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11章 魔法少女と精霊の森

346話 魔法少女は阻まれる

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 ベール可愛すぎ事件は解決に向かわない中、石部屋の先に道が出現していた。
 あれを進めばいいのかなと思い、周囲を見渡し奥に入った。

「ここからはちょっとした試練みたいよね?」
「そうだね。単純なのがいいんだけど……見てた感じなら、大丈夫なはず……?」
そう言って、また薄暗い通路を進んだ先。そこにあったのは同じような石壁の部屋。さっきの部屋よりちょっと広い。

 あ、出口は塞がれないんだ。こういうのって逃げも進めもできなくなるやつだと思ったけど、まぁ、逃げられるならそれはそれで好都合だよね。

 警戒と楽観をない混ぜにし、私はベールを肩に乗せ一歩を踏み出し、

 カチッ。

「「へ?」」
私とベールの間抜けな声が聞こえ、響かずゴゴゴッという音に掻き消された。

「壁。壁?」
「壁。壁よ。」
目の前を覆うような巨大な壁ができていた。地面が迫り上がり、壁ができていた。まさかと思い後ろを振り向く。

「ここは、開いてるんだ。」
「そうみたいね。帰ってもいいってこと?よく分からないわ。」
「それはダメでしょ、試練なんだから。」
後ろの逃げ口はあって前は壁で阻まれている。そんな謎状況に混乱しながらどうしようか考えていた。

 これ、この壁どうすりゃいいと?

『壊すでしょ』
『状況からして壊す以外ないね』
『つまりはデストロイだ』
「N○Kを~、ぶっこわーす!」

 私達~、なんでそんなに好戦的なの?そんな意欲いらないよ?いや、今この神試戦においては結構重要かもしれないけど。

「これを壊せばいいの?どう思う、あんたは。」
「やっぱりそうなるのかー。まぁそれしかないと思うけどさ、私も。」
とりあえず壊すか戻るかの2択以外出てこないこの脳に自分自身呆れつつ、近寄ってコンコンとノックするように叩いてみる。

 んー、これ結構硬いね。
 私のステータスを持って硬いと言わせるんだから相当よこれ。

「ベール、これ精霊術で突破しろってやつ?」
「多分違うと思うわよ。」
「なら物理でもなんとかなりそうってことね。」
指をコキコキ。音を鳴らす私を見て、ベールがまさかという顔をして見守る。

 リボンって攻撃力あるかな?まぁチート装備だし、頑張ればいけるでしょ。

 髪に留められたリボンは解かれ、親指を除き、第二関節と第三関節の間を通るように巻いて掴む。そのままスマッシュ!

 バゴンッ!

 鈍い音が響いた。

「穴が開くだけか……」
手が少し赤くなってた。流石に素手殴りはキツかったみたいだ。魔法少女服が恋しくなってきたのはなんでだろうか。

 嫌だったはずなのに!嫌だったはずなのに!
 便利さが忘れられないよ!

 悲しくなってきたので、羽が呼応して垂れ下がった。感情豊かな羽だ。

「ちょっとあんた、これ奥にも壁あるわよ。いちいち壊してたんじゃ日が暮れちゃうんじゃないの?」
「えぇ……マジ?ちょっと待ってて、ステッキでも試してみたい。」
これを作った奴は今頃笑ってるのかと思うとムカつく。めちゃくちゃムカつく。1発殴りたい。

『私怨じゃん』

 はいじゃあ行くよー、ワンツースリーで行くと思ったかこの壁!

『思いっきりスリーで行ってるじゃん!』
そんなツッコミはどうでもいいと切り捨て、野球フォームでレッツホームラン。重力操作で重圧が増しているおかげか、石壁がぶっ飛ぶ。潜り抜けられるレベルの穴が空いた。羽はピーんと元気だ。

「それで穴開くの……まぁ開くに越したことはないわよね……?」
「そうそう、通れればそれでオッケーなんだよ。」
「でも大丈夫なの?あんたは。疲れないの?」
「えっ……ベールが、人の心配をっ?」
「ぶっ飛ばすわよ。」
妖精形態でも頑張って威圧を飛ばすベール。ただの可愛いだ。

「でも確かに……それじゃあ観客が飽きちゃうか。いい演出がないと客はすぐに別のところに行っちゃうから。参っちゃうよね。」
「なによそれ。どこに気を遣ってんのよ!」
「他に何かいい破壊方法は……」
顎に指を添えて、うーんと唸る。

 唸ってるだけじゃないからね?ちゃんと考えてるよ?

「あっ。あれだ。あれ使おう。」
指鉄砲を作り、キョトンとするベールに向ける。ベールが「ラノスでも使うの?」と聞いてくるので、ちっちっちっ、ともったいぶったふうに言う。

 やることは単純だけどね。

 今穴を開けた隣で実践してみることにする。

「まず指鉄砲を作る。」
「作る。」

「そして壁に押し付ける。」
「押し付ける。」

「バーン!」
発砲音はない。だけど、何故か穴が空いた。それはもう完全に。それが正しいみたいに。

「なんでそうなるのよ!壁っ、これ壁よ?たくさんある壁よ!何したのあんたぁ!」
「契約者様に向かってあんたとは聞き捨てならないね。私気にするよ、そういうの。」
「さっきから全く気にしてなかったのは気のせいだった?」
3拍置いてテヘペロ。

「下品よ。舌しまって。」
「あ、ごめん。」
なんか微妙な空気になった。そういえばこの光景は外に映されているので、この恥部はほとんどの精霊に晒されたと思うとちょっと顔を覆いたい。

「で、でもこれで先進めるでしょ?今のでかいのやるからさ、ほら。」
本気で重力操作を使う。木をへし折った時封印しようかなとも思ったこの技を思いっきり全力で放つ。それはもう容赦なく。

『ちょ、壊れ———』

『今誰か喋った?』
『いや、なにも』
『私は喋ってないぞ』
『私もー』
私達が頭の中でギャーギャー言っててうるさい。無視するしかない。

 そして現実では壁に大穴が。

 こんなあっけない感じに描写してるけど、とんでもないことしてるよね私。

「よし、これで通れる!」
「通れるけど……創造主側の予想の範囲外の突破の仕方よ、こんなの。」
「壁に穴を開ける。正規の方法だから怒られないって。ほら、肩乗って。」
人半分くらいの穴。結構の数の壁が穴から覗いている。これを1つ1つを人力で、と思うと怖くなってくる。肩に乗るベールもその光景に嘆息を吐いた。

 通り終わった頃には腰痛くなりそう……嫌だー、めんどくさーい!
 ……でも、やらなきゃだよね。

 どういう原理か腰元に浮いている武器達を収納し、ステッキを握る。少し小高いところに穴を開けてしまったので、ジャンプで乗って頭上に気をつけ、下もを気をつけ着地、またジャンプの繰り返し。

 スパイみたいにぴょんぴょん進めたらいいのに。私にはそんな才能ないから無理だけど。《黒蜂》の皆さーん、出番ですよー。

『あいつら今恵理除いて全員エンヴェルに幽閉されてるでしょ、幹部諸共』
『あの幹部じゃないけど存在感あった側近の子は?』
『同じでしょ』

 ねぇ、もっと真面目に働いたら?思考が分離されてる意味ないよねもう。

『はぁ?文字数稼ぎという名の手伝いを大いにしてると思うんだけど?』

 メタい。

 気を取り直し、壁に向き合う。特に景色が変わらないのでやった感がない。

 繰り返すこと20回。

「これ、普通に殴り壊してたら私の腕イカれてたね完全。重力操作あってよかった……」
新たな通路を見つけ、安堵から大きく息を吐き出す。

「わたしも、1人ならここで終わってたかもしれないわ。……あんたと一緒でよかった。」
「クーデレは今はいいから、先のこと考えようよ。」
「少しは休憩させなさいよ!わたしだって疲れてるのよ。」
「やってんの私だけどね。」
そんなことを言い合っているうちに、通路のことなんかそっちのけになっていた。誰か触れてあげよう。

『私が触れればいいだけ』
『私もそう思う~』

 はぁ……次の試練に行きますか。

———————————————————————

 これを執筆していたのはちょうど苦しんでいるあたりです。つまり、ちょっと不安定です。次回も不安定の可能性が……誤字が多いかもです。
 まぁ、はい、頑張ります。
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