上 下
435 / 681
13章 魔法少女と異世界紛争

409話 魔法少女は協力する

しおりを挟む

 ボロボロになった森を歩くこと数分。特になんの成果も得られず、これからの指針を定めようと私達は立ち止まっていた。

「重奏の1人も現れなかったね。絶対1人は襲いにくると思ったのに。」
「そこまで戦力を消費している暇もないんじゃろ。が、あのソロという男、只者ではない。人間が正面切って戦おうなぞ馬鹿げておる。」
少し思案した後、ふと思いついたように言う。

「あれは、もしや1つの魂ではないのかの……?いくつもの体を取り替えて、魂を固めて1つにした……いや、そんな禁術、魔神でもあるまい……使えるはずが……」
「これ、推察に過ぎないんだけどさ。」
「なんじゃ?我は大事なことを考えておる。もしどうでも良いことであったら主とて手を抜かぬ。」
とんでもない脅迫を両手で宥め、無理矢理口角を指で上げる。眉が嫌そうに曲がるので、早々に引き返し言葉を続けた。

「もしナギアが異世界人で、創滅神から力を受けていたとする。そして、なんらかのスキルで世界に触れるスキルを手にした。」
「世界に触れる?」
「私も似たようなものだよ。空力に重力操作、再生創々。この世界に直接干渉できるのはこの世界の影響を受けない異世界の人間と考えると、私みたいなのが戦闘に特化すれば?禁術も、可能性出てこない?」
「……確かに考えられなくもないの。」
更に思い詰めたように瞼を閉じ、低く唸る。

 まぁ私の中ではナギアは異世界人確定だけど。

 でもそれだと能力がピンポイントすぎるよね。
 古今東西ファンタジーもののラノベには必ず(バチバチに主観を含む)何かしらの「チート」はあるはず。そのチートで何か都合のいいものは……

 ここが日本人の想像力の見せ所だぁぁぁ!

 私の脳内は高速で回転し、異世界、ゲーム世界の異能スキル魔法、あらゆるチート思いめぐらせる。

 神の力の代行?いや、それは創滅神的に美味しくない。創滅神も心があるはず。そういう完璧なものは与えない。(経験談)

 禁術ってことは過去の能力だよね。禁止されてるんだから、過去に存在してないとおかしい。過去遡行?それはスキルの説明にはならないし……強さの秘訣的なものも……
 ならランダム?創滅神も楽しめそうだし、たまにいいスキルあげれば……なんか泳がされてる感じで趣味悪い。

「でもそれでいい……!」
「っ!なっ、なんじゃ突然……」
「あ、いや……1日、いや1週間……まぁ期間は分からないけど、この世に存在する能力を授かれるみたいな能力なら、どうかな。」
「いや、それだと運要素が強すぎるのではないかの?」
「やっぱそうだよねぇ……」
渾身の案をばっさり切り落とされ、ガックリと肩を落とす。

 そもそも人の能力を見ずに憶測で当てるとか無理だって。私の本職は魔法少女であって探偵にあらず。私の推察力は探偵みたいに常時展開じゃなくてご都合展開なんだよ。

 つまり、こういう時の私はハズレだ。

『自分で言ってて悲しくならない?私』

 悲しいよ?悲しいけど事実なんだよねぇこれが。認めるしかないのよねぇこれが。ちくしょう。

 心のマリアナ海溝で悪態を吐き、私はゆっくり浮上する。

「今は我と主の2人じゃ。必然的に行動も思考も協力してやる方が効率はいい。少しのことでクヨクヨするでない。」
「……で、今はソロの魂が複合体の可能性についてだっけ?」
「そうじゃの。あの力は1人の人間の持てる力の許容量を超している。ナギアという更に規格外の男に関しては、主の仮説が当たりかの。神の力を薄く感じた。」
「さすが、終始無言だっただけある。」
ニヤリと笑って言ってみると、「主も特に喋らなかったじゃろ」と返された。振り返ってみると、ソロとのコントしかしてない。

『そんなことより、さっきから万能感知反応あるんだけど?ここでも分かる距離ってことは……』
私が焦りを含んだ声で訴えてくる。私は制止し、心で呟く。

 分かってる……もう、視線は感じてる。

「ところで、周りに視線を感じるんだけど気のせいかな?」
「……うむ、気のせいじゃの。」
「うんうん、気のせいだよね……じゃない!」
「思考力に力を注いだ結果、索敵が疎かになっていたみたいだの。」
そう納得するように頷くルーアを他所に、ボロボロの森からは魔物が発生していた。

「恐らく、この大量の魔力が自然の魔物を誘き寄せ活性化させてるようじゃ。我も利用させてもらった主の領域が原因じゃの。」
「私のせい!?」
「はっはっは、ここのあたりを覆っておった封印の結界も、主の力で綺麗さっぱりじゃの!変わらず、濃い魔力は充満しておるが。」
「笑い事じゃないわ!何が『はっはっはっ』?笑ってる暇があれば……」
私がブンブンと腕を振り、魔物が近づいてることを必死にアピールしていると、ルーアがまた笑う。

 え、この子なに?もしかして狂人?魔物が襲いかかってきても笑えるその精神力は素直に褒めてあげる。
 ってそんな話はどうでもいい。

「いやに焦るでない。もう罠は貼り終わっておる。」
「え……?」
「言ったであろう?と。つまりここは、我のテリトリーじゃ。」
その瞬間、目に見える範囲を全て覆うような、ドーム状の魔法陣が隙間なく発生した。まるでバグのようだ。

「いくら我とて神の力の混ざった領域を内から塗り替えられぬ。が、主が同レベル、いや創滅神自体と同レベルの力で書き換えたおかげでできたことだ。感謝しておるぞ?」
突然ウインクをして愛嬌を示してくるルーア。世の中の男子諸君が卒倒しそうなので、私の中学の卒業写真と入れ替えておいた。

 私は写真でピースをしない系女子だった。
 高校は友達の真横でイキリ倒してたけど。

 逆にイジメの只中でピースできる根性ある人いる?と謎に話が脱線したところで、目の前の魔物が消えていることに気づく。

「いや……死体にジョブチェンジ?」
「普通に殺されたと言えば良いじゃろ。」
「いつの間にっ?」
「龍法陣の結界でチョチョイとの。この結界内で、我の目が届かぬ場所はほとんどない。」
「ほとんどかい。」
やっぱりあんまり役に立たないことが証明された。

「仕方あるまい!神の力が混じっておると言ったじゃろ!」
ルーアが声を荒げる。そんなに怒らなくてもいいじゃないと耳を塞ぐ。

「これで外から増えてくるということはないじゃろ。」
「ルーアせんせー、なんか増えてるんですけど。」
「増え、……なんか分裂してるんじゃが!?我の結界内どうなっておる!?」
まるで地獄絵図からモノホンの地獄絵図にグレードアップした。

 魔物は内でも外でも結界によって殺され、内の魔物は何故だか分裂して増え続ける一方。

「これ、殲滅しないとヤバい系じゃない?」
「核石を全て破壊し尽くさないといかんの。」
「うぇ……銃弾補充できないじゃん。核石の代わりに物質変化で鉄ぶっこもうかな。」
考え事も恵理も一旦置いておいて、私達は目を合わせる。

「フレアアクセル!」「ファイボルト!」
互いの方向に炎をぶちまける。

「増えるならその分燃やしてやらぁぁぁぁ!もやし炒めだぁぁぁ!」
「なに言っておるか分からんが燃やし尽くすことには同意じゃの。燃えろ!」

 ———地上で炎上祭りをしている頃、恵理らは戦闘を開始していた。そんなこともつゆ知らず、魔法少女らは今日も燃やす———

———————————————————————

 今回なんか文章から読み取れるヤケクソ感ありますね。理由は明白ですが。
 何故かって?ずっと見れてなかったごちうさ3期をAbe○aで見てたからです。
 1、2期は10ヶ月前に見たんですが、見てるとあのオープニングを思い出します。
 心がぴょんぴょんします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

処理中です...