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15章 魔法少女と帝国活動記

491話 魔法少女は対面する

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 いつも通り遠慮なく扉を開けて、人神とアーレがそこにいるもんだと思っていた。

「やあやあ、お邪魔させていただいてるよ?」
そこに、楽しそうな微笑みを浮かべた水色細ツインテのキャスケット帽の少女が……って。

「ねっ、ネイファ・リンカ!」
すぐさま臨戦体制を取り、手には速攻にラノスを握らせた。ちなみにエプロンに備えていた。

 おいいいいぃぃぃぃぃぃ!なんでいるのネイファ!なんで私を殺そうとした人が堂々と私の目の前に……というか帝国側の人間がなんで……

 笑うネイファと面白そうに目を細める男……

「男っ!」
「いちゃ悪いか?」
「悪いでしょ!女の子の部屋に!?」
「それを言っちゃあ余は男じゃないみたいじゃないか。」
「なんで人神はそんなに落ち着いてんの?なんで紅茶啜ってんの?どっから出したの!?」
ツッコミが止まない。これでツッコむなと言うほうがおかしい。

「この状況、なに。」
「…………」
アーレはネインアーレのようにピタッと固まり、静観の構えだ。

「そんなにキリキリしたっていいことなんてないのに、ご苦労なことですね。」
「…………」
もういいや、と思ってしまった。右手にラノスを握りながら、壁に背をつける。

「で、これ本当に何事?」
「さぁ何事なんでしょうね。」
「ネイファに聞いてない。」
「………………」
「つれませんな~ネインアーレちゃん。いや、今はアーレちゃんでしたね。」
私は一瞬でラノスの銃口を突きつけ、陰を踏んで接近する。

「……気配が消えましたね。いえ、錯覚ですか。さすがは変革者ですねえ。」
ニヨニヨと頬を緩める。明らかに私の陰像と陰縮地は効果を発したはずなのに、笑っている。

「アーレを殺す気?」
「ならすでにやってますね。お馬鹿さんですか?」
「よし殺そう。」
パァァンッ!銃声を轟かせた。

「危ない危ない、こんな危険な武器を所持してるなんて魔法使いとしてどうなんでしょうか。」
「別に、魔法使えりゃ魔法使いなんだから……」
ラノスを持つ手で髪をガシガシする。ネイファの人差し指と中指の間には、核石の弾丸が挟まれていた。

「銃か、面白え。」
「なにこの人厨二病か何か?」
「イタいのは勘弁してやってください。そういう性なんでしょう。」
「ぶっ殺すぞ。」
男がギロっとネイファを睨んだ。「おーおー怖いですねえ」と笑って言っていた。立場は低いようだ。

「おいガキ。」
「誰がガキよ誰が。その頭ぶち抜くよ。」
「歳、いくつだ。」
「女子に年齢聞くとかこの人デリカシーのかけらもないクズじゃん。17だけども。」
「答えてんじゃねえかよしかも俺の方が下とかふざけんな。」
「知るかんなもんさ。」
よく分からん男と睨み合いをしていると「まぁ落ち着きな」と紅茶を飲む人神が言った。

 いやあんたは落ち着きすぎだよ。緊張感持とうよ。

「おい人神、なんで生きてやがるんだ。」
藪から棒に人神を睨む。

「人間のただの魔法に神がやられるわけがないじゃないか。其方は厨二病とやらだけでなくアホなのか?」
「よし決めたお前を殺す。」
「神殺しなんて所業この世界で1人しかいない。不可能さ。特に其方にできる確率は1%たりともない」
「なんで神が殺されてるんだよ。」
「其方のスキルでそこの少女を見てみるといい。」
男は言われた通りに私を見た。

 私と同じで鑑定スキルを持ってる?顔つきからして……ってことは、この人転生者?なら人神が知っててもなんら不思議はない……

「称号神殺し……お前がか?」
「悪い?」
「俺よりレベルもステータスも低いのにか?」
「其方はただ強いだけで、世界をどうにかする特別な力なんてない。あるのは、神が与えたお遊びの魔法。」
人神は笑ってこう言う。

「それは人に扱われても問題のない魔法だ。与えられるもの、すなわちどうでもいい魔法、ということさ。」
「……本当に、神というのは俺をナメくさってんだな。」
ぎりっと歯を噛み締めた。拳を強く握って、壁をぶっ叩いて壊した。

 いや何してんの!?というかなんでいるのか説明まだされてないんだけど!?

 隣人が仕事に行っていたおかげで気づかれないことに心で感謝しながら、再生創々で元に戻す。

「まじかよ。」
「ステータス見たんじゃないの?」
「ステータスは見たさ。が、魔法とスキルが隠蔽されていた。俺と同じ隠蔽持ちか?」
「いや、違うけど……」
ステータスをオープンし、なにが要因か考える。が、どこにもステータス隠蔽をしそうなものは見当たらなかった。

「其方には多くの神の加護と内に巣食う狂気がある。そんなもの、外の人間が見たら情報過多であの世行き確定だ。」
「んな怖えもん勧めて見させんなクソが。」
「いいじゃないか、其方が見える確率なんてものは天文学的な数字より低いんだから。」
人神と男の睨み合いが始まりかけたところで、パンパンと乾いた音が2度なった。振り返れば、ネイファが手を叩いていた。

「ではそろそろ説明に移りたいけど、文句ないよね?あっても進めますけど。」
「聞く意味よ。」
「見ての通り、わたしたちは闖入者!しかも方や神国の軍人!方やよく分からん男!さあさあ一体どんな状況なんでしょう!」
「あんたらが作ったんでしょうが!」
私の鮮烈なツッコミをのらりくらりと笑いながら避けていくネイファは説明らしき何かを続ける。

「もう面倒なので簡単に言うとわたしたちは帝国を潰したいので貴方方にも協力を願にきただけです。」
アーレと私は同じように惚けた顔をした。理由はもちろん、ネイファの言葉。

 帝国を潰す?

 その疑問符を、ネイファ本人に直接叩きつけることにした。

「帝国側の人間じゃないの?ネイファって。」
「そもそもわたしは神国も帝国もどうでもいい人間です。やれやれ、学のない人間に説明をするというのは骨が折れますよ。」
「よしアーレこいつ殺そう。」
「そうですねソラさん。ソラさんを侮辱した罪を情報消去で償ってもらいましょうか。」
「ようやく喋りましたねえアーレ。」
ビクッと肩を振るわせた。つい喋ってしまい、口を両手で塞いだ。

「ですからわたしは協力者ですから、密告なんてきっとしませんから。安心なさってくださいよ。」
「俺は帝国さえ潰せればいい。そのあとは全員と対立する覚悟もできている。」
「なんなのこの人達勝手に来て勝手して。」
「まあいいじゃないか。これから四神も集まる(未定)し、用意は万全を期しておいたほうがいい。」人神は紅茶を注ぎながら言った。私はその紅茶をファイボルトで蒸発させた。

「……其方は花園だけでなくティータイムも邪魔するのか。」
「TPO弁えてからにして。神でしょ。」
「おい待てお前。四神が集まるをスルーするな。」
「私現龍神とも霊神とも会ったことあるし。」
「お前、マジで何者だよ。」
「いやそれどうでもいい。」
謎の男を手で払いのけ、このカオスをどうにか抜け出そうとする。

 えーっとつまり、ネイファは帝国を潰したいから一緒にやろうぜってことで合ってる?
 でもこの人私を殺そうとしてたし……裏切りの可能性とかもあるよね。

 アーレに一瞥をくれる。アーレは私の意図を汲んだように首を振り、真実だと示す。

「分かった。でも条件がある。それに乗ってくれるなら、私達も協力する。」
「ええ、できる範囲なら妥協しますよ。わたしは神敵を滅ぼすことだけが目的ですから。」
「神敵……?」
「あなたは、神に反する異端児でないことを祈っています。」
相変わらずうちの読めない不気味な笑いの仮面を被り、握手を迫ってくるのだった。

———————————————————————

 出会ってしまいましたネイファと空さん。
 謎の男とは一体ダレナンダー?まぁ蓮以外あり得ませんねはい。
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