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17章 魔法少女と四国大戦
529話 魔法少女は乗っ取った
しおりを挟む早朝。私は、まだ薄く降る雨の中死んでしまった村人達を一箇所に集めて焼却している。
黙祷を捧げ終わると、顔を上げる。
「遅くなってごめん。」
最後に一言。
背負わなくてもいい重荷ってことは知ってるし、もう両手いっぱいで持てるものなんて1つとしてないけど……守れたものを守れなかったのは、悔しい。
ピチャピチャとたっぷりと水分を含んだ土を踏み締めて、魔神の元に戻った。
「終わった?」
「まぁ。」
「律儀だね。いちいち全部の村を回るなんてさ。キミ、無関係でしょ?」
「気持ちの問題だよ。気持ちの。後腐れなく戦争に臨みたいじゃん。」
「そう?」
まあなんでもいいや、と聞いてきたはずの魔神が飽きた様子で門を開く。仕事が早い。
「キミはそういう星の元に生まれた運命の子なんだ。そう、気負うな。」
魔神は背中で語りかける。
「うん。」
私はフードの中の髪を軽く触り、もう1度口を開く。
「でも、運命だとか偶然だとか、そういうのはどうでもいい。誰が裏で糸を引いていようが、巡り会ったのは私だから。」
「そうかい。ならボクは何も言うまい。キミとは変わらずゲーム仲間でいたいし。」
雨に濡れながら帰路を辿り、私達を待つ5人の元に戻って行く。
「ナニコレ。」
「目はついていますか?お料理ですよ。」
顔を手で覆う人神と、「あらあらぁ~」と笑みを貼り付ける霊神が目に入った。蓮はソファで飲み物飲んでる。
料理?ん?お料理?汚料理?
私達がいるのは、最後に行き着いた村。(イグル村というらしい)その、村長の家らしきでかい家を借りて作戦本部としていた。長い間、生活を共にする家だ。
他の村は整理中。
そんな家の食卓。笑顔のネイファがサイズのあっていないエプロンをつけ、指差す先には。
「なんでスープが紫色?サラダに至ってはどこから出てきた青色!?いや、せめて炭にしようよ。反応に困る。ところどころ焼き焦げてるの何?この小麦粉の塊は何ぃ!!??」
ほわいっ!と叫びたくなる気持ちを抑え、恐る恐る鑑定眼を開く。
これ、食べ物の採点もできるからね。
ネイファ・リンカの手料理(謎)
測定不能。食すると、腹を下す確率99%。食べぬが吉。
「ネイファさんや。」
「はい?」
「食材は無駄にすんなや!」
「ちょぉ!何するんすかぁ!?」
少しだけ口調が変わるネイファをよそに、私は空間操作で空間からそのゴミを消去し尽くした。
「わたしのせっかくの手料理を無駄にするとは。貴方、相当イかれているようですねぇ……」
「イカれてるのはネイファの料理だよ。あんな地獄の食べ物見たことない。」
側から見たら可愛げのある少女の様相のネイファ。事実を見れば可愛さのかけらもない彼女のエプロンを奪いキッチンに立つ。
これなら私が作ったほうがマシだよ……
「今日は特別に作るから、ネイファは座って。シットダウン。」
「傲慢ですね。時が時なら殺していたかもしれません。」
「はいはい。」
そう言って調理器具を出す。置いてあった包丁やら鍋やらはそのまま使わせてもらう。
料理下手あるあるでキッチンも汚いと思いきや……意外に綺麗なのなんなの?
台所を眺めてそう感想を抱いた。
とりあえずシンクの位置を、と思ったが私の家じゃないのでそんな便利な品はない。
えぇ……火すら直焚き?
米もない水もない火も自給自足。文明レベルの低さというか、辺境の地の恐ろしさを実感する。
直火ね……もういっそピザでもぶち込んで焼こうかな。
ということで生地作り。
前に百合乃に教えてもらったやり方で生地を捏ね、いくつかに分けて発酵させる。簡単に作る時は15分くらいでいいらしい。
7人もいるし……いや、まぁ種類も食べたいから8枚くらい作ろう。収納すれば余ってもなんの問題もない。
ということで、先ほどの工程を繰り返し生地は8個となる。
で、下準備。
こう考えると百合乃の料理革命はやばいね。百合乃がいなければこんな充実した食は得られないよ。
色々な種類のピザ材料をカットしながら、ありがたやと遠くの百合乃に手を合わせる。
あとは発酵された生地を伸ばして、ソースどーん具材どーんチーズでーん。出来た8つを窯にばーん。
直火が何度になるかはいっちょんわからんけど、適当に。
『おい本体、それは私の言葉だ。返せ』
『別にどうだっていいでしょ。結局私だし』
焼き上がるまでの時間、そんなことで暇を潰す。
ちなみにこの空いてる時間、四神達は駐屯地となる村々の整備に向かってる。魔神は途中で別れたため、どこにいるかは知らない。
ある程度整地しないとね……ただの廃れてる村だし。
このイグル村も相当なんだけどね。時間かかりそうなことだ。
不法侵入の挙句村の悪口まで言う私。事実なんだから仕方ない。
「もう少しで完成するし、影で伝えてよ。」
「面倒ですのでお断りさせていただきます。」
「まだ怒ってるの?」
「はて、なんのことやら。」
ネイファは影をいじりながら椅子に座っている。これから敵になるというのに、案外可愛いと思ってしまう。
特にキャスケット帽押さえてるところとか。
「なんでしょう?視線がちょっと……」
小さなツインテを後ろから前に持ってきて、顔の前でバッテンを作る。
「仕草いちいち可愛いのやめて?ちょっと愛でたくなる。」
「貴方はあれですかね?百合か何かですか?」
「ピザ窯の代わりに墓でも用意しようかな?」
なんて冗談言いながら、メモを魔神に渡す。このメモ、ラノベ用のはずなのに。
ちょっとムカつくから読みたいラノベの続刊出てたら買ってもらお。
某KAD○KAWAの有名文庫から、単行本まで。計15くらいの選定されたラノベたちを記入する。あれ、タイトルあってるっけ。
たくさん買ったって、読む時間もないし面倒いと思っちゃったらもう本末転倒もいいとこだ。ほどほどが1番だ。
『これをほどほどと言われても、ねぇ……』
私の許容範囲は経験上19冊。20いくとなんかね、キリよくてね。
『いっちょんわからんな』
Cがここぞとばかりにはぁ、っと息を吐く。取り返された。
「冗談は置いといて、もうできるから用意しといて。そこの蓮も。」
「用意って言われても、する用意ねえじゃねえか。」
「そこはまぁ……気持ちが大事。」
ソファで横になるサボ蓮が立ち上がる。
「私はピザをカットするアレ作るから。邪魔しないでね。」
「アレって作れんのか。」
「そりゃ作れるでしょ。」
物質変化と金属加工の応用で刃を作りながら、台所へ向かう蓮を目で追う。
「火加減見といて。」
「気が乗ったら。」
とか言いつつ足は止めない。男のツンデレとか正直キモい。それと同時くらいに、扉が開く。
「あのさぁ、いちいちボクをメモで呼ぶのやめてくれない?」
「だって連絡方法ないし。」
言い訳じみた感じに口を尖らせ、言ってみる。相手は言わずもがな。他の四神も帰ってくる。
「というかさキミ。どうしてラノベの注文も一緒にしているか、聞いてもいい?」
「さぁ?」
ペシンと頭を叩かれた。並の人間だったら脳汁がふなっしーするところだった。
「作戦会議を始める!」
机を両手でバンッと叩き、魔神作ホワイトボードを背に叫ぶ。
「まだピザ食ってんだろうが。」
「蓮は黙って。」
「表現の自由は基本的人権だろうが。」
「残念。ここは日本じゃないんだよ。」
チッと舌打ちが聞こえる。蓮にはジェノベーゼソースを全面に塗りたくっておこう。
「とりあえず、やるべきことは山積み。連合軍を迎える準備に武器の確保。食糧の確保。帝国軍の動きにも目を光らせなきゃだし。とにかく人手が足りない。」
「んなこと、はなから分かってたことじゃねえか。」
「今はそんなツッコミいらない。」
蓮の言葉を遮って、そのまま話を継続する。
「神の立場的に、どのくらい干渉できるとかはある?」
「あると言えばある。余を含めた四神の不可侵条約が。種族間の争いや絶滅を避けるために。」
「でもボクらは本物の神じゃない。だから自由にやらせてもらってる。」
「つまり、貴方がたは種族をまとめるための名ばかりの神、というわけですね。」
ネイファがチーズを伸ばしながら笑う。
「とりあえず、邪魔なんだ。帝国は。」
「何度かねぇ、魔力のない転生者をワタクシの森に派遣させてきたこともあったのぉ。」
その反応から、答えはひとつ。
四神の全力がこの手にある。
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ピザ食べたくなってきました。
ちなみにですが来週、某ウイルスの影響であまり行けていなかった祖母の家に顔を出すことになりました。だから何、って話ですすみません。
投稿の方は頑張ります。
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