上 下
358 / 681
11章 魔法少女と精霊の森

334話 魔法少女は大人気

しおりを挟む

「それで、どうする?です。」
そう聞いてきたのは赤髪の精霊、ナイアール。(めんどくさいからアールで)小首を傾げるでもなく、ただ見つめて言った。

「どうするって?」
「これから。です。そこの精霊は力尽きてる。です。わたしなら、脈を使いえば簡易転移くらいできる。です。」
「前も十分強かったけど、更に強化されてるね。私、びっくりだ。」
この世界は極端だと、改めて思った。強者と弱者がはっきりくっきり、明瞭だ。

 私ですら転移石使わないと転移なんてできないのに、脈があればできるってそれもう色々超越してない?
 まぁ脈の繋がりがあるところまでだとは思うけど。

「お前も十二分にびっくり人間だろうがよ。」
「精霊の森なんて場所に来た時点で、驚きという感情は捨てました。国王に提出する書類でも頭d……」
「あ、虫。」
「きゃぁっ!」
甲高い声が響いた。それと一緒に、ザザザッと草を擦り踏むような音も。

「ぁ………なっ、っ~~~!」
見事なまでに紅潮した頬を隠すように下を向き、ダッと勢いよく地面を踏み締めたかと思ったら、感動を覚えるような華麗な回転で、その爪先が愉快犯———ギリシスの側頭部を直撃した。

 おぉ……ナイス回し蹴り。そんな綺麗に私、足上がらないよ。さすがはナリア。

 心で嘆息を吐いた。拍手を送りたい。

「今のは僕も、ギリシスが悪いと思う。」
頭を両手で抱え、蹲るギリシスに追い打ちをかけた。ギリシスのHPはゼロになった。

 まぁね。私もそこは同意見かな。
 そういう悪戯は良くないと思います!

 いや待てよ……好きな子相手に子供は悪戯したくなるって聞くし、ギリナリルートあるんじゃない?……ないか。

 目の前が真っ暗になってそうなギリシスを見下げ、悟ってしまった私だった。

「そこのも回収するとして、早く行く。ます。お腹空いた。ます。」
「何言ってる。です。ネイエールも手伝う。です。」
露骨に嫌そうな顔で答えるネイエール(これもエールで)に対し、首根っこを掴むアール。更にそれに対し「ぬばらばぁー」と腑抜けた言語を発して抵抗(?)をしていた。

「今から行く。です。」
「……姉の頼み。ます。仕方ない。ます。」
そう言って、両手を恋人繋ぎのように繋いで向き合った。

「じゃあ、連れて行く。です。」
「刮目する。ます。」
ご丁寧にのびやかな光を生み出し、演出をする。これが意図的なのかは私の知るところではないが、いい演出ではあった。

 これが強烈な閃光とかならマイナスポイント入るけど、目に優しい柔らかい光でよかった。加算だ。

 心地よい光はそれから12秒ほど続いた。少し不安を煽ってくる時間数なのは、計算か偶然か……進化したですます姉妹の恐ろしさは、私の与り知らぬところで増強され続けるようだ。

『考えすぎでしょ』

「もうそろそろ着く。です。」
「霊結界内には転移できないから、そこは要注意。ます。」

「いや、できないんかい。」
「いくらわたしたち精霊でも、できないことくらいある。ます。」
バチバチに聞こえていた。こっちの声は向こうにも届くみたいだ。気をつけないと、と思った途端に口からは「ほへぇ」と気の抜けた声が出ていた。ささやかな、抵抗だ。

『何に対してだよ』

 その辺りで、光が分散していくように薄くなっていっていることに気がついた。アールの言う通り、もう着くみたいだ。

『とうとう相手にもされなくなったね~』

 アホ毛をぴょこぴょこさせて言った。

「……ぅ、ん?……………っ!」
ぼやけたピントを目を擦って治す。すると、その先に広がっていた景色とは……!

「ふっ、普通だ!」
「普通に決まってる。です。」
「住むんだから、当たり前。ます。」
「そういうのは、物語の中だけなのね……」
見た限り、少しだけ整った円形の街を目を細めて見つめる。もっと神秘的かと思ったら、辺境の領地くらいの感じだった。

 こんなところに神が?
 いやまぁ、精霊の森自体普通なら入れないからおかしくないか。

 なんか納得いかないけど、とりあえず変なところは見当たらなかったのでよしとする。

「おいお前ら。結界の中、人が入っていいのかよ。オレらはよそもんだから、排除されるってのがオチじゃねぇか?」
「ふっ。です。」
「さすが人間、考える言葉低俗。ます。」
煽り性能高めの精霊。

「つべこべ言わずギリシスも言う通りにしなよ。ワクワクするじゃん。」
「もしギリシスの言うようになれば、あなたを盾にして逃げます。それでいいですよね?」
「言い訳あるか!」
三つ巴。やっぱり、争いは同レベルでしか起こらなかった。

「むぅ……わたしも、真似できない……?原素を使えばマーキングくらいできるし、それを扱うくらい訳ないはずよ……」
ベールはベールで、ようやく喋ったと思えばこれだ。科学者ってのも本当らしい。

「おーい、まとまれー。」

「ついてこないと死ぬ。です。原獣に食べられて骨の髄までペロペロ。です。」
「血肉で精霊の森を汚したくなかったら、ついてくる。ます。言うこと聞かない奴は、締める。ます。」
「脅しが怖いっ!特にエール、原獣の前にそっちにやられるよ!」
ツッコミ役不在の中で、唯一のツッコミはキャラが弱かった。個性派揃いの集団で、魔法少女兼精霊術師の言葉は意味がない。

 くっ、私に力があれば……

『力が欲しいか?』

 そっ、その声はっ!

『ならば、与えてやろう。我が深淵の園の片鱗に、私は今触れる!見せてみろ、私の本気を!』

 力が、溢れてくる。これならっ!

『なんのクソ茶番だ。やめろやめろ、見苦しい』
『現実逃避って楽しーい?』
眼帯と私の動きは、ピシリと止まる。目を、逸らす。

 今、あのアホ毛は鉄をも貫くブレードに変化していた。

「ソラ?ソラー?どうしちゃったの。ほら、ここがわたしたちの住処よ?どう?」
「あっ、えっ、はい?」
チラッ。チラチラッ。周りを見ると、何故かもう中にいた。霊結界とやらを見逃した。

「はい?じゃないわよ。どうって聞いてんの。」
「綺麗でいい、と思う。」
「そこは断言しなさいよ。」
まったく、仕方ない契約者マスターね。そう言いながら飛び回る。

 あ。そういえば、なんでアールエールだけ人の子供くらいの身長なのに、妖精モードにしてるのって質問、完全忘れてた。

 自由奔放に、あっちこっち飛ぶベールに声をかけた。

「なんで、ベールってその姿にしてるの?」
「だからフランベール……もういいわ。この姿のことよね?こっちの方が、体の維持が楽なのよ。原素で形作られてるわたしたちは、体が大きければ大きいほど原素が奪われるの。だからよ。」
ちなみに100年近く生きてるわ、と付け足してドヤった。

「ふーん。」
「淡白ね……聞いておいて酷いじゃない!」
∞の文字を描いて飛ぶ。この姿で言われると、年上の威厳も何もあったもんじゃない。

 そもそもこれ、どこ向かってるの?いや、ここにいるの自体ベールに半ば無理矢理(記憶改竄)連れてこられたからなんだけど……

「みんなー、ナイアールちゃんとネイエールちゃんが帰ってきたよー!」
「「「「わー!」」」」
少しずつ混乱し始めてきた脳をリセットするかの如く、精霊の雪崩が起こった。ほぼ災害だ。

「ふっ、帰ってきた。ます。」
「みんな良い子。です。」
2人は寄ってきた精霊を指でなでなで。にこやかに微笑む。

「その人たち誰ー?」
「知り合い。です。可愛がって貰えばいい。です。」

「えっ、ちょまっ……!」
「やったー!」
その言葉を皮切りに、大量の精霊が押し寄せてきた。

 来客が、珍しいんだね。

 私は、意識だけを残して精霊の海に溺れた。
 ここで1句。

 精霊の小さな体触れる肌
 思ったよりもやらかい感触

 字余りと。

 なんだかイケナイ気持ちになったのは、どうしてだろうか。

『さっき答え出てたでしょ』

———————————————————————

 んー、元からないに等しいプロットがもうぐっちゃぐちゃです。
 本当はただの移動用ですます姉妹が、ちゃんと登場しちゃってまぁ……

 次回どうしよう……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...