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17章 魔法少女と四国大戦
531話 魔法少女は備える
しおりを挟む本戦のための用意は万全にしておきたい。私は、各村に立ち寄って様々な施設を立ち上げていた。
「とりあえず、一村2000人くらい招けるようにはしておきたいから……まあ多分、家は大丈夫。いやだめかな。…………はぁ。設備もやんないと。」
「設備といっても、そうたいしたことはできないと思うがの。」
側にきたルーアが、私の手元を見て呟いた。
「どうせ何万と軍よこしてくるんだろうし、食糧と武器はあったほうがいいでしょ?防具は私の専門外だけど、剣とかなら作れる。この世界の人達、別に魔力ないわけじゃないしラノスも使えるし。」
ニヤッと笑う。さすがに、エスカーなんかは使えないだろうけど、ラノスならいけるはず。
武器庫食糧庫……守りも固めた方がいいかな。柵の強化とか掘り作るとか。
ラノスは数が減ってからだよね。
何万と製造するのは核石的にも厳しいし、相手の肉壁がなくなった時ように。
「主の魔力、大丈夫かの?」
「大丈夫なわけないね。食料も武器の材料も加工も、全部魔力頼り。死ぬって。」
「少しくらい休まんか。」
「でも、やんなきゃいけないし……」
寝そうなほど重い瞼を無理矢理ひん剥き、魔力を流し続ける。
今が頑張り時だしね。
今回は百合乃に迷惑はかけたくないし、安全なところにいてほしい。
アーレも今は頑張ってくれてる。今私がでしゃばれば邪魔になる。四神ほどの圧倒的殲滅力もなければ、ネイファみたいな知謀もない。
ネイファはそもそも敵だから距離置きたいけど。
『自分から手放してるんだから、文句はなしね』
『家帰りたい~』
『当分は帰れそうにないけどね』
全ては終戦まで。家に帰れないかもしれないけどね。
絶対あの私のようにはならない。なったら死ぬ自信がある。
「根は詰めすぎない方が良いぞ。敵は、帝国だけじゃない。」
「分かってるって。その布石。」
と言いながら、武器の製造に励む私。頭おかしくなりそう。
その日の夜、私は自室(に勝手に改造して置いた)ベットへダイブした。
やること自体は少ないのに、内容が多すぎる。
明らかに戦闘向きな能力してる私が、なんでこんなちまちましたのをやんなきゃいけないのか、甚だ疑問だ。
そんな風にネチネチ考えてたら、知らぬ間に寝ていた。
「寒っ。」
昨日雨が降ったのと、冬の朝というのが加わり自分の肩を両腕で抱く。どこからか、金属音がするのを聞いてそっちに引き寄せられる。
「もっと背筋を伸ばして。自分の体に真っ直ぐ芯があると思って、それに付随した動きをしろ。余の動きを見ろ。」
小さい体に、剣を叩きつける男がいた。蓮だ。
「なにしてんの?」
「見て分からないか?稽古だ。」
「よそ見すんな!」
「そういう言葉は自分がよそ見されないくらい努力してる奴が言うセリフだ。余だって疲れているんだからさ。寝たいから早く終わらせてくれないか?」
小さくあくびをし、それにキレた蓮がさらに力を込めて剣を振る。素人目に見ても力任せだ。
気分転換にいいのかな……?
私も魔物狩りに行こうかな。冷蔵庫用電気用銃用の核石と、核石は色々使うし。
いやでもめんどいな……そもそも私、出てって帝国にバレない?
「あ~……それ終わったら、核石回収行ってきて。蓮いつも暇でしょ。暇人働け。」
「誰が暇人だ殺されてえのか?」
「はいはい威勢だけはいいんだからその威勢を魔物に向けてきて。素材は好きにして。いらないなら燃やして。」
朝食でも食べようかと、踵を返して手の甲を見せて振る。
「おい待……」
「隙だらけ。」
人神の指摘で我に返り、打ち合いが始まった。私はまだまだ食料も武器。大変だ。
もう直ぐで昼。気分転換に別の村に行ってみた。異世界の村だからといって、マ○クラのように人口一桁ぐらいの村ではなく、しっかり広い。
ルルサールというルの多い村だ。
現存しているだけあり、先人の知恵が窺える。
川沿いに作ったり、湖に作り攻めづらくしたり、大森林をバックにしたり、その辺の平原に~なんてことはない。
それでも攻め落とされてるからなんとも言えないけど。
「色々でかい部屋漁ってみても文書的なものはないし……多分、どちらかというと集落とかそういう孤立した感じのやつかな。」
全部が全部そうとは言えないけど、交流は少ないようには見えた。まず、馬車路が引かれていない時点で察せられる。
内装もこじんまりとしたものしかないし、核石も最低限。運ばれたって感じじゃなくて、街に物を売りに行った時についでに運んできた物って感じ?
「スローライフにはちょうどいいんだろうけどなぁ。」
私はテンプレ主人公のようにスローライフがしたいのにできない!みたいなキャラではない。やりたいことができればそれがマイスローライフ。
「できてないけどね。」
「どうしたのかしらぁ?」
「えあっ、れっ、いしんかぁ……?脅かさないでよ。心臓に悪い……」
自分でも変な声が出たと自覚できるくらいは変な声が出た。恥ずかしさを怒りに変換してぶつけておく。
「あらぁ、ごめんなさいねぇ。」
「というかそれ、寒くないの?」
私は霊神の体を指差す。一部というより、全体的に。
これは思春期の男の子が見たらいけない生物だ。蓮は例外みたいだけど。
「体温調節はしてるわよぉ?」
「原素ないけど、大丈夫なの?」
「十全とは言えないけれどぉ、大丈夫よぉ?原素は元を辿れば魔力。薄くても凝縮させて使ってるのぉ。」
ニコニコ笑って答えてくれる。顔だけ見れば聖女っぽい母性を感じるんだけど。
「逆にぃ、魔法少女ちゃんが原素を篩にかけて魔力にして魔力供給することもできるのよぉ?他者が送れば魔壊病待ったなしだけれどねぇ。」
「つまりアレか……カ○ピスを水で割るみたいな。」
独自の納得の仕方をしつつ、隣を歩く。霊神が勝手に。
私、濃いカルピスのほうが好きなんだけどね。
「そんなことはいいわよぉ。魔法少女ちゃんは、どうしてここに?」
「どうしてって……気分転換?」
村の水源と思しきため池を覗く。
「…………魔法少女ちゃんにとって、きっと今が苦境ねぇ。頼れる相手は少なくて、やれることも限られて。行動に移せたら楽なのに、難しい。」
背中に唐突に弾力を感じた。忌まわしき脂肪の塊だ。
「何……?セクハラで訴えるよ。」
首に手を回し、抱きしめるように寄せてきた。
「心の持ちようなんて言わないわぁ。ワタクシは、綺麗事は嫌いなのよぉ。でも、綺麗になろうとする努力は好きなのぉ。」
口調は同じでも、雰囲気が違う。
「だから、頑張って。ワタクシからはそれしか言えないわぁ。」
パッと離れてパッと消えた。神は気まぐれみたいだ。
頑張って、ね。
シンプルだけど、そういうのでいい。どれだけ言葉を繕って、組み立てて、聞こえのいいセリフを口にしても刺さらない。本当に刺さる言葉っていうのは、こういうのだ。
はぁ……霊神の方が頑張ってそうだけどね。
心でギャーギャー騒いでたのがアホらしくなってきた。
自分の身が創滅神を封印する鎖というのに、気まぐれに生きている霊神ミュール。彼女を見習いたいものだ。
「いやまぁ、頑張りますけども。」
気は乗らない。腕を伸ばして、とりあえず10本ほど剣を作ってみる。うん、上等。
「魔法で強化もしてるし、強度もいい。相手に渡ってもそんな脅威になるほどではないけど、十二分にいい。問題は銃だけど……核石の弾丸作るのむずいからね。魔力の塊でもいいけど。」
試しに2つ、試し作りした銃に核石と魔力弾を込め、2回パァァンッ!と弾けた音を鳴らす。
「……やっぱ、核石かな。」
魔力弾を込めたマガジンを核石に変え、後ろの木の枝に向かって連射。
魔力弾だと空気中の魔力やらなんやらに影響されやすいけど、魔力保有限界のある核石なら、ブレずに真っ直ぐ飛ぶ。
加工と品質の安定はきついけどね。
魔力量と質に比例するし、核石の硬度は。
「ま、やるか。」
魔神の設置している移動用の門に足を運び、私は私の仕事をすることにした。
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疲労スパイラルから抜け出したい日々でございます。
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