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11章 魔法少女と精霊の森

341話 魔法少女は慣れさせる

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 精霊の森はいいところだ。

 空気は美味しいし、何より自然を全身で感じられて気分がいい。

 ま、魔力はないけど。
 魔法少女服じゃないだけマシだけど、フリフリワンピってのも普通に恥ずかしい。
 しかもピンクに青い羽ってのもおまけでついてくる。わーお、可愛い。

 私は求めてない要素だけど。

 合算するとマイナス面のほうが大きいねこれ。うん、精霊の森は、いいところだね。

 なんでこんな話をしてるかって?
 ようやく自分の時間が取れてるから、かな。精霊の森を満喫してる。
 霊結界外の安全目なところで。

「ちょっと、もうそろそろ再開しましょうよ。精霊術をほとんど自分の意思で引き出せるようにならないと、神試戦になんて挑めないわ。」
「…‥なら1人で出れば?」
「……いやよ。」
「なんでよ。合理的に考えてさ、私を仲介に挟むのってだいぶ無駄な気がするけど。」
眉を軽く曲げ、手のひらを上げて疑問を呈した。

 自分で言ってみて思ったけど、なんで私と一緒に出ようとしてるんだろう。
 精霊術の代行はロストがあるから、無駄だよね。伝導率云々言われても、結局100%は無理なんでしょ?

「…………恥ずかしいのよ。」
「はぁ?」
「恥ずかしいのよ!悪い?初めて出る神試戦、あれって完全観戦制なのよ!しかもミュール様も観てる!無理よ嫌よ1人は寂しいわ!」

「……可愛いなぁオイ、萌えんじゃねーか。」
「おーい、口調おかしいわよ。」
ベールのいつものツンツンとは一転、羞恥を滲ませ紅潮している姿は「萌え」を感じる。

 これがツンデレ?いや、これはクーデレ!これがっ、異世界美人・美少女だからこそ許されるクーデレっ!
 竹○彩奈さん、カモン!

 こういう系キャラにイメージが強い、日本の人気声優の名前を心で叫ぶ。

『私もうBANされろ』
確かにそれは思う。頷いてしまった私がいる。

「なによ、口ニマニマさせちゃって。ちょっと……キモいわ。」
「……うん、始めようか。」
今のは地味に効いた。自然の風を感じていたのを切り上げ、腰を伸ばして鈍った体を動かす。

 精霊術に慣れる、ねぇ。たった1日でどうにかできることじゃない気がするけど。
 魔導法も正常に機能してないし。都合よく適合できないかなー。

 ちょうどそのスキル持ってるし。

「惚けてないで、早くしなさいよ。体の奥から感じるわたしの力を救い上げるようにやるの。」
「そんなの言われても分かんないって……」
「できないとミュール様にも会えないわよ。」
「……はぁ、やりますよー。」
言われた通りにやってみる。私とベールの伝導率を考えると、ベールが術を行使するより私が使ったほうがいいらしい。

 どういうことだよって思うかもしれないけど、これが異世界クオリティーって割り切る以外ない。

 なんか私、ベールの契約者ということである程度の支配権があるらしくて、私の原素をベールに通してそこでベールの精霊術を私が操作する。その間に、ベールはベール自身でも精霊術を使える。
 意味は分からないけど伝導率との兼ね合いでできるらしい。

「異世界ってすごいなぁ。すっごい今更感あるけどね。」
目を閉じる。奥深くにある力を感じないでもない……と思う。思うとしか言いようがない。

「頑張りなさいよ。」
「こればっかりは慣れとしか言えないって。慣れよ慣れー。私だって頑張ってるんだから。そういうベールも、ちゃんとやっといてね。いざという時対応できるように、ね。」
片目を開け、薄ら笑う。

 アレを1人で使えるようになれるまで、ベールには頑張ってもらおう。
 ちなみに、それだけは私1人でできる。精霊術は使えないけど、原素を流せればね。簡単よ簡単。

「分かってるわよ。ちゃんと、貸してもらったアレはずっと練習してるの。休んだっていじゃない。」 
「はいはーい、適度に頑張ってくださいねー。」
軽口を言い合いながら、互いに互いの能力を慣れようと必死だった。

 必死には見えないって?仕方ない。

「あ、原獣。」
指鉄砲を作り、よーく狙う。赤と白の2つの閃光が閃き、ドサッと地面に重いものが落ちる音がする。

「今の、私だよね。」
「違うわよ、わたしよ!」
2人してブーブーと言い合う。それも次第に落ち着き、休んでは挑戦、休んでは挑戦を繰り返した。

 大規模のは使えないけど、小さくて簡単のなら軽く撃てるようになったかな。
 ベールの力様々だ。そこにある力を借りて撃つっていう感覚は理解できないけど。

—————————

 魔法少女改め精霊少女の訓練の一方、ギリシスらは霊結界内のベールの家、その庭で武器を腰に下げていた。

「あん時に悟った。オレらは魔力で身体強化できてたんだってな。剣の腕はあって上級。」
「僕も、自分の不甲斐なさを痛感したよ。」

「……何が言いたい?」
ナリアは訝しげに、反省の色を見せる2人に視線を向ける。

 それはそうだ。
 彼らが、反省するなんて日が来るとは誰も思わない。

 明日は天変地異でも起こるのだろうか、そう思ってしまったナリアは正常だ。

「オレらにも、醒華閃を教えてくれねぇか。」
「僕も、頼む。ナイフで使えるかは知らないけどね。」
「……はぁ。まぁ、いいか。戦力増強にはちょうどいい。習得まで、苦労するぞ?」
重くなりかけた雰囲気を茶化して鎮めるアズベルに呆れつつ、意気込みを聞く。どうせ答えは決まっているだろうが。

「「あぁ!」」


 1時間後。

「腕が、腕が……!」
「足が、足が……!」
ほとんど似たセリフを吐いて地に膝をつき、両腕を抱くように抑えるギリシスと蹲るアズベル。

「まったく情けない……さっきの決意表明はなんだったんだ。」
頭を抱え、ため息を吐く。男どものヘタレさ加減に、ここまで来ると初々しさもないなと思う。

「醒華閃は実直に鍛錬するしかないんです。同じ型を何度も繰り返し、それが完璧になり、心が統一され、剣と一体になることで使える技。1時間やそこらで習得できたら、学園で教わる必要なんてないでしょう。」
呆れより先に諦めがナリアに生まれた。

「それぞれ得意な型で挑戦しているというのに。」
ナリアは、手本を見せるようにレイピアを下に構えた。ギリシスの獰猛な戦闘スタイルに合った型だ。

「これは単体技。ギリシスには……多分、合ってると思う。」
見せつけられる才能の差。努力の差。紫に発光するそれを数歩先の空に向けて振り抜き、「絶渦」という呟きと一緒に虚空を裂いた。

「なんでナリアができんだよっ!」
「努力の差。」
「…………」
キッパリ言われた。正論なので言い返せない。

 学園で総騎士長の娘として続けてきた努力、対して1時間の練習。努力とも言えない。

「こればっかりは根気良く続けていくしかない。」
「ちっ……もっと、頑張らねぇとな。」
「……それ、ちゃんと立ってから言って欲しい。」
腕を抱えるギリシスに、じっとりした視線を這わせる。

「……最後まで付き合うから、2人も最後まで剣振って。」

「ナリアが、デレたっ?」
その一言で一気に冷静を叩きつけられた。すんと真顔になり、レイピアを鞘に収めバシンッ!

「いって!」
「僕関係なっ……!」

———————————————————————

 1年ってあっという間……なわけないじゃない!
 もう2年くらい経った気がしますよ。もうすぐで投稿始めて1年程度ですが、絶対1年以上経ってますって!1年前まで街でバカやってた空が、今や過去やら精霊の森ですよ?
 ここまで色々あって1年?そんなわけがないっ!

 あ、取り乱しました。私としたことが。失敬失敬。
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