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13章 魔法少女と異世界紛争
397話 魔法少女は引き離す
しおりを挟む私は森を駆け抜けていた。正確に言うと私とトリオ。つまり、黒服のメンバーの3番目の敵だ。
トリオっていうとなんか3人いそうに聞こえるけど、ちゃんと1対1だからね。
で、トリオの実力は……
まだ互いに牽制もしていない。
トリオは刀のような細長く太いものを両手に握り、私はラノスを握ったまま向かい合うように森を駆けている。
「どこまで行くのこれ?」
「……………………………」
無視された。これは完全無視だ。ちょっとイラッときたので、牽制の意味も込めてトリオの数歩先に土槍を発生させる。
「障害物競争か?つまらないな。」
両腕を振るい、土が細切れにされる。
はぁ?ちょっとチートすぎやしない?
これに勝たなきゃいけないと……これより強いやつと、戦えと……
やってやる!元からその覚悟はある!
「ほんとにどこまで行くの。そろそろ止まって……あぁもう!止まれって言ってんでしょ!」
その鼻につくオールバックを刈り取る勢いでアクアソーサーを投げつけた。初期からあるこれは割と使いやすい。
「水を高速回転させているのか。シンプルだがなかなかだ。」
刀を最低限のみ動かしている。全てを受け流し、1つずつ水に戻していく。
「ようやく止まった。」
その隙に木々を伝って上から降りてきていた私。プローターを3つほど落とすと、ウィンドサークルを発動し動きを止める。風の波の中、爆裂するプローター。
「……厄介だ。」
半目を開けて私を睨み、攻撃が止むのを待っている。殺傷能力はない、足止めにはなるけど私も足止められるのでこのままじゃジリ貧だ。
「神速。ステッキスペア!」
レイタースタートを詰め込んだスペアステッキをいくつもばら撒き、滞空させた。
「魔法の雨よー、降れ!」
指鉄砲なんて生易しいものではなく、ラノスの銃口を向けてウインク。レイタースタートによる魔法の滝と銃弾。
これは避けられる前提なんだけど。避けられないなら簡単に倒せちゃうよ。
これは予想通りだ。トリオが刀を下から上へ、旗を上げるように振り上げた。それが魔法を捻じ曲げ、銃弾は首を曲げ避けられた。
「龍法陣!【精霊解放】!ギルは……2機!」
トリオの周りに幾つもの陣が。少し目を見開き、刀を動かす。
さて、ここからが本番だね。
やってやろうじゃん。重力操作はいける?上達したよね?
『それは私自身に言って。でもま、やれるだけはやるよ』
その言葉を聞いて心で頷き、解放された光の羽をはためかせ、重力操作で宙を浮いたふりをする。
「羽が……?どんなスキルだ?」
「スキル……いや、早計か。」
言葉に異常反応するのはよそう、そう思い目を伏せ、スキル選択をする。
こっちでは初めてになるかな。できればいいんだけど、ねっ!
「神霊召喚!」
ギルに搭載されたガトリング爆弾で牽制をし、声をかき消した。情報はなるべく落とさないように頑張らないといけない。
特にエスカーとか、ケアーとか。あの辺は最終兵器だ。
煙で満たされた森の中、眩い閃光が辺りを照らした。神霊召喚が成功したようだ。
光が消えたそこにいたのは、久しぶりの少女、緑の髪が糸のように細く綺麗な美少女、ベールが。
「久しぶりね。とは言っても、そこまで時間は空いてないのよ?もう寂しくなった……って、えぇ!?なに、この状況何よ?」
「状況説明は後!とりあえず目の前にいるヤバい敵の排除が優先。トドメは私が刺す!」
「そ、そう……?分かったわ。精霊術で牽制でもするわ。」
困惑気味のベールは、手に原素集め詠唱を始めた。
「原素借りるよ!」
血盟強化により上昇分の原素を借り、練り上げる。その瞬間、剣圧が頬を撫で、刀がギリギリ顔の横を通ったのを確認した。
っぶなっ!
心で叫び、心拍数を上げつつも地につき、どこかの忍者のように螺○丸!と叫び原素の塊を叩きつけた。
「……っ、一刀。」
数メートル下がり、トリオはすかさず駆け出してくる。1歩、2歩、瞬間に私の後ろに回り込んできた。
「いつの間に……!」
「斬弧。」
「離れなさい!」
よく透き通った声が空から降りてきた。その時には見えない壁が私とトリオを隔て、トリオには炎の槍というプレゼントまでついていた。
やっばい、これやばい。今のベールの働きがなかったら確実に斬られてた。
剣圧で精霊術を吹き飛ばすオールバックの後ろ姿に恐怖すら覚えつつ、小銃に持ち替えた。
「魔法が効くなら、こっちの方がやりやすい。」
連射する。弾に制限なんてないも同然なので、迷わず連射だ。
「精密さを欠けば終了だ。」
「気配を察知できなければ、いくら強くてもおしまいだよ。」
「なに?」
私の一言に眉を顰めた。心底不思議そうな表情だ。
正面には私。後ろにはギル。上にベールに龍法陣。更に言えば、地面すら私のテリトリー。
「さて、地の利は完全にこっちにある。どうする?」
「………そういうことか。まったく、くだらん。」
今度は私がその言葉に眉を顰めた。次の瞬間に、目を疑う光景を見るとも知らず。
「———極限千刃。」
何かによって、弾き飛ばされた。これはやばいとギルがベールを庇ったことにより、2機墜落。ベールは強制送還となった。私は木を数本折ることで衝撃を殺しきり、魔法少女服であることを幸運に感じた。
「さて、地の利がどうだったか。聞かせてもらおう。」
涼しげな顔で遠くに倒れた私を見る。なかなかの距離なので、相当声を張ってそうだ。そう考えると面白くなってくる。
……あれ、使うかな。
実験途中の品々を、使うことに決めた。
「何度でも言うよ。地の利は、こっちにある!」
神速で接近、トールで刀を引き抜き、1撃を見舞わせる。「威力はいい」と言われる。
「八岐大蛇。」
そのまま流れるように連続突きを繰り返した。危なげなく……と言いたいけど、超全力で躱した。多少オーバーでも。その途中、ある袋を突き刺させた。剣圧で袋が消滅し、中身の粉が舞ったその瞬間。
「ウィンドサークル!」
もう1度、それを使った。粉が風の中に均等にばらけ、砂嵐のように目も開けられない。突きの姿勢から突然体勢を変えるなんて人間技じゃない手法がもちろん取れるはずもなく、バランスを崩した。
第一段階は完了。あとは、タイミングを見計らって……
『圧力の操作は任せて。私がやっておく』
『じゃあ着火は私が』
『風の調整は私が~』
思い思いに役割を決める。風は酸素を送るため、火力は、瞬間の威力を大切に。
「小麦粉大爆発!」
ドカーン、と安っぽい効果音を鳴らせ一体の視界が奪われる。普通なら自滅行為だけど、私だからできる芸当だ。
私、トリオはどこにいる?気配察知に映ってる?
『左方向に向かって走ってる!』
ありがとう……ちょっと本気出してあげるよ!
「ガンマ線、バーストぉっ!」
ラノスを収納し手にした球。入れれるだけの魔力を詰め込み、一直線に全てを開放する。ほんの一瞬光った、すると塞いでいた視界なんて一瞬にして晴らし、とてつもない轟音で地面を抉る。
どう……?これでやれてなかったらちょっときついんだけど。
気配察知で姿を確認すると、消えていた。これは死んでるか死んでないか分からない。完全に見失った。
「死んだとしたら塵すら残さず消滅だろうし、逃げられたとしても分からないよね……」
抉られた地面を見て、眉根を摘みながらどうするべきかと唸る。
まぁ、この場はこうして片付いたわけだし、深く考える必要ないよね。生きてるかもって警戒しておけば。
「あ、恵理置いてきてた。」
余裕が生まれると、そういうことを思い出してしまう。
「王都、戻るかなぁ……」
神速は使わず、足を向けて歩いた。
———————————————————————
最近あんまり出番のなかったキャラ?もの?を登場させてみました。
お久しぶりのガンマ線バースト。そしてベール。ベール登場は久しぶりだったせいか、どんな喋り方かとか忘れちゃいましたね。
そして、眠いです。めちゃくちゃに眠いです。
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