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10章 魔法少女と王都訪問

318話 魔法少女は思い出を作る 2

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 私達はお祈りを済ませ、特にすることも無くなったのでここらで遊んでから帰ることにした。
 戻ったら、すぐにロア達はパズールに戻ることになるけど、何故か百合乃は反対したので仕方なく許可した。

「この辺り、風が吹いていて気持ちいいですね。」
ネルが長い白髪を手で押さえながら、目を細めて微笑んだ。いい表情だ、さすが令嬢。そう思った。

 この世界、やっぱり女子は全員可愛い。何故か可愛い。いや、全員ってわけではないけど、ほとんどの割合で可愛い。
 なにこの画面映え極振り。なにこの私欲感。

 創滅神が裏で糸を引いてそうだな。そんな適当なことを考えていると、にこやかな女性がこちらを見下ろしている幻を見た。

「幻って、便利だね。」
そうやって気を紛らわせた。

「流石に自由すぎません?空。命と腕を祈った後は幻ってなんです?」
「心の声読まないで。」
「ばちばちに言葉に出てました。」
「……幻、だね。」
本当に幻は便利だった。事実を幻想に生まれ変わらせることができるのだから。

「まぁそんなことは置いといて。ここ、本当に幻みたいな場所ですよね。って、そもそもこの世界自体幻みたいなものですよ。」
「なに?ツッコんでほしいの?ツッコまないよ。」
幻連発に1人で問答、流石に露骨すぎるので指摘は控える。

 こんな真面目なこと言ってる風にしてボケてくるからね、百合乃は。気が抜けないよ。

「別に幻がダメなんて言ってませんけど。」
「おうおう、なんだ~百合乃ぉ。言うようになったじゃん。吹き飛ばそうか?ん?」
「すいませんすいませんっ!だからその絶対に吹き飛ばせそうもない刀で脅すのやめてください!」
一瞬で取り出した刀を、仕方なく収納する。少ししょんぼりら。

 せっかく刀の切れ味を確かめられるチャンスだっていうのに。試し切りくらいさせてくれたっていいじゃん。

 腕を吹き飛ばしてあげたのに。

「ふっ。あたし、いいこと考えた。」
「ツララちゃん?何かありましたか?」
「いいことってなにぃー?」
「また何か危なそうなことじゃなければいいですけど……」
子供組が騒ぎ始めた。とは言っても、15歳のツララ(人間年齢にしたらまだ小さい子供)と12歳のネルがいるわけだから、子供組って言ったら私達も入っちゃうけど。

「で、いい考えって何?」
私は遠くから声をかける。また何かユリノに影響されたことを言うんだろうと、期待はしない。

「主、あたし、信用して。今のあたしは、本気の真面目、マジ真面目。」
「本気と書いてマジと読むって……この世界にないでしょそんな言葉ぁ!」
キッと百合乃を睨む。百合乃は、ピューピューピュ~、と無駄に上手い口笛で誤魔化す。本当に誤魔化されそうなくらい上手いのが逆にムカつく。

 ……あれ?この曲ってだいぶ昔に流行ってた曲じゃ?
 まぁ、いいか。別に好みはそれぞれだし。

「ここにある花、1人1輪ずつお揃いで摘む。だから、主は枯れないようにして。」
「あー、お揃いね。いいけど、だいぶ無茶言うなぁ……」
眉を顰める。魔法でどうにかできない問題は、私にはどうしようもない。

 枯れないようにって、押し花だよね。それを栞にしたりするんでしょ?
 栞なんて作り方知らないし……

 ちょっと不甲斐なかった。

「全員、離れてても一緒。特に、ネル。」
「ツララちゃん、肝据わってますね。一体どこの主に似たんです?」
「こんな性格になったのは一体誰のせいかな?」
バチバチと私と百合乃が密かに睨み合う。後半、若干ねっとり絡みつくような視線になったので、すっと視線をずらす。

「確かに、花というのは特別な力があるように感じますしね。」
そう言ってネルは辺りを見回す。すると、目当てのものでも見つかったのか、走り出した。

「皆さん、この花にしましょう。名前はアネモナ。青色を基調とした花で、見ての通り花弁が6つに分かれている合弁花です。」
茎の部分を持って説明する。みんなそれに注目し、各々綺麗と感想を述べていく。

 外側が瑠璃色っぽい色、内側が空色っぽい……

 狙ってやった、よね?たぶん。

「私たち6人はずっと良い友人です。ですので、合弁花。6人全員離れない、という意味で良いと思ったのですが。」
少し引き気味ではあるものの、きっちり理由を話し勧められ、ペースを引き込んでいる点を見ると、領主の娘だと再認識させられる。

 こりゃあ話し合いも強いわけだ。相手のペースに崩されず、自分のペースを組み立てていける。諜報機関も防諜機関もいける天才スパイみたいな、1つで2度美味しい系の子だ。

 変な例えなのはご愛嬌。私に可愛さがあるかは置いといて。

「ん、いいと思う。あたしが、褒めて遣わす。」
「ツララちゃん!ネル様にそんな言い方……」
「ほめてつかわす~!」
サキが腰に手を当て、ドヤ顔で言った。ネルは苦笑だ。

 アニメならここでノって臣下の真似でもするんだろうけど、現実ではそんなことはできないんだね。ネル困ってる。

「じゃ、後はこれを6輪摘んで……保存は……」
「わたし、押し花の作り方くらいなら知ってますよ?」
「百合乃って、女子力の塊なのにどうしてそんな残念になっちゃったんだろう。」
「しれっと酷いのやめてください。」
それだけ言うと、ムスッとしたようにそっぽを向き、みんなから花びらを回収する。

「空にも手伝ってもらいますからね。空いないとできませんし。」
「え、なんかあるの、やること?」
「そりゃありますよ。まぁ見ててください。」
そう言うと、料理の香草を探すようにぺぺっと周りの小さめな花を回収し、花を挟むフィルム部分をその間に作らされた。

「はい、じゃあ作っていきますよ。」
百合乃のー、押し花講座~!そんな感じで始まった。机は私が出した。

「まず、まぁ……キッチンペーパーですね。それを2枚用意して、1枚を下にして花を置きます。そのまま上にもう1枚を被せて、空の出番です。」
「早くない?」
「いいからいいから」と押されるようにして前に行く。

「アイロンの容量である程度熱してください。そしたら冷まして、これを3、4セットやります。」

 そして出来上がったのがこちらになります。

 描写がめんどくさかったからとかでは決してない。決して、ない。

 4セット終えたそれは、完全に乾燥し切っていた。

「お花さん大丈夫?」
「大丈夫だよ、サキ。お姉ちゃんたちが頑張ってるから、応援して。」
ロアに言われるがまま、「がんばれー!」と声援をあげる。

 よっし、元気100倍魔法少女!

 仕上げにフィルムの中に同じようにセットした花達を熱し、何もないところに穴を開けて平べったいタイプの紐で結んで完成。

「できましたー!」
「私の出番多くなかった?」
「できたんだから気にしないでくださいよー。」
そうして私にも押し花の栞が回ってきた。確かに綺麗だ。

「じゃあ、そろそろ帰りますか。」


 飛行船の旅を終わらせ、時間通りに帰宅。昼食を歩く食べてから、私達は帰りの馬車のお見送りに行った。

「護衛って、もしかしてレイティーさんのこと?」
「そうよ。あの時、こっそり声をかけられていてね。チップはもらってあるわ。任せてちょうだい。」

「仕方ねぇから手伝ってやるよ。」
「む、素直になれ。ただ帰りのアテを探していただけだろう。」
「そうですよ。依頼という形で帰れるのは、ぼくらからしてもありがたいんですから。」
ライとトインがウェントを宥める。

 そういえば、この4人って臨時パーティーだった気がするんだけど。
 正式にパーティー組んだのかな?

「ソラお姉ちゃん、また今度。」
「バイバ~イ、お姉ちゃん!」
ネルと百合乃と私とで、みんなが乗る馬車を見届ける。最後にレイティーさん達が乗り込み、馬車は発進する。

 これにて、王都旅行は終了。私達は、ゆっくりと宿に向けて歩き出した。

———————————————————————

 この回執筆時、4度目の某新型ウイルスののワクチンを打ちまして、とんでもなく頭痛が痛いです。(?)

 熱は38.5度でました。はい。このままいけば死ぬんじゃないかってくらい体調悪かったです。
 副反応のオンパレードです。

 そんな中頑張って執筆したので、褒めてやってください。
 さんはい、「ほめてつかわす~!」
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