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13章 魔法少女と異世界紛争
418話 魔法少女と憤怒の杖
しおりを挟む「次から次へと、プライドというものはないのか?」
「生憎魔法少女のプライドは液状だからね。」
受け答えになってない返しをして濁す私は、ステッキを指でくるくると回す。
恵理、死んじゃったね。
自信たっぷりの姿勢で瞑目する私は、心でそう呟く。その呟きは流れず、私がしっかり受け止めた。
『なら、やるしかない。やれるだけのことはしよう』
『初めから、本気でいこう』
『言われずとも』
『りょうかい』
いつもなら茶化してくる私達も、えらく真剣な面持ちでそう語る。
よし行こう。と、私は神速で急接近する。抉られた腹部に、ステッキの先端を突き刺した。
「怒ってんだよ、クソ野郎。」
普段の喋り方から一転、ナギアの耳元にグイッと口を近づけると、そう口にする。意識はしてないけど、私の目は完全に冷め切っていた。
今の私はビーストモード。弱体化付き以外は、全て使ってる。身体激化?そんなもの、痛みを我慢すればどうとでもなるし、ヒーリングポーションを飲んどきゃどうにでもなるよ。
私の大切なものを脅かそうとして、というか脅かしたよね?そっちがやるってんなら、こっちもやるのが私の主義ぃ!
せっかく真面目にやったのに最後の一言によりバカみが増した。だけど、私はそれでいいんだ。力みすぎても空回るだけだし。
「脇役は退場願うよ。」
ステッキを引く。その隙を見てレーザーが私にぶつかるけど、圧力操作で無視できる。そっちに2人つけた甲斐があった。右足を脇腹にぶつけると、面白いように吹っ飛んでいった。
「ファイボルト。トール。土槍。」
高火力の魔法を連発する。何発かしか当たらないけど、この波状攻撃には麻痺ったようだった。
でも、さすがはあそこまでの組織の長。私の本気でも抵抗してくるとか、やばすぎ。
肩を竦めていると、強風を吹かせながら飛んでくるナギアの姿が。血まみれでも、特攻はしてくるらしい。
「へぇ、そんな強くても回復手段はないわけね。」
「甘く見るなよ?まだ、本気とは程遠い。」
「そうなんだ。ま、私もだけど。」
漆黒の剣がブンブン振り回される。その細さのどこからそんな威力出てるの?とつい聞きたくなる攻撃をステッキでいなしつつ、適度に躱す。
別に、全て受けなきゃいけない義理はないし。かっこ悪くなっていいよ。勝てればそれで~、全然オーケ~。
一定の距離を保ちつつ、攻防を続ける。
私は魔法を撃ち、それをナギアが払うと接近した私がステッキを薙ぐ。その頃にナギアのレーザーやら、多分絶対領域とか持ってそうな箱とか飛んできて、対処してるうちに離れられる。
これを繰り返す。
「攻撃変更。」
よっと、と口にしながら後ろに大きく跳び退くと、ステッキと銃を入れ替え、少ししてから撃つ。
「はいっと、残弾数はさっきのと合わせて6かぁ。まぁ、どうとでもなるでしょ。」
弾かれるも、それは当然のことのように無視して銃口を向ける。
第3ラウンドで決着をつける。これは第2。
第3からが本番なんだから、少しでもダメージと刷り込みを。
ナギアは、突然のチェンジに困惑を示すように眉を動かす。でも、対応は変わらず、この冷静に佇む。
「そういうことか。」
ニヤリと笑みを浮かべたナギアは、予想通り滑るような動きで私は急接近してくる。
もうこの動き読んだんだよね~。
これって動きに意識誘導ついてるよね多分。勝手に頭が間違った攻撃予想して意表をつかれるって感じ?知らないけど。
攻略法は意識する。じゃなくて逆に無視すること。直前になって攻撃を避けるのが1番。
「対応もできなくなったか。」
ナギアの剣が私の首筋に狙いを定めた時、始めて攻撃を認識する。チラッと地面がむき出しになった床を見て、魔力を通す。
「え、ちょえっ!?」
ラノスの背中で剣を受け、当惑げに声を漏らす。私の足元は沈んで剣筋から離れたはずなのに、なぜか剣が。
え?避けたよね?あそこまで啖呵(心の中だけど)切っといて、負けるってクッソ恥ずいぃ!
顔を両手で塞ぎたくなるのを我慢し、代わりに睨んでおく。
意識誘導は突破したつもりなのに……
「ただの身体能力の違いだぞ?我とは、格が違うんだ。降参でもするか?」
なんだかバツが悪くなり、膂力で剣を吹き飛ばして距離を取る。
ナギアってまさか……相当強い?
いや、それは分かってたんだけど。まさか超強化状態の私でもステ越せないとか?
そんなの聞いてないんですけどぉ?
『かっこ悪い』
『ダッサ』
『あんなカッコつけといて~?』
う、うるさいやい!
結局私はネタに転がる運命なんだ、と。とほほとする。
「ま、いいや。刷り込めたし。」
聞こえないように呟く。
今勝てなくても、後勝てればそれで十分だ。
牽制にラノスを数発おみまいし、ついでにプローターもプレゼント。キャンペーンでお得だね。
「混合弾。」
わざと遠く離すように、ナギアの地面に向けて撃ち続ける。納得がいったように、ナギアは乗って後ろに下がる。
ここまで離れると牽制もまともにできないんだよね。空間伸縮の射程がね……
それでも引き金を引き、マガジンを交換しつつ間合いをとる。
数分、そんなことが変わらず起きていた。しかしそれを変えたのは、ナギアだった。
「もう茶番は終わりだ。徹底的に、潰しておこう。」
そんなことを、悠々と言い退けた。
「神格。」
空気が変わった。纏う覇気が、人神やら龍神やらを想像させる力強いものに変化する。その瞬間、感覚的にこれはやばいと理解する。そして、覚悟も決めた。
どんな効果があるのか、いまだに分からないけど。
思いつつ、覚醒を使用した。服装が変化するのにも慣れ、思考を続ける。
今使わないでいつ使うって話だよね。そろそろ本気の本気、魔法少女の内なる力を解放する時だ。
憤怒の杖。
口にすることなく発動させる。可愛らしい色で溢れるステッキが、ドス黒くなり鈍い赤なども混ざっておどろおどろしいことになる。その色は魔力に乗り、瑠璃色のはずの私の魔力は、汚く染まっていく。
哀しげに見つめ、握りしめた。
———怒りの限りに殺し尽くせ———
その瞬間、言いようもない怒りに全てを飲み込まれた。全ての思考が冷静になり、しゃんとし、ただ怒りを感じた。
最後に見えたナギアの顔を、魂に刻み込んで殺すと誓う。蹂躙の始まりだ。
—————————
始めて彼女が魔法少女と相対した時、その場のノリで生きてる軽い人間かと思っていた。
龍神ルーアには、そう見えた。
神を討ち破った魔法少女は、本来ならルーアではなく彼女が継ぐはずだった。それをノリで渡され、今こうしている。
なんの目的もなくただフラフラしているだけの人間だと思っていた。ただ、面白いことには変わりはない。見ていて飽きないなとは思っていたが、それだけだ。
しかし、見ていれば分かった。
一貫しているのだ。
言動に一貫性は薄いが、それこそが彼女であり一貫してキャラを突き通していた。作っているわけでもなく、真っ直ぐに楽しそうにことにあたる。
面倒なことは面倒と言い、それでも見捨てられないのが魔法少女クオリティ。
神向きではない性格をしている。
神に必要なのは無常さ。常に変わり続ける必要がある。世界に合わせて変わることが求められる。
しかし魔法少女は違う。一貫して自分があり、合わせるというより合わせられるほうだ。なんとなく、引っ張っていく存在に見えた。
本人に聞けば必ず否定するだろう。
「え?なにそのご都合主人公みたいなキャラ」
とかなんとか言って笑うだろうが、ルーアはなんとなくそんな風に見えたのだ。
だから驚いた。
魔法少女があそこまで本気で面に怒りを出した姿に。本気で殺意を高め、殺そうとしている姿に。
永眠した恵理を抱え、そう感じた。
———————————————————————
今話、腹に焼きそばを詰めた状態で執筆しております。定職はなくても焼きそばいっぱい、胸いっぱ~い♪
え、清らかなごちうさを汚い私が汚すなって?
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