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18章 魔法少女と神の使徒

578話 魔法少女は対策会議

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 今日も1人でお出かけ。私は、練習中の座標転移の魔法でイグルの村までひとっ飛びした。座標転移、めっちゃ便利。

 そして、第二の我が家に入る。

「なんでいるの。」
開口一番、トーンの下がり切ったやる気のない声。その声を向けたのは、ソファの辺り。勝手に、そこが定位置になっている。

「うるせえな。いいだろうが、別に。」
「よくないから言ってんの。」
神速からの左足の蹴り上げ。ソファに横たわる男の体に向けて、私は躊躇なく攻撃をかます。

「オートバリア。俺の体は、常に守られている。」
「へぇ、そっか。」
私の蹴りを、一瞥もせずにその言葉で片付けた。地味にイラっときた。

 よーしよし、そうか。なら、物理的攻撃じゃなきゃ守られないわけだ。

 私は、ステッキを壁に向けた。

「岩槍。」
硬い岩が槍を成して、壁を貫通した。

「よし、空の彼方まで行こうか。」
「何する気だ。」
「見りゃわかるでしょ。」
「分からねえよ。」
しかし、それなもやばいことは伝わるらしい。抵抗が体に伝わる。

「身体激化。」
一瞬だけ痛みを耐え、そして首根っこを捉えた。

「行ってこい!」
「おいやめ———」
邪魔な男……蓮は、星となったとさ。

「何をしておるのか、これはツッコんだほうがいいのかの?」
「ん?なにが?」
今までのことが本当に何もなかったかのように、振り返って首を傾げる。壁に穴はない。

 再生創々で証拠隠滅っと。

「ま、帰ってくるっしょ。」
「適当すぎないかの……?」
「いいの。このくらい余裕がないと、この世界じゃやってけないって。」
「それをこの世界で生きてきている我に言うのかの?」
呆れたような口調で言ってみせる。

「他の四神は?」
「ヴァルディート殿は日光浴といって木の上で寝ておる。」
「霊神と人神は?」
「ミュール殿とエディレン殿はそれぞれ、やることがあるといって出ていった。我は知らん。」
目を伏せて、ルーアはキッチンの方に向かった。私の設置した冷蔵庫に向かって足が向いていた。

「結局、霊神の呼び方それに落ち着いたんだ。」
「これが妥当だ。」
冷蔵庫から出した、ひんやり水を一気に煽る。

「2人が帰ってくるの、待つか。」


 いつもの風景。なんか、戦時中もこんなようなことをしていた気がする。
 長テーブルに四神(といつの間にか帰ってきた蓮)が座り、私が正面に立つ。

「今回は、ふざけも何もなしのガチ会議だから、そこのところよろしく。」
「ということは、其方は今までふざけていたと。」
「そうとも言える。」
人神がお怒りの様子なので、さっさと会議を始めたいと思う。

「お題は、神国とその後。」
「今回の報告はいいのか?」
「それはこの国の人達が勝手にやってくれる。蓮は無駄に口挟まないで。」
「理不尽すぎるだろうが。」
そんな愚痴をこぼし、さらにもう一言付け足された。

「俺が協力してやってるのは、これが神を殺せる手段だからだ。それを忘れるな。」
「あーはいはい。」
この作戦にはあまり意味のない能力してる蓮はさておきたいが、会議を円滑に進めることもまた今必要とされていること。社交辞令でもなんでも、頷いておくことが大切だ。

「私の知っている未来では、神炎と呼ばれる消化不能の魔力の炎を主として侵攻する。」
「正確な日時は分かる?」
「そこまでは。でも、侵攻が始まったのは、帝国戦で私が気を失ってから。」
魔神の問いに答え、その答えに人神が反応する。

「準備なしの戦争。きっと、相応の時間もかかったはずだ。もう少し先と、考えてもいいか。」
「うん。でも、早めにやっときたい。神の力に対抗する力を、用意したい。」
そうやって結論に結びつけ、この場の全員に問う。

「ここには過去、創滅神を下界から排除することに成功した四神が、みんながいる。だから、知恵と力を貸して。」
少し真面目に。命運を分けたこれからの戦いに、本気の思いをぶつけるように。

「もしそれで、創滅神を殺したら。キミは、その時はどうする?」
魔神は覚悟を問うように聞く。

「私が神に成り変わる。それしかないでしょ。」
未来の私が神を下し、魔導神になったように。

「その時はまた、力を借りるかもね。」
「そうならなきゃ、俺が困る。」
蓮が睨むように言った。

「なにが?」
「それはこの手で神を殺す。そんな力がねえことも、分かっちゃいる。だから、こうして間接的にでも俺が殺そうとしている。」
「だから、なに?」
結論を急がせた。機嫌がさらに悪くなる。

「俺は神なんていう称号なんざ興味ねえ。だから、神になったらお前は俺を日本に返せ。できるだろ、神なら。」
「……それが人に物を頼む態度?ま、いいけどさ。」
心の中で、失敗するかもと思いながら返事だけはいい言葉を口にした。

「じゃあ、始めよう。」
私が口火を切り、会議は開始された。


「つまり、神の力に唯一抗える能力を持つのが四神。それぞれの種族の頂点、っていう認識でいい?」
「おおよそ、間違いない。」
人神が頷いた。

「神相手には、独自の力でないと不可能だ。勝ち目はない。そもそも、その力の根源が魔力だから、根本的な戦闘スタイルを見直さないとならないけど。」
「じゃあ、どうやって創滅神は封印……というか、下界から追い出せたの?」
そこの部分が知りたい。それを知れれば、妥当創滅神に1歩前進だ。

「龍神ルーは、力を統合して側だけ別の力を生み出した。それが、呪力。」
「呪力……」
「名前は呪いだなんて厄介そうな名前がついているけど、実際には神に対した呪い。下界の生物には関係ない。」
魔神の言葉は、半分しか聞き取れなかった。それより、呪力。その言葉を、私は知っている。

 未来の私のステータスにあった。

 つまり私は、その統合した力とやらを行使できたということに他ならない。

「その呪力がどうしたの?」
「側だけ違う力。当然、創滅神も少しは怯んだ。」
「けどねぇ。すぐ、見破られちゃったの。」
「見破られた?」
じゃあ、どうやって。そう聞く前に、横入りした霊神がそのまま語り部を引き継ぐ。

「見破っても、それは100%この世のものじゃないのぉ。だから、ルー爺は全てを出し切る勢いで注意を引いたの。」
「つまり、攻撃役ってわけね。」
でも、それじゃあまだ納得いかない。

「そこで、ボクの出番だ。魔法を極めているボクの。」
「魔法って、この世界の技じゃん。」
「ボクは、四神の中で唯一別世界と繋がれる存在だ。創滅神に封印術を施した。」
ニヤリと笑う。

「ま、強すぎて行動制限が限度だったけど。」
「急にカッコ悪くなるのやめて。」
「キミ、神に夢を見過ぎ。」
というよく分からないツッコミをされてしまったので、口を閉じた。

「余は防御担当だった。余は、相殺魔法という独自の魔法を編み出してね。」
「相殺魔法……」
「皆、それぞれ魔法を生み出している。相殺魔法、龍法陣、異界魔法、精霊術。」
こんな風にね、と自慢げに言われた。

 魔法って奥が深いね。

「ワタクシは、この魂の半分を生贄に精霊ワタクシにしか解けない乖離の魔法かけたのよぉ。」
にっこりと微笑み、威張るようなそぶりもない。こういうところで人柄……神柄がでるもんだ。

「創滅神討伐にあたって、独自の魔法ね……」
一番頭を悩ませる難題が浮かび上がり、頭を抱える。

 相殺魔法。人神のこれを使えば、神炎に限らずそれに準ずるものはどうにかなる。手伝ってもらって、用意すればいい。

 けど、こればかりはどうにもならない。

「いや、其方にはだろう。」
「ん?」
「独自の魔法。技能と言った方がいいか。」
疑念を込めた視線を向ける。

「魔力を必要とせず、己のみに適する力。……命名するなら、そうだな。理創りそうとでもしよう。」
頷いて、納得する。他3名も、「妥当じゃないかな」「大きい括りで、神と言ってもいいかもしれんの」などと聞こえてくる。

「ま、実行は後日としよう。各自で、奴を滅ぼす方法を考える、それでどうだ?」
意義なし。ということで、会議は強制終了。

「まじか。」
主催のはずが、取り残されていた。

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 そろそろ、全く進んでいない応募用(未定)の作品にも着手しなければなりませんね。
 ほんとに、全く進んでないんですよ。これが。

 それはそうと、軽く咳が出ますね。熱はないのが救いです。
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