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16章 魔法少女と四神集結
516話 魔法少女は取り仕切る
しおりを挟むおいたをした4頭の龍を少しだけ、ちょーっとばっかり痛めつけてあげてからのこと、左右に散らばる龍達の目は畏縮に染まっていた。
目の前には龍神。ルーアがいる。
「助かった……これは、助かったでいいのかの?と、ともかく、感謝はしよう……」
「ルーア、なんか痩せた?今なら倒せそうなくらいにはなってるけど。」
額に手を当てぐりぐりするルーアが、まるで居酒屋のおっさんみたいに「聞いてくれるかのぉ?」と言う。愚痴がはじまりそうな予感だ。
「あやつら、やめいと言っておるのに、我の話を耳にすら入れず毎日毎日我が神殿の前でギャースカと騒ぎおって……まともな睡眠もできぬ。それも無自覚というのがいかん。我を舐めておる。」
「それを今あの駄龍どもに言ったら?」
『誰が駄龍d』
「あ?」
くぅーん、と忠犬のようにへたり込んだ。
「えぇい!まずそのでかい図体からなんとかせい。ドスドスうるさい。」
『人型がお望みというなら。』
最初に命令を聞いたのは、少しおとなしめの龍の子。多分女の子。そして、次々と龍が人の形を取っていく。
なんだろう。異世界って凄いのね、やっぱり。
目の前のイケメンと美人に目を奪われた。
「そもそも、何故主がおる?」
「そこの2人、見えてないの?」
「………………?人神様、霊神様?こっ、これはとんだご無礼を!醜態を晒してしまい申し訳……」
「いい。同僚に崇められる趣味はない。」
今にも土下座ムーブをかましそうなルーアを宥めるように口にした。
「堅苦しいのはいらない。余は其方のことをルーアと呼ぶから、其方は余のことをエディレンでもエディーでも好きな風に呼べ。」
「で、ではエディレン殿と。」
「堅っ苦しいなぁ。其方はもっと肩の力を抜け。」
「そうよぉ。リラックスリラックス。肩を揉んであげましょうかぁ?」
いやらしい指遣いをする霊神。セクハラで捕まらないだろうか。
「ワタクシも、ミューちゃんとでも呼んでくれていいわよぉ。可愛いルーちゃん。」
「遠慮しておくかの……」
「遠慮は無用よぉ?」
「そんな、恐れ多い。」
結局、双方頑として譲らずミューちゃん殿という、さかなクンさんのような状態が完成した。
「あ、あの、ワタシどもの話も聞いてはくださりませんか?」
「お、いたのか帝龍よ。」
「いましたよ、ずっと。」
そう言って、4頭……4人一列に並ぶ。
左から紫髪、銀髪、茶髪、藍髪。とびっきりの美男美女。顔つきからして日本のそれとはかけ離れてるし、何しろ髪色がこれ以上ないほど似合ってる。
「ほれ、前龍神を退けた少女と人神エディレン殿とミューちゃん殿である。しっかりと挨拶せい。」
ペシンと尻尾で左の女性のお尻を叩いた。パワハラで捕まらないかな。
「わ、ワタシは帝龍リュウム。よろしく頼む。」
「……私はニニウル、王龍だ。」
「吾輩はアイルーン。業龍である。」
「センスフォーン。法龍。」
それぞれが短く自己紹介をし、顔と名前を一致させていく。女男男女。
「リュウムニニウルアイルーンセンスフォーン。」
「合体させるな。」
「いで。」
人神から軽いチョップをいただいた。
「余は人神エディレン・メヴィス。神の前で舐めた態度をとっていたことは許してやろう。」
「ワタクシはもともとなにも思ってないわよぉ。」
にこやかに手を振った。
「で、これ何事?無視していい感じ?」
「我は特段特別視しているわけではないからの。無視してもらって結構。」
「おっけー。じゃ、本題があるから神殿の中行こうか。」
「少し待たれよ、御仁。吾輩にとってこの神龍選定は何事にも優先される。無視してもらっては困る。」
「いや、勝手にやりゃあいいじゃんか。」
吾輩野郎にしっしと邪魔そうに手で弾いた。
「主、諦めろ。これで我がどれだけ辛酸を舐めてきたから理解できよう。こいつらは、イカれておる。」
「知ってるよ最初から。」
「神龍などもうどうでも良いわ!黙って素直に従えい!」
こんな口論が5分ほど続き、私は理解した。
これ、全部終わらせないと終わらないやつだ……
「だあああああああああ!もう、私の超大事な要件後回しにしてあげるから、さっさと神龍とやら決めて!」
「其方はそれで良いのか?」
「見れば分かるでしょこれ。終わらないの。終わらせないと。」
「真理ねぇ。」
あたり一面に諦念が広がったところで、また人型になった龍4人が言い合いを始めた。
……そもそもなんで、龍が口論してるの?もっと、こう力でねじ伏せる的な行動とらないの?
「主よ、そんなことをしても無駄なものは無駄と思うがの。時間がただ浪費されるのみ」
「だから考えるんでしょ……」
「何か案でもあるのかの?」
「ないから考えてるの…………もう、めんどくさいから総当たり戦やってほしいよもう。」
「じゃあ、それでいいんじゃないの?」
人神は突然指を鳴らした。四方を囲むような結界を作り出し、中央に線を引く。
「計6戦。勝率の1番高い龍が神龍。これで後腐れなく神龍を選定しよう。もちろん、取り仕切るのは其方だ。」
「は?私?」
「早く決着を決めたいんじゃないのか?ほら、早くルールでも説明しろ。」
人神に押されてつんのめる。なんとか体制を立て直した頃には、なんかもう結界内。
「もういいやどうにでもなれ!」
こほんと大きめの咳払いをした。
「1人3回合計6戦の総当たり戦。霊神人神!この結界内で死なないようにできる?」
「オッケーよぉ。」
「なら、試合後に全快は?」
「善処しておく。」
「ということだから、全力でやって。あとはもう勝率。ルールは特にないし、勝手に始めて。」
そうとだけ言って結界を出て、音波発生機の応用で作ったマイクをルーアに押し付ける。
「まずは帝龍と業龍。それとルーア、実況よろしく。」
「実況が何かをまず教えてくれぬか?」
「じゃ。」
「おいてくでない!」
唐突に始まったこの神龍選定(総当たり戦)は、困惑の中でなかなか開始されないのだった。
それから面倒な説明を軽くしてから、無理矢理2人を舞台上に持ち上げた。
「手荒な真似は避けたかったのだが、これも運命と思って諦めてくれ。ワタシに、実力でまされるされると思わないことだ。」
凛々しく振る舞う帝龍。帝ってつくだけあって、それなりにまともな雰囲気がある。
「何を戯言を。吾輩の技を超えることなどできぬわ。」
こちらはこちらでチャラい。
「こんなこともあろうかとゴングも作ってあるんだよ。」
「なんて用意のいい。」
「百合乃とツララがプロレスごっこしてるからね。」
そうして取り出されたゴングは、弾かれて音が集約し、魔力によってより大きく音が響く。
「何が何やら理解できないが、やれというならばやってやろう。これで、決着がつくのなら。」
「弱い龍こそよく吠えるな。」
その言葉を皮切りに試合は始まった。ここからは完全主観。頑張って観察してはみるけど、期待はしないほうがいい。
ステータスを見た感じ、帝龍の方が少し強い感じだった。いけるかな?
結界内に大量の魔法陣、もとい龍法陣が浮かび上がる。私は苦手なので使わない。
龍法陣は業龍を狙うため、帝龍の攻撃だろうと予想がつく。体を覆い尽くす結界のように形造り、そのまま鋭い荊棘を生んだ。
「これだけではない。」
その荊棘はそれぞれが結ばれ、先端を手に持つ。鞭のようにしならせ、奥にいる業龍を引っ張った。
「ハハハハハッ!席がひとつしかなければ、座る者を全て排除すればよいのだっ!」
「手荒な真似は避けたいんじゃないの!?」
「気にするでない。あれで通常運転である。」
それはそれでどうなんだ、と肩を落として眺める。介入もできないので、本当に傍観者だ。
「このような生温い攻撃で勝った気とは、なかなかに愚かしいな。」
ぱん、ぱん、ぱん。反響するように幾重にも重なった音が鳴る。直後。
「吾輩の編み出した龍爆魔法、空塵だ。たらふく食らえ。」
ドドドドドドドッ!連鎖するように爆炎が巻き起こり、何も見えなくなる。寸前に荊棘が千切れ飛んだのは見えた。
「え、これどうなってんの!?」
「そうか、其方は眼に関するスキルは鑑定だけか。ほら。」
「お、見える。」
粉塵の中に目をやる。
滞空して殴り合うとかドラ○ンボールじゃないんだから……物理?龍は物理がお望み?
バシバシと煙で見えぬ中殴り合う姿を、私はただ観戦していた。
———————————————————————
リュウムさん、ケーキは何等分にするのではなく食う人間を殺すという発想をする龍です。
ニニウルさん、べきべき野郎です。ベキベキされます。
アイルーンさん、吾輩至上主義です。売れ残るタイプです。
センスフォーンさん、実は未来の世界で生き残っていたり。
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