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16章 魔法少女と四神集結

512話 魔法少女は無事釈放

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 とうとう夜が明けて朝日が目を覚ましだす。あの後、ニヤニヤした人神が肉を焼いてくれたため、なんとか空腹を耐えることはせずに済んだ。

 うざいけどありがたい。
 とりあえず釈放されたらやり返すとして、これからどうするか。

 牢獄の中、手をついて座る。周りを見渡しても何もない。あるのは霊樹と広がる森。

 そして、人影。

「……誰?」
「わたしよ、わたし。」
逆光でよく見えない。しかし声でわかる。目を細めてみると、やはりベールだ。

「……遅い。」
「ごめんごめん。少し説得に時間かかったのよ。」
そっぽを向いて言われた。

「こっち向いて言って?」
「……半分ほんとよ。」
「半分嘘と。」
「嘘は100%だから嘘なのよ。」
「何言ってんの。」
檻の中からツッコミを喰らわせる。

「はいは~い、霊神でーす。」
「それを連れてきたエスタールです。久しぶりね。」
「エスタール……さん?」
「呼び方はなんでもいいわ。早く助けましょ!」
後ろから「いけません」だとか「待ってください」と声が聞こえるけど、霊神が微笑みながら「聞こえなーい」と言って結界を敷く。

「ごめんねー、魔法少女ちゃん。うちの精霊ちゃんたちが短気な単細胞で。」
「口悪っ。」
「事実は言ったほうがいいでしょ?ほらほら、レンちゃんも隠れてないで。」
「……だからいたくなかったんだ。」
影からにゅっと現れた。誰が?人神が。

 霊神と会いたくなくて隠れてたの、かな?なんか……分かるな。

 心で共通点が生まれた。

 現在の状況を俯瞰すると、霊樹の枝に吊された檻中の私と檻外の人神霊神ベールエスタール。

「というか、御託はいいから早く出してよおおおおおおおお!」
「あ、ごめん。」
私の切実な願いは、ようやく叶うらしい。ベールの手から鍵が現れ、私は羨望の眼差しでそれを見る。私の視界は、ゆっくり下に降りて行った。

 ………………………私、いつ釈放されるんだろう。

 鍵は霊樹の上から落下。それをまたベールは真っ青。霊神はあらあらという顔で微笑み。
 こんな時に女神の慈愛的なのいらない。

「のおおおおおおおおおお!」
頭を抱えて叫びだす。安心して欲しい。別におかしくなってるわけではない。

 また、生肉生活……いや食べてないけど。

『どーどー、落ち着け私。いきなり牢獄にぶち込まれて焦る気持ちは分かるけど、ここはクールに』
『そうだ。冷静になれ』
『れいせいれいせいー』
私達がそばにやってくる。確かに、ここは落ち着くのが大切。

 息を深く吸って吐く。これだけで変わる。

「……これ、私どうすれば?」
「もう少し、待ってて……?」
「やだ。」
「もう、わがまま言わないでほしいわ!」
「なんでやねん!私は正当な主張しかしてない!」
ギャーギャーワンワン騒いでいたら、方々からため息が。

「ねえあなたたち。」
「「なに!」」
「……はぁ。この檻、というよりも霊樹は霊神の作ったものなのは知ってる?」
「知ってるけど……」
「なら、壊すのもできるということでしょ。」
「あ。」
会いた口が塞がらない。エスタールの一言に、私はコンクリートのように固まる。

『ほら、冷静になれって言ったでしょ』
私の忠告は、しっかり聞こうと決意した。

 未来のことを知って大人になった気でいたけど……9割9分9厘17歳の私だ。3年後とか1厘あるかないか。

 焦りすぎた心に冷水を打ち付けつつ、少しだけ腰を落ち着けた。

 その後、霊神が枝の檻を無理矢理こじ開けて人1人が通れる穴を作った。枝がありえない角度にぐわんってなってる。ぐわんって。
 私はその穴から出て、向日葵のように天に伸びをする。

「よーやく、出れた!」
清々しい顔で、小さく息を吐き出した。ほんとに窮屈だった。

「で、説明はしてくれるんだよね?」
ギロっと後ろの結界に阻まれた精霊達に視線を向ける。質問はベールに。

「あの、その前に鍵がないと……」
精霊兵達は、申し訳なさそうに口にした。

 まずは鍵探しか……

 上がったテンションが急降下した。


「どうしてここでやるのか、不思議でたまらないの。教えてくれない?」
「ちょうどいいから?」
ベールは、エスタール邸にてコーヒーを飲んでいた。曰く、紅茶は飽きたから別のが欲しいとのことだ。

 で、なんでエスタール邸なのかというと……

『最近私出番少ないから私にやらせて?』
メガネをかけた私がおずおずと手を挙げる。

『近場で、そして約8人程度を収められる場所がかこにしかなかった。だから遠慮なくお邪魔させてもらってる』
『なんかつまらない』
『しけとー』
グスッと声が聞こえる。私はいつもこの集中砲火を喰らってるというのに。

『まぁ本体は叩くと広がるタイプだし』

 私は金属か。

「コーヒーのお味はどう?」
「まぁまぁね。苦くて好きじゃないわ。」
「ならミルクと砂糖をお好みで。」
私はブラックで一口。熱々のコーヒーをまず飲み込むことで口を慣らすのだ。

「ちょうどいいわ!」
「そう。自分で美味しい塩梅見つけて飲んで。」
「お酒…………」
「お茶でも飲んでなさい。」
悲しそうな顔をしたエスタールは、私とベール以外のお茶を淹れに行った。ベールは角砂糖を数個入れてかき混ぜて、ごくごくと喉を鳴らす。

 久しぶりにコーヒー飲んだ気がする。
 飲む機会も時間も最近ないから仕方ないけど。

「それで、結局何だったの?なんで私は理不尽に捕えられたの?」
数人代表で来た精霊の方々が、申し訳なさそうに突っ立っている。そこにベールが割り込み、「つまりこういうことよ」と説明を開始した。

「はぁ?精霊の密猟者と勘違い?」
「まったく、とんだ間違いよ。そもそも人間の密猟者はここまで入ってこれないのに。」
困ったように眉を顰め、コーヒーに息を吹きかける。

「そもそも前来た時こんな精霊いなかったよね?」
「警備隊を最近作ったらしいわ。わたしにも数人つくようになって……」
「それがそこの精霊達と。」
「だからいらないって言ったのよ。」
向こうでお茶を淹れているエスタールに聞こえるよう、わざと声を大きくして言うベール。

 まぁ無事に釈放されたから、ちょっとしか怒ってないよ。ちょっとしか。

『絶対根に持つやつだこれ』
遠い目で言っていた。

「この度は我々の無知と強引さでこのような失態を起こしてしまい、不甲斐ない限りでございます。」
一番偉そうな見た目の精霊が、綺麗な45度で礼をする。

「つまんない。」
「つ、つまんない……?」
カップに口をつけて言った。

「確かにね~。そ、も、そ、も。この森に人間は入れないのよ~。」
霊神が見世物のように精霊さんの鼻を突いた。

「ミュ、ミュール様……」
「あんた、鼻の下伸びてるわ。」
「叱られてるのにエッチな想像してる精霊なんて、ベールも信用おけないよね?」
「ちょっと遠慮したいわね。」
板挟みにされて複雑そうな顔をする。その顔を面白がって更にツンツンが加速し、人神はプッと吹き出しそうになっていた。

 何この混沌とした状況。自分で作り出しといてなんだけどさ。

「もう、勘弁してくだい……」
空気感に耐えられなかった彼らは、口々にそんなセリフを吐いていく。

 流石にいじめすぎたかな。

「はいはい。私も暇じゃないんだから、解散解散。」
「久しぶりに楽しかったわ~!」
「ようやく、お酒が……」
「あんたは禁酒しなさい。」
こうして、私投獄事件はことなきをえた。

———————————————————————

 賞に出す用のガチ作品と、そこそこの文字量の私の掃き溜め的この作品を同時並行する毎日。後者は自分の思ったことをつらつらと書き連ねているため負担は大きすぎるということはありませんが、筆がなかなか進みませんね。
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