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18章 魔法少女と神の使徒
閑話 とある未来の物語
しおりを挟む「あと、何年生きればいいんだろうね。」
一層伸びた瑠璃色の髪を靡かせ、魔導着に身を包む人物がいた。誰もいない世界を見下げて。
美水空20歳。
彼女は、この世界の神だ。魔道を極めた神。
比喩でもなんでもない。名実ともにこの世界の神。魔導神空。
その質問に答える人間はいない。
この大陸に人は住んでいないのだから。
代わりに、自分自身が答える。
死ぬまで。この世界が終わるまで。過去の私が、この現在を変えるまで。
そういう呪縛のもと、存在していた。
空は、ゆっくりと地面に足をつける。枯れた地面。他の大陸も、そう変わらない。まだ生き残りがいるだけ、マシか。
そんな不毛な大地でも、魔力はあって、魔物は生まれる。管理者権限があっても、それをいじる気にはなれなかった。
「ディメンションプレス。」
久々に使った魔法。最近、使った魔法。慣らすためにも、使っておく。
普段なら指を触れずにでも殺せる相手にわざわざ向き合って踏み潰す。これほど虚無なことはない。
腹も減らず、眠くもならず、ただ地獄のような日々を世界を回りながら眺めていく。
死んだ全ての人間の分まで生きて、生きて、生きなければならない。
神は自由ではなかった。解き放たれない。永遠に、全ての重圧にがんじがらめにされてしまう。
「あぁ……癪だ。なんで毎日、あんな神のことを思い出して悩まなきゃならないんだよ。」
ちくしょう、と恨むように吐き出して、近場の木を殴りつけた。
木から見れば理不尽だろうが、今は許してもらおう。
思い出すだけでも反吐が出る。あの神は、この世界を私利私欲のためだけに生み出した。いわばおもちゃ。おもちゃなんだから、好きに遊んでいいよね。そういうスタンスだった。
自分が生み出していても、それは独自の生活を築いて発展していった全くの別物。あれじゃあ、無駄に年を食ってるだけの赤ちゃんだ。
赤ちゃんが力を手にしてしまった。そんな風に思える。
だから、赤ちゃんではない空はどうするのか。
もう魔法少女ではない、一柱の神として。
再び世界を作るのか、この世界を守っていくのか。
「どっちも、クソ面倒。」
そう呟いて、ふと顔を上げる。
何か起こっている。
直感がそう言っていた。
この世界は、創滅神の創ったままの何も手を加えていない世界。不可思議が起こっても、それをコントロールはできない。
「種の大量発生……?突然発生か。」
口にして、まさかと思った。
やられた。
最後の最後まで手間をかけさせる。あれは創滅神の設置したものだ。同じ神だから分かる。
あれは自分が望む種を繁栄させるために使う、身勝手な力。
「死んだ後も厄介かけるとか、私にどんな恨みがあるんだよ。」
反応のあった地へ、時空間創造で移動する。現在存在する時間軸と、空間を、好きに創造することができる。
時間軸創造。これも、過去に行けた理由の一つだ。時間軸という大きな存在に打ち勝てた理由。
空間軸をここから反応地へと移し替え、瞬間移動よりも早く事実を塗りつけた。
「自分が消えた後は、世界も壊す気なのか。」
広がる景色に向かってその言葉を吐き出した。もう自分の世界なのに、他者が踏み込んできている。
「魔物……いや、あの頃の私じゃあ到底敵いようもない魔獣。神獣とでも言うべきか。」
形容の仕方が見つからない姿。神になっても、知能は同じ。
空は、ふと自分の顔を触った。少し、口角が上がっている。
「渡りに船、ってやつか。」
苦笑とともに、いつぶりかの笑いに頬が引き攣る。
生きる意味。無理矢理見つけた、全ての人間の分まで生きる。世界を見る。
それでも心は救われない。だから、何かすることを見つけたかったのかもしれない。
「絶対に感謝はしたくないけど、アレだけは滅ぼそう。命をかけても。」
意志の灯りを感じる。
きっと、創滅神のことだ。世界中にこんなブツを撒き散らしているに違いない。
何もない世界に、希望の怪物が誕生した。
「いいじゃねぇか、やってやるよ。」
拳を握った。
「滅ぼしてやる、私の敵を。」
大地を蹴った。空中で蹴飛ぶ。怪物の集団に進んでいく。
これはかつての四神でも敵うかどうかの強者。空以外の生物が相手になる敵ではない。
数千数万と、畳が敷かれたように上から見ると面になる。
滞空したまま、杖を振るう。
「破滅の檻。」
真っ暗闇の檻が突如として現れると、まるで穴でも穿ったようにそこだけ怪物が消え去る。
神は、動き出した。
———————————————————————
閑話なので、今回は短めです。
久々の閑話。自由に書けるのは、少し楽しいです。
ちなみに、全滅したのは王国やらがある大陸のみで、別大陸にはまだ生き残りはいます。
まぁあそこが一番大きな大陸なのは間違いありませんから、半分以上死にました。
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