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18章 魔法少女と神の使徒

594話 最果ての地に

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 前に龍、後ろに龍、上に龍。
 龍に囲まれながら、案内されるように進んでいく。

 王都から南下していき、森の入り口まで進んでいく。森の入り口には、霊神が隠蔽した拡張空間に龍神の阻害空間を組み合わせた絶対領域が存在していた。

 不思議なことに魔物の動きは消極的で、普段なら襲うところを陰に潜んで隠れている。
 多くの者は本能から多勢に無勢を悟っていると考えるが、魔物にそんな知能はない。

 各街からも、同じ森を目指して進行を推し進めており、一部の保守的な人間以外は理解を示した行動をしている。

 何故不安もなしに町を一旦とはいえ捨てられるのか。ひとえにそれは、龍という格上の存在のおかげ。
 格上が守っていてくれれば、不安は少ない。

 なにしろ、国王は龍と契約し龍王国としての確立を宣言した。龍は立派な味方なのだ。

 元龍神の手で守られてきた竜や龍は、ここぞとばかりに神龍らに付き添って姿を現していく。
 俯瞰すれば龍の大行進の図。

 先頭を行くのは神龍その人。
 上には法龍センスフォーンが華麗に飛んでいる。自分に任せろとでも言うような、むっふーした顔。

「いくら友好を結べたといえど、少し威圧を感じるな……」
国王は、人間の列の最前列で口にする。周囲には、信用のおける者のみが歩いており、もちろん総騎士長やそれに準ずる高位騎士ハイナイトが並んでいる。

『そう、固くならなくとも良い。ワタシは神でもなんでもないのだからな。』
国王の頭にその言葉が響いた。心が驚きで跳ねるが、すぐに落ち着く。

 目の前、首を少し上げればそこに滑空する龍が、己に話しかけている。少し恐れ多く感じてしまうのは、本能だろうか。

『では、この姿の方が良いか』
そう言葉を残すと、一瞬、キツイ魔力を帯びて収縮する。

 人型の利点。魔力効率の良さを持つその姿で、ゆっくり、列を乱さぬよう着地する。国王の、少し先に両足をついた。
 一方で、法龍はこの穴を埋めるように移動を始めた。

「………………………」
「何をしている?歩みを止めるな。後ろの者がつかえるだろう。」
神龍リュウムは、疑問の視線を先頭の集団に送るも、反応はない。

「龍というものは、皆そのように麗しいのか?」
「……この姿は人の目から見て麗しいものなのか。」
意外そうに自身の体に目を向けて、少し首を傾けた。

「この方が話しやすかろう。」
踵を返し、見本のように歩き出す。このままでは列の動きが乱れてしまう。

「改めて自己紹介をしよう。ワタシは神龍。名はリュウムという。よろしく頼む。」
「あぁ。よろしく頼む。うむ、こちらも名乗るのが礼儀だな。」
「礼儀など気にせん。過ぎれば正すが、そうではないだろう。」
「こちらが気にするのだ。———ディアルノ・アングランド、この国の王だが、好きに呼んでもらって構わない。」
今のところは良好な関係が築けている。と、感じる。余計な計らいをしないよう目を光らせるオリーヴに信頼を預けながら、次の言葉投げかける。

「何故、此度はこのような?」
「不満か?」
「いや、正直とても助かっている。現状、逃げる先がないものでな。」
お恥ずかしいことだ、と謙譲的な態度で接する。

「神龍といえど、龍神でも神でもない。先も言ったが、砕けた態度でもよい。」
「では、そうさせてもらおう。」
相手の申し出を断り続けるのも、逆効果だ。させたいように、させてやるのが1番。

 リュウムは空を見た。そこには、巨大な龍が1体。先程交代した龍だ。

「そこのはセンスフォーン。上にいるのがニニウル、後ろがアイルーンだ。個性が強い奴等だが、悪い奴では……ない。」
「そうか、それは頼もしいことだ。」
冷静に頷く。個性が強い、ということは遠回しに多少の危険があるということ。後ろでざわつく騎士らに機嫌を損ねないといいが、と心の底で思う。

「ああ、質問に答えねばな。」
今頃思い出したように口にした。

「世界を守るため。といいたいが、私はそのような殊勝な思いで動いてはいない。ただ、龍神様の願いであったからこそ。」
その言葉に嘘は見受けられなかった。本心、というものを初めて覗かせた瞬間でもあった。

「龍神様というのは、尊い方なのだな。」
「話が分かるな。」
リュウムは少し嬉しそうに笑った、しかし、次第にその表情は曇っていった。

 あと1日もあれば到着する目的地。目の前にあるゴールに辿り着く前に、それはやってきた。

「陛下。いかがしましょうか。」
「右も左もないだろう。」
背筋をなぞる違和感と不快感。本能的に恐れる雰囲気。後退りの音が多く聞こえてきた。

 リュウムは親の仇をみつけたような眼光をソレに飛ばした。

 それは隠れるそぶりもなく滞空しており、逆に目立とうとするように魔力を撒き散らす。その魔力は、創滅神のものと同じだった。
 かつて、元龍神含めた四神が死力を尽くして封印した創滅神の。

「妾は処刑人02ゼロツールースレス。……確か、名乗りはこれでいいんだったか?」
顎に手を添え、考え始める。殺意むき出しのリュウムを歯牙にもかけずに悩み出す。

「其方らは下がれ。ワタシの後ろ……いや、龍の盾に隠れろ。」
その瞬間、周りの龍らがバリアでも張るようにルースレスから隔絶する。

「何用だ?」
「んぁ?ただの龍には興味ない。そもそも、妾に勝てるとか思ってるのか?」
尻込みするわけにはいかない。それでも、威圧だけで狂いそうになる。

「まぁ、暇つぶしにはいっか。」
指が鳴った。壁の竜が、10体死んだ。

—————————

「あのような者たちに行かせてよろしかったのですか。」
「よいよい。あれらは部隊を円滑に進めるための舞台装置の一種に過ぎん。」
創滅神は高みの見物を決め込み、面白おかしく言ってのけた。

「アレは失敗作だ。失敗作に少し力を与えてみただけの劣化品。ジャンクだ。」
「そうですね。ただのジャンク。」
映像に映るのは3体。01~19まであるが、そのほとんどは機能しない。

 そんな掘り出し物の中のガラクタを改造して使ってやっている。
 それぞれ一種だけ能力を持っている。

「回りくどいですね。」
「そう思うか?」
「思われませんか?」
「我は楽しいぞ。」
「それを聞けて、わたしも嬉しく思います。」
絶妙に馬の合わない会話の中で、一つだけの疑問を呈してみる。

「何故、創滅神様の手は震えているのですか?」
「武者震いだ。」
苦笑でもため息でもなく、それが当然で面白がる余裕もあるように笑って言った。

「お前にだけは話そう。」
「何をでしょう。」
「我は怖いのだ。あの少女が。そしてたまらなく嬉しいのだ。その恐怖を感じる相手と手を合わせることができるという事実が。」
両手のひらを見つめた。

「我は神だ。過去や未来は視える。」
上を向いて遠くを眺めるように目を細めた。

「しかし視えんのだ。未来が。」
「それは、消してしまうからでしょうか。」
「いや違う。世界は見える。我が視えないのだ。」
「……?」
驚きよりも、疑いが勝る。

「あの少女は恐ろしい。どんな未来でも、どんな絶望の中でも、地獄の底でも、我を殺す。決していい未来はなくとも、絶対に、我だけは殺される。」
「どういう……ことでしょう。」
「さてな。初めから奇妙だとは思っていた。初めから魔力を持つ転生者など未だかつていない。瑠璃色の髪……いや、アレは自然界に存在しない色。固有の魔力色。そんな馬鹿げた存在だった。」
それでも面白そうだ。創滅神は、その少女を招き入れてからずっと、楽しそうだ。

「それは、楽しみでございますね。」
「ああ、そうだな。」

———————————————————————

 今、人生で1番怠いです。どのくらいかというと、寝ることすら怠いと感じるくらいです。沼に埋まりたいです。
 誤字もその他もぐだぐだな気もしますが……まぁ、頑張っていきます。
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