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12章 魔法少女と学園生活
378話 魔法少女は調査に出る
しおりを挟む陽キャの園に迷い込み、死ぬように眠った私は今日も今日とても授業を終わらせ、虚な目で教員室の椅子に座る。
「2日目からその調子じゃあ、明日には干からびるな。」
アーネールさんがそう言い、笑い始めた。何も笑い話じゃないんだけど。
なんで異世界にまで来て学校で働かなきゃいけないの?私は世界のために何かしたいとか、困ってる人々を救いたいとか殊勝な考えをする人間じゃないよ。
学校の勉強なんて将来毛ほども役に立たないでしょと思ってたら女子高校生ぞ?私。
『疲れすぎて言葉遣い変わってるよ』
そんな私の言葉にいちいち反応する気力もなかった。
『これから調査に出るっていうのに、それで大丈夫?私変わろっか?』
『やめといた方がいい。調子づかせると大変だから』
『ふふっ、ここは私がやってもいいのだよ?』
くつくつと怪しげな笑いを漏らす厨二な私。いっそ託してみるのもいいかもしれない。
……いやよくないよくない!あんな人のいる中で厨二病炸裂したらもう2度と学園に行けなくなる。
『そりゃそうだ』
あっ、そういえば分離思考の私達、適当に『私』で統一してるけど個別で名前決めない?
『え、めんどくさい。というか私のネーミングセンスは私でも疑ってるから』
酷っ!それでも私?
『何回この会話するの』
私の態度が改まるまで……ってそれ、私が性格変えろってことじゃん。
『ふっ』
ようやく気づいたかと言わんばかりの嘲笑。しかしその提案がなかったと言うことは私もまた同じということだ。
じゃあここは、(仮)の名前をつけよう。
ということで順に私A(仮)私B(仮)私C(仮)私D(仮)ね。
『『『『ちょっと待てや!』』』』
仕方ない仕方ない。みんなに体でもあったら名前つけてあげるから。
じゃ、私は調査に行かないとだから~。
『ちょっ、聞け……っ……結局体は同じなんだから意味ないでしょ』
『仕方ないよ~?今の私、やばい~!』
確かにやばい。今の私は血走った目で階段を上っていた。寝不足?いや、休息不足。
まぁ、魔物でも倒せば眠気覚ましになるでしょ。スカッと爽快、魔法少女ホームランを見せてあげよう。
『ほんとに、再生ったほうがいいんじゃ?』
『そうだね』
ちょっと体が楽になった気がする。肩の重荷からも解放され、いつの間にかについていたB班の部屋に入る。
「お邪魔しまーす。」
「はろはろ~、先生!」
「昨日ぶりじゃん?今日もよろー。」
カラとイズがこっちに目を向けて、挨拶をしてくる。この休憩部屋には6人しかいないのに疑問を持ちながら、椅子を引いて座る。
「オスター達は研究室の整備に行ってます。私達は先生が来るのを待っていたんです。」
「……えーっと……ごめん、名前が。」
「チサリーです。」
「チサリーね、覚えた。色々ごめんね。じゃあ行く?場所とか決まってたらついてくよ。」
席を立ち、チサリーがオスターの場所を言った時に視線を向けた扉を見た。
あそこ、研究室の入り口だったんだ。倉庫かと思ってた。
「学園には特別に外に出られる通路があるんだけどね、今回はそこから西側に行ってみようかなって。」
「まずは偵察が大事だし。先生も、それでいいじゃん?」
「生徒達の意見にはなるべく口出ししないよ。それでいいなら私もそれに従う。」
両手を上げ、無抵抗の意思を伝える。従順な魔法少女だ。
「僕も異論はないよー。君たちがいいなら僕はついてくだけ。」
「自分の意思くらい見せたらどう?」
「ツキはキッチリしすぎ。肩の力を抜かないといつか限界が来るよー。」
「そうそー、ボクもムダに文句を吐いたりなんかしないね。」
「文句を言わないのはいいことだけど、女子に面倒ごと押し付けてない~?」
「「「いやいや、そんなことは。」」」
コントのような息の合いよう。このチームは、女子のがしっかりしてる感じだ。
「じゃあ行こう。私はみんなに合わせるから。」
ところ変わって森の西側。
そこまで行く途中、今回の調査概要を知らされることとなった。
まずある程度遠くまで行き、異常のある場所とそうでないところの線引き。そしてそれぞれの植物や土壌、空気や魔力、魔物の素材といったものを回収し研究チームに引き渡すという。
植物方面はアンディルとユウキの持ち場らしく、違和感の察知をツキ、魔力関連をカラとイズが。チサリーは観察しメモを取りまとめる役。
「で、消去法だと私1人で魔物になると思うんだけどそこは間違いない?」
「駄目でしたか?」
「いや、余裕ではあるけど。1人行動しちゃっていいの?」
保護者的な立場の私がと思ったけど、従うと言ったのは私なのでその通りにする。
「じゃあ1人、ついていってあげて。できれば女子がいいけど……いないなら私やるよ。」
「なら、私でいいんじゃん?カラ、1人でできるっしょー?」
「オッケー。なら、付き添いとしてイズを行かせるね。いい?」
「私としては別に文句はないけど。」
ちょっと眉を歪めた。そんな感じだと、なんか私が子供側みたいで嫌だとは言えなかった。
私が付き添われてる感すごくない?
身長の問題は、どうにも解決の道は見当たらなかった。神を殺した私でもそれは不可能な道なのだ。
「じゃあ、一旦この辺で。」
「ボクらはこの辺で草むしってるね。」
「じゃまた。」
「気をつけて行くんだよ?もし何かあったら絶対助け呼んで。文字通り飛んで助けに行くから。」
みんなから「子供じゃないんだから、先生」と笑われ、いやこの辺気配結構多いんだよね……と心で苦笑いをする。
私AとB、死神さんの用意とギルの用意を。他の5人守っておいて
『『了解』』
Cはいつも通り危険があれば好きに魔法を、Dはスキルの管理を。
『ふっ、久々の心踊る戦闘ッ』
『はいはいーい!』
元気な返事を頭で聞き遂げ、「行こっか」とイズに目を配る。
「りょー。」
緩んだ感じの目は、ラノベにいそうな常にスマホいじってる系のふわふわギャルを連想させた。
こういう系のギャルって実際いるのかな。そもそもギャルという存在をこの目に入れたことがない。いや、あるかもしれない。駅とかで。
なんて考えつつ、魔物と遭遇することなく数分歩いた。途中『———っ!』と何かノイズのような音が聞こえた気がするけど……
『ノイズじゃない~!』
『私っ、馬鹿っ!囲まれてる!ギルで数減らしてるけど、さすがに弾が保たないっ』
「えっ!?」
「じゃん?」
私の驚きで驚くイズの声が可愛く、緊張が緩まった。
じゃない!
まじで何やってんの私!いやっ、いくらなんでも勘鈍り過ぎでしょ。
私達に頼りすぎてた弊害がここに……
今までは自分で全部警戒して神経摩耗させてたけど……今度は別の意味で摩耗するよ!
「魔物に囲まれた。……数は、多分20前後。突破はできるけど……ごめん、慣れない仕事で気抜きすぎた。」
「ん、うん……え?20じゃん?突破できんの?」
「え、まぁ余裕っちゃ余裕、かな?」
硬直するイズを仕方なくお姫様抱っこし、跳躍。そのまま空中歩行で空に足をつき、把握する。
23匹。私、ほんとにやばいかも。
自分の不甲斐なさに唇を噛み、腰に刺したステッキに魔力を送った。
「とりあえず、逃げられたら面倒だから……」
小さく息を吐き、集中し威力を最低限にする。
「ファイボルト。」
雫を落とすように、丁寧に。そして爆破。音に引き寄せられた魔物達は、ご丁寧に全員揃っていた。
「わんころが23匹、どうってことない。」
「ブラックケルベロス……!色付きじゃん?色付きは、通常より全部桁違い。これが活性化じゃん?」
イズは抱えられた状況でも思考を働かせた。これが選ばれた人の実力か。
「逃げるじゃん!これは、私が入ってもどーにもなんない。」
「それは遠慮しとくよ。」
「じゃんっ!?」
返答と行動、それぞれに驚く。地面と衝突するように私は空を蹴った。
「精霊解放!龍化!」
イズを守りながら抗戦とかめんど……大変だから、ちょっと荒っぽくすることにした。私の背から一対の羽が生え、魔力を暴走させる。簡易身体強化だ。
「トール、流星光槍、暗黒弓っ!」
地面すら通して雷が拡散され、動きを封じる。そのまま四方八方に槍が放たれ、トドメに矢を刺す。
「じゃぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」
イズは、絶叫した。
———————————————————————
今回の調査はこれにて。
今回は空の実力を少しだけ示し、次回はまた普通に教師します。
イズを前に羽を開くのはどうなのか?と思われるかもしれませんがいいんです。何せこの世界は私の手によって改変できるので、都合よく記憶を消すことができるのです。
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