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12章 魔法少女と学園生活
362話 魔法少女は総騎士長と会う
しおりを挟む「ゆ、百合乃が私に勝つのには1年くらい早いよ。出直して。」
「空ぁ……やっと、やっと会えましたぁ……どこ行ってたんですぅ……?」
どこか会話が成立してない気もするけど、私は回復させた百合乃を立ち上がらせる。ちなみに、すぐに首に手を回して抱きついてきた。
暑苦しぃ……というか痛い。首に腕がグイグイ食い込んでる。
この攻撃力……転移石なかったら確実に手間取ったね。
「あの、そろそろいいですか?お取り込みの最中申し訳ないですが。」
「ん?どうしたの?」
「その、ソラに抱きついてる女の子は……?」
「あぁ……百合乃のこと?」
私はまとわりつく百合乃を引き離しつつ、ナリアの問いに答えた。頭を動物みたいにグリグリ押し付けてくる百合乃を見て、顔を引き攣らせる。
いい加減離れてほしいんだけど。これ、1、2発殴っても許されるよね。
いつの間にか背後に移動していた百合乃に、裏拳してやろうと思い拳を握ると。
「可愛い空に羽が……本当にファンタジーですね……いや、空の可愛さがファンタg」
「うっさい。」
そろそろ我慢の限界がきたので、額に向かって拳をゴー。「へぶっ!」と後ろに倒れ、シュッと今度こそ取り憑かれないように身構えた。
「そういえばお前、まだ羽ついてんだな。それ取れねぇのか?」
背中を指差して、ギリシスが言った。
その前にもっとツッコむべきところあるでしょ、ってそれを私が言っちゃあおしまいな気がする。
百合乃をスルーできるとはスルースキル高いね。やるな、ギリシス。
「どうだろ、なんかふんってやったら……あ、できた。」
「早ぇよできるの。」
「これ出し入れも出来るタイプの羽だ。収納機能がついてるとかラッキー。これ以上装飾増やされたらたまったもんじゃないよ。」
羽が粒子になって消えたり、逆に集まって出てきたり、ちょっと楽しくなってくる。
「それも興味あるけど、今1番するべき話は……そこのユリノちゃんだっけ?じゃないかと僕は思うけど、今なんの話してるの。」
「アズベル、諦めましょう。あれはああいう生き物だから。」
「私をノリで生きてる人間みたいに言わないで欲しい、心外だよ。ギリシスほど腐ってないよ。」
「んだと?お前刻まれてぇみてぇだな。」
「目だけじゃなく心まで腐ってるとは……さすがギリシス、やるね!」
「なんの自慢にもならねぇよ!」
「ねぇ、これわたしどうすればいい系です?」
さっきまで変人扱いだったはずの百合乃が、今は変人を見る目で4人を見る。ナリアとアズベルは、無関係を装っている。
『というか、ギリシス以外さっさと説明しろって空気出てるよ。早くして』
「……はぁ、紹介すればいいんでしょ?」
半ば自分に返事をする形で呟く。ギリシスとの口論を切り上げ、澄まし顔で一言。
「こちら百合乃。私の友達。」
「百合乃です。空のk」
「ん?」
「子供の頃からの友達デス。」
「今の間は聞かなかったことにした方がいいやつか……?」
「あれは僕たちの知る必要のない女の闇だよ。」
検討はずれの感想を述べる2人はさておいて、ナリアはまだ納得していないようだ。
「その格好のこととか、どうしてソラと互角に戦えているのかとか、聞きたいことは山ほどあるけど……まずどうしてここが?」
「勘です。こう、ビビッと。」
「……聞いた私が馬鹿でした。」
「安心して、百合乃ってこういう人だから。」
また抱きつこうとする百合乃に回し蹴りを喰らわせ、首根っこを捕まえて顎で王都の方向を指す。左手はないからね。
早くしないと私の安眠が脅かされる。久しぶりの魔力、でも一気に色々終わった気がして……なんかどっと疲れた。
『まだ終わってないでしょ、報告とか諸々』
そんな興醒めなことを言う私の言葉は聞き流す。
まぁ実際着いたら騎士かなんかに連れてかれそうだけど。
「じゃ、行こっか。」
4人改め、5人はそれぞれのペースで森の道を進んでいった。
日も高くなり始め、お腹と相談した結果ここで昼食タイムとなった。
ここならば食材生成も働くので美味な料理を頂こう。腕を振るうのはもちろん百合乃。
再現飯の私より女子力がオーバーヒートしてバグった結果みたいな百合乃に任せた方が賢明だよ。
『何気に酷いな』
「何作ろっかなぁ~。」
私が調理器具を出している間、百合乃は楽しそうに料理を考えている。ギリシス達はと言われたら、剣の練習と答えられた。
いつまでもどこまでも剣剣剣剣……病気だね。
「米とかないんです?」
「この辺稲作やってないみたいでさぁ……私も挑戦はしてるんだけど、謎のご都合主義で米が出ないんだよね。」
「神様が何かしてるんじゃないです?知りませんけど。」
「可能性ある。」
私の米を代わりに神が食ってるところを想像すると、無性に腹が立ってくる。
「スープパスタとかどうです?いけません?」
「お、それいいね。」
「それじゃあ作っていくので具材をお願いします。」
「言ってもらわないと分からないんだけど。」
「そこは、ほら……思念伝達的なものです。」
「ないよそんなもの。」
という軽いギャグの後、多大なる魔力を使い具材を生成した。出来るだけ質の良い。
質の良い料理には質の良い具材を。美味しい料理の基本だよ。知らないけど。
パスタと、オリーブ……なんてものは作れないので代用となるオイル、にんにく、玉ねぎ、アスパラ、きのこ、ベーコンetc……
結構な量の具材を出した。
「そういえば、醒華閃っていう技があるらしいんだけど、頑張れば百合乃も使えるんじゃない?」
「なんです?それ。なんだかかっこいいです。」
器用に具材を切りながら会話をする。
「型を完璧にした時、剣への想いと集中とかでどっかのラノベみたいな技ができるらしい。」
「ほぉ……あ、炒めるので火ください。」
「ん、オッケー。」
ファイボルトに魔法分解をかけて炎だけを残した。それを鍋にかけて具材を入れ、5人分に火を通していく。
音だけでお腹が空いてくる。
野菜ばっか食べてたからか、炭水化物が恋しいんだよね。特に米。米食べたい。
しかしその願いは誰にも届かなかった。
そしていつの間にか入っていたコンソメ(百合乃が事前にスペアの更にスペアに仕込んでたらしい)と水を加え、沸騰させていく。
なんでコンソメの作り方とか知ってるの?怖いんだけど。市販にコンソメなんて売ってるじゃん、なんで知ってるの?
というツッコミは無粋だろう。きっとそうだ。歯車が噛み合ってないからだ。
良い匂いが漂ってくる。時折聞こえてきたカンッ、カンッという打ち合いの音はもう失せ、こっちに気配が迫っていた。
「パスタは……まぁ市販のがあるのでそれを使います。」
「市販って何?ってか私のステッキもう万能ボックスじゃん。」
生地の質的に多分テレスさんのものだと思う。それを茹でていき、チーズ、塩胡椒で味を整え完成された。
うーん、食材生成のスキル、もっとあげようかな。
食は原動力だ。幸せだ。それを掴むために、多少の損失は仕方ないんだ。
『そこまで食にこだわるタイプだっけ?』
「はーい、完成しましたよ。皆さんで食べしょう。」
5人分と中々な量なので大きめの鍋だ。それを百合乃が取り分けて配っていく。
「ん、普通に美味しい。」
「そりゃあ美味しく作ってるんだから美味しいに決まってますよ。」
私の食レポ(笑)の後、3人もポツポツ「美味しい」と言葉が聞こえてくる。
「そういうのでいいんです。作り甲斐があります。1番はロアちゃんとサキちゃんですけど。」
「私はどこに行ったー?」
「作り甲斐はありませんけど好きなので大丈夫です。」
何が大丈夫か分からないかど、スープパスタは美味しいし大丈夫だ。スープパスタは順調に食べ終え、魔法で洗浄ししゅうのうした。そして王都へと向かう。満腹で満足だ。
「とうとう見えてきたな、王都。」
「だねぇ。あのでっかい門も見るのも久しぶり。」
ここまで来ると、もういっそ捕まえてくれとそういう思考が生まれ始める。それが進むたびに王都は近づき、とうとう目の前まで来てしまった。
「……なんか、ガヤガヤしてるね。」
「です。」
「あれは……中位騎士の精鋭……?でしょうか。一級騎士もちらほらと……」
「それ、凄ぇのか?」
「騎士団の中でも上位、って感じじゃない?」
警戒しつつも、悪魔騒ぎで駆り出されたとでも思って門を潜ろうとする。少し躊躇しながら門番に身分証を提示すると、案の定騎士を呼ばれた。ぞろぞろと。
もっと低位な騎士じゃないの?冒険者を見つけるための騎士なんだからさ。
なんて、特に何も考えず首を回して辺りを見ると、真ん中に明らかにオーラの違う男が立っていた。周りが鎧を着込む中、そんなものなどいらないと言わんばかりの筋骨隆々とした姿。
右手がすぐにステッキに触れられる位置どりをし、細目で見据える。
「そう警戒するな、お嬢さん。私は、ただ娘を心配して捜索に出る心配性な父親だ。」
「お父、様……?」
ナリアの目が、大きく開かれ震えていた。私は咄嗟にステッキを振り抜くと、金属音が1つ鳴った。
———————————————————————
定期的に言っていることですが、ここに書くことが全くありません。しいてあげるとするならば、右頬の表情筋が痛いです。
いやなんでやね~ん……はぁ。
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