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16章 魔法少女と四神集結
499話 魔法少女は二階へ
しおりを挟むどこもかしこも罠罠罠。もう、いちいち気にしてられないしツッコんでやる気力もない。と言うか、もう真新しさのかけらもないせいでだからなに?となってきた。
「ここ、何階層まであるの。」
「さぁ。10階層くらいだった気がするけど。」
「あのさ、もう退屈なんだけど。」
カチ。炎が飛んできて、それを魔力喰らいで消し飛ばす。
もう慣れた。どうせこの後壁の一部が伸びて追撃来るんでしょ?
ラノスを取り出し、パァァンッ!と音を響かせた。攻撃の前で壁の一部を破壊し、修復される前にトンズラ。これ、もう何回目だろう。
「手前から順番に襖を開けて、中身を確認しながら来て……廊下を渡ってまた襖を開けて……だあぁぁぁぁぁぁ!もうやだ!」
頭を振って、叫ぶ。
でももう少しなんじゃないかな……気分的に。
そう思ってないとやってらんないの!
ガラッ!襖を勢いよく開け放つと、木製の階段が天井に繋がって……
「あれ?」
そこそこの広さの畳部屋。四角の天井に鍵の形をしたランプがあり、空中には大量の魔力球が浮かび上がっていた。
『あ、あー、テステス。録音ボタン押せてるよね……』
「あれあれ?」
更に困惑。なんか、どこからか声が聞こえてきた。
しかも録音?これ録音音声?どこからそんな文明の利器出てきたの?ここ異世界。アーユーオーケ?
『ボクの邪魔をする奴は、ここらで排除させてもらうけど、異論はないよね?了解。それなら、遠慮なくやらせてもらう』
ザー、と言う音が少し続き、次第に消えた。質問しといて聞かずに勝手に進めるとか、人権無視にも程がある。
「———というか!魔神今ゲームの邪魔って言ったよね!なんでゲームしてんの!」
「そういう神なんだから我慢するんだ。」
そんなことしているうちにも攻撃が私を狙っている。有無を言わせぬ圧力を感じた。
「この城をぶっ壊すレベルの魔力量。がんばれ。」
「頑張れじゃないよ……」
私はボロボロのローブに魔力を通し、魔法を発動する。サークル系じゃ動けないため、万属剣を大量に生成し、視界を塞がない程度に二重の壁を作った。
「人神は勝手にし……?え?」
「やあ。こっちのことは気にせずに頑張って。」
「……このクソ神。」
知らぬ間に階段を登っていた。天井に空いた隙間から手を逆さに振っていた姿を思い出し、殺意を湧かせる。
そんな暇ないけどさ。
いつの間にか目の前に大量の魔法が飛び交うのが確認できた。こんなの入ったら死ぬ。マグマに飛び込むようなものだ。
でも、それでもやらなきゃ上へはいけない。
なら。
「やるしかないやるしかないやるしかない!」
全力で駆け抜けた。そこらじゅうからバキバキと部屋の内部が蹂躙し尽くされている音が聞こえる。それを、一心に受けている。
衝撃が万属剣を伝ってくる……エグっいねほんと。神って理不尽すぎ!
当たったら即死レベルの攻撃を、死ぬ気で防いで駆け抜ける。こんなの避けるのは不可能。軟体動物でも無理だ。
「土壁!」
階段への一直線、壁で仕切って進む。壁は次々に穴だらけになり、その都度修復し、その都度威力が増していく。
時間経過系のやつ!?これモタモタしてたらほんとにやばいやつでしょ。
ええええい!こうなったら空間伸縮に最大限に集中させてゴールまで繋げるしかない。
ステッキからスペアを取り出す。残った全ての万属剣を内側に配置すると、魔力を切断する。
「——————んっっ!」
言葉というより、喃語のような叫びが漏れる。万属剣がゴリゴリと削られ、一歩を踏み出す。
「おつかれ。」
「お疲れじゃないよ……」
謎に滲む脂汗をボロボロローブで拭い、階段の上にいる人が身を睨む。後ろを向くと、高速で飛来する魔法が……
見ないようにしよう。なんか、恐怖を感じた。
目を背き、新しい階層に目を向ける。
残りの階段を駆け上がると、ついたのは少し様式の違う2階だった。
狭い廊下にびっしり襖で仕切られた部屋があったのが、左右に長く廊下が伸びていた。
「一旦、この廊下回ってみようか。何かあるかもだし。」
「今のところ見えるのは長い廊下とひとつの襖。このままいったら四方全部そうなってる感じか。余の口からはなんとも言えないな。」
「人神の助言とか聞いてない。」
手をしっしっとやって人神を退ける。
まず罠の気配は……
『もう罠察知の能力身につけてるんだけど』
『罠耐性付きすぎ』
『いっそ、修練場に改名したらどうだ?』
言われてから、なんで私そんなこと分かるんだよとなった。警戒心と生存本能的な何かが組み合わさってるんだと思う。
その観点から行くと、この中は凄まじいことになっている。そして廊下は何もない。
目の前の襖に一度手をかけ、スライドさせようとするとガタガタいって開いてくれない。
「鍵穴?」
「探せってことだ。」
「面倒な仕掛けするなぁ。」
眉を顰め、厄介なものを見る目で鍵穴を突き刺す。
「1回、1周してみるしかないか。」
罠の可能性を踏み、キョロキョロと挙動不審な感じに探る。ゆっくりじっくりねっとり見尽くす。
まぁ、結論言うと何もなかったんだけど。
「四面それぞれ襖があって、そこに鍵が必要。」
「余はここで待っているから、其方は下に行くといい。」
そう言われて、何か思い出す。
鍵鍵鍵……下の、階?
弾幕部屋を思い出す。
部屋の四角に、ランプがあった。どんな?
鍵の形のだよ!
鍵を取り終わる頃には、私の魔力の約半分が消え去っていた。もう無理かも、と心の奥底で呟かれたのを私は聞き逃さない。
「ここ、なに?SAN値を削るための城?もうそろそろ発狂して暴れ出しそうだよ私。」
右手で頭を覆い、でも左半分が出たままだ。左腕がないことを悔やむ。
「それでこの鍵、全部開けなきゃいけないやつ?」
「さあね。」
「私としては2択なんだよ。」
ポッケに突っ込まれた光る鍵を見つめる。
襖が封印で、開けたら開けるほどヤバくなるタイプ。その逆で、扉を開けないと不利になるタイプ。
順番が関係してるとか言われたら終わりだけど、とりあえず時計回りに全部開けてみよう。(無鉄砲)
「適当すぎやしない?」
「兎にも角にもやってみないと始まんないし、後悔するならやってからしたほうがマシじゃない?」
そう言いながら鍵をブッ刺した。
私も、あのクソな両親に何も言えずに後悔した。でも、心の中の2人に中指を立てて決別できたから。
捻ると、簡単に開く。あと3箇所。
人神の付き添いを受けながら、1箇所1箇所開けていく。鍵は、それぞれ対応しているらしく別の鍵では開かない。
多分、開けて不利になることはなさそうだ。
最後の鍵を開け、なんとなく最初の位置に戻ってくる。
「あとは開けるだけだけど……」
手が震える。これ、ほんとに開けていいやつだろうか。今頃不安になってきた。
もうここまできたら引き返せない。やるっきゃないんだよこんちくしょう!
ここにきてから口が悪くなってきてる気がする。城の性格の悪さが、私に浸透している。
そろーっと扉を開けると、半分程度で手が止まる。
「「「「そういう感じかぁ……」」」」
全員が右手を頭に当て、困った顔をする。目の前に、残りの3つの襖の奥に、私がいた。
「ようこそ、レイドバトルへ。」
にわかに琵琶の音色が響いて、襖が閉まった。
「貴方方を、ご案内いたします。」
顔をベールで隠した琵琶を持つ女が、部屋の中央に正座していた。
———————————————————————
私が、4人も!?
と言う謎の状況に加え、琵琶を奏でる謎の女。城の謎はまだまだ深いですね。
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