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18章 魔法少女と神の使徒
574話 魔法少女は会議に突撃
しおりを挟む「は~……久々の日本。」
その言葉は十分の一くらい本当だ。安らぐような声で、緑茶を啜っていた。
緑茶までの行き着き方は知らない。私は葉っぱの方を作った。
王城の一室で、謎の一時を過ごす。
「あ、フィリオはコーヒーか紅茶か、どれがいい?それとも水?」
「最後の選択肢はないものとして、ソラが今飲んでいる飲み物はなんだ?」
視線を下げ、湯呑みに氷と一緒に入ったキンキンの緑茶がある。私は冷たい緑茶派だ。
綾○然り、伊○衛門然り、冷たい方が飲みやすいしね。
「緑だな。」
「緑だよ。」
「復唱するな。」
「私にはそれをひとつお願いできないかしら?」
「はい、いいですよ。」
ローテーブルを挟んだ向かい側に2人が座り、横には百合乃。テーブルに、百合乃がさっとふたつの湯呑みに氷を入れて、すっと滑らせた。
その隙に私が緑茶を投入と。
緑茶は水の割合が高いので、水魔法として使えるらしい。やったね、初級の魔導書が役に立ってる!
「俺の分もあるんだな。」
「そりゃね。」
「そらのことだから『フィリオの分?ないけど』とでも言うと思ったが……」
「あ、いらないね了解。」
「悪い。藪蛇だったな。」
「それは口に出さないお約束。」
「約束なんてしていない。」
腕を伸ばして、恐る恐る……とはいかずにグイッと煽った。私は目を見張る。
「フィリオは恥ずかしがり屋なのよ。信頼しているのよ、ソラちゃんのことは。ネルがいなければ、自分の娘として扱っていたかもしれないわ。」
「えぇ……フィリオの娘……」
「……余計なことは言わなくていい。」
氷のカランという音を鳴らしながら、机に湯呑みを置いた。
「どう?」
「美味い。ほろ苦さと、奥に感じられる深みと独特な旨みがあるな。これはどこで採れる?」
なんというか、これは何かより産地を尋ねるあたり領主らしい。すでに生産について考えている姿勢だ。
「さぁ?なんか、涼しくて水捌けよければいいんじゃない?」
「アバウトだな。」
「緑茶の茶葉はウーロン茶や紅茶と同じですよ。この世界では発酵していない茶葉は飲まれていないようですけど、それがこの緑茶です。多分、抽出法が悪いのか苦味が強かったんでしょうね。」
隣の百合乃は、ぷはぁ、と美味しそうに飲みながら口にした。
「ドリスの主力商品にしてはどうですか?新商品なので目を惹きますし、あそこは茶葉の生産地ですから。茶葉は、発酵法によってさまざまな顔を出しますから、不思議ですよね。」
「百合乃、詳しすぎて怖いんだけど。」
現に、フィリオの目が点だ。
「あー、でも同じ茶葉ってのは聞いたことあるかも。」
「茶の話はいい、本題に入るぞ。」
「本題ぃ?」
目を細めて、疑わしい視線を突き刺した。
「現在、会議が膠着状態なんだ。」
「は?もう戦争終わってんのに?」
「……それを知っている理由は深くは問わん。」
そう言って目を伏せた。フェロールさんは、いつもの微笑みで緑茶を飲んだ。
「ソラちゃんには、手伝ってほしいことがあるの。」
「フェル。大丈夫か、ソラを使って。」
「大丈夫よ。刃傷沙汰にはならないならセーフよ。」
「何やらとてつもなく不穏な気配を感じたんだけど、気のせい?」
「さぁ?」
百合乃はどこか居心地悪そうにして、小さく欠伸した。
「で、答えは?」
「会議を終わらせてほしいの。」
「会議……?」
フェロールさんの微笑みによるお願い。フィリオに頼まれたら蹴飛ばすところだけど、フェロールさんが言うなら……?
「ソラちゃんの言うように、もう戦争は終わっているわ。国王陛下に、オリーヴちゃんが報告したの。」
「ってことは……もう終戦報告されてるの……?」
「そういうことですね。」
「私来た意味全くないじゃん。」
真顔で言った。噛み締めるように脳内で反芻させる。
「なら、ここで意味を作っていけ。」
「会議を終わらせるって私……そんな便利屋みたいな能力持ってないよ?」
「特段、円滑な解決を求めているわけではない。戦争の話し合いを戦争後にやるという全く意味のないこの会議を壊す。それだけだ。」
「それはそれで、私テロ容疑で捕まりそうなんだけど。」
かつて、実際にそうなっているから笑えない。
「大丈夫だ、手は回してある。」
—————————
日が傾く前。昼頃に行われることになった会議。
王城の広々空間の会議室に、多くのお偉いさんが次々と入っていく。見ただけでうん金持ちそうって見た目。
あ、あれ。
物腰柔らかそうなおじさま。どこかで見覚えがある。
「クルミルさんのお父さんじゃないですか?あれ。」
「あー、レイモンドさんだ。」
陰に隠れながら、コソコソと見守っていた。
「この人の数だけ街があるんだよね。」
「ですねぇ。」
「色んな人がこの国を支えてるんだよね。」
「ですねぇ。」
相槌を打たれながら、ぶつぶつと言っていく。
この中に悪徳領主とかはいるだろうけどね……
それから20分ほど待っていると、どうやら会議が始まったようで警備員らしき人が待機し始めた。
「よし、そろそろかな。」
私達の足は、警備員の方へ向かっていた。
『さて、今回の任務を発表しよう!』
『わー』
『ぱちぱちー』
『どんどんぱふぱふー』
全く盛り上がらない空気に、Cは咳払いをする。
『題して、お前何様だよ作戦!』
『ぶー!』
ヤジが飛ぶ。ネーミングセンスも作戦内容もクソだ。救いようがない。
その詳しい作戦内容は以下の通り。
私と百合乃が会議にどんと突撃し、そして返してもらった帝剣をどんっ!
てめぇら、捌かれたくなかったら黙りな!
以上。
「馬鹿じゃないのって、私思う。」
「私も思います。」
事情を知っている警備員は、怪しさ満天の私達を捕まえることなく道を開ける。
うーわ、扉越しにも聞こえてくる。めっちゃ白熱してるな。
補助金がどうたら、帝国に近いからどうだ、被害想定がなんたらと。
確かに、主力軍はあそこに集まってるだけで戦争なんだから他のところから攻めたりもするだろうけど、それも各街で対処してるんじゃないの?
いや、してるから話してるのか。
「って、いやいや無理無理!」
「ですよね、ですよね?!こんなの無理ですよね?」
私達は立ち止まり、小声で喚きだす。隣の警備員は苦笑してる。
「だってさ、領主だけが集まって会議してるんだよ?国王に直接渡る結果を議決する場で、私が現れて止まるわけないじゃん!」
ドアに手を伸ばすか伸ばすまいか、逡巡していた。
「何をしている?」
「え?」
隣の警備員の目が開かれ、ガチガチに固まる。
「国王……?」
「え、空?なんです?今、国王とか言いました?」
「百合乃って初めてだっけ。」
「国王に会える人間の方が少数派です!」
百合乃が小さく耳元で喚く。
なんでここに国王が?
疑問は絶えない。
そこで、国王は困ったように口を開いた。
「ブリスレイから聞いていなかったか?」
国王らしく、覇気の乗った声で聞かれた。
あ……手を回してるって、そういうことか……
私は額に手を置き、安堵する。
「いや待て。ということは、フィリオあいつ分かっててこんなクソみたいな案を……」
「そのような理由ではないだろう。目の前に、功労者がいた方がやりやすいという話ではないか?」
国王はフランクに笑ってみせる。
こういうところ、すごいよね。
関心半分、呆れ半分。私は、国王の後についていく。
———————————————————————
私、一つのことを続けることが結構苦手なんですよ。
また、新作を書き出し始めたcoverさんです。
他のやつ、まだ全然執筆できていないのに、新しいやつだけをどんどん増やしていって……もうわけ分かんないです。
一応どんな感じか言いますと、働くのが嫌すぎる女の子がダンジョンの探索者になったけど、過酷(労働ではなく労働時間が)なので辞めたい話です。
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