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10章 魔法少女と王都訪問

313話 魔法少女は空を飛ぶ 2

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「じゃあ、時間的に次でラストかな。」
土の飛行船に乗り、そう伝える。

 飛行船のおかげで比較的楽に観光ができて、色々なところを回れたし、私は満足だ。
 でも、まだ子供達は遊びたそうにしてる。

「主、次はどこ?」
「あの高い建物見える?塔みたいな。」
「見える見えるー!」

「あれに行く。なんでも国中で1番高い建物らしい。王都の景色が一望……」
言おうとしたところで、音波機を投入する。まだ周りは日が暮れきってない。セーフだ、セーフ。

 王都の景色なんてここから一望できるじゃん。塔登る意味ないじゃん。
 だから夕日は見せない!

 さすがの私も飛行船と音波機自動操縦を思考分離だけでやるのは無理なので、私自身が操作する。

「ちょっと、着くまで私無言になるかも。そっちで喋っといて。」
「ん。了解。」
ツララの声がする。多分ビシッと百合乃式敬礼でもしてるんだと思う。私のツララが百合乃の影響を受けていく……

「あれ?さっきまで外の景色が見えていた気がするんですけど……」
「ロア、気にしない。気にしたら負け。」
「ま、負け?」

「分かった!気にしない!わたしの勝ち!」
ガヤガヤ声が聞こえる。けど私はこっちに集中する。

 10分後。
 そろそろサキ辺りが飽きかねないので、スピードを上げる。もうすぐそこまでやってきている。

 私の魔力を大量に犠牲にする代わりに、みんなに楽しみを届ける。サンタって、こんな気分なのかな。

「空、あれじゃないです?もうすぐそこです。」
「あー、うんそうだね。……ってなんで見えるの!って、魔断か……」
サーベルを前に突くような姿勢で、小首を傾げた。運転に戻った私を見て、百合乃も前を向き直す。

 百合乃ってやっぱりチートだ。ステータスも、いつか越されそうで怖い……
 私のステータスは地龍の借り物だし、レベルも無駄に上がったせいで、その間のレベルは転生者としての上昇値を受け取れないってのもね……

 後々影響してきそうで、なんか怖くなる。兵器作っておいて良かったと、なんとなく思う。

「ユリノ。楽しみはとっておく。さもないと、固める。」
「ツララちゃん酷いっ!どこの空の真似ですか!いい子に育ってくださいよ、ツララは。」

「どう言う意味よそれ。喧嘩売ってる?」

「ツララちゃんのせいで空に飛び火したじゃないですか。嘘ですよ?間に受けてたりしないです?」
「うんうん、間になんて受けてないよ。全然。」
「運転中でも変わらない扱い……」
なんか後ろから妙な雰囲気を感じないでもないけど、気のせいだ。

 …………私は、とんだ変態を世に放つことになるのかもしれない。

 すぐ近くに見えてきた塔を見て、冷静になるとそう思う。

「はい、到着。今度こそ降りるとこなんてないから、ここから飛び降りることになるけど、準備できた?」

「分かってます。ソラお姉ちゃんが魔法で下ろしてくれるんですね、分かってます。」
「楽しそー!」

「主、あたしは1人で降りたい。」
「気をつけてね。この高さだと、ステータス的にはギリギリの感じだから。百合乃は問答無用で自降りだけど。」
右腕にロアを抱き、肩にサキを乗せた。重力操作は分離に任せ、適当に浮かせたままにしておく。その間ツララは準備体操を念入りにし、百合乃はツララを見て「本気です?」と、正気を疑うような視線を飛ばす。

「じゃ、私先に行くから。ここから塔に直接とかはダメだからね?」
スッと飛び降りる。ロアが若干涙目になってる。そこのところはどうしよもないので、空中歩行でゆったり降りてあげる。

「お姉ちゃんお姉ちゃん!すごいよっ、お空飛んでる!お姉ちゃんすごいっ!」
「サキ、暴れたらソラお姉ちゃんが……」
「落ちたりしないから安心して。ロアは捕まってればいいから。」
「はい……」
こうしてると、幻肢痛なんてものは忘れるくらい幸せに感じる。上から「空ぁー!help‼︎‼︎」とか聞こえてくるけど、知らない見えない聞こえない。

 ツララは大丈夫だね。立体機動があるから、下手なことしない限りは……

「ユリノっ!危ない!来るな。」
「ツララちゃん、わたしはそんなスキルないんですぅぅぅ!」

「天震と衝波で風に乗る。その後、衝撃断で勢いを消す!近寄るな。」
「そんなぁ……」
ツララは自分から離れていく。どうやら心配いらないようだ。

 百合乃は……スキル使う気配が一向にない。焦ったらダメなタイプだよね、百合乃って。
 前、バイクの上で襲われた時とかもそうだったし。

 さすがの私も可哀想と思ったので、腰に挿しておいてあるステッキから死神さんを召喚。百合乃の救出を任せる。

「ソラお姉ちゃん、大変そうですね。」
「同じ保護者のはずの百合乃が1番迷惑かけてるからね。」
死神さんに両脇を掴まれている百合乃を、私達は遠い目をしてみる。

 あんな大人には、なっちゃダメだね。まぁ私のほうが年上ではあるけど。


 翌日以降、夕方の空に浮かぶ人型のような何かが確認されたという事件があったが、私がそれを知ることはない。


 なんとか陸に着地し、塔に着く。百合乃も半泣きで到着し、私に「ばかぁ……ばか空ぁ」とぽかぽかしてきた。
 ツララは満足そうに「いい練習になった」と笑ってた。

「よし、じゃあ登ろう!」
「さっき降ったばっかなのにですぅ?」
「……文句があるならここに残っておけばいいよ。私たちは行くから」

「嫌です行きます。そんなデスゲームだと確実に死ぬような立ち位置嫌です。」
「百合乃の場合全部の仕掛けをぶった斬りそうだけど。」
情緒不安定な百合乃も含め、みんなで塔を登ることになった。

 見た目はピサの斜塔を斜塔じゃなくした感じ。装飾が綺麗で、外から見ても十分楽しめるね。

 ちょっと時間かかるかもしれないけど、登頂目指して頑張ろう!

 と思った矢先。

「…………転移するんかい。」
「これだけ高ければ仕方ないです。私だってめんどくさいんですもん。」
塔に入ってすぐ。綺麗な広間の真ん中に、魔道具があった。転移石みたいなものだった。触れると、頂上付近まで転移させられた。そこから少し階段があって、頂上から見下ろせるようになってる。

「ソラお姉ちゃん、綺麗なんだから気にしないで。」
「お姉ちゃんの言うとおり!ありがとう、お姉ちゃん!」
先がロアの手を掴んで引っ張っていく。時間の問題か、たまたま人が少ない。走り回るサキと、困ったように笑うロア。絵になる。

「最近空、色々あって大変そうなんですから、ちょっとは休んだらどうです?肩の力を抜いて、少しはぼけっと生きてもいいはずです。」
「百合乃……」
「たまにはわたしにツッコミ役を任せてください!」

「いや、それはさすがに……百合乃にツッコまれるとかなんか嫌。」
「理由もなく拒否られた?!」
百合乃らしいオーバー気味のツッコミ。それを見てると、なんか笑いが込み上げてくる。百合乃は、なんです?と不思議そうに聞いてくる。

「確かに。適当に生きてたつもりだけど、私が中心ばっかだったかも。私は主役の横でふざけてる係がちょうどいい。最近私、ぎこちなかったかも。」
「神なんか倒すからですよ。」
「倒さなきゃ帰れなかったしね。」
夕日に染まる王都を見て、その日は終わった。ローブは着ていたので、ここから直で飛行船に乗る。

 今日は色々考えさせられたなぁ……特に後半。私に主人公はやっぱ向いてない。もっと気楽に生きよう!

 どこからか、これ以上どう気楽にするんだ、と言われた気がした。もちろん無視。

 第3の目標は、気楽に生きる。日本に戻るのも、創滅神に会うのも、それを達成してからにしよう。

「空!前、前見てください!」
「主、高度落ちてる。」
「わぅ……鳥さん?」
この後百合乃に、もっと真面目してくれと言われた。

 気楽に生きるのか真面目に生きるのか、どっちかにしてほしい。

 0か1かしか選べない私だった。

———————————————————————

 ここ最近、全然話が浮かばないんですよねぇ。文章も元から微妙なのが更に程度が落ちて……まぁそれは空の心の様子を文字にも組み込んだという形にして終わらせましょう。

 やっぱりただののんびり会は私には合わなかった……
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