404 / 681
12章 魔法少女と学園生活
379話 魔法少女は実技練習
しおりを挟む後日談を語ろう。
凶暴な野良犬達に囲まれた私は、ちょっと本気出して羽まで使って殲滅した。
今回は売るとかじゃないから、荒くできたけど……依頼ではやらないようにしよう。
で、その素材……というか死体ごと収納し羽を閉じて何事もなかったかのように帰っていった。もちろんカラには驚かれたけど、「理解が……追いつかない……人間じゃん?」とイズが私の体をペタペタ触ってきたりもした。
こんな感じで、昨日の調査は区切りを迎えた。
そこで思った。
【○○解放】とか【○○展開】とか、かっこいいから欲しいなって。
『なんの感想だそれっ!』
『ふっ、いいところをつくではないか。では、【武装展開】などはどうだ?【銃撃解放】と言いながら連射、面白そうではない……』
『ちょっと黙らない?』
私A~Cが何やら騒いでいる。
そんなことより、今日も授業あるの忘れてない?何するかとかザッとしか考えられてないけど。
『魔力吸収球を使った魔法訓練、ね』
そう。魔法の穴をうまく掻い潜った方法だけどね。コストを抜かせば実践でも役立つと思う。
この授業のために、魔力高速回復を再生創々に統合させてさらに倍近く再生速度を早めたんだから。
「はぁ……あと10分。」
昼休憩、何故か顔パス、更に無料で何個でも買えるサービス付きの私が買った弁当の肉を箸で摘み、息を吐いた。
確かに、他人の魔力を一気に供給し続けたら、体内への魔力の入り口がバカになって魔壊病になるけど、今回の場合「供給」じゃなくて「貸与」って形。
つまり、魔力を中に取り込むんじゃなくて、外で形作ってそのまま、って感じ。
「うまく行くかな……私の実験はうまくいったけど、魔力量とか問題あるかもしれないし。」
ぶつくさと不安をこぼして飯を食う。行儀が悪いったらないけど、ここ3日の過労は看過できないレベルまで達しているので仕方がない。
私に真っ当な仕事をさせるのが間違ってる。しかもこんなプライドの塊みたいなところで、教員免許もなく。
時計を見る。もう時間も危うくなってきてるので、いつの間にか食べ切っていた弁当を収納し、椅子を引いた。
「授業か?苦戦してるみたいだな。」
「アーネールさん……そりゃまぁ。初の試みですから。」
入れ違いに入ってくるアーネールさんに激励され、背中を叩かれる。昨日と同じように。
今日は移動授業。私の謎権限によりあの芝の生えた校庭でやるけど……時間間に合うかな?
「ちょっと急ぐか。」
誰もいないかを確認し、ローブの効果で気配を消す。そのまま走りながら廊下を抜け、教員用の出入り口から魔法少女靴に履き替えて魔力を解除する。と、同時にガーンと鐘が鳴る。
「はい、並んでー!」
授業が始まり、私は独自の魔法練習法を説明した。これは、本来魔法の使えない人達に魔法という経験を積んで欲しいと詭弁を並べた。
感想とかでも、思ってもないことを書くみたいに。それっぽいことを言っておけばいいんだよ。
「一応教科書にある程度詠唱も魔法陣も載ってるから、それをやってもいいし……ちょっと難しいけど、直接魔力を練って好きな形にしてもいい。」
魔力吸収球を配りながら、そう言って回る。
「じゃ、使い方説明するね。と言っても、魔力を流すその逆をやればいいだけだけどね。」
物は試し。球から魔力を抜き取り、それをトールに変換してみる。私はステータスに載ってる魔法以外使えないという制約があるためだ。
「はい、こんな感じ。」
「おぉ」と歓声が上がる。あとは個々に任せることにし、私は監視に徹底することにした。
「あー、こういう授業楽だぁ……」
空を見上げ、ゆるい日差しに目を窄める。
自習って先生も生徒も楽な完璧な時間だよね。私も自習は好きだよ、自習した記憶なんてほとんどないけど。
頭の中で百合乃を召喚し、こちらが課題をその日に終わらせるレベルの人ですと紹介し、私は前々日くらいに徹夜で終わらせる人間だと紹介する。
「先生、楽しそうですわね?」
「そう見える?」
球を片手にそう言ってきたのはリーディ。ツインドリルが今日も決まってる。
「使ってみなよ、魔法。」
「そうですわね…………この魔力、どうなってるんですの?」
眉を顰め、更にこう続けた。
「魔力が混ざらない……だけでなく、空気中に飛散せずに扱いやすい……」
「それは私の魔力だからね。特別性だよ。」
ただ補正操作で細工しただけだけど、嘘も方便だ。そもそも、特別性なことに変わりはない。
「…………ファイアボール。」
指先をピンと伸ばし、杖のようにして魔法陣が魔力によって描かれる。暫しの間空中で静止し、魔法陣の魔力を絞り出すように炎を生み出した。
「すごいですわね……昔、物は試しとやらされた記憶がありますけど、比になりませんわ。」
「飛ばしてみれば?私、受けてあげるから。」
「そんな、流石に魔法を受け止めるなんて……」
「いいからいいから。」
ウインクをし、余裕さをアピール。リーディは諦め、仕方なく射出させた。
「魔法分解。」
触れた瞬間、魔法が粒子となって消えた。
ま、自分より強い魔法は分解できないんだけどね。広範囲となると面倒だし。
「……本当、出鱈目ですわ。」
苦笑するリーディを横目に、「じゃあ他に生徒のところにも行ってくるよ」と手を振った。リーディにだけ贔屓するわけにもいかない。
『十分贔屓してると思うけど?』
という言葉はないものとして扱う。
辺りをキョロキョロと見ると、魔力の捻出に苦労している人や詠唱を頑張って思い出してる人が少々。
「我が手に集いし魔力よ、輪郭を崩しこの世ならざる世界を生み出したまえ。ファントムフィギュア!」
聞きなれない詠唱、聞きなれない魔法。新鮮だ。その言葉と共に放たれる私の魔力が、男子生徒を模って幻影を生み出した。
闇系統の魔法かな?
確かに、属性で闇とか聞くけど実際闇ってなんの属性なんだよって話だよね。こういうのを闇って言うんだよ、きっと。
なら暗黒弓は無属性かな?なんて思いつつ、苦戦している女子生徒に声をかけてみた。「ひゃいっ」と肩を跳ねさせていて、可愛かった。
「せっ、先生……ボクに何か用ですか?」
「いや。苦戦してるみたいだったから。困ってることとかある?」
「魔法ってちょっとよく分からなくて。」
頬を掻いて小さく笑った。魔力の捻出はできてるみたいだけど、形を作るのに四苦八苦してる。
「無詠唱っていうのはまぁ想像力強化って思ってもらえればいいけど……まずは魔法陣を描いてみるとか、詠唱してみるとか。魔法陣は覚えるのが難しいけど慣れると早いし、詠唱は簡単だけど長い。どっちが合う?」
「つまり……?」
「んー、まずは詠唱でやってみようか?」
魔法少女特別版、ではなく普通の詠唱だ。教科書を適当にペラペラし、これをやってみて?と指を差した。
「水流魔法……これって難しいやつなんじゃないですか?ボク、無理ですよ……」
「大丈夫、魔力はあるんだから。」
目を細めて本当に大丈夫なのか疑いの視線を向けてきた。
「手に集う魔力よ、流れ落ちる水よ、1枚の刃となり顕現せよ。吹き荒れる飛沫により刻まれろ。水刃?」
「はい、それをこっちに。」
手から水が溢れ出し、戸惑った様子でそれを見る。どんどん質量を増していき、巨大な刃となった。
制御法とか分からないだろうし、何もしなくてももうじき飛んでくるだろうけど。
「ごめんなさいっ、止められませんっ!」
「分解。」
飛んでくる刃を受け止め、いい魔法だねと褒めておいた。
『魔法の良し悪しなんて分かるの?』
うるさい、なんとなくでいいんだよ。
立ち去りながら、小言を吐く私にそう返した。
その後、他の生徒から魔法だけの決闘を何故か申し込まれ、手加減したら勝てるかもとか思われて複数人で攻められたり(もちろんボコボコにした)、火が芝生についたりと色々あった(再生創々でなんとか治した)。
そしてようやく終業のチャイムが鳴り、疲れを吐き出すように息を吐いた。
「はい、じゃあまた次の授業で。」
教員室がやけに遠く感じた。
———————————————————————
授業シーンはあんまり多くなくてもいいかなと思ってます。なのでそろそろ授業はおしまいにしてもいいんじゃないでしょうか。
そもそも本題は先生じゃなくて調査ですし。本業を怠りまくってますし、今。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!
矢立まほろ
ファンタジー
大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。
彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。
そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。
転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。
しかし、そこには大きな罠が隠されていた。
ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。
それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。
どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。
それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。
果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。
可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。
すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。
「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」
お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」
「だいじょうぶ?」
「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」
「ええ!?」
巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!
ピンクの髪のオバサン異世界に行く
拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。
このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる
ファンタスティック小説家
ファンタジー
モンスター使役学を100年単位で進めたとされる偉大な怪物学者の孫アルバート・アダンは″天才″と呼ばれていた。将来を有望な魔術師として見込まれ、大貴族で幼馴染の可憐なる令嬢を許嫁としていた。
しかし、おおくの魔術師に期待されていたアルバートは【観察記録】という、「動物の生態を詳しく観察する」だけの極めて用途の少ない″外れスキル″を先代から受け継いでしまう。それにより周囲の評価は一変した。
「もうアダン家から実績は見込めない」
「二代続いて無能が生まれた」
「劣等な血に価値はない」
アルバートは幼馴染との婚約も無かったことにされ、さらに神秘研究における最高権威:魔術協会からも追放されてしまう。こうして魔術家アダンは、力をうしない没落と破滅の運命をたどることになった。
──だがこの時、誰も気がついていなかった。アルバートの【観察記録】は故人の残した最強スキルだということを。【観察記録】の秘められた可能性に気がついたアルバートは、最強の怪物学者としてすさまじい早さで魔術世界を成り上がっていくことになる。
ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~
アオイソラ
ファンタジー
おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)
ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!
転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!
プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。
「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」
えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ!
「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」
顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。
「助けてくれ…」
おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!
一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。
イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!
北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚!
※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️
「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる