424 / 681
13章 魔法少女と異世界紛争
398話 魔法少女は行方を探す
しおりを挟む龍神ルーアは、瞑目していた。
一体これはどういう状況か。
真下に、あからさまにやばいオーラを纏った(龍神にのみ存在する龍眼にて観察した)オールバックの男と、数百年前に見たような瑠璃色の髪をした少女が対立していた。
「力は五分五分……いや、扱えていないだけで瑠璃少女の方がだいぶ強いかの?弱ければ、龍神様が負けるはずがない。」
ふわふわと、気付かれないように戦場を眺めていた。
本来は龍の救出及び被害の拡大を防ぐために赴いたのだが、数百年ぶりの再開人。会って行きたいという思い反面、若干の忌避を感じる。
いくら龍神本人の願いとは言え、殺したのには違いない。
何も感じないほど薄情なつもりはない。
「ガンマ線、バーストぉっ!」
少女の叫び声が聞こえてきた。
その直後、そのエネルギー量にルーアが目を見開いた。一瞬、ほんの一瞬ではあったが、星レベルのエネルギーを感じた。
「ほぉう……いつの間にここまで。我の目の届かぬうちにとは、さすがは転生者と言ったところかの。」
と、そこで相対していた男は口を開いたかと思いきや、瞬時に姿をくらませた。
「あれは……しかしまぁなかなかのダメージを負わせられたのではないか?」
ルーアはそのタイミングで地に降りようとした。が、何か呟きながら少女はどこかに歩いて行ってしまった。
「あれ?これ、行ってもいいかの?」
コミュ障だった。
それはそうだ。あれからずっと、定期神集会を行うためだけに労力を費やしていた。四神以外との会話経験などないに等しい。
「これ、どうすれば良い……?我、今世紀最大の困惑じゃ……」
どこに今世紀使ってるんだよと思わなくもないが、実際にそれだけ生きているのだから笑えない。
ルーアは、神らしくもなくうじうじと空中に止まっていた。
—————————
———一方その頃魔法少女は、そんなこととはつゆ知らず身を低くしていた———
「あれだけの騎士を私1人で相手する大変さ、空には分からないでしょうね。」
「ごめんごめんって、だからそんなめっちゃ昔の議員さんのモノマネしないで……」
ベーコンにでもなりそうな勢いでカリカリする恵理を宥め、平謝りを繰り返す。
あれからぼちぼち王都に帰っていたら、途中で恵理に遭遇した。着物を土だらけにし、パクトを握りしめて走っていた。そこを私が救出した次第だ。
「でも、まぁ……かっこよかったよ?」
「鉄扇で殴られるか鉄扇で刻まれるか、空はどっちがお好み?」
「スミマセン。」
おふざけは置いといて、私は私の出来事を語る。
「へぇ。トリオね。ソロ、トリオ、セクステット、オクッテトと。確か重奏の名前よね。人数は最低8人として、そこは変わりなしね。」
「トリオはやばいくらい強かった。さっきも、倒せたかどうか分からないし。」
「それは仕方ないでしょう。セクステットとやらも討ち取れたかは定かじゃないんだし、今更よ今更。」
「ま、あの人はゲームのスキルだから完封できるけど。」
恵理の鉄扇がバキバキに物理攻撃なので、どうとでもなるだろうと笑って言う。
あのスキル、厄介には厄介だけどゴリ押しが有効打だから。あのゲームではMPが尽きやすい魔法職でゴリ押しはキツかったけど、ここはゲームじゃなくて異世界。十分いける相手だよ。
「そんなことより、今大事なのはカラだ。」
「体?」
「カラ、だ。……そこに多分、奴らもいる。黒服も、重奏シリーズも。」
勝手にシリーズ化しておいたけど、怒る相手は今不在なのでこれで決定と。
「そこで、闇雲に探してもどうにもならないと思った私は恵理のリンクスタートを借りることしにた。魔力は大体覚えてる。」
「そこで私の出番というわけね。」
「そう、人探しのプロフェッショナル《女王》恵理様の。」
「ん?」
「いや、何も。」
百合乃を真似て、少し練習して上手くなった口笛を披露しつつ、カモンカモンと急かす。ため息を吐く恵理は、その手を私の頭に乗っけて口にする。
「リンクスタート。」
脳内に情報が流れ込んでくる。私1人なら神経が焼き切れる情報量も、5人ならなんとでもなる。
リンクスタートってほとんど禁術レベルだと思うんだよね、私。
『そりゃ、視覚情報2倍なんだし。しかも恵理の場合魔力眼つきときた』
「……っ、やっぱり受け止めるまでが結構……くる。」
「ゆっくりやるなら大丈夫でも、この量を一気にだからね。これは、一応攻撃スキルに入るし。」
「入るの……?」
頭を抱えながら、安定し始めたところで目を開ける。視界が増えたような錯覚に陥り、うまく制御しつつ空中歩行により空高く舞い上がる。
カラの魔力カラの魔力…………おぇ……こんなのを毎日見てたら酔いそう。
魔力反応多すぎ……
と、向きを変えてみた先に……膨大な魔力?
「「……なんかある。」」
声が重なり、そちらを注視してみる。
あ、なんか目があったような。
そう思った途端に猛スピードで近づいてくる、なんていう怪異的な行動には出なかった。現実にそんなのはありえるはずがn
「久しぶりじゃの、魔法少女よ。」
「ふんぬらばぁ?!」
そこにいたのは、エロ……じゃなくて露出度の少し多い(霊神を彷彿とさせる)服、支点力点作用点的に脳が揺れそうな立派な角や、大きな翼を持つ少女……
この人は……!
「誰だっけ。」
「忘れてるんじゃないわよ。空が知らなかったら私はもっと知らない。」
「仕方ないじゃん、覚えてないんだもん。」
「人の顔くらい覚えたらどうなの?」
「覚えてないってことは印象薄かったんじゃない?」
「記憶力どうなってんの?」
「あーもう!やいやいとうるさいのぉ、人間!少しは話を聞いたらどうじゃ?」
「のじゃロリ?」
「馬鹿にしていることはよく分かった。」
うんうんと頷き、ビシッと指を差した。
「我はルーア。龍神ルー様の跡を継ぐ現龍神である!」
「ルーア……………まさか、あの時の龍?」
手のひらにポンと拳を当て、そうだそうだと思い出す。
百合乃がお世話になったよね。
最後は私が止めた記憶があるけど。
「何百年ぶりかの。」
「そっちにとっては100年単位だけど、私にとってはほんの1、2ヶ月前のことなんだけどね。」
「なん、じゃと?」
驚きのあまり固まるルーア。
「あの時はただ過去に送られただけだから……会うならその時って前行った気がするけど。」
「忙しすぎてよく覚えておらんの。」
両手の平を上に向け、首を傾げた。
「で、何しにきたの久しぶりの龍神さん。」
「その言い方は何か気に食わんからルーアで良いぞ。そこの娘は龍神と呼ぶのだ。」
「神として対応の差はどうかと思うわ。」
細かいことは気にするな、とルーアは意味を湛えてそう言った。
「この事件、主らも動いているようだが……我も、どうにかしたいと思っておるのだ。」
「なんで?」
「龍も操られているのだ。こうなったら、動くしかないかの。と。」
「つまり、手伝ってくれるの?」
「そう言うことになるの。人間と神の共同作業というやつかのぉ。」
そう言うと、決めた顔でルーアが言う。
「我が主の人探しを手伝ってやろう。」
———————————————————————
今回ちょっと短めですね。
どう頑張っても今の空たちではカラを探すのは不可能に近かったのでルーアに頼らせていただきました。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる