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11章 魔法少女と精霊の森

321話 魔法少女は探しに行く

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 今日も今日とて悪魔探しに明け暮れる私。しかし、それは名目的にはただの魔物討伐となっていた。それは、民衆への混乱を避けた配慮と王は言ってた。

 まぁね、仕事がある分いくらかマシではあるけど、全然目的を達せず歩き回って、ついでに魔物を狩るとかいうめんどい作業。これ、どうなの?

 心の中で悪態を吐くも、その程度では状況は一変したりはしない。

「この辺に来ると魔力が濃くなって、魔物も増えるんだよね……」
私はとても面倒そうに、「キュァァァッ」と唸りを上げた魔物をステッキで殴り飛ばす。この辺によく出る魔物、尻尾が2つある猫又みたいなの。

 ギャースカギャースカうっさい割に、動きが速くてある程度知恵も働くから、わざと襲わせて殴るのが1番。
 これがスマートな対処法っていうやつ?

『ただのステータスのゴリ押しだろ』
という声も聞こえる気がするが、物は言いようだ。

『それ、意味違う』
え?違うって?

「今まで気にしてこなかったけど、異世界の植物も気候によって育つものが変化するんだから、一応生物である魔物も変わってもおかしくないよね。」
核石を引き抜き、収納しながらふと呟く。

「どこでも何にでもエンカするわけじゃないんだねぇ……」
こんな発見も、すぐに退屈に戻る。

 これが悪魔探しの難点。危険性を加味して、今のところ私1人で発見しようとしてる。この広大な森を、移動する可能性のある対象を相手にして。

 だけど、こんな原始的なことしかできないんだよね……

「向こうでは猫又もどきなんて見ないけど、こっちはこっちでケルベロスがいないんだね。大人の方はまじで顔面怖いから、いないのは良かった。」
強さは除いてその強烈な顔面で睨まれたことを思い出し、ゾッとする。

 あれはステータス顔面圧力に全振りしてるよ、あれ。特別速くも強くも特殊能力もないけど、子供の数と顔面のキモさは随一だ。

 今頃ケルベロスは、「グルルッ!(酷いっ!)」と涙をちょろちょろ、体を捻らせている頃だろう。それは可愛いヒロインがやってこそだ。キモい魔物がやっても、なんの価値もない。

『ほら、ケルちゃんも泣いちゃってるよ。慰めてやってよ』

「そうだね……あんまキモいキモい言ってちゃ可哀想……って、なんか脳に直接!?」

『そのネタはいい、見飽きた』

 言葉通り、脳に直接響く感覚がある。まるで私のような声質、まるで私が冷静になってツッコミに徹したみたいな雰囲気、まるで私のような……

『いや、ただの分離思考だから』

「あ、あったねぇ、そんなの。この間はお疲れ様、私。」

『どういたしまして。じゃない。忘れんな』
こんなのがあと3人いるとかいう点は置いといて、脳内ツッコミは彼女らに任せればいいと思って探索を……

『何しれっと……』

「やめて?そんな介入してくるのやめて?全然話進められないから。」

『メタい……』
そういうことで、脳内ツッコミとその他諸々以外は登場禁止令を出す。「そんな殺生な」「私達にも出番を寄越せー」「吹っ飛ばすぞ、私」などと抗議の声が上がったが、無視だ無視。

「あっ。おかえりー、ギル。」
今喋らなかったもう1人の私が、ギルを操作していた。調査が終わったのか、こっちに戻ってきたので腕を伸ばしてそこに止める。

『鷹かよ』
っていうツッコミはなしだ。

『何も無かったよ~』

「いや、だからなんでそんな自由度高いの?」

『そりゃ、分離思考の熟練度的な何かが上がったからだよ』
さも当然のように、頭に声が響く。

 まぁ……いいや。うるさくしないんだったらいいよ。最低限の、事務的関係で。

 返事はない。沈黙は承諾と受け取り、今度こそ先に進む。

 なんか謀反でも起こされたらどうしよう。だって、分離思考の見聞きしたものは知識にあっても理解にはない。
 まぁ同じ私だから……信じようかな。

「銃弾はある、あとはいつも通りのルートを回って……」
と、呟こうとした。すると、脳内の私によるストップがかかる。

「どうしたの?私。」
聞くと、反応が返ってきた。どうやら、万能感知にかかったらしい。しかし、気配感知には引っかからないという。少し困惑が混ざっていた。

 そういえば、いつの間に役割なんて決めてたんだろう、この私達。多分、魔法専門、スキル専門、兵器専門、情報処理や身体を動かす、最後に私が主軸で~って感じだけど、知らぬ間に……

 世の中には知らないほうがいいものもある。これがそうなんだと決め、私も万能感知を発動させる。

「確かに……でも、いるというよりあるって感じの……行ってみたほうが早いか。」
木々を飛び移りながら移動する。結局、使ってる脳は私なので知能担当みたいなのはいない。みんな、考えは同じ。受け答えとかが違うだけ。

「まじ……?」
少し恐怖も感じる。若干震えていそうな声を発し、見つめたものへと接近する。

 これ……死体、だよね。


 それから数時間後。今日の終わりを告げるが如く、夕陽が王都を照らしていた。その時、私は城にいた。

「今日、ソラが発見した遺体だが……予想通り、悪魔事変連続突然変死事件と、同一の死因だった。」
王が、部屋にやってきてすぐに言った。もどかしそうな声だ。そりゃそうだ。死体も死因も目に見えているのに、犯人の特定だけが一向に進まないのだから。

 混乱を避けるために今回の事件は名称を伏せて、カバーを作って、悪魔関連の話は一部の者にのみ伝えられている……みたいだけど、悪循環だね。

 悪魔の話を噂で留めたいらしいけど、このままいけば死者は増える一方。噂は広がる。でも、迂闊に人員を割けばそこでも広がる。

 やってもやらなくてもどっちみち噂は増え続ける。

「火のないところには煙は立たない。悪魔でないにしろ、絶対、犯人はいるはずだ。」
「じゃあ、私は帰りますよ。明日からもよろしくね。」
「あぁ、少し待ってくれ。明日は、森ではなく城に来てくれないか?信頼できそうなパーティーが見つかったんだ。」

「あー、はい。オッケーです。」
いつまで経っても敬語はむず痒いけど、王にタメ口は無理だしやばい。

「パーティーねぇ……」
毎回最初は嫌な記憶しかないので、今回も絶対そうなるだろうと予測できる。私は、深いため息を吐いて、城を後にした。

 私は後何回この城を出入りすればいいんだろうね。分かんないや。

 今頃屋敷から送られているはずのネルの私物が宿に入れ込まれ、寮に移す準備でもしているであろう2人の元に、少し急足で戻る。
 と言っても、前半は馬車だからどうにもならないけど。

—————————

 額に白いタオルを巻いて、作業をする白髪の少女が1人。
 フェルネールことネルだ。

 白に白、全くもって目立たない。単なる汗拭きなので、目立つ必要はないのだが。

 そんなことは置いておこう。
 現在、ネルは荷物整理をしていた。

 領主や有力な貴族、ギルドに配布される遠距離投影の魔道具にて、試験結果は遠くからでもみられるようになっていた。発表は昨日だったはずだが、フィリオは合格を予期(というよりただの娘への信頼)していたため、先に私物等を送り、準備が早くできるよう整えていた。

 もし不合格だったらどうしたのかって?魔法少女に聞いてみようか。四次元なポケットな如く収納できる機能を持つステッキを使い、見事に仕舞ってくれるであろう。

「ふぅ……このくらいでいいですかね。仕分けはある程度、終わりました……」
短い袖を更に捲ったネルは、満足げに並べられた私物たちを眺める。

「ネルちゃん、運ぶものってそれで最後です?」
「はい、ありがとうございました。力仕事は、少々私には合わなくて……」
「力仕事って……まぁ、いつでもわたしに頼ってください。そして空に告げ口して褒めてあげるよう言ってください!」

「ユリノさんって、本当にソラさんが好きですね……」
困ったように頬を掻いた。これが、あの遠足の日にずっこけたネルなのか。別人ではないか、そう疑うほどの成長を見せていた。

 これが、魔法少女の影響か……

 魔法少女が魔法少女で大変な時に、ネルもネルで、忙しそうであった。

———————————————————————

 空がまた一歩、チーターになりました。分離思考。これがあればとんでもないことができます。空が実質5人。体は1つでも、出来ることは5人分。
 …………ただの魔法少女戦隊ですから、まだセーフですよ。じょ、序の口です。
 ただ、半自動的に魔法も兵器も乱射できるようになるだけですから。

 というか、早くラノス使いたいです。やっぱり厨二の核といえば、無駄に派手な技と『俺の考えた最強兵器』を使った戦闘ですよね。
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