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14章 魔法少女と農業の街

456話 魔法少女は拷問にかける

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 どうもこんにちは。本日は実況と解説を務めさせていただく美水空と申します。どうぞお見知りおきを。
 えー、今回このように担当させていただくのは主導権が奪われてしまったからであって……

『奪ったなんて人聞きの悪い。譲り受けたの間違いだよ』

 ア、ハイ。そっすか。

 実況解説は下がってとのことなので、神の力をむんむんと漂わせて土の檻にぶち込まれた魯鈍の元へ向かった。これ、そのまま出すのとか怖い。

 それなら檻状にすればいいと天からのお導きがあり、それを採用することにした。無神論者にわざわざ天啓なんて神も相当暇なんだろう。

 魔力を通し、檻状に変化させて魯鈍と対面した。耐熱耐寒耐刃etcの超高性能。さっすが神の力、半端ない。
 ほれほれ、の威力を思いしれ!

『神の威を狩る私だな』
『そのままぐつぐつ煮込んできつね鍋でも作ろうか』
『きつねどこから出たよ』
はははと笑い声を溢れさせる。自由にした途端これだよ。もう手のつけようもない。

 変なことだけは口走んないでね。キャラは守って死なない程度に。オッケー?

「やあやあ魯鈍。」
話聞けや。それすらも無視され、もういいやと嘆息を吐いた。

「お前か……」
「このまま殺されるか、素直に吐いて捕まるか、どっち?まぁ捕まれば死刑だろうけど。」
「証拠もないのに脅しか?脅迫罪で捕まれ。」
「生憎この世界にそんなものないんでね。」
ハッと笑い飛ばした。なんか仰々しい態度で腕を組んだ。なんだこいつ。

「白状しないなら自白剤ぶち込むか、すり潰してココアみたいにしてからお湯入れて美味しく飲んじゃおうか。」
「血の味しかしないだろうな。そんなことはどうでもいい、早く出せ。」
不遜にそっぽを向く。

 それが人にものを頼む態度かーっと言わんばかりにバカにした顔をしてる自信がある。
 おーい、人の顔だぞー。

『私の顔でもあるぞ?』
黙りこくった私は、流れを見守ることにした。

「でないと———殺すぞ?」
「あ゛?」
両者から猛烈な神の力を感じる。やっぱり魯鈍も転生者で確定……だけど、何か異質な感じがする。

 今まで見て来た日本の人達はなんとなく雰囲気で分かる。顔立ちとかは置いといて、特有の雰囲気みたいなのがあった。共鳴みたいな?

 でも……

『考えるのはいいけど、私達の邪魔しないでね』
『はいはーい、私交代したーい!』

「よし、準備も整ったし……やろっか。」
ニヤリと口角を上げた。何をやるんだろうか。皆目見当もツカナイナ。

「白状したくなるような楽しい楽しい、お遊びを。」
「何が言いたい?」
「ただこれだけ———そろそろ、私のターンかな。」
パァァンッ!現実と違い、ゆらゆらと硝煙が揺らめくことはない。破裂音は燃焼の際の音。加速は雷だ。そして着弾点はもちろんのこと……

「が、ぁぁぁぁぁ!」
「核創造。強行理論との掛け合わせでようやく実現できた魔法。核さえ作れば、残りは魔力で補える。」
まるで自慢するように告げると、あれ?と頓狂な声を漏らす。

「もう聞こえてないか。」
そこには、死体(多分まだ生きてる)となった魯鈍が倒れ伏していた。

 攻撃魔法が欲しいはずなのに何故にこんな特殊な魔法ばっか作るんだろうね。
 自分でも自分が不思議だ。

 この核を大量に生成して魔力で周りを固めて……いや、これ魔法を生成できるんじゃない?実験してみよう、この魯鈍で。

「再生創々。」
時を戻そう。某芸人のように時間を死ぬ前に戻す。このくらいの時間ならなんとかなる。

「…………ぁ、なに、が?」
「痛みを作って即死毒も混ぜてみた。毒のお返しだよ。私の毒の味はどうだった?」
「美味いわけ、あるか……」
ぜぇぜぇと荒い息遣い。しかしだからどうしたと言うのか。まだまだ殺人パーティーは終わらない。

 人の命が軽い世界って、怖いね。殺しては蘇生殺しては蘇生なんて、倫理観的にアウトな気が……

「魔法の核を生成、そして炎を現出。……えーっと…………次の手順なんだっけ?あー、射出設定か。」
魔力オンリーのイメージがものを言う魔法のため、青色の炎を念じればそうなる。

 ちなみに人間が見える炎の色の限界は紫らしい。そんなことしたら檻が溶けそうだからやめるけど。

「私のターンだ。燃え尽きるといい!」
Cがでしゃばって来た。言動に注意してほしい。ちなみに魯鈍は呻き声を上げながら炎のシャワーを浴びて溶けていった。

 うーん、バイオレンス!

 そんな感想を抱きつつ、なんか面白くなって来た気がする。そんな感想が頭に浮かぶ私も、とうとう末期だ。

 そして再生。

「2回目の死、おめでとう。さて、3回目の死を体験するか、このまま白状するか、どっちがいい?」
「何も言うことはない……」
「じゃあ、じわじわ電流を流す実験でもしようかな。魔法の実験って、対人じゃないと分かんないこともあるし。」
トールをゆっくり滑らせる。血管が浮き出るのが見える。ちょっと気持ち悪い。

 ね、ねぇ?もうやめない?もうちょっと脅し成分深めようよ。

 そう言っているうちに、3度目の死を迎えた。そして3度目の蘇生も経験した。

「そろそろ飽きて来たし、即死してみよっか。」
刀を取り出し頸動脈を斬り刻んだ。血を撒き散らし、とんでもないスプラッタだ。で、ギリギリでさいせーい。

 その次は皮膚を削いで、土で潰して、水で溺れさせた後に暗黒弓を突き刺して、光槍で串刺し。何度目の死かもう分からない。そのあたりでもう殺し疲れた。

「捏ねてうどんにでもして食べてやろうかな。」
なんて意味分からないことを口走るくらいには面倒になって来た。対する魯鈍は、全ての意思を削がれたような顔をしている。

「次、どうされたい?」
「……殺さないで……もう……」
以前の魯鈍からは想像もできないような台詞が……いやほんと想像できないなこれ。

 これほんとに魯鈍?偽物じゃないよね。

 万能感知で魔力を見てみる。すると、違和感があった。例えるなら、紫色のオムライスみたいな感じだ。違和感が半端ない。

 さっきまで薄くしか感じなかったのに……力が弱まって隠蔽してたのが切れたとか?あり得そう。

 私が殺す準備をしている間、そっちに尽力することにした。

 魔力が混じってる?私が知ってる神の与えた魔力に、もうひとつ小さいけど混ざってる魔力が……しかも主導権握ってるのは後者。
 ……催眠はこれのせい?ってことは、魯鈍は魯鈍でも中身が君の名は状態。

 君の名は……
 とかいうふざけはおいといて、この人は誰だ?

 イズナの証言や私の勘と照合し、魯鈍も催眠されていると言う決定を下した。つまり、レリアとイズナは本当に自分の意思でついて来ているらしい。

 失礼を承知で言おう。男の趣味悪っ。

「じゃあ情報、吐いてもらおうか?」
私達は、ラノスの銃口を魯鈍に向け脅した。

—————————

 魔法少女が拠点としている国の名を、グランド・レイト王国という。
 長年アングランドの一族が国王となり治める国であり、近年着実に戦力を増加させていき強国へと近づいている。

 そして、グランド・レイト王国の近辺には4つの国がある。

 東西南北それぞれの代表4人の治めるエンヴェル共和国。
 皇帝の治めるヘルベリスタ帝国。
 神創教教皇の治めるアズリア神国。
 大統領の治めるラミア合衆国。

 少し離れたところで言えば、南方に代神の治める御倭天土という島国があるが、今は置いておこう。

 現在、王国はヘルベリスタ帝国と少し揉めているように思える。ヘルベリスタ帝国はアズリア神国と友好関係を結んでおり、帝国内に多くの教会が設立されている。
 理由は簡単。ヘルベリスタ帝国は世界統一を目論んでおり、アズリア神国は神創教を全世界に信仰させることが本望だ。友好を結ぶのに時間はかからなかった。

 そして狙われるのがまず王国というわけだった。
 それなりに大きく、据えておくにはちょうど良い。

 そして帝国は今、王国を我が物にせんと暗躍を続けている。
 これだけは言おう。本来、梶原慶介ことケイスは、曲解癖のある心優しい青年だ。そんな彼は、この帝国に転生し目をつけられてしまった。

———————————————————————

 空のたまに言う私のターン云々は、しっかり5人分あります。語尾が違うだけですけど。

 ~だよ、~ってことで、~かな、~だ、~?って感じです。左から本体A、Bって感じで。
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