535 / 681
16章 魔法少女と四神集結
509話 魔法少女は頼み事
しおりを挟む「これからどうする?」
魔神が再びYo○iboに体を埋めて聞いてきた。
「さっき言った通りだけど。」
「そういうことじゃなくて、今から何をするか。未来じゃなくて現在。now.」
「なんで英語知ってるか分からないけど、とりあえず次は霊神を当たるつもり。霊神のとこには知り合いがいるし。」
頭にベールを浮かべーる。つまらなさすぎて脳が凍りつきそうになった。
『なら最初から言わなければ良いのに』
『こういうのは言ってみたくなるものなんだよ。ほら、やっちゃダメなことほどやりたくなる冒険心』
こうやってダメ人間が生まれていくのか、としみじみ感じる。つまり自分はダメ人間ということ。
「最後に何かお願いを聞いてあげよう。送ってあげようか?」
「それは最初から決まってるとして……もしかして、アニメとか漫画とかラノベとかも出せる感じ?」
「そこに気づくか。アニメはここでしか見れないけど、物で残るラノベと漫画は、いける。」
「神っ!」
私は魔神の手を握り、ぶんぶんとアグレッシブ握手をする。
まさか、まさか異世界でそんな娯楽を楽しめるなんて……
「それ、貰えたりしない……?」
「じゃあこれ。」
「なにこれ。」
ただのペンと紙にしか見えない。
「ペンと紙。」
「知ってた。」
「これに書いて魔力を流せばボクの元までやってくる。ついでに、ここから新刊情報やら既刊情報を検索できる。」
「やばい、神すぎる。異世界の遊戯神だ……」
手の震えが止まらない。半年間の二次元禁止生活。そんなの楽しむ余裕が少なかったという点を除けば、キツイことはしばしばあった。
何もない休日の過ごし方とか。
何を頼もうかと今になってワクワクが爆発しそうになる。
「まずは異世界系読みたいよね……ラブコメとかも読みたいし、あー!あの新刊出てないかな……」
「落ち着けー。」
人神の小さい手がぶんぶん目の前にやってくる。
「今、そんなことしてる場合じゃない。其方の欲求は別の機会に発散してくれ。」
「はーい。」
「ヴァル、頼める?」
「仕方ない。」
パン。手を叩いた。私と人神の目の前の空間が捩れ、そこに隙間が生まれる。
これが本物の転移魔法ね。いつか、じゃ遅いか。すぐ覚えよう。結界魔法を同時に覚えようか。次元に干渉できればいけるはず。
私はラノベニウムを摂取することで感情が昂り、ふんすと鼻息を出す。
「それじゃ、健闘を祈ってるよ。全員集まったらそれで呼んでくれて構わないから。」
「おっけ。いろいろありがとう。」
「こっちこそ、趣味の仲間ができて嬉しいよ。」
手を振って空間の亀裂の中に入っていく。「余と対応違い過ぎない?」と小声で呟いていたのを私は見逃さない。
『聞き逃さないの間違いね』
ネチネチしないの。そのくらい雰囲気で察して。
『こういうのが自堕落を産むんだよね』
『いちいちめんどくさがってさー』
はいはい、分かったよ、訂正すれば良いんでしょ。
めざとい私に嫌気がさし、仕方なくお詫びと訂正を。
申し訳ございませんでしたー。
小学生の「ありがとうございました」を彷彿とさせる棒読み感。ないよかマシ、という精神を突き通そう。
切り替わって現実では、にわかに風が吹き出した。木々のざわめきが久しく、もう何日もあそこにいたような気分になっていた。
「ん゛ー!涼しいー!」
「はしゃぐな。さっきのクールムーブはどこいった。」
「今は今さっきはさっき。楽しめる時に楽しまないと常時アレになるよ。」
「それはそれで気持ち悪いな……」
胸焼けしそう、そう言って後ろからついてくる。空間の捩れは瞬時に元通りとなり、空に腕をぐーっと伸ばす。
「今はここに精霊の森が移動中らしいけど、どう見つける?」
「神様パワーで分からない?」
「分からない。」
「ちぇ、使えない。」
「悪いね使えない神で。」
そんな風に卑下する人神。ぶっちゃけ戦闘以外で使い物にならないし、間違ってはない。
そもそもその辺に出る魔物くらい私でも瞬殺できるし。
「神霊召喚、だっけ?」
手を伸ばしてスキル名を呟く。多分こんな感じでよかったと思う。
前1回召喚したきりだったし、今回はゆっくりお話しといこうかな。戦闘するわけでもあるまいしさ。
木の葉が舞う。
そこには、緑色の髪の毛を持つ美人さんが。体はそこそこ小さい。でも、手のひらサイズよりはマシになっている。
「久しぶり、ベール。」
「……随分と急ね。」
そう言うベールは随分と不満そう。
まぁ前回雑に扱いまくったし仕方ないか。
「今日は何の用?痛いのは嫌よ。」
「イタクナイヨ、イタクナイ。」
「その棒読みやめて。」
「本当に痛くないよ。戦いはない。」
「じゃあ何の用?」と細く小さい首を傾げた。
「精霊の森に案内して欲しいんだけど。霊神に話がある。」
「ミュール様に?会えないわよ、そんなに簡単に。神霊になったわたしでも色々な手続きが必要なんだから。」
「でもほら、同僚の人神連れてきたし。」
「よろしくー。」
片目を開けてよっ、と言う感じのフランクな挨拶。ブロンドの髪のせいで貴族の子息にしか見えない。
「え?」
「本物だよ。」
「ご紹介に預かった通り、余は人神。世間一般には知られていない、四神の1人。エディレン・メヴィス。」
「ミュール様の言っていた?」
「なんて言ってたかは知らないけど多分その人神じゃない?」
ベールが珍しくあわあわおろおろしている。狼狽している様を見るのはなんか楽しい。
「それで、あの、人神様はどうして精霊の森に?」
「余たちの本懐を叶えるため、と言えば気づくでしょ、あの露出狂なら。」
「露出狂?」
「ああごめん、ミュールのこと。」
あははと笑い出す。情緒不安定かな。
「ね、ねぇあんた、この人ほんとに人神様なの?ミュール様を露出狂だなんて……」
「正真正銘四神の人神。疑いようもない事実。」
眉間に少しだけ皺が寄る。期待が砕かれるような思いが表情から見て取れる。
「精霊の森に案内して欲しいんだけど、いける?」
「うん、分かった。そのくらいなら別にいいわ。」
「ありがとう。」
「やけに素直ね。」
「後悔先に立たずっていうでしょ。後々じゃ遅いの。ま、その後々を作るのが私の役目だけど。」
ベールは疑問符を打つ。私はそれでも満足して、案内を始めるベールの後ろをついていく。
ベールはあんまり背負わない方がいいと思う。他人の重荷ほど重く感じるタイプだろうし。
転移した森から少し深いところまで進み、いつの間にか外界と隔離されている感覚が伝わってくる。
このあたりから魔力が薄くなってきている。原素があるため以前のようにはならないけど、警戒はもちろん必要。
「人神って原素あるの?」
「ないけど。」
「え、死ぬじゃん。」
「舐めてもらったら困る。四神特有の力があるんだ。人間みたいに倒れることはない。」
「なんかうざー。」
煽られているような気がして文句を吐いた。
「可愛くない人間だよ、其方は。」
「可愛さとか求めてないし。」
「いちゃついてないで、もう着くわ。」
「「は?してないし。」」
ひっ、とベールが可愛く声を上げた。
やっぱり可愛さってのはこういうベールみたいなのに求めるのが普通であって、私みたいな魔法少女には不必要なものなんだよ。
深々と頷く私だった。
———————————————————————
まだ執筆中のお話があるというのに、coverさんは新しい物語を書き始めてしまいました。
ラブコメといえばラブコメ。ファンタジーといえばファンタジー。不思議なお話となっております。(まだ5000字も書けてない)
さて、意欲が下がらないうちに頑張りましょうか。
私の書く物語のヒロインは魔法少女スパイ女子高生殴殺少女召喚術師ときて、今回は魔女です。原点回帰です。それが投稿されるかは未定ですけど。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる