336 / 681
10章 魔法少女と王都訪問
313話 魔法少女は空を飛ぶ 2
しおりを挟む「じゃあ、時間的に次でラストかな。」
土の飛行船に乗り、そう伝える。
飛行船のおかげで比較的楽に観光ができて、色々なところを回れたし、私は満足だ。
でも、まだ子供達は遊びたそうにしてる。
「主、次はどこ?」
「あの高い建物見える?塔みたいな。」
「見える見えるー!」
「あれに行く。なんでも国中で1番高い建物らしい。王都の景色が一望……」
言おうとしたところで、音波機を投入する。まだ周りは日が暮れきってない。セーフだ、セーフ。
王都の景色なんてここから一望できるじゃん。塔登る意味ないじゃん。
だから夕日は見せない!
さすがの私も飛行船と音波機自動操縦を思考分離だけでやるのは無理なので、私自身が操作する。
「ちょっと、着くまで私無言になるかも。そっちで喋っといて。」
「ん。了解。」
ツララの声がする。多分ビシッと百合乃式敬礼でもしてるんだと思う。私のツララが百合乃の影響を受けていく……
「あれ?さっきまで外の景色が見えていた気がするんですけど……」
「ロア、気にしない。気にしたら負け。」
「ま、負け?」
「分かった!気にしない!わたしの勝ち!」
ガヤガヤ声が聞こえる。けど私はこっちに集中する。
10分後。
そろそろサキ辺りが飽きかねないので、スピードを上げる。もうすぐそこまでやってきている。
私の魔力を大量に犠牲にする代わりに、みんなに楽しみを届ける。サンタって、こんな気分なのかな。
「空、あれじゃないです?もうすぐそこです。」
「あー、うんそうだね。……ってなんで見えるの!って、魔断か……」
サーベルを前に突くような姿勢で、小首を傾げた。運転に戻った私を見て、百合乃も前を向き直す。
百合乃ってやっぱりチートだ。ステータスも、いつか越されそうで怖い……
私のステータスは地龍の借り物だし、レベルも無駄に上がったせいで、その間のレベルは転生者としての上昇値を受け取れないってのもね……
後々影響してきそうで、なんか怖くなる。兵器作っておいて良かったと、なんとなく思う。
「ユリノ。楽しみはとっておく。さもないと、固める。」
「ツララちゃん酷いっ!どこの空の真似ですか!いい子に育ってくださいよ、ツララは。」
「どう言う意味よそれ。喧嘩売ってる?」
「ツララちゃんのせいで空に飛び火したじゃないですか。嘘ですよ?間に受けてたりしないです?」
「うんうん、間になんて受けてないよ。全然。」
「運転中でも変わらない扱い……」
なんか後ろから妙な雰囲気を感じないでもないけど、気のせいだ。
…………私は、とんだ変態を世に放つことになるのかもしれない。
すぐ近くに見えてきた塔を見て、冷静になるとそう思う。
「はい、到着。今度こそ降りるとこなんてないから、ここから飛び降りることになるけど、準備できた?」
「分かってます。ソラお姉ちゃんが魔法で下ろしてくれるんですね、分かってます。」
「楽しそー!」
「主、あたしは1人で降りたい。」
「気をつけてね。この高さだと、ステータス的にはギリギリの感じだから。百合乃は問答無用で自降りだけど。」
右腕にロアを抱き、肩にサキを乗せた。重力操作は分離に任せ、適当に浮かせたままにしておく。その間ツララは準備体操を念入りにし、百合乃はツララを見て「本気です?」と、正気を疑うような視線を飛ばす。
「じゃ、私先に行くから。ここから塔に直接とかはダメだからね?」
スッと飛び降りる。ロアが若干涙目になってる。そこのところはどうしよもないので、空中歩行でゆったり降りてあげる。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!すごいよっ、お空飛んでる!お姉ちゃんすごいっ!」
「サキ、暴れたらソラお姉ちゃんが……」
「落ちたりしないから安心して。ロアは捕まってればいいから。」
「はい……」
こうしてると、幻肢痛なんてものは忘れるくらい幸せに感じる。上から「空ぁー!help‼︎‼︎」とか聞こえてくるけど、知らない見えない聞こえない。
ツララは大丈夫だね。立体機動があるから、下手なことしない限りは……
「ユリノっ!危ない!来るな。」
「ツララちゃん、わたしはそんなスキルないんですぅぅぅ!」
「天震と衝波で風に乗る。その後、衝撃断で勢いを消す!近寄るな。」
「そんなぁ……」
ツララは自分から離れていく。どうやら心配いらないようだ。
百合乃は……スキル使う気配が一向にない。焦ったらダメなタイプだよね、百合乃って。
前、バイクの上で襲われた時とかもそうだったし。
さすがの私も可哀想と思ったので、腰に挿しておいてあるステッキから死神さんを召喚。百合乃の救出を任せる。
「ソラお姉ちゃん、大変そうですね。」
「同じ保護者のはずの百合乃が1番迷惑かけてるからね。」
死神さんに両脇を掴まれている百合乃を、私達は遠い目をしてみる。
あんな大人には、なっちゃダメだね。まぁ私のほうが年上ではあるけど。
翌日以降、夕方の空に浮かぶ人型のような何かが確認されたという事件があったが、私がそれを知ることはない。
なんとか陸に着地し、塔に着く。百合乃も半泣きで到着し、私に「ばかぁ……ばか空ぁ」とぽかぽかしてきた。
ツララは満足そうに「いい練習になった」と笑ってた。
「よし、じゃあ登ろう!」
「さっき降ったばっかなのにですぅ?」
「……文句があるならここに残っておけばいいよ。私たちは行くから」
「嫌です行きます。そんなデスゲームだと確実に死ぬような立ち位置嫌です。」
「百合乃の場合全部の仕掛けをぶった斬りそうだけど。」
情緒不安定な百合乃も含め、みんなで塔を登ることになった。
見た目はピサの斜塔を斜塔じゃなくした感じ。装飾が綺麗で、外から見ても十分楽しめるね。
ちょっと時間かかるかもしれないけど、登頂目指して頑張ろう!
と思った矢先。
「…………転移するんかい。」
「これだけ高ければ仕方ないです。私だってめんどくさいんですもん。」
塔に入ってすぐ。綺麗な広間の真ん中に、魔道具があった。転移石みたいなものだった。触れると、頂上付近まで転移させられた。そこから少し階段があって、頂上から見下ろせるようになってる。
「ソラお姉ちゃん、綺麗なんだから気にしないで。」
「お姉ちゃんの言うとおり!ありがとう、お姉ちゃん!」
先がロアの手を掴んで引っ張っていく。時間の問題か、たまたま人が少ない。走り回るサキと、困ったように笑うロア。絵になる。
「最近空、色々あって大変そうなんですから、ちょっとは休んだらどうです?肩の力を抜いて、少しはぼけっと生きてもいいはずです。」
「百合乃……」
「たまにはわたしにツッコミ役を任せてください!」
「いや、それはさすがに……百合乃にツッコまれるとかなんか嫌。」
「理由もなく拒否られた?!」
百合乃らしいオーバー気味のツッコミ。それを見てると、なんか笑いが込み上げてくる。百合乃は、なんです?と不思議そうに聞いてくる。
「確かに。適当に生きてたつもりだけど、私が中心ばっかだったかも。私は主役の横でふざけてる係がちょうどいい。最近私、ぎこちなかったかも。」
「神なんか倒すからですよ。」
「倒さなきゃ帰れなかったしね。」
夕日に染まる王都を見て、その日は終わった。ローブは着ていたので、ここから直で飛行船に乗る。
今日は色々考えさせられたなぁ……特に後半。私に主人公はやっぱ向いてない。もっと気楽に生きよう!
どこからか、これ以上どう気楽にするんだ、と言われた気がした。もちろん無視。
第3の目標は、気楽に生きる。日本に戻るのも、創滅神に会うのも、それを達成してからにしよう。
「空!前、前見てください!」
「主、高度落ちてる。」
「わぅ……鳥さん?」
この後百合乃に、もっと真面目してくれと言われた。
気楽に生きるのか真面目に生きるのか、どっちかにしてほしい。
0か1かしか選べない私だった。
———————————————————————
ここ最近、全然話が浮かばないんですよねぇ。文章も元から微妙なのが更に程度が落ちて……まぁそれは空の心の様子を文字にも組み込んだという形にして終わらせましょう。
やっぱりただののんびり会は私には合わなかった……
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる