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12章 魔法少女と学園生活
376話 魔法少女は手伝う
しおりを挟む「あ゛ぁぁ……疲れた。死ぬ、過労死する……」
1日授業を終了させ、私は教員室の椅子にもたれかかり、仰向けに寝るように脱力した。
「初にしてはなかなか良かったんじゃないか?」
笑いながらアーネールさんがやってきて、部下への労いだと言って飲み物をもらった。学食があるからそこから買ってきたとのこと。
この後に本番があるんだよね……あぁー、先生なんて辞めたい!元の自由な生活に、戻りたいっ!
この1日でだいぶストレスが溜まった私は、心でそうぶちまける。
「優秀な者は辛いな。」
「どうも。それなら優秀じゃなくていいから帰りたいんですけどね。」
「そう言うな。リーデリアには気に入られたんじゃないか?」
「だといいですけど。」
冷えたジュースを一気飲みする。まるで仕事上がりのビールを飲む会社員のように、それはもう豪快にぐいっと。
くぅ~、うまいっ!他人のお金で飲むジュースは美味しい!でもテレスさんのカフェのクリームソーダを飲みたい!アイスを、甘味をっ!
それでもないよりかはマシだ。
私はCMのようにプハーと息を吐き、「いい飲みっぷりだ」と褒められる。どこで褒められているのやら。
「先生って、こんな大変なんですね……」
「いくら働いても残業代などでないからな。いかに業務時間内に終わらせられるかだ。給料は年数によって決められているから、最初のうちは苦労ばかりだ。」
私の椅子に腰をつき、片手に私と同じ飲み物を持ち煽った。これまた仕事上がりの一杯を堪能するように笑みをこぼす。
「それじゃ……私はこれから高等部3年の課題を手伝いに行ってきますよ。魔力活性化について私を手伝いに指名するとか、国王頭大丈夫なんですか?」
「不敬罪で首が飛んでも知らないぞ?」
「新任教師の戯言ですよ。」
泥のようにこのまま熟睡したい衝動を抑え、私は立ち上がり地図を確認する。
「卒業論文か。未来ある若者の視点を取り入れ、問題解決に近づけさせる。若者の育成もでき、場合によれば解決もできる。国にとってはいいことづくしだな。」
「その分私が苦労する羽目になるのは除いて、ですね。」
「各班に別れている。その全て、ではないだろう?確か今年の高等部3年の人数は150強だったか?それで10班ということは、約15人程度か。」
愚痴は無視され、まぁ頑張れと背を叩かれる。
私は学級と同じB班を受け持つことになってるけど……このままじゃほんとに過労死あり得るね。私には耐性がない。
倒れてからじゃ遅いんだよ!
『未成年に公務員をやらせるな!法律違反だ!』
『時間外労働反対っ!』
『子供をなんだと思ってる~!』
『もっと心の踊るような、楽しい仕事を持ってくるがいい!』
なんか1人違うの混じってるけど、私達の心が一丸となり反旗を翻さんとする。………する。
実行に移せないのも現状かぁ……
いっそ王都を炎の海に変えてやろうかと思案し、いやいやと頭を振る。
いつの間にか階段を上り終え、研究室〈B班〉と書かれた部屋の前で大きく息を吸う。
そしてノックを1つ。
「失礼しまーす。手伝いで来ました~。」
扉を開けると、何かに途中で阻まれる。紙束だ。床に紙が散乱してる。
「まずどこから探るかからの会議だけど……危険と時間を犯して誰も行かない奥地に進むか、安牌をとって近隣でとどめるか。他に案は?」
「僕らは特別手当で授業免除もあることだし、泊まりで行けばいいんじゃないかな?」
「それだと大所帯になりすぎるし、第一それだけ穴が開けば……」
「半分に分ければいいんじゃないかな?授業も内容を教え合って。」
「いいチームワーク作りにはもってこいね!それでいいんじゃないかしら?」
会議は躍る。私の声は全く耳に入ってないようだ。向こうの声は、ガンガン耳をぶち抜いてるというのに。
おぉ……これが高校3年生。一応私より年上だよね、みんな。
「あ……なんかいるよ。」
「ほんとだ。」
「下級生か?部屋を間違えたんじゃないの?」
なんてことでしょう。制服を着ているというのに、学園の下級生だと間違われてしまいました。
この身長に産んだあの母親が恨めしい。
何から何まで気に食わない、あのゴミ。粗大ゴミにも出せないよ。自殺したし。
『急なグロはやめて』
どこがさ。
脳内はいつも通りテンション高い。反して緊張気味に部屋に入る私。それを見て訝しそうにする部屋の人達。
ざっと14人かな。
「君、部屋を間違えて……」
「ないから安心して?」
と、先手を打ち黙らせた。
「ノックしたんだけど……まぁいいや。ってか、先生の服装ぐらい覚えたらどうなの?」
「……はぁ。」
上から下、懐疑の視線をぶつけてくる。
「ねーオスター、その子ん服魔導着じゃん?ってことはさー、その子学園の教師なんじゃん?」
「確かに……イズの言う通りかもしれないね。……入って、狭いけど我慢して欲しい。」
~じゃんが口癖そうなギャルっぽい女の子の口添えにより、私はなんとか入室許可が降りた。ギャル様々だ。
「イズさん?かな。イズさんの言う通り、私は今日入ってきた教師。……え、学長の挨拶見てなかったとかないよね?」
「高等部3年は基本的に自由だから……授業にある一定以上参加していれば基本OKなんだよ。」
「つまり……」
「研究に没頭して。」
と言って頭を掻き、魔導ボード的なものに目を移した。
「じゃあ、私が来ることは知らなかったの?国王からの勅命が知らされないとかないだろうし。」
「ねね、これのことかな?この紙。」
優しそうな目をした眼鏡っ子。床に散らばる紙を1枚拾い、みんなに見せる。
〈本年度卒業論文について〉
「昨年度と同じよう、問題の解決に全力を投じること。根本的解決に至らずとも、仮定や予測、私的思考を重要とする。そのため、結論の正否に大きく左右はされない。
10班に分別し、各チームごと1つの論文を書き上げること。B班には、国王勅命として特別教師を派遣する。
本題は魔力活性化について。
是非、解決されることを願う」(一部抜粋)
飛ばし飛ばし読むと、こんな感じの文が書いてあった。しっかり、特別教師と書いてある。
「これ、読んだ覚えある人ー。」
14人。真面目な顔で微動だにしない。
「あはは~なんか、うちらがごめんねー。」
「まぁ、そういうことだから。」
「でも、それ大丈夫?僕ら、有利になるんじゃないの?」
「論文には一切手をつけないし、それも考慮に入れるでしょ。多分、難易度は上がるんじゃない?」
「「「「「え。」」」」」
14人、別作業してた人も固まった。そりゃそうだ。ただでさえ難易度極高の卒業試験で、難易度上がる宣言をしたんだから。
「…………はぁ……」
「「「「ゴーホームっ!ターンライトっ!」」」」
口々に帰れ帰れと帰れコールを告げてくる。
「私だって来たくて来たんじゃないよ。あと、私が帰ったところで難易度はもっと上がると思うよ?多分ここ、B班でマジで魔力活性化について解決しようとしてるし。」
「…………」
黙りこくり、最初に対応してきたリーダ格らしき男の子が頭を抱える。
「とりあえず、自己紹介でもするか。」
そう口火を切った。
ここの班は14人。男子8人女子6人の組み合わせだから、私入れて8対7。まぁちょうどいい。
家名は省くけど、リーダー格のオスター。ジステ、アンディル、ワードルフ、ルルグス、ツキ、ユウキ、レドラー。それに私のことを教師と見抜いたイズ、眼鏡っ子のチサリー、コミュ力高めのカラ、エイリ、イーゼリーア。絶対偽名だろうけど、エンテイ。
ちょっと顔と声と名前が全く一致しないんだけど。
「ま、まぁよろしく?」
ということで、私はB班の特別教師となった。
———————————————————————
キャラ名考えるのって、難しいですね。14人もキャラの名前を1度に考えるとか面倒の極みです。
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