思議。

 島の中にいると普通に地面に立っているようで何も思わないけど、ここからだと神秘だ。

 なんて考えながらぼーっとしていると、いつの間にやら盤の中に入っていた。
 そういえば、島の周囲には壁があったけど……あれってどうやって突破してるんだろう。

 不思議だらけだ。

 チップを返し、船から降りる。

 他の神もゾロゾロと降りてきており、こんなに神いたんなと思った。
 私が部屋に引きこもってただけなんだけど。

「げっ。」
「どうしたんだい?」
「ほらあそこ、ラグダス。」
視線ではなく指を差して、明後日の方向を見ながら呟いた。視線で気づかれても面倒なので、ここは対策する。

「関わっても碌な事なさそう。」
「『銘盤』で指折りの神だからね。絶対、関わらないほうがいいさ。」
あたしも見るで満足さ、と破顔した。この桃髪は本当に笑顔が似合う。

 私は全く笑えないけど。

 『神盤』の時とは反対方向へ行く。『審判神』の検問を通って結界を出る。その様子は、下界のそれとは全く違う。

「あれ……なんの集団?」
外に出れば、そこは大通り。正面から、5人……じゃなくて5神くらいが歩いてくる。真ん中に1人、その後ろを2、2で侍ってる感じ。

「ユユ、分かる……?……ユユ?」
ユユの目が開かれていた。驚愕と恐怖が綯交ぜになった顔。それは、相当やばいということを示唆していた。

「『痕跡神』アウラだ……あれはダメだ。隠れよう、早く逃げよう……!」
「ちょっと、説明してくれないと分かんないって!それに、変な動きしたら逆に……っ!」
掴んだ腕を振り払うように、横へダッシュした。すると、ユユの眼前に神が現れた。

 この神って……さっき侍ってた神?

 『痕跡神』とやらに目を向けると、4神に減っていた。

 ユユはジリジリと戻ってきて、私の耳元に口を近づけた。

「アウラは……ありとあらゆるを暴く神だ……行動も、能力も、傷も、何もかも。」
「『刻狂神』よりも?」
「同じくらい……だけど、立場が違うんだ。」
アウラはゆっくりと近づいてくる。逃げられないと確信しているように、感情なく。

 どうしよう……これ、バレてるよね……

 疑問ではなく、もはや確信。どうにもできない。

 今ある情報は名前と外見くらいだ。『痕跡神』アウラ。中肉中背?黒の目隠しをして、淡い灰色の髪を伸ばしている。天女のような衣を羽織り、やってくる。

「貴方でしょうか。」
透き通った声が響く。

「………………」
目隠しをしているのなら、と淡い期待を抱いて黙る。

「あくまでもシラを切るつもりですか。」
機械のように淡々とした声音。私が見えているように、真っ直ぐこちらを見据える。

「『天啓神』より授かった任を受けた『刈命神』が、消息を断ちました。乗船していた者は全て検問させていただきます。」
逃げ場を失った。他の神々はその言葉に従い、何も不満に思うこともなくアウラの検問を受けてゆく。

「よろしいですか。」
警備の神の少し奥。人形のように佇む神に尋ねた。『審判神』に許可を求めた。

「許可します。」
「ありがとうございます。では始めましょう。」
アウラは1神1神丁寧に確認を始めた。一体何をしているのか、全く分からない。私はユユの腕を掴むしかできなかった。

 やばいやばいやばいやばい!逃げられないし、相手できる気もしない……!

 こっちに来るなという願いは案の定叶わず、アウラはこちらに歩みを進めている。

「…………そのステッキを貸してもらっても。」
「…………はい。」
どうしようもなく、私は腕を掴む手を開いてステッキを腰から引き抜いた。その拍子にユユを遠くに突き離し、共犯を避けた。

「貴方から『刈命神』の生命力を感じます。」
「っ!」
その言葉を聞いた瞬間身じろいだ。しかし、その四方を神に囲まれていた。

「『断罪神』の元へ連行します。」
現行犯だった。

「言い訳は聞きません。。……神をあまり舐めないでください。」
冷え切った言葉を浴びせられ、冷水を浴びたように背筋が凍りついた。4神に体の自由を奪われ、歩くことを強要された。

 抵抗しなかっただけ頭良かったってことでいいよね。あんなの、やり合ったって勝てそうにもない。

 反撃されて死ぬのがオチだ。

 ユユはどうなったか。最後にそれだけが気がかりで、横を向いた。
 私は目を剥いた。

 ラグダスの目が、口が、弧を描いていた。


「少しここで待っていなさい。」
連れてこられた先は牢屋だった。現在地はいまいち分からないけど、それに準じる何かに収容された。ステッキも奪われ、八方塞がり。

 こうして現在に至るってわけ。

「ほんと、どうしよう。」
呑気な風を出してはいるけど、実際はもっと危険な状況だ。

 『断罪神』に断罪されるって、殺されるって意味と同義だよね。
 嫌だー!まだ絶対死にたくない!いやずっと死にたくない!

 心の中は平静のへの字もなく、命乞いでもしようかと神に祈る。
 そんなことしたとて、そもそも私を殺す存在が神なんだから意味ない。

「……………あの時、ラグダス笑ってたよね。絶対。」
あれは見間違いなんかじゃなかった。確信をもって言える。

「さてはグルだな……分かったところで何もないけどさ。」
硬い石で作られた周囲。殴ってもびくともしない。

 ステッキがあれば、何かいい道具で破壊できたかもなのに。アウラめ……

 決して表には出さず、心で文句を吐きまくる。口に出して聞かれでもしたら、刑期が伸びそう……というより即死になりそう。

 もう1度、何ができまいかと牢の中を見回す。
 やはりこの中じゃ、何かしようにも障害が多すぎる。

 結局は、アクションがあるまで待つしかないのだ。

———————————————————————

 アウラ。名前だけは最近聞いたことありますね。……パクリじゃないです、ほんと。

 こんなキャラ、一応前々から考えてたんですよ。いつか空さんを刑務所にぶち込んで、脱出劇させようかなと。そういう時に、看守役にでもどうかな、とこのキャラ考えてたんですよ!

 たまたま名前が一致しただけで!キャラは違いますし!3文字なんて普通に被りますし!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。 これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。 1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ! いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります! 【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ
ファンタジー
 おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)  ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!  転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!  プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。 「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」  えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ! 「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」  顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。 「助けてくれ…」   おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!  一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。  イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!  北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚! ※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️   「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

処理中です...