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14章 魔法少女と農業の街
460話 ヘルベリスタ帝国
しおりを挟む「精神崩壊が著しいな。……異世界人は貴重な戦力。それも、手駒とできている点で言えば、損害は……」
男を1人抱え、ある人物がそう呟いた。抱えられるのは魯鈍。向かう先は、帝国である。
帝国には隠し事が多くある。
異世界人の誘拐、憑魂の禁術、呪いetc……兎にも角にも他国には決して口に出せないような際どい秘密が面白いように出てくるのが、帝国である。
魯鈍を抱える男もまた元は異世界の人間であることがそれを強く物語っている。
「特別大尉という地位を預かっていながらこの失態とはな。いや、相手が悪かったというべきか。仕事は果たしているのだから責める筋合いはこちらになかったな。」
男は淡々とした口調で言葉を連ねる。しかし魯鈍の耳には一向に入らない。精神崩壊が極まっている。
これは皇帝陛下に直々に頼む他ないかと、男は———帝国軍最高位部隊『六将桜』第一将の座に君臨するルーンは愚考した。
こんなに簡単に皇帝陛下へその力をお借りするというのは些か問題ではと感じるが、帝国軍には精神支配を解けることができても恐怖による崩壊をどうにかすることはできない。
皇帝のお力により、全てを無かったことにすることが解決策となる。
この男はまだ利用価値がある。
魯鈍のケイスこと梶原慶介は、催眠能力の持ち主だ。それは、脳を根本から作り変えるという皇帝の『支配』の力と双璧を成すチートである。
基本能力はレベルに依存するものになっているため、戦闘ではそこそこの働きにしかならない。
しかし、しかしだ。かの皇帝陛下のお眼鏡に叶う男だ。無下にはできない。しようものなら首が飛ぶ。
「さて、どうするか。報告は必要か。」
脳裏に少女の姿を浮かべる。決してそういうことではない。先ほど、この男を拷問していた少女のことだ。
自身の魔法では太刀打ちできないほど強固な魔法。わざわざスキルまで使いようやく破壊できるほどの魔法を使っていたことを考えると、あれは異世界人に間違いない。
帝国まではそう距離もない。皇帝陛下直々にお造りになられた魔導具、『転換点』で帝国に戻るのだった。
そこでは、どの国にも劣らぬ尖城が威圧感を生み出していた。
—————————
人魔戦争終結後、村々はそれぞれ力を蓄え、街を作り都市を作り文明を栄させ、様々な国が起こった。そして国々はより強い方に合併していき、文化レベルは向上してゆく。その先駆けとなるのが、現帝国でもある。
これは、魔力の発現というものも大きな要因でもあった。
現代から人魔戦争のちょうど中間のあたりで、また大きな戦争が起こった。これは俗に七国戦争と呼ばれるものだった。
その7つの国は統合され、グランド・レイト王国、ヘルベリスタ帝国、アズリア神国、ラミア合衆国となった。
この中でも帝国と合衆国は大きな力を持っており、互いに戦争時には国を合併させている。次点で王国、その次に神国。しかし神国はどうにもきな臭い。本当に小国なのかと、疑う人間もザラにいる。
そんな古い歴史を持つ帝国は、今歴史の駒を進めようとしていた。
具体的に言えば、新たに土地を開拓すると。平たく言えばどこかの国を侵略し領土として再建するということだ。
帝国軍約4万、そして少数精鋭。神国からの援軍として約1万の軍。誰も彼も神を崇拝し恩恵をいただく者達だ。たかが騎士や兵士に敵う相手ではない。
圧倒的な戦力を持っていた。
少しだけ情報を開示しよう。
『六将桜』は名の通り6名存在する。
花宮桔梗。望月菫。櫻川柊。その他3名で構成されている。
その詳細な情報を知る人間は、『六将桜』と皇帝陛下を除いて誰1人としていないという。
全ては彼らに抹殺されてしまうからと噂が立つほど、なにもないのだ。そもそも、『六将桜』自体都市伝説のような存在である。
そんな都市伝説が動く事態がこれから起こっていく。
王国も帝国も魔法少女も、全て等しく戦乱と混乱と錯綜の間で彷徨っていく。
真っ暗闇の星空はいつしか過ぎ去る。
日の出の時は近い。
—————————
人神は言わば人族の代表。名ばかりの神である。
普段は何ひとつ世の中に興味を示さない彼ら四神にも、見逃せないことはある。
龍神が龍種の滅亡の危機を悟り時を遡ったように、霊神が普段妖精の森に滞在するように、考えていることはある。
人神は四国の危機を悟った。
以前起こった戦争よりもより凶悪な、単純ではない複雑な巨悪が渦巻く予感を感じ取っていた。
「帝国と神国ね。」
空中に魔法のカードを2枚浮かべた。
不審に思ったのはいつからだろうか。自身が転生させた転生者の行方が分からなくなっているところからだろうか。
死ねば、魂は還元されまた新たな生を送ることになる。それはこちらから分かることだ。
それが分からないのだ。何故か。
以前の定期神集会から、魔法少女とあの青年を監視し続けている人神エディレンは、ついにその二国について知った。
普通の争い程度なら人間という種の発展に必要なことかもしれない。が、今回のこれがその普通の枠に当てはまるであろうかと考える。
「一旦調査しようか。余が介入するのは問題になるかもしれない。けど、帝国を徹底的に調べ上げ、危険分子を取り除くとしよう。」
人神の花園から、紅茶を啜って言うのだった。
———————————————————————
とりあえず適当にヘルベリスタのことを書いておきました。内容に関しては適当です。ツッコミはなしで。
そして短いのは非常に申し訳ないです!書くことがありませんでした!
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