上 下
335 / 681
10章 魔法少女と王都訪問

312話 魔法少女は空を飛ぶ 1

しおりを挟む

 ネルが転入試験に出かけて数十分後。私達は私達で、レッツ観光をしていた。

 途中、ネルに渡したお守り(ただのお守り。そう、ただのお守りだ)はちゃんと効いているだろうかとか、体調は悪くなったないかとか気にしたけど、とりあえず私は信じるだけだと開き直った。

「それじゃあ行こう!観光へ!」
「ソラお姉ちゃん、もう私たちしかいませんよ。」 
ロアが言った。確かに、周りを見ると人が少ない。

 だからなんだ!私は、私は今日のために昨日、頑張って情報収集したんだ!
 やったてよかった公○式!

 私の旅行ハイについていける人物はいなかった。

「主主、行こう!行こう!」
いた。

「空、レイン君除いた子供組しかいないんですけど、計画狂ったません?」
「……テレスさんとネトラーさんは、しっかり2人っきりだから…………多分。」
「今、なんか怪しい言葉が聞こえた気が……んぐっ!」
百合乃の口を右手で塞ぎ、そのまま回収しながら王都を進む。

 なんだかんだでロア、サキ、ツララはついてきてくれるから、まぁ予定通りに進めよう。

 ここ、王都には東京みたいな観光地やら大阪みたいな商店街、少し離れれば自然もあるらしいすごい都市だ。怖いくらいなんでもある。

「まず定番らしい祠に行こう。なんでも、祠が大量に並んでることで有名らしい。」
「神様のバーゲンセール?!」
「ユリノお姉ちゃん、神様は売ってません。」
冷静にツッコんだ。百合乃に居た堪れない空気が流れるので、早々に移動する。

 確かここから近いはずなんだけど……

 大量の人の群れを掻き分けながら、ある程度進む。

 そこで気づいた。

「これ、歩きで行く距離じゃないよね。」
「……確かにそうですね。」
「歩くの楽しーよ?」
サキは楽しそうにトコトコ走り回る。にこやかに走る様子を見た人たちはほっこり。私もほっこり……

 してる場合じゃない!
 いや、ほんとに対策考えないと……

「よし。みんな、ちょっと待ってて。っていうか、人いないとこ移動しよう。」
みんな首を傾げるけど、半ば強引に道の端に移動する。

 ……魔法なんて見られたくないし、重力魔法は尚更。魔力消費が心配だけど……

 数分間私は虚空と睨めっこし、あーでもないこーでもないと試行錯誤し、4着のローブを完成させた。大きさは大体だ。着れればいい。

「みんな、これ着て。絶対脱がないで。あと、深くは聞かないで。」
「…………………空、まさか?」
百合乃は勘づいたみたいだ。ツララも同様な反応をし、袖を通した。それをサキに見せて、「主とお揃い」と呟く。

「わたしもお揃いー!」
サキが便乗してローブを着る。全員来たのを確認し、魔導法を繋げて魔力を流す。魔力が通ると、段々と全員の姿が消えていく。

「っ!?お姉ちゃん!?消えちゃった!?」
「サキ、いるの?」
2人は困惑する。百合乃とツララは知っているので、冷静そうだ。

「ちょっと待って。私の魔力の波長は見えるように……」
企業秘密の方法で私の魔力は貫通して視認できるようにし、それでようやく混乱は鎮まる。

「ソラお姉ちゃん、何をしたの?」
「私のローブを複製したって感じ。こうすれば、バレずに魔法使えるし。」
地龍魔法で巨大な縦横それぞれに大きい土の塊を出現させる。

「これに穴開けるから、それにみんな乗って。これで移動する。明日はもっとちゃんと、移動手段作っておくから……」

「主、あたしも手伝う。元気。」
「ツララぁ……」
ツララを抱きしめる。なでなでよしよしだ。もふもふで気持ちいい。

 精神力も体力も一気に回復した私は、一瞬にして穴を開け、全員を乗せ、私も乗る。

「空も乗るんです?」
「操縦するの私だし。」
そう言うと、その土の乗り物は浮遊する。重力操作だ。涼しい顔を取り繕ってるけど、結構集中力いる。

 ……分離思考発動。

 あとはもう何人かの私に丸投げし、残った私は楽しい女子トークと洒落込……あれ?女子という女子が、いない気がするな。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!飛んでるっ!」
「もう私は驚かないです。何をしても、ソラお姉ちゃんだから、驚きはないです。」
あはは、乾いた笑いをこぼしていた。ロアが少し、壊れてた。

 ロア、ロアー!戻ってきてー!

「じゃあこのまま行くね。落ちはしないだろうけど、気をつけて。百合乃も、注意してて。」
「さすがにそんなことやらかしませんって。」
どこからどう聞いてもフラグだ。しっかりと、百合乃だけはしっかり見張らないと、そう思った。

 まぁ百合乃ならこの程度の高さ、落ちても死なないだろうけど。
 危ないのは、下にいる人達だよね。

 この飛行船(?)は、真っ直ぐ祠に向かう。ビュンビュン進み、ツララは少しだけ顔を外に覗かせて気持ちよさそうに風を感じている。

「もうすぐ着くよー、飛び降りる準備しといて。」
「飛び降りる準備って何!?」
「とうとうロアちゃんがツッコミマシーンに変化しちゃいました。」

「主、アクティブ。でも、嫌いじゃない。」
シュッ、シュッ、とボクシングの真似をする。特にそんな行動はとらないけど、本人は楽しそうなのでほっとく。

「お姉ちゃーん、こっち来て!すごいよ!」
「サキ……今お姉ちゃんそれどころじゃ……」
ドッと疲れた顔をしているロアを引っ張るサキ。ツララもいつの間にか、その景色を見ていた。百合乃も気になるようで、みんなが1箇所に固まる。

「……ほんとだ。祠がたくさん……」
均等にたくさんの祠が、一面に広がっている。

 王都の特徴は、発展度の落差。外と中を隔てる壁の中には、小規模の森も一緒に入っている。
 街中はどこも活気付いているけど、一度外に出れば、こんな景色も広がっている。

 なんでも、森の神様達に平和の祈りを捧げるための場所らしい。数年に一度、多くの人が集まって個々に大量の供物をお供えするらしい。
 定期的に手入れもされ、花がところどころに咲いている。

「時期は違うけど、お供えする?ネルの合格祈願として最適と思ったんだけど。」

「空……そんなこと考えられたんですね!人の心はまだあったんですね!」
「百合乃。紐なしバンジー、してみる?」
「ゴメンナサイ。」
コントをしていると、ロアが振り返る。

「私、明日も来たいです。ここに……あそこに。恐れ多いかもしれないけど、ネル様が離れるのは寂しいです。一緒に、お祈りをして繋がっておきたいんです。」
「いいよ。ロアがしたいっていうなら、私は空にだって飛んでいく。」
「もう飛んでます。」
「そうだったね。」

「なんでしょう。わたしとの差がすごいん気がするんですけど、気のせいです?」

「ユリノ、気にしちゃダメ。」
ツララが黄昏る。百合乃は、私に教育ちゃんとしろ的な視線を向けてくる。

 どうしたって?無論無視。

 今日はそのまま別のところを回ることした。お祈りは明日、ネルと一緒にやるためだ。少し遠くに飛行船(?)を停車(?)し、魔力供給を切って軽く昼ごはんを食べ、今度は商店街側を回る。

 色々お土産が売ってる。見てるだけで楽しい。オタクがサブカルチャー専門店で商品を見るだけで楽しいみたいな?ちなみに私は楽しい。静岡県民の私からすると、ア○バは人生で一度は行ってみたい場所ランキング上位だ。

 ほとんど適当にぶらついてるだけなんだけど、みんな楽しそうだ。

「空ー、こっちに何故か武器屋ありますよ。見に行きましょうよ。」
「はいはい。ツララ、ロア、サキ。ちゃんとついてきてね。」
「ん。いい武器あったら買う。」

「武器さん?カッコいい!」
「危ないから、触っちゃだめだからね?」
そんなこんなで、旅行は続く。

———————————————————————

 これを書いている日、頭と胃が気持ち悪かったんですね。ということは、ですよ。ということなんですよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...