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12章 魔法少女と学園生活

370話 魔法少女は見て回る

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 寮に入り翌日。ベットは柔らかく、とてもぐっすり寝られたのは幸いだった。

 あー……お腹空いた。
 学園での食事ってどんな感じだろう。ってか今日の日程って分からないのかな?気になる。

 ぼやっとした思考では何も考えられないのは目に見えているので、さっさと着替えて1番下の階の洗面所を借りて顔を洗う。もちろん下着代わりの魔法少女服は着用。

 ちなみに寮の階数はだいぶ高い。部屋数も1階につき多い。多分私の部屋は、前に辞めた人の部屋だと思う。

「おう、起きたかソラ。服、似合っているぞ。それと、そうだ。学園の教師であるなら、遅刻は許されないぞ?」
「……まさか、遅刻でした?」
「?いや、大丈夫だぞ?まぁ、ただの先輩からの忠言だと思ってくれ。」
食堂に着くと、アーネールさんが待ち構えており、トレイを机に置いていた。ほかほかの朝食だ。私は、一目散に受け取りに行き、手招きをする彼女の前に座る。

「今日は私が案内をしてやろう。校内に生徒はいないから、存分に見て回ろう。」
スプーンで薄味のスープを啜る。この世界の野菜は、魔力が混じってて日本のものより少し上レベルに品質が高い。美味しい。

 魔力って万能だね。日本にもその制度を導入してほしいんだけど、検討してくれない?

 心でそう独りごつ。

「寮の飯はどうだ?旨かろうが、肉が足りないんだ。わたしのような戦闘特化の人間には、肉がないと体を作れないというのに……そこのところを分かっていない。」
「美味しいからいいじゃないですか。肉なんて買って厨房借りて作ればいいでしょう。ん、パン硬い……あ、つけて食べる用か。なるほど。」
何か心の声が混じった気がするけど、美味しく食べて水で流す。美味しいものは全てを解決するのだ。

 今更だけど、私に敬語って似合わなくない?そもそも敬語かどうかも怪しい。
 中学校で習って以来あんまり習う機会も使う機会もなかったし……

 あれ?義務教育って案外重要?

 義務教育の重要性に気づいた私とは裏腹に、アーネールさんはご飯を食べる手が止まっていた。

「自分で、作る……だと?」
「え、と……何か不味かったですか?」
正気を疑われてる目をしてる。まさか厨房は使用禁止とか?と思い、その形相に内心焦りを覚えた。

「作るとは、なんだ?そもそも肉とはどう焼けばいい?調理法など知らんぞ?」
「そこ?」
本音がポロリとこぼれ落ちた。

「買ってきて貰えば、作れますけど?今度作りましょうか?」
「なんだとっ!この寮で好きに肉を食えるのか?」
「買ってきてくださればですからね!?」
「分かっている。では、早速買いに……」
「行かないの、アーネールさん。」
突如柔らかな声音が響き、トンと音がした。顔を上げると、童顔でありながらオーラを感じる女性が立っていた。

「べアサルト学長……」
「え?学長?」

「あぁ……あなたがアングランド国王陛下の推薦で入れられた講師ですか……お若いですね。年齢は?」
混乱冷めやらぬ中、質問を降り注がれる。

「あっ、えっと……美水空、17です。次の春に18になります。」
「ソラさんね。高等部2年と言いますと、同年代の方が多いでしょうね。舐められないでくださいね。その場合、生徒の皆が困りますので。」
「え、あ、はい。」
ちょっと意味を汲み取れなかったけど、すぐに去っていったので尋ねることはできなかった。

 今の、学長……
 脚長いしまつ毛も長かったなぁ……顔は可愛かったけど。

「今の、学長ですか?」
「そうだな。表向きには国王様がトップだが、自らが学園を仕切るというのは難しいからな。実際には彼女が学園の中核を担っている。」
同じ寮ということに驚きを抱きつつ、食べ終えた朝食のトレイを片付けた。アーネールさんは「少し待っていてくれ」と取りこぼしたスプーンを再び手に戻した。

 ま、今日は異世界の学校探検に興じるとしましょうか。何か発見とかあるかもだし。

 そう思いつつ、アーネールさんの食事を見守った。

「できれば見ないで欲しいんだが。」
そう言われてしまった。


「さて、準備はできたか?」
紅色のコートのようなものを羽織り、ブローチで止めて出てきたアーネールさん。よく見てみると、似ているようで違う服だと分かった。

「案内しようか。校舎までなかなか遠いが、外から通うよりかはマシだろう。行くぞ。」
「あ、はい。」
歩行用通路を通り、簡素な芝生の横を通る。土汚れがついているので、何か練習してるんだろうか。

 っと、早速万能感知に引っかかった。

『弱い魔力。ま、ただの生徒でしょ』

 私が気配の方に目を向けていると、アーネールさんが「ん」と喉を鳴らした。

「気づいたのか?」
「まぁ、気配は分かるんで。」
「毎日朝、トレーニングしている生粋の努力人がいるんだ。今日も剣を振ってるようだな。顔を出すか?」
「……んまぁ、邪魔しないほうがいいと思うし、やめとこうかな。」
「そうか。」
会話が止まった。困った。

 こういう時の話題なんて持ち合わせてないんだよ、私は。そもそもそんなに話をする友達が多いと言うと、そこまで多くない。

 そこそこに長い道のりを歩き、早くこの空気を破りたいと願った。

 そしてそれは意外にすぐ叶った。

「ソラは冒険者だったな。何か討伐した魔物などはいるか?ここにいると近辺の魔物を相手にすることしかできなくてな。」
「逆に魔物って学園でも戦えるんですね。」
「それはそうだろう。実技試験で使うこともある。」
額に手を置き、はぁと息をこぼした。

「実力に合った魔物ならいいが……」
「私はどちらかというと大きい依頼ばっか受けてたので、種類とか知らないんですけど……まぁ龍は見たことあります。」
「龍か!?」
首がねじ切れるのかってほどのスピードで回転し、私の肩を掴んだ。そしてブンブンと振る。

「強さはどうだった!どんな能力があった?腕力は!?見た目は!?」
「知りません知りません!ちょっ、やめて!」
「………失礼した。」
ズレた服を整え、今度こそ学園に向かった。

 龍ってそんなに反応示すものなのかな。まぁロマンといえばロマン?

 ようやく目の前に学園が見えてきた。

「まぁ学園内に特に見ておくべきことなんてない。普通に教室や特別教室があるだけだ。」
「それをアーネールさんが言っちゃっていいんですか?」
「不敬に当たるわけでもない。別にいいだろう。一介の教師の戯言だ。」
巨大な入り口を入り、1階から順に回っていくことになった。本当に特筆したところはなく、普通にすごいなぁ程度に思えた。

 部屋数が多い、特別室がマジで特別、広い綺麗近代的。そのくらい?多分先生してるうちに慣れてくるんじゃないかと思う。
 あと、魔導具が多かった印象。

「この服装で学園にいると、ほんとに先生になって見える……服装マジック。」
「ソラはもう学園の教師として確立している。書類上、だがな。」
そう言ってくつくつと笑みをこぼすアーネールさんと、これってバレたら……いや、国王が偽造してるやつだし……と、不安に思う私。

「では、学園が始まるでは寮でゆっくりしておけ。」
「あ、はい。」
「少々暇かもしれんが、耐えられんのなら遊んでやる。わたしは剣でも振ってこよう。」
なんという自由奔放さ。まぁこれは異世界なんだから仕方ない。

 そんな規律社会でもないだろうし。あの国王が堅っ苦しいルールとか作りそうにない。

 とりあえずこのあとはどうしようかと迷いながら、重力魔法とかスキルアップに力を入れることにした。

 銃の腕とか、私クソ雑魚だから。予測線としての空間伸縮なしでも撃てるようにならないと……

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 次回から本格的に先生になる空。同年代の学生に何を教えられるかと言われても、適当に魔法見せるぐらいしかない現状です。

 空に授業能力はあるんでしょうか。
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