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12章 魔法少女と学園生活

385話 魔法少女は見つけ出す

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「見つからないよ~!」
カラが涙目で空に手をやり、うがーと無駄な動きで騒ぎ立てる。まだ夏の暑さの名残を持つ秋のせいか、カラの額に汗が滲んでいた。

「そりゃあ仮説だし。これ以上調べても進展なさそうだし、闇雲にやるより範囲狭めたほうがいいでしょ?」
「確かにそうだけど、暑いし……」
「逆に、そんなに簡単に見つかったら拍子抜けすぎるし。あの地龍を操れる時点で化け物なのに、そんなのが王都付近で起こる可能性がある。そんな計画立てる奴にしては間抜けすぎるでしょ。」
「それもそうですよねー。」
うーんと伸びをし、手をパタパタとさせた。

「自然の声もだいぶ弱まって……って、みんなは?」
「別のとこ行ったよ?」
「はぁ……よかった。」
フラフラと木の根元に座り込み、私は水筒に入った水を渡す。

「先生ありがとう……」
「どういたしまして。で、自然の声とやらはなんだって?」
「あっ、そうそう。最近自然の声によく耳を傾けるようになってから、小さいことも分かるようになったんだよー。」
にひひと人懐っこい笑みを浮かべ、これは人に好かれるなと納得する。

「ざわめきっていうのかな、先生の仮説が間違ってないっていう証拠になれるかな?」
「場合によるね。比較対象がないから。……転移石は……さすがに、まだやめとくか。」
「何か言いました?」
「いやー?」
ご都合主義が働いた。私はセットしてないはずなのに……と思ったけど、ご都合主義はなんでも解決してくれると無理矢理納得する。

 実際、もしあの逃げた奴が犯人として、重要な部分が欠落してるんだよね……

『強さ、ってこと?』

 そうそう。

 心で頷き、あの時を思い出す。

 中世の拷問器具ってのはビビったけど、強かったかと聞かれると困るんだよね。
 魔物の扇動は謎魔導具のせいとして……

 1つが立てばもう片方が立たない。そんな理論が水平線のように続き、もういいやと諦める。私の推理が当てになるとも限らないし。

「私の推理が当たるときにはそれ相応の波がないと。確変だ確変。」
「なにか?」
「いや、休憩もそろそろ切り上げて再開しない?」
「はーい。」
よっと、と反動をつけて立ち上がると、自然の声に耳を傾けるようにして捜索を開始した。

 地面に埋まってるか、木のどっかに擬態してるか、まぁどこかに隠されてるってことは確か。
 ……ギル飛ばして。闇雲に探しても意味ないし、魔力を探って。

『了解っ、と。で、私はどうするの?』

 精霊展開する。こっちはこっちでやっとくから、そっちはギルを壊さないようにね?

『そんなヘマしないよ、私じゃあるまいしね』
『その私だから言ってるんだよな~』
『えっ、Aって本体罵倒係じゃないの?私もっ?』

 え、知らぬ間に私を罵倒する専門係できてたの?

 新たな真実だ。今日イチの驚きだ。

「【精霊展開】脈探知。」
ふっと息を吐くと、一気に集中していく感覚がある。視覚に頼らず、聴覚に頼らず、この身この感覚だけに頼る。

「先生、こっちはもう探したと思うんだど次、は………?先、生?」
「ツッコミはなしね。」
羽の生えた私を上から下へと見ていき、そっと目を逸らした。そのまま逆方向に歩いていき、「何も見なかった何も見なかった」と何か唱えていた。

 あるんだとしたら、絶対にその一部分だけに強大な魔力があるはず。なら、万能感知やらなんやらを組み合わせれば……
 って魔力濃っ!?

 空気中の魔力濃度に喫驚し、表層だけ見たら何が何だか分からない状況と化していた。

『もっと深く、深淵へ———』
なんかそれっぽいことを言うC。私Aが『無視だ、無視』と言ってギルを飛ばした。

 あと少しで届きそうなんだよ、あと少しで。この上部の魔力のさらに奥に、何かあるはず。
 一瞬でもいいからこの周囲の魔力を消滅させられれば……

「…………魔力喰らいっ!」
周囲の魔力を羽から取り込み、半龍化状態になり魔法を発動した。あたり一体が紫に覆われると、ごっそり魔力が抜ける感覚が残る。

 この一瞬、魔力が消滅したこの瞬間!

 使えるものは全て使い、神にも縋る。霊神には自然の力を、人神には魔力を、龍神には流れを。

 これじゃない。奥底まで来れたんだ、ならそのまま横に突っ切ってみれば……

「あった!」
刹那、魔力がゆっくりと流れ込んできた。私の感覚は押し流され、それでももう発見はした。あとは探すだけだと、深呼吸を1つし反応の元に駆けつけた。

「えっ、せんせー!そっちもう探したけど見つからな……」
「そりゃ見つかるわけないでしょ、人間が触れられる場所じゃないんだからっ!」
カラの横を通り、さっきまでカラの探っていた木のそば、その虚空に手を伸ばし、

 正確には、一部の人間。だけどね。

「脈に埋め込むとか、どんな技術してんの。」
手には何もない。けど、それはどんどん具現化し始め、ドス黒い色の石のようなものが手に収まっていた。

 うわっ、なんか気持ち悪っ。これが魔物を、ねぇ。操った魔物に母体を用意して強くする、みたいな?うえぇ……なんか持ちたくない。

 速攻収納し、カラに顔を向けた。

「撤退撤退、学園に戻りまーす。」
「急すぎない!?今は私がリーダーなんだけどぉ?」
「もう目的は達成したし、いくら探したって見つかりっこないんだから。無駄足踏む必要ないよ。」

『その無駄足を踏ませた人間がよく言うよ』
ギルを飛ばせて戻ってきた私Aが文句を吐いてきた。

 私はBに頼んだんだけど。

『………………………』

 いや黙られても。

「先生っ、待ってくださいよ~!」
なんとなく百合乃を感じた。

—————————

「……っ、はぁ…………」
男は、文字通り目を光らせて眼前の森を見下ろしていた。

「いやぁ……ほんっと邪魔やわー。外野は外野らしく眺めとけっての。」
空中にあぐらを掻くようにして睨みつけ、紫に覆われた森を眺めていた。

「そろそろ………………潰すか?」

 刹那、そこから男が消え去った。

———————————————————————

 申し訳ありません、文字数が全く足りませんでした。おまけのストーリーでもつけましょうかね。

 次回からはちゃんと執筆します。多分、きっと。


 おまけ
「武器とは?」

 とある昼下がり、私は家の庭で戦闘用の武器や能力の使用法の構想を練っていた。

「爆裂魔法……何か爆裂できるような魔法……」

『どこの爆発娘だ。間違っても魔王の幹部の城に撃ち込まないでよ?』

 いや、魔王なんていないでしょこの世界。

「あ、前に全粒粉の小麦粉で粉塵爆発したよね、あれに細工すれば……」
また試行錯誤が必要そうな内容を口走る私は、とりあえず食材生成で小麦粉、と今日の夜ご飯の食材を取り出した。

『食べ物を粗末にするなって習わなかった?』

「まず死んだら食べる食べ物なんてないからいいの。食べるために粗末にするならセーフ。」
謎ワードが誕生した。

「……にんじん、これ武器になるんじゃない?」
うぅむと食材と睨めっこする私の近くから、ゆっくり足音が聞こえてきた。

「主、ご飯?」
「さっき食べたばっかでしょ。」
「まだ入る。」
「まだ食べる気なんだ。」
パスタを2人前食べた子供とは思えない発言だ。改めてツララが「なにしてる?」と聞いてくる。

「いや、戦闘の構想を練ってるんだけど、使えそうなのないかなって。今のできる範囲で。」
「それが、野菜?」
にんじんを手に持つ私は、その先端部分を物質変化で金属に変え、地面に突き刺してみる。

「意外性コスト共に上々、2度手間を省けば……」
「野菜たち、主に捕まったが最後。悔いるといい。」
「そんな言葉どっから覚えてきたの。」
「ユリノ。」
「ちょっとお仕置きをしてこようかな?」
「ですです、お仕置きが必要なのでどうぞ殴ってください。空の硬いのをわたしのこk」
「大根ブロー!」
目の前にいた確認する必要すらない人間に、目の前の大根で強打した。

「うぇぶぇっ!?」
「野菜なめんな!」
大根を肩に乗せ、万引き犯に容赦のない性根逞しい商店街のおばちゃんのように佇む。

『ものすごい限定的』

「野菜も時には武器になるってね。」
「おぉー。」

「何も面白くないですぅ……野菜ってなんなんですか……それってもう武器じゃないです?」
「いや、野菜は野菜じゃない?大根持ってて警察に捕まるわけないし。」
「武器って一体、なんなんです?」

 百合乃が世界の真理に触れてしまった瞬間だった。
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