605 / 681
18章 魔法少女と神の使徒
閑話 とある未来の物語
しおりを挟む「あと、何年生きればいいんだろうね。」
一層伸びた瑠璃色の髪を靡かせ、魔導着に身を包む人物がいた。誰もいない世界を見下げて。
美水空20歳。
彼女は、この世界の神だ。魔道を極めた神。
比喩でもなんでもない。名実ともにこの世界の神。魔導神空。
その質問に答える人間はいない。
この大陸に人は住んでいないのだから。
代わりに、自分自身が答える。
死ぬまで。この世界が終わるまで。過去の私が、この現在を変えるまで。
そういう呪縛のもと、存在していた。
空は、ゆっくりと地面に足をつける。枯れた地面。他の大陸も、そう変わらない。まだ生き残りがいるだけ、マシか。
そんな不毛な大地でも、魔力はあって、魔物は生まれる。管理者権限があっても、それをいじる気にはなれなかった。
「ディメンションプレス。」
久々に使った魔法。最近、使った魔法。慣らすためにも、使っておく。
普段なら指を触れずにでも殺せる相手にわざわざ向き合って踏み潰す。これほど虚無なことはない。
腹も減らず、眠くもならず、ただ地獄のような日々を世界を回りながら眺めていく。
死んだ全ての人間の分まで生きて、生きて、生きなければならない。
神は自由ではなかった。解き放たれない。永遠に、全ての重圧にがんじがらめにされてしまう。
「あぁ……癪だ。なんで毎日、あんな神のことを思い出して悩まなきゃならないんだよ。」
ちくしょう、と恨むように吐き出して、近場の木を殴りつけた。
木から見れば理不尽だろうが、今は許してもらおう。
思い出すだけでも反吐が出る。あの神は、この世界を私利私欲のためだけに生み出した。いわばおもちゃ。おもちゃなんだから、好きに遊んでいいよね。そういうスタンスだった。
自分が生み出していても、それは独自の生活を築いて発展していった全くの別物。あれじゃあ、無駄に年を食ってるだけの赤ちゃんだ。
赤ちゃんが力を手にしてしまった。そんな風に思える。
だから、赤ちゃんではない空はどうするのか。
もう魔法少女ではない、一柱の神として。
再び世界を作るのか、この世界を守っていくのか。
「どっちも、クソ面倒。」
そう呟いて、ふと顔を上げる。
何か起こっている。
直感がそう言っていた。
この世界は、創滅神の創ったままの何も手を加えていない世界。不可思議が起こっても、それをコントロールはできない。
「種の大量発生……?突然発生か。」
口にして、まさかと思った。
やられた。
最後の最後まで手間をかけさせる。あれは創滅神の設置したものだ。同じ神だから分かる。
あれは自分が望む種を繁栄させるために使う、身勝手な力。
「死んだ後も厄介かけるとか、私にどんな恨みがあるんだよ。」
反応のあった地へ、時空間創造で移動する。現在存在する時間軸と、空間を、好きに創造することができる。
時間軸創造。これも、過去に行けた理由の一つだ。時間軸という大きな存在に打ち勝てた理由。
空間軸をここから反応地へと移し替え、瞬間移動よりも早く事実を塗りつけた。
「自分が消えた後は、世界も壊す気なのか。」
広がる景色に向かってその言葉を吐き出した。もう自分の世界なのに、他者が踏み込んできている。
「魔物……いや、あの頃の私じゃあ到底敵いようもない魔獣。神獣とでも言うべきか。」
形容の仕方が見つからない姿。神になっても、知能は同じ。
空は、ふと自分の顔を触った。少し、口角が上がっている。
「渡りに船、ってやつか。」
苦笑とともに、いつぶりかの笑いに頬が引き攣る。
生きる意味。無理矢理見つけた、全ての人間の分まで生きる。世界を見る。
それでも心は救われない。だから、何かすることを見つけたかったのかもしれない。
「絶対に感謝はしたくないけど、アレだけは滅ぼそう。命をかけても。」
意志の灯りを感じる。
きっと、創滅神のことだ。世界中にこんなブツを撒き散らしているに違いない。
何もない世界に、希望の怪物が誕生した。
「いいじゃねぇか、やってやるよ。」
拳を握った。
「滅ぼしてやる、私の敵を。」
大地を蹴った。空中で蹴飛ぶ。怪物の集団に進んでいく。
これはかつての四神でも敵うかどうかの強者。空以外の生物が相手になる敵ではない。
数千数万と、畳が敷かれたように上から見ると面になる。
滞空したまま、杖を振るう。
「破滅の檻。」
真っ暗闇の檻が突如として現れると、まるで穴でも穿ったようにそこだけ怪物が消え去る。
神は、動き出した。
———————————————————————
閑話なので、今回は短めです。
久々の閑話。自由に書けるのは、少し楽しいです。
ちなみに、全滅したのは王国やらがある大陸のみで、別大陸にはまだ生き残りはいます。
まぁあそこが一番大きな大陸なのは間違いありませんから、半分以上死にました。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる