上 下
558 / 681
17章 魔法少女と四国大戦

531話 魔法少女は備える

しおりを挟む

 本戦のための用意は万全にしておきたい。私は、各村に立ち寄って様々な施設を立ち上げていた。

「とりあえず、一村2000人くらい招けるようにはしておきたいから……まあ多分、家は大丈夫。いやだめかな。…………はぁ。設備もやんないと。」
「設備といっても、そうたいしたことはできないと思うがの。」
側にきたルーアが、私の手元を見て呟いた。

「どうせ何万と軍よこしてくるんだろうし、食糧と武器はあったほうがいいでしょ?防具は私の専門外だけど、剣とかなら作れる。この世界の人達、別に魔力ないわけじゃないしラノスも使えるし。」
ニヤッと笑う。さすがに、エスカーなんかは使えないだろうけど、ラノスならいけるはず。

 武器庫食糧庫……守りも固めた方がいいかな。柵の強化とか掘り作るとか。

 ラノスは数が減ってからだよね。
 何万と製造するのは核石的にも厳しいし、相手の肉壁がなくなった時ように。

「主の魔力、大丈夫かの?」
「大丈夫なわけないね。食料も武器の材料も加工も、全部魔力頼り。死ぬって。」
「少しくらい休まんか。」
「でも、やんなきゃいけないし……」
寝そうなほど重い瞼を無理矢理ひん剥き、魔力を流し続ける。

 今が頑張り時だしね。
 今回は百合乃に迷惑はかけたくないし、安全なところにいてほしい。
 アーレも今は頑張ってくれてる。今私がでしゃばれば邪魔になる。四神ほどの圧倒的殲滅力もなければ、ネイファみたいな知謀もない。

 ネイファはそもそも敵だから距離置きたいけど。

『自分から手放してるんだから、文句はなしね』
『家帰りたい~』
『当分は帰れそうにないけどね』

 全ては終戦まで。家に帰れないかもしれないけどね。

 絶対あの私のようにはならない。なったら死ぬ自信がある。

「根は詰めすぎない方が良いぞ。敵は、帝国だけじゃない。」
「分かってるって。その布石。」
と言いながら、武器の製造に励む私。頭おかしくなりそう。


 その日の夜、私は自室(に勝手に改造して置いた)ベットへダイブした。
 やること自体は少ないのに、内容が多すぎる。

 明らかに戦闘向きな能力してる私が、なんでこんなちまちましたのをやんなきゃいけないのか、甚だ疑問だ。

 そんな風にネチネチ考えてたら、知らぬ間に寝ていた。

「寒っ。」
昨日雨が降ったのと、冬の朝というのが加わり自分の肩を両腕で抱く。どこからか、金属音がするのを聞いてそっちに引き寄せられる。

「もっと背筋を伸ばして。自分の体に真っ直ぐ芯があると思って、それに付随した動きをしろ。余の動きを見ろ。」
小さい体に、剣を叩きつける男がいた。蓮だ。

「なにしてんの?」
「見て分からないか?稽古だ。」
「よそ見すんな!」
「そういう言葉は自分がよそ見されないくらい努力してる奴が言うセリフだ。余だって疲れているんだからさ。寝たいから早く終わらせてくれないか?」
小さくあくびをし、それにキレた蓮がさらに力を込めて剣を振る。素人目に見ても力任せだ。

 気分転換にいいのかな……?
 私も魔物狩りに行こうかな。冷蔵庫用電気用銃用の核石と、核石は色々使うし。

 いやでもめんどいな……そもそも私、出てって帝国にバレない?

「あ~……それ終わったら、核石回収行ってきて。蓮いつも暇でしょ。暇人働け。」
「誰が暇人だ殺されてえのか?」
「はいはい威勢だけはいいんだからその威勢を魔物に向けてきて。素材は好きにして。いらないなら燃やして。」
朝食でも食べようかと、踵を返して手の甲を見せて振る。

「おい待……」
「隙だらけ。」
人神の指摘で我に返り、打ち合いが始まった。私はまだまだ食料も武器。大変だ。


 もう直ぐで昼。気分転換に別の村に行ってみた。異世界の村だからといって、マ○クラのように人口一桁ぐらいの村ではなく、しっかり広い。
 ルルサールというルの多い村だ。

 現存しているだけあり、先人の知恵が窺える。
 川沿いに作ったり、湖に作り攻めづらくしたり、大森林をバックにしたり、その辺の平原に~なんてことはない。

 それでも攻め落とされてるからなんとも言えないけど。

「色々でかい部屋漁ってみても文書的なものはないし……多分、どちらかというと集落とかそういう孤立した感じのやつかな。」
全部が全部そうとは言えないけど、交流は少ないようには見えた。まず、馬車路が引かれていない時点で察せられる。

 内装もこじんまりとしたものしかないし、核石も最低限。運ばれたって感じじゃなくて、街に物を売りに行った時についでに運んできた物って感じ?

「スローライフにはちょうどいいんだろうけどなぁ。」
私はテンプレ主人公のようにスローライフがしたいのにできない!みたいなキャラではない。やりたいことができればそれがマイスローライフ。

「できてないけどね。」
「どうしたのかしらぁ?」
「えあっ、れっ、いしんかぁ……?脅かさないでよ。心臓に悪い……」
自分でも変な声が出たと自覚できるくらいは変な声が出た。恥ずかしさを怒りに変換してぶつけておく。

「あらぁ、ごめんなさいねぇ。」
「というかそれ、寒くないの?」
私は霊神の体を指差す。一部というより、全体的に。

 これは思春期の男の子が見たらいけない生物だ。蓮は例外みたいだけど。

「体温調節はしてるわよぉ?」
「原素ないけど、大丈夫なの?」
「十全とは言えないけれどぉ、大丈夫よぉ?原素は元を辿れば魔力。薄くても凝縮させて使ってるのぉ。」
ニコニコ笑って答えてくれる。顔だけ見れば聖女っぽい母性を感じるんだけど。

「逆にぃ、魔法少女ちゃんが原素を篩にかけて魔力にして魔力供給することもできるのよぉ?他者が送れば魔壊病待ったなしだけれどねぇ。」
「つまりアレか……カ○ピスを水で割るみたいな。」
独自の納得の仕方をしつつ、隣を歩く。霊神が勝手に。

 私、濃いカルピスのほうが好きなんだけどね。

「そんなことはいいわよぉ。魔法少女ちゃんは、どうしてここに?」
「どうしてって……気分転換?」
村の水源と思しきため池を覗く。

「…………魔法少女ちゃんにとって、きっと今が苦境ねぇ。頼れる相手は少なくて、やれることも限られて。行動に移せたら楽なのに、難しい。」
背中に唐突に弾力を感じた。忌まわしき脂肪の塊おっぱいだ。

「何……?セクハラで訴えるよ。」
首に手を回し、抱きしめるように寄せてきた。

「心の持ちようなんて言わないわぁ。ワタクシは、綺麗事は嫌いなのよぉ。でも、綺麗になろうとする努力は好きなのぉ。」
口調は同じでも、雰囲気が違う。

「だから、頑張って。ワタクシからはそれしか言えないわぁ。」
パッと離れてパッと消えた。神は気まぐれみたいだ。

 頑張って、ね。

 シンプルだけど、そういうのでいい。どれだけ言葉を繕って、組み立てて、聞こえのいいセリフを口にしても刺さらない。本当に刺さる言葉っていうのは、こういうのだ。

 はぁ……霊神の方が頑張ってそうだけどね。

 心でギャーギャー騒いでたのがアホらしくなってきた。

 自分の身が創滅神を封印する鎖というのに、気まぐれに生きている霊神ミュール。彼女を見習いたいものだ。

「いやまぁ、頑張りますけども。」
気は乗らない。腕を伸ばして、とりあえず10本ほど剣を作ってみる。うん、上等。

「魔法で強化もしてるし、強度もいい。相手に渡ってもそんな脅威になるほどではないけど、十二分にいい。問題は銃だけど……核石の弾丸作るのむずいからね。魔力の塊でもいいけど。」
試しに2つ、試し作りした銃に核石と魔力弾を込め、2回パァァンッ!と弾けた音を鳴らす。

「……やっぱ、核石かな。」
魔力弾を込めたマガジンを核石に変え、後ろの木の枝に向かって連射。

 魔力弾だと空気中の魔力やらなんやらに影響されやすいけど、魔力保有限界のある核石なら、ブレずに真っ直ぐ飛ぶ。
 加工と品質の安定はきついけどね。
 魔力量と質に比例するし、核石の硬度は。

「ま、やるか。」
魔神の設置している移動用の門に足を運び、私は私の仕事をすることにした。

———————————————————————

 疲労スパイラルから抜け出したい日々でございます。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!

矢立まほろ
ファンタジー
 大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。  彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。  そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。  目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。  転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。  しかし、そこには大きな罠が隠されていた。  ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。  それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。  どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。  それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。  果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。  可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。 これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。 1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ! いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります! 【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。

巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。 すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。 「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」 お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」 「だいじょうぶ?」 「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」 「ええ!?」  巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 モンスター使役学を100年単位で進めたとされる偉大な怪物学者の孫アルバート・アダンは″天才″と呼ばれていた。将来を有望な魔術師として見込まれ、大貴族で幼馴染の可憐なる令嬢を許嫁としていた。  しかし、おおくの魔術師に期待されていたアルバートは【観察記録】という、「動物の生態を詳しく観察する」だけの極めて用途の少ない″外れスキル″を先代から受け継いでしまう。それにより周囲の評価は一変した。 「もうアダン家から実績は見込めない」 「二代続いて無能が生まれた」 「劣等な血に価値はない」  アルバートは幼馴染との婚約も無かったことにされ、さらに神秘研究における最高権威:魔術協会からも追放されてしまう。こうして魔術家アダンは、力をうしない没落と破滅の運命をたどることになった。  ──だがこの時、誰も気がついていなかった。アルバートの【観察記録】は故人の残した最強スキルだということを。【観察記録】の秘められた可能性に気がついたアルバートは、最強の怪物学者としてすさまじい早さで魔術世界を成り上がっていくことになる。

ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ
ファンタジー
 おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)  ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!  転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!  プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。 「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」  えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ! 「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」  顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。 「助けてくれ…」   おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!  一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。  イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!  北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚! ※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️   「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡

処理中です...