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14章 魔法少女と農業の街
463話 魔法少女は話し合う
しおりを挟む「クルミル様は絶対に渡しません!わたしのクルミル様なんだから!」
「ええ!?何、なんの話ぃ!?」
「そもそもソラさんってそっちの属性だったんですか……?」
「私に百合乃属性はない!間違えた。百合属性はない!私にアブノーマルな趣味も性癖もないわ!」
何やら勘違いを起こしたらしいトートルーナさんが謎の発言をしつつ、アニメで言うと目を不等号のようにしてむーむー必死に訴える。
百合乃じゃないんだよ。私は女の子を愛でる趣味はあっても女の子とお付き合いしたい趣味はない!断じて、ない!
私の性別は無だ。というか、この世界に来てからというもの、あれが来たことがない。つまりはそういうことだ。
「じゃあどういうことなんですか!?」
「雇いたいってだけだよ!私1人じゃ知識も技量もない!あの綺麗な花畑を整理できる存在が必要なんだって。」
「ならわたしが!」
「メイドでしょ!?」
唐突に始まるメイドプライドの突貫。なんとしてでもクルミルさんを守護する腹づもりらしい。
「それを決めるのはトートルーナさんじゃなくてクルミルさん!だから今から話し合いに行くでしょ!」
「分かってますよ……」
急におとなしくなる。感情の緩急が物凄い。ジェットコースターだ。
「なら行こう。私も、クルミルさんの思いを優先したいし。」
この場は一旦フィリオに任せることにして、私は勝手に退散する。元はここにいるつもりもなかったんだから、文句は言われまい。
『それじゃあクルミルさん宅まで』
『れっつご~』
時は流れて30分。そこそこな長い道のりを歩いて見えてくるはバーストン家のお屋敷。農地は以前とは違い綺麗に整えられており(まぁ私のおかげだけど)、そこへ私はずかずかと侵入する。
「ここからは私の仕事です。少し待っていただけますか?」
突然人が切り替わったようにしゃんとしたトートルーナさん。オンオフの切り分け、これぞプロやと採点を開始した。88点だ。
ちなみに100点は国王の側にいたあのドMさん。あれに勝てるドMを私はこれ以降見ることはないだろう……
『いっちょんわからん』
『博多弁に染まるんじゃない』
『せやでせやで!』
『私も私でエセ関西弁やめろ!』
『楽しそーだね?』
心で騒ぎすぎだと注意しようかとも思ったけど、もうしゃべるのも面倒だ。無視しよう。
「お待たせいたしました。」
「お話ってなんでしょう……?」
クルミルさんが顔を出した。帰ってきてすぐだけど、しっかり対応してくれる。
「クルミルさんのご両親も集めてもらえる?」
「はい、分かりました。」
「クルミル様!わたしが行って参ります!」
嬉しそうな笑みで労働に勤しむ。彼女は正真正銘の、M。どう捉えるかはあなた次第。
「騒がしくてすみませんね。うちのトートルーナはよく働いてくれる子なんですけど、少しから回ることも多くて。」
「知ってますよ。見てましたから。」
療養中を思い出す。実を言うと、自分のせいでと落ち込んで仕事をして、何枚か皿を割ったり壁の角に小指をぶつけて「———ッ!」と声にならない声を響かせたりしていた。
それはそれで面白いから良かったけど。
だいぶ失礼で無神経な言葉とは知ってる。でも、思うくらいセーフと言い訳を1つ。
「冬も近づいてきたね。」
「?そうですね。」
「いや特に深い意味はないよ?……長いようで短い生活、冒険者になって魔物を狩って、変な事件に巻き込まれて、時には自分で突っ込んで。」
「面倒ごとがお嫌いでしたよね?」
「好きなら面倒でもやるでしょ。農業だって、街のみんなは面倒くさいけど好きだからやってる。」
知らんけど、と心の中で付け加えた。綺麗事じゃあ飯は食えんのだ。
私の真面目の時は大抵、6割くらい本音はつまらないこと考えてる時だから。そのあたりはよーく覚えておくように!
「今回のこともそうだと勝手に思っておきますね。ソラさんや他の皆さんのおかげで、バーストン家は持ち直せそうです。」
「そ。なら良かった。」
その頃、ちょうどキリよく準備ができたと言ってきたトートルーナさん。バッチリ万能感知に気配を感じていたから、空気を読んでくれたことは知っている。
ドM力、90点に格上げしてあげようかな。
通り際に感謝を伝え、クルミルさんの後に続いて話し合いの席に加わる。
「我々に話したいことがあるそうだけれど、何かな?娘がらみで、何かあったのか?できることならなんでもしよう。」
開口一番、自分たちの心配ではなく娘の心配をする。いい人に育てられている。
「クルミルさんがらみと言えばそうですね。1つ、許可を貰えればと思い話し合いの場を用意させていただいたんですけど。」
敬語をしっかりと。恥ずかしくないよう大人の嗜みだ。
『と、国王にタメ口な私が申しておりますと』
「私は家で小さな畑や花畑を作ってるんです。」
「そうなの?どんな花か教えてもらっても構わないかい?」
「なんなら実物見ます?」
記憶念写で花畑を写す。何故かツララがピースしてる写真が出来上がった、が可愛いから許す。
「これは……綺麗だ。季節関係なくバラバラに育てられているね。魔法かい?」
「まあ、そんなところです。」
こほんと咳払い。そろそろ本題に行っても良さそうだ。
「こんな種類の花、私には到底手入れは難しい。それでもこの花達が綺麗に花を保てているのは、クルミルさんのおかげなんです。」
「そんなことは……元の状態が良かったこともありますし。」
「こんな素晴らしい娘さんを育てて下さったお2人にも感謝しています。」
恥ずかしそうに微笑むクルミルさん一家。さすが家族と言ったように、反応が似ている。
「そこでです。クルミルさんにもう少し続けて欲しいと思っているんです。この花は、クルミルさんの手腕なしでは育つことはできないでしょう。」
相手を褒めて気を良くさせ、ゆっくり本題に近づけて気を引かせる。
だけどまだこれは前段階。湯姫直伝の交渉術はまだまだこれから。(うろおぼえ)
「少しの間でいいので、手入れをまだお願いできませんか?」
「そんなことなら……」
「私もそれくらいなら。やらせてください。」
ニコッと微笑んだ。助けた甲斐のある笑顔を見せてもらった。
「もし……………いや、なんでもない。」
それを見てると心理的な技で頼むのは気が引けた。小さいお願いから成り行きの大きな願いへ。それはやめておく。
「ならもう少しだけ、クルミルさんのいたいだけパズールにいてほしいな。」
そうやって感動的なストーリーで終わりを迎えようとした。
「意義ありッ!」
「なんですと!?」
その結末を拒否したのはトートルーナさん。濃い表情で指を差した。
「今まではクルミル様のために我慢してきましたが、今回は違います!わたしも同行します!」
「何言ってるの!?ねぇ何言ってるの!?この家のことを母親1人に任せる気?」
「無事疑惑が晴れたんですから、雇えばいいと思います!」
ぶんと首を回し、レイモンドさんを見る。それはもう、目を見開いて許可を心待ちにしたように。
「そ、そうだ、な。娘とは仲がいいトートルーナを同行させれば安心するだろう。こちらも新たに人員を雇うことにするよ。」
「え、いいんですか!?」
「っしゃぁ!」
後ろに振り向くとトートルーナさんが拳を握りしめて腕を振った。
それ、レイモンドさんの前でやっていいの?雇い主だよ?
『トートルーナさんって私嫌いなのかな。めっちゃ突っかかってくるし』
『クルミルさんが好きなだけじゃない?』
まあ別にいいよ。悪い人ではないし。
無事に魯鈍の罪を大っぴらにして、バーストン家は無罪放免。私のドリスでの役目はもうない。
私がとやかく言うことでもないし、好きにして欲しいって言ったのは私だ。
ということで、最後はクルミルさんに締めてもらうことにした。
「私達はいいけど、クルミルさんは?」
全員の視線がクルミルさんへ向いた。彼女は少し紅潮させ、はにかんだ。
「もう。そんなに一気に話されても、私は1人しかいませんよ?」
困り笑いに混じる嬉しそうな顔に、やっぱり彼女を助けて良かったと確信を持った。
———————————————————————
そろそろ辞めたいはずなのに全然終わる気配がありませんね……
帝国の話をいろいろして、どっか行って、神国の話をして創滅神ばーん、どーん、おしまーい。って感じで終わりましょう。
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