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17章 魔法少女と四国大戦
537話 ヒットアンドアウェイ
しおりを挟む「敵襲、敵襲~!」
鐘が鳴る。敵が攻めてきた合図である。21中6つの村からその合図はやってきた。
内訳はアイディン、ルルサール、アルタイン、カヌル、コール、イグル。思っていた通り、村々の中で国境に近い部類の村だ。
魔法少女はその様子を見て、始まってしまったかと見下ろすばかり。こればかりは仕方がない。
見えるのは侵攻してくる帝国及び神国軍併せ2万。対してこちらが満足に動かせる兵力は凡そ4万。圧倒的な数の差に、士気は上がる。
「全部隊、配置につけ!」
魔法少女とレリアリーレ合作の魔導具による通信で命令をし、6つの村では万全の防御を固めていた。
わざわざ出向いてくれるのだ。中に入れることはしたくないが、こちらから不用意に突撃するのは悪手。機を見計らえばいい。
と、総騎士長レイアードは思う。
が、実は奥に本陣が3万ほど控えている。魔法少女らは、そちらを叩くつもりだ。
この時ばかりは主人公にでもなってやろうと大物みを見せ、「陽動頑張りたまえ」と誰目線だとツッコまれそうなセリフを吐き捨てた。
それぞれの指揮は総騎士長、正騎士長、騎士長。そして守英団拾肆彗、参彗、伍彗、玖彗が担当する。
魔科学の2人は玖彗の元へ、メイドさんは総騎士長と共に進軍する。
戦争第一段階は、確実に連合国側に軍牌が上がる。相手が国境に踏み入る前に全ての守りを固めていた。
向こうはここは占領地だと勘違いし接近。こちらは今から出撃するのみ。引き返す暇も与えず、叩く。
今回、作戦の立案は主にネイファが行った。
それは、前日の会議にて6名に全て教え納得の上この策を行使することとなった。
「相手は帝国軍。そして未知の神国軍。向こうはどんな戦力を有しているかは未だ不明。そのため———」
—————————
「粗悪で、劣等で、奴隷未満の王国がぁ……どういうことなの?」
帝国軍本軍。プロヘイスは爪を噛みながら文句を並べて足で地面を蹴る。
「バイオレットは一体何をしているの?文句をいくら言ったって気が済まないわ……!」
遠くの村を見て怒りを露わにする。そこには、我らが帝国の駐屯地ではなく……王国の壁となっていた。
「愚の骨頂だわ……ルーンは何をしているのよ……」
プロヘイスは狂った予定を瞬時に組み立て直し、何度も頭を掻きむしる。
しかしやらなくてはならない。1度始まった戦争は、どちらか一方が敗するまで終わらない。
—————————
地の利は、わずかにこちらが上。
「一斉、進軍!」
魔導具による一令。それにより、連合軍は進軍を開始した。
「うおー、すごい絶景。」
7人はそれぞれ配置につき、帝国軍の動きをしっかり監視する。ここは城もどきの頂上。
2人はイグルの村から。四神もそれぞれ一柱ずつ、連合軍が動きやすいように守護のような役割を持たせて配置された。
「アーレ、無事かな……人神によると、何か裏工作をしてるとかって聞いたけど。怪我とか大丈夫?」
そんな風に、小声で心配を紡いでいく。
「うるせえな。黙れねえのか?」
そんな無粋な言葉を浴びせてくる転生者レンに、魔法少女は睨みつける。
「別に、蓮とかいらないんだけど。脳筋なだけでそこまで強くないじゃん。」
「ステータス上なら俺の方が圧倒的だ。」
「ステータスでものを語るとかだっさ。」
冷静に言い捨て、目を細めて遠くを見る。遠眼とかいう便利スキルは、魔法少女に備わってはいない。
彼女らの眼前では、今死闘が行われている。
「らああああぁぁ!」
「おらっ、交代だ!」
「ぐあっ!」
そんなちゃちな戦闘劇を目の当たりにしつつ、戦況把握と監視を続ける。
まず連合国軍は基本5人組で動く。2名が攻撃、2名が待機、1名が補助。攻撃を当て、チェンジし追撃。補助で隙を作りつつ、また交代。ヒットアンドアウェイ。攻略を、逃げつつ探る。
「確かに、見た限り帝国軍は全体的に強い。魔力が明らかに多い。」
万能感知を発動させた魔法少女は、考えるそぶりを見せて視線を動かす。
「転生者ではないが、混じりがいるな。」
「分かる?」
「なんとなくな。転生者は大体で分かる。」
「感覚派は嫌われるよ。」
「どうでもいい。」
依然、本軍の動きはない。明らかな優勢劣勢は付かぬ中、両者少人数の死者を出しつつ前進後退を行う。
まずこちらは前進するつもりは殆どなく、逃げている場合が多い。どちらかと言えば、向こうのジリ貧を狙っている。
そんな中、異彩を放つのはやはり6名のうちの人間。流石に指揮をとる者がいないのは良くない。1人代理を立て、交代しながらやるらしい。
「……屈辱を晴らすの。」
幼女はダガーの様な、小さな刃物を手に滑るようにして接近する。
例外その一だ。単独行動を許された、単独最強と謳われる、こともあったかもしれないエインミール。
その特徴は、とてつもない速さとその制御力。
相手が気づく前に、全滅してしまう。
「……なかなか、強いの…….」
しかし、数名に1人は防ぐ者もいる。
「これが、帝国……」
エインミールは、さらなる加速と木々をも使う荒技で制圧しながら、苦言を漏らした。
「やってやるの。」
自信を滾らせ、次の戦場を求めて足を運んだ。
一方、他の拾肆彗は。
「クワッハッハッ!もっと来るが良い、興が乗った!」
カオスエリーヴは豪快に笑いながら、帝国軍を蹴散らしていた。包囲され、動きを制限されているがまるで気にしない。
手に持つのは身長と同じほどの武器。輪斧月と呼んでいる。先端は巨大な斧で、反対側にも槍のような刃がついている。斧の先端からは、圧縮した魔力を発射できる。
大回転させ全てを破壊するその武器に勝てる敵はおらず、遠距離にいても魔力弾で消滅させられる。
「その調子だ。俺の殺戮はこれからだ!」
森に響く雄叫びは、帝国を破壊へ導いてゆく。
「全く品がないね。んな暴力に任せた戦闘、美しくない。」
対するニカは、それを眺めて細剣振るう。
「よそ見している暇h」
「うっせ。」
首が取れた。地面に真っ赤な海をつくりあげると、無気力に蹴飛ばした。
「全員何か仕組んでるぞ、これは。」
怪しさ満天の帝国軍を訝しみつつ、「逃がしてはくれないか」と次々湧いて出る帝国軍をみゆる。
「そうか、お前らは……」
10名ほどの兵が飛んできた。
「こらぁ面倒なことになりそうだ。」
玖彗ニカは、言葉に反して喜色の笑みを浮かべるのだった。
戦場は混沌とし、醜い争いに発展していく。現在優勢は連合国軍。しかし、帝国は動き始める。
—————————
「醜悪で低俗で卑劣な王国にも、慈悲は必要よね。ぜーんぶ、利用してあげましょう。」
最終的な結論を出した。プロヘイスは笑う。
「バイオレットの立場を奪うわ。本当に、何をしているのかしら。」
プロヘイスは一報だけ帝国府に伝える。
この事態の説明と、エインズの協力。
「全軍に告ぐ。我々の勝利を確実にしましょう。」
全てをひっくり返す力が帝国にはある。
この劣勢すら全て無くしてしまう力が、皇帝にはあるのだ。これは、ほんの序章に過ぎない。
そもそも、兵の質自体圧倒的なのだから。
「裏で手を回す厄介者から、退場させるわ。」
通信用魔導具を皇帝に繋いだまま、ニヤリと口角を吊り上げた。
———————————————————————
頭痛がする中書いた今話。腹痛にも悩まされそうな予感を抱えつつ書いた今話。可愛い妹がほしいと思った今話は、ようやく戦争が始まりました。
とはいえいきなり泥沼展開ですな。一応連合国側が優勢ですけど、向こうはあの帝国です。
どうなるんでしょうねぇ。
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